東レの直近の動向と展望

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東レの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

1兆円の達成が次の宿題を突きつける瞬間

2024年度、東レが導入した戦略的プライシングは、当初計画100億円に対して223億円という期初想定を上回る効果を生んだ。各事業で品種別・顧客別に価格データを可視化し、陥没価格の是正を進めた結果、上期から100億円程度の効果が出て、下期も同じ傾向で推移した。2025年度までに500億円目標の6割にあたる300億円の効果を見込む水準に達した。大矢光雄社長は売上収益1兆円の達成を感慨深い節目とし、収益率にはまだ伸びしろが残されており、それが次期中期経営課題の大きな論点であるとの認識を決算説明会で示した。繊維セグメントは2024年度に売上収益1兆円を達成し、エアバッグ用繊維は世界トップシェアの高収益事業へ成長した。ユニクロとの連携について大矢は「合繊で新たなマーケットを切り開きたい。ユニクロと組むことでそれが花開いた」(日経ビジネス 2024/10)と述べた。

2025年度の特定事業改善プロジェクト「Dプロ」の通期収益改善効果は、期初想定の100億円超に対して70億円へ下方修正された。修正の主因はZoltek社の風力発電向け需要の回復遅れであり、Dプロ対象事業全体では上期赤字・下期黒字という前年のパターンから徐々に離れている。日本バイリーン株式の売却益は期初見通しに織り込まれておらず、下期の押し上げ要因として加わり、構造改革関連費用と相殺される見通しとなった。炭素繊維複合材料事業では、大手顧客のB787型機向けの出荷が月平均6機という前提のもと、サプライチェーン在庫調整の長期化が2025年度一杯続く見通しであり、航空機需要回復への対応と産業用途収益化という二重の課題に同時に向き合う節目を迎えている。

参考文献
  • 決算説明会 FY25通期
  • 決算説明会 FY26-2Q
  • 東レ プレスリリース Dプロ関連開示
  • 日経ビジネス 2024/10
  • フロンティア・マネジメント 2025/1

規模の達成から質への舵切りが求められる節目

2025年度の通期見通しでは、東レは米国関税措置によるマイナス150億円という事業利益影響を織り込んだ。同社は従来から地産地消体制を基本とし、地域間のバランスをとった生産体制を保ち、地域別の投下資本では日本の次に米国という順番で強固な生産拠点を世界に持っている。関税によるコストアップは顧客への転嫁で対応し、安易な値下げは行わないという基本方針のもと事業を運営する姿勢を経営陣は示した。直接の関税影響は地産地消と多様なサプライチェーン拠点の組み替えによって相当程度は抑えられるという判断を示した一方、米国を含む世界経済への波及という間接的な影響は一定程度覚悟する必要があるという慎重な見方も併せて示した。

炭素繊維複合材料では一般産業用途のうち天然ガスタンク需要が想定より低調な一方、AI需要を背景とする電線芯材の需要が顕在化し、米国・インド・インドネシアを中心に拡販が進む。機能化成品ではMLCC離型フィルム向けに岐阜の増設ラインが順次稼働を始め、土浦のコンデンサー用OPPフィルム増設ラインも並行して立ち上がるなど、高収益製品の拡大が次期中計期間の成長ドライバーと目される。日覺昭廣前社長は「素材産業は開発に10〜20年を要する。長期視点で人を基本とする経営が重要だ」(フロンティア・マネジメント 2025/1)と述べた。大矢社長は炭素繊維のナンバーワンメーカーとして収益を拡大する方針を示し、規模拡大から収益率改善へ舵を切る意思を明らかにした。売上1兆円という規模の達成から、収益率という経営の質への転換こそが、2026年以降の次期中期経営計画の中核論点である。

参考文献
  • 決算説明会 FY25通期
  • 決算説明会 FY26-2Q
  • 東レ プレスリリース Dプロ関連開示
  • 日経ビジネス 2024/10
  • フロンティア・マネジメント 2025/1

参考文献・出所

有価証券報告書
東レ社史
日経ビジネス 1984/8/6
産業と産業人 1952/1
読売新聞 1953/6/2
ダイヤモンド 1962/2/26
ダイヤモンド 1965/9/6
週刊東洋経済 1975/7/19
日経ビジネス 1991/9/9
ボーイング発表資料
東レIR
Zoltek Companies発表資料
TenCate買収関連開示
週刊東洋経済 2012/4/12
決算説明会 FY25通期
決算説明会 FY26-2Q
東レ プレスリリース Dプロ関連開示
日経ビジネス 2024/10
フロンティア・マネジメント 2025/1
日経ビジネス
フロンティア・マネジメント