清水建設の直近の業績・経営課題と展望

/

清水建設の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高19,444億円YoY▲3%
2025/3売上総利益1,955億円YoY+118.4%
2025/3販売費及び一般管理費1,244億円YoY+9%
2025/3営業利益710億円YoY+387.7%
2025/3経常利益717億円YoY+461.3%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益660億円YoY+284.6%
2025/3自己資本比率34.1%YoY▲0.9pt
2025/3有利子負債合計3,759億円前年比+1,901億円
2025/3現金同等物期末残高4,381億円YoY+29.2%
経営トップ新村達也取締役社長
2025/3従業員数21,286前年比+771人
2025/3平均給与1,012万円前年比+30万円
歴史的背景1804年に創業者の清水喜助氏が江戸神田鍛冶町で創業し、1887年に相談役となった渋沢栄一氏が「民間の建築工事」を営業方針に据えた。1989年度に売上で業界トップへ立ったが、FY23(2024年3月期)に上場来初の営業損失246億円を計上し、受注前の採算審査を厳格化した
経営課題FY24セグメント利益は建設事業564億円・投資開発168億円・道路舗装99億円で、収益の大半をなお建設事業が占める。FY23の営業損失246億円から営業利益710億円へ戻したが、PBRは1倍前後にとどまり、政策保有株縮減と資本効率の改善が中計期間の課題に残る
経営方針2025年4月就任の新村達也社長は「原点回帰によるシミズブランド確立」を掲げ、中計2024-2026で2026年度営業利益1,000億円・売上高1兆8,900億円・ROE8%以上を目標に据えた。受注前審査の厳格化と4週8閉所+αによる適正工期確保で、量より採算を優先する
主な投資中計3年間で総額3,600億円の成長投資を計画し、不動産開発2,000億円・生産性850億円・人財400億円・グリーン300億円を配分。2025年7月に日本道路を完全子会社化、2026年2月にあおみ建設を約250億円で買収すると発表した

民間集中路線の好不況非対称と新村社長「原点回帰」

1804年に創業者の清水喜助氏が江戸神田鍛冶町で大工業を開き、1887年に相談役となった渋沢栄一氏が営業方針を「民間の建築工事」と定めて以後、民間建築を主軸とする路線が続き、1989年度には売上で業界トップに立った。FY19には連結営業利益1,339億円と過去最高を記録したが、FY23(2024年3月期)は売上高2兆55億円のもとで複数建築工事の受注時採算悪化と資材・労務費高騰、工期逼迫による急施工の原価増が同時に重なり、営業損失246億円を計上した。民間契約は公共のスライド条項が効かず原価上昇分を発注者へ転嫁しにくいため、原価高騰局面で利益が直接圧迫される。

2025年4月、建築総本部長を経た新村達也氏が代表取締役社長に就任した。新村社長は「原点回帰による『シミズブランドの確立』」を経営の出発点に据え、品質・安全・コスト・工程へのこだわりの積み重ねをシミズブランドと位置づけた。中期経営計画〈2024-2026〉は最終年度の2026年度に連結営業利益1,000億円・売上高1兆8,900億円・ROE8%以上を掲げ、ROE10%以上は次期中計の中長期目標として区別した。受注前審査の厳格化と4週8閉所+αによる適正工期確保に加え、政策保有株式の売却が寄与し、FY24は営業利益710億円・当期純利益660億円(前年比284.6%増)まで回復した。

新村社長のもとで中計3年間で総額3,600億円の成長投資を計画し、不動産開発2,000億円・生産性向上と研究開発850億円・人財400億円・グリーンエネルギー300億円を配分した。FY24は約700億円・進捗率20%が実行され、別枠でM&A180億円も用意した。グループ再編も同時に進め、2025年7月の決済で日本道路の議決権を88.33%まで引き上げ、海外では2024年11月にGrandwork Interior、2025年2月に米国Cross Managementを子会社化した。AR後の2026年2月には海洋土木大手あおみ建設の完全子会社化(約250億円)を発表した。

清水建設の経営フェーズは、1887年以来の民間集中路線が好況期にはFY19営業利益1,339億円や1989年度の業界トップを生み、原価高騰局面ではFY23営業損失246億円へ反転する好不況の非対称を、買収による事業分散と受注時の採算規律で吸収できるかという主題に移っている。日本道路の完全子会社化、あおみ建設の連結化、SEP船「BLUE WIND」の運用は、民間建築一極集中をインフラ・海洋土木へ広げる作業であり、新村社長が掲げた「原点回帰」が受注前審査の運用として現場に定着するかと並行して、買収事業を建築工事の振れ幅を吸収する利益源に育てる構造課題が、次期中計に持ち越される。

清水建設の業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円16,649+6.2%15,674−5.9%15,194−3.1%16,650+9.6%16,983+2.0%14,565−14.2%14,830+1.8%19,338+30.4%20,055+3.7%19,444−3.0%
当社建設事業億円13,44512,37811,90313,35213,48311,62311,55714,16914,20213,667
当社投資開発事業億円316179319252262455831888824531
道路舗装事業億円1,4081,4351,508
売上原価億円14,89613,57813,16014,48314,72612,66113,43317,72819,16017,489
売上総利益億円1,7542,0962,0342,1662,2571,9041,3971,6108951,955
販管費億円8078088208699189039451,0641,1421,244
営業利益YoY億円947+89.2%1,288+36.1%1,214−5.8%1,297+6.9%1,339+3.2%1,002−25.2%451−54.9%546+21.0%-247−145.2%710+387.7%
当社建設事業億円9371,1291,0591,3391,4511,076568486208564
当社投資開発事業億円475311088103150478381276169
道路舗装事業億円577899
経常利益YoY億円955+69.8%1,312+37.4%1,241−5.4%1,340+7.9%1,380+3.0%1,055−23.6%504−52.2%565+12.2%-198−135.1%717+461.3%
当期純利益YoY億円593+77.6%989+66.8%850−14.1%997+17.3%990−0.7%772−22.0%478−38.1%491+2.7%172−65.0%660+284.6%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%27.933.936.539.238.342.738.734.835.034.1
有利子負債比率%11.711.010.29.29.611.310.814.714.714.9
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円3831,437829-1491,706807778838-2131,591
投資CF億円-141-347-309-527-1,157-1,140-893-524-5478
財務CF億円92-654-261-424687-427196656-240-711
従業員
連結従業員数15,64015,92516,02416,18416,29716,58619,66119,86920,51521,286
単体従業員数10,46610,43110,34810,33610,38410,49410,68810,84510,94911,163
平均年収(単体)万円9079669671,0101,0079719789729821,012

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25FY25通期の業績報告。特記すべき構造的トピックなし。

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C1803/vAfC/mTyJ/tN0x.pdf
FY24FY24通期の業績報告。特記すべき構造的トピックなし。

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C1803/RLCz/v0zk/rYqP.pdf
FY23FY23通期の決算短信。中期経営計画〈2019-2023〉最終年度に向けた業績報告で、特記すべき構造的トピックなし。

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C1803/bU43/CMQ8/pNW0.pdf
FY22FY22通期の決算短信。中期経営計画〈2019-2023〉4年目の業績報告で、特記すべき構造的トピックなし。

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C1803/Xq7P/nHWP/XGvV.pdf
FY21

決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C1803/eq9A/da5U/gqPL.pdf

ファクトシート

年度経営の振り返り報告資料
FY25中期経営計画〈2024〜2026〉初年度の主要KPI推移を整理した財務データブック。建設・非建設の事業別実績、政策保有株式縮減状況、自己株式取得実績(2023年度254億円・2024年度345億円)、配当性向40%への引き上げ等を体系化。

財務データブック

https://pdf.irpocket.com/C1803/vAfC/PSMS/MHNu.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26新村達也社長就任後の最初のコーポレートレポート。中期経営計画〈2024〜2026〉の進捗を「経営基盤の強化に向けた新たなスタートの年」と位置づけ。海外戦略としてシンガポールGrandwork Interior社(2024年11月)、米Cross Management社(2025年2月)の連結子会社化を推進。

コーポレートレポート

https://pdf.irpocket.com/C1803/CiMB/oSbG/gkoc.pdf
FY25中期経営計画〈2024〜2026〉初年度の編集版。基本方針「持続的成長に向けた経営基盤の強化」を提示し、最終年度目標として売上高1兆8,900億円・営業利益1,000億円を設定。受注利益率重視への転換と政策保有株式縮減の継続を明示。

コーポレートレポート

https://pdf.irpocket.com/C1803/I7Sq/IrfG/VXmJ.pdf
FY24前中期経営計画〈2019〜2023〉最終年度の振り返り編。建設資材高騰による中計目標未達を率直に総括し、次期中計策定方針を提示。自己株式200億円取得・400億円消却、配当性向40%への引き上げ、政策保有株式の連結純資産対比30.6%からの縮減方針を明記。

コーポレートレポート

https://pdf.irpocket.com/C1803/BbNL/Qa9i/Onl9.pdf
FY23中期経営計画〈2019-2023〉4年目の編集版。基本方針「先行投資期間」の位置づけのもと5年間で7,500億円の投資計画を継続、不動産開発事業に新規投資額5,000億円を配分。ウクライナ情勢・資材高騰の事業環境下でROE目標達成に向けた財務/非財務KPIの進捗を整理。

コーポレートレポート

https://pdf.irpocket.com/C1803/BbNL/Qa9i/Mscx.pdf
FY22中期経営計画〈2019-2023〉3年目の編集版。長期ビジョン(2019年策定)に基づくサステナブル社会実現を主題に、ESG経営推進・TCFD提言賛同を明示。不動産開発事業の進捗率32%、研究開発・デジタル関連投資の拡充を提示し、ROE20%以上の目標と連動した先行投資を継続。

コーポレートレポート

https://pdf.irpocket.com/C1803/l3Fa/lE7Z/Xqeq.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
日経ビジネス 1987/5/25
日経ビジネス 1992/2/10
決算説明会 FY21-2Q
決算説明会 FY22
決算説明会 FY23-2Q
決算説明会 FY23
決算説明会 FY24
決算説明会 FY24-2Q
決算説明会 FY25-3Q