清水建設の直近の動向と展望

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清水建設の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

「建設事業の立て直し」── 原点回帰を掲げた新経営体制

FY23の営業赤字を受け、2024年5月に中期経営計画〈2024-2026〉を策定した。建設事業の収益力回復を最優先課題に据え、ROE10%以上・建設事業利益率10%を目標に掲げ、量から質への経営転換を全社に徹底した。受注時に一定の利益率を確保できない案件は受注しない方針を徹底し、工期面でも突貫工事を発生させない計画管理を導入した。2024年4月から始まった残業時間の上限規制(年間720時間)も踏まえ、4週8閉所を前提とした受注を標準化し、労務費上昇を織り込んだ見積りを必須とした。その結果、FY24(2025年3月期)には営業利益710億円へ回復し、受注時採算の厳格化が損益改善に直結することを数字で裏付けた。すなわち、新方針が1年で成果を出した。

2025年2月、建築総本部長として受注時採算の改善を担った新村達也が第10代社長に就任した。新村は品質・コスト・工程への徹底したこだわりで建設事業を立て直すと原点回帰を宣言し、「創業221年間の信頼の根源は品質」(決算説明会 FY24)と述べ、創業以来の経営姿勢を新体制の基軸に据えた。政策保有株式の縮減目標も前倒しし、2026年度末に連結純資産の10%以下へ引き下げる目標を設定した。よって、PBR1倍割れ解消へ向けた資本効率改善が加速し、受注の質と財務の質を同時に高める方向が定まった。その背景として、渋沢栄一以来の民間建築路線を継承しつつ、収益構造のひずみを是正する狙いがある。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24-2Q
  • 決算説明会 FY25-3Q

データセンター受注1,200億円とグループ再編の加速

建設需要の構造変化への対応も進む。データセンター・半導体工場・蓄電池工場などに受注活動を集中し、FY25第3四半期までにデータセンター受注は国内1,200億円、海外を含めると1,500億円に達した。その結果、コロナ禍後のオフィス需要の停滞を補う新たな収益柱が形成され、従来の民間建築の枠組みを超える領域へ進み始めた。超高層ビル「Torch Tower」(常盤橋プロジェクト)には支店と同等の専任組織を新設して全社体制で臨み、受注時に長期間の物価交渉を経て契約することで採算を確保した。つまり、受注の質を保ちながら工事を遂行する体制を整えた。この案件集中は、人員と技術の両面で清水建設の経営資源に負荷をかける。

グループ再編も加速している。2025年5月に日本道路の完全子会社化を発表し、2026年2月には海洋土木に強みを持つあおみ建設の完全子会社化も発表して、建設周辺領域の事業基盤を順次固めた。SEP船BLUE WINDは台湾沖で運用を開始し、国内洋上風力の本格施工は2027年度から始まる予定で、脱炭素関連の長期需要を取り込む準備が進んだ。鹿島建設・竹中工務店との3社技術連携による自動搬送システムの共同開発など、競合他社との協業も進み、業界全体で人手不足への対応が進む。建設業の人手不足と労務費高騰が構造的に続くなかで、清水建設は「受注の量」ではなく「受注の質」で収益を守る方向に方針を置き換え、220年の企業史において新たな段階へ進んだ。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24-2Q
  • 決算説明会 FY25-3Q

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
日経ビジネス 1987/5/25
日経ビジネス 1992/2/10
決算説明会 FY21-2Q
決算説明会 FY22
決算説明会 FY23-2Q
決算説明会 FY23
決算説明会 FY24
決算説明会 FY24-2Q
決算説明会 FY25-3Q