大林組の直近の動向と展望

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大林組の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

北米事業「1兆円規模」── M&Aで拡大する海外建設

2025年4月に就任した佐藤俊美社長(9代目)は、北米駐在時代にMWHとの協業を現地で経験した人物である。就任直後から「動かなければ30年後も変わらない」(日経クロステック 2025/9/2)と述べ、M&A路線を前面に掲げた。北米事業は、ウェブコー(2007年買収、カリフォルニアの建築)、クレマー(2014年、中西部の橋梁・道路)、MWH(2023年、水処理施設)、GCON(2025年、データセンター・研究施設)と順次買収を重ね、事業領域を広げた。佐藤社長は「市場が堅調に推移すれば今の体制でも1兆円規模まで拡大できる」(日経クロステック 2025/9/22)とも述べた。本社にはM&A検討チームを新設し、市場分析に基づく買収を継続的に実行する方針を示した。すなわち海外建設事業の位置づけは高まった。

FY24の連結売上高は2兆6,201億円、連結営業利益は1,434億円という高水準の業績だった。繰越工事高は1兆9,000億円を超え、2028年頃までの仕事の見通しが社内で立っている。ただし工事損失引当金を計上済みの案件が完成工事高の約10%を占め、建築の完成工事利益率は9.1%にとどまった。労務費は2021年以降で約3割上昇しており、同社は2027年3月期までに完成工事利益率を10%台へ引き上げる計画を立てている。オセアニアでのM&Aも検討中と明かしており、自己資本を1兆円の水準で維持しつつ、中期経営計画の期間中に総額1,000億円規模の自己株式取得を実施する方針を株主に示した。資本効率の改善と海外拡大を同時に進める経営モデルを掲げている。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24中間期
  • 日経クロステック 2025/9/2
  • 日経クロステック 2025/9/22

データセンター1,000億円 ── 「建てる会社」から「事業を持つ会社」への拡張

蓮輪前社長が掲げた、連結営業利益の3割以上を国内建設以外の領域で稼ぐ方針を体現する動きが、データセンター事業への参入である。2024年11月、大林組は新会社MiTASUN(ミタサン)を設立し、10年間で総額1,000億円を投じる計画を発表した。2028年度に東京都港区で都市型データセンターの第1号を開業する計画で、2030〜31年頃には単年度での黒字化を目指す道筋を示した。建設会社が自らデータセンターを所有して継続運営する事業モデルは、従来の「工事を請け負う」立場から「事業そのものを運営する」立場への転換である。つまり大林組の業態そのものが変わろうとしている。生成AI需要を背景としたデータセンター投資の拡大を、自社で取り込む狙いである。

グリーンエネルギー事業でも収益化が進んだ。大林クリーンエナジーは木質バイオマス、洋上風力、太陽光、地熱といった分野へ事業を広げ、ニュージーランドにも現地子会社を設立して国際展開を進めた。ロンドン・シティではオフィスビル3件の開発プロジェクトを同時に手掛けており、不動産事業の海外展開も2020年代から始まった。FY24の不動産セグメント利益は161億円にとどまるが、不動産資産規模を7,000億円へ拡大する方針のもと、成長余地は残っている。1892年に乾物問屋出身の大林芳五郎が大阪で始めた建設請負業は、創業から130年余を経て、建設・不動産・エネルギー・データセンターを併せ持つ複合事業体へと変わろうとしている。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24中間期
  • 日経クロステック 2025/9/2
  • 日経クロステック 2025/9/22

参考文献・出所

有価証券報告書
東洋経済オンライン 2020/6/26
日経クロステック 2025/9/22
決算説明会 FY24
日本会社史総覧 1995/11/1
ニュースイッチ 2018/7/20
日経ESG 2022/6/7
日経ESG 2025/1/8
決算説明会 FY24中間期
日経クロステック 2025/9/2
日経クロステック