キッコーマンの直近の動向と展望

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キッコーマンの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

北米第3工場による長期成長の布石

2024年度から2025年度にかけてのキッコーマンの経営課題は、次期中期経営計画に向けた長期成長戦略の具体化と、コロナ期に進んだ価格改定による販売数量の減少を数量ベースの成長へ戻すことの二つに集約された。北米しょうゆ事業では新たに米国第3工場の建設計画が公表され、今後10年間で生産能力を現在の水準から3〜4割ほど引き上げる方針が対外的に示された。高い生産性と多品種少量生産の同時追求を可能にする新しい設計思想を全面採用し、北米消費者の多様化する商品ニーズに応えながら高水準の安定成長を長期にわたって実現するための事業基盤を整えつつある。

北米しょうゆの成長率は年4〜5%程度の安定成長が目標値として示され、2024年度以降は値上げ効果を業績計画に織り込まず、数量ベースの成長を重視する方針を経営陣が掲げた。欧州市場は中期的に二桁成長の可能性がある有望な市場と位置づけられ、経済環境の回復に伴う安定的な二桁成長への早期復帰を目指す方針が示されている。アジア・オセアニア、特にアセアン地域については引き続き高い成長が期待できると評価されており、創業家の確信に基づく集中投資というキッコーマン独自の歴史的な伝統を、今度は分析に裏打ちされた地域別成長戦略として継承しようとする経営の姿勢が浮かぶ。

参考文献
  • 決算説明会 FY22 2023/4/27
  • 決算説明会 FY23 2024/4/26
  • キッコーマン 統合報告書 2024

国内数量回復と卸売利益率の防衛線

国内事業では2024年度において、価格改定で落とした販売数量の回復を経営陣が最重要課題に据え、コロナ前の利益水準への復帰を当面の最優先目標とする方針が示された。4月にデルモンテ等の価格改定に踏み切った後は追加的な価格改定の予定はなく、価値訴求型の販促を強化して新価格を消費者に納得してもらい、それを市場に定着させながら販売数量をなるべく減らさない戦略へ切り替えた。豆乳事業についてもCM・ウェブ・イベント等を通じておいしくて健康に良いという商品価値の訴求を再強化する方針が示され、成長軌道へ戻すための地道な販促施策に取り組んでいる。

北米卸売事業の利益率については、2023年度の一時的な8%台から2024年度以降は再び6〜7%台へ緩やかに回帰する見通しとなっているが、経営陣は8%の水準を防衛線として維持したい意向を対外的に示している。バランスシート戦略については、米国第3工場や生産性向上投資など相当な資金需要が見込まれる中で、成長投資を最優先としつつ、大型M&Aや金融不安への備えとして現預金水準を一定に維持し、自己株式取得については市場環境を踏まえて機動的に実施する考えを表明した。合理的な多角化の限界を身をもって学んだ経営陣は、今後は北米醤油事業を強固な軸とする選択と集中の方針を徹底する姿勢を掲げている。

参考文献
  • 決算説明会 FY22 2023/4/27
  • 決算説明会 FY23 2024/4/26
  • キッコーマン 統合報告書 2024

参考文献・出所

有価証券報告書
野田醤油社史
日本醤油産業史
読売新聞 1926/4/5
読売新聞 1929/8/29
読売新聞 1954/11/20
読売新聞 1955/12/28
キッコーマン社史
茂木啓三郎回顧録
読売新聞 1957/11/13
実業の世界 1961/2
日本醸造協会雑誌 1972/12
日本醸造協会雑誌 1976
日経ビジネス 1978/4/24
日経新聞 2006/7/17
決算説明会 FY19
決算説明会 FY21
日経金融新聞 1999/4/15
日経MJ 2013/10/14
日経ビジネス 2024/1
JBpress 2024/4
財界オンライン
決算説明会 FY22 2023/4/27
決算説明会 FY23 2024/4/26
キッコーマン 統合報告書 2024
決算説明会 FY22
決算説明会 FY23
キッコーマン 統合報告書