住友銀行はクレジットカード事業に本格参入するために、完全子会社として住友クレジットサービスを設立した。すでにJCBとダイナースが国内では先発しており、住友クレジットは後発参入にあたる。クレジットビジネスには巨額投資額必要であることから、住友銀行という1つの銀行で参入することは異例の選択であったが、VISAとのアライアンスを軸にクレジットカードビジネスを伸ばすこと目論んだ。
住友クレジットはVISAと提携。JCBが国内カードとして独立路線を歩んだのに対して、住友カードは海外でも使える国際カードとして差別化するためにVISAとの提携を選択
住友クレジットは、VISAのイシュアー(カードの発行会社)として生き残りを図るため、ビザ・ジャパンを創設した。この組織を通じて、日本航空や近畿日本ツーリストなどと提携し、VISAブランドのカードをビザ・ジャパン(=住友クレジット)経由で発行する体制を整えた。経営目標としては、VISAブランドの国内会員数1000万名(住友クレジット500万名+フランチャイジー500万名)を掲げた
住友銀行で業務本部長だった鈴木雍(すずき・よう)氏が、1981年に住友クレジットサービスの社長に就任。以降、1980年代の約10年にわたって住友クレジットサービスの経営を担った。この間、VISAなどのアライアンスの変更など、重要な意思決定を行い、後発ながらもJCBに次ぐ会員数で国内2位を確保した。したがって、鈴木氏はクレジットカードの黎明期において業容拡大に貢献した「中興の祖」と言えるだろう
1987年にVISAは日本国内における加盟店および会員数のさらなる増大のために、日本信販およびクレディセゾンへのカード発行を認めた。住友クレジットとしては日本国内のカード発行を「ビザ・ジャパン」に集約したいという狙いがあったが、VISAとしては住友に独占的に利益を与えるメリットが少ないと判断した。
VISA専門で扱っていた方針を撤回し、マスターカードの取り扱いも開始。背景には親会社である住友銀行からの圧力もあったという。このため、住友クレジットは既にVISAブランドを利用しているユーザーに対してマスターに誘導することなく、引き続きVISAブランドを押し出した販促を継続した
クレジットカードの普及が一巡したことや、カード発行をめぐる競争が激化したことを受けて、住友クレジットの会員数の増加は鈍化傾向へ
カードのサービス機能にいったいどれだけの違いがあるのかと言いますと、確かに多少の違いはありますが、それほど大きな違いはない。ですから、これらを1から見直して本当に違いのあるサービス内容に変えていかないとダメだと思っています。今年から営業企画部内にサービス開発のプロジェクトチームを作り、予算を与えて各種カードに合ったオリジナルサービスの開発に専念させようと思っています。これまで他社との競争もありましたので当社も無我夢中で作ってきましたが、こちらで本当に中身の濃いサービスを開発し、会員に提供していかないとダメだと思っています。
銀行系カードとしては、初の本格的な割引システムをビザ・ジャパン経由で提供。飲食店を中心とした2万の加盟店でカードを提示して「5%〜20%(平均値10%)」の割引を会員が受けられるサービスであった。住友クレジットとしては、コモディティー化しつつあったカードビジネスにおいて、割引によってカードの利用頻度を高め、取扱高を確保することを目論んだ
それまでは規制により信販系に限られていた分割払いについて、規制緩和で銀行系のクレジットでも提供可能になった。住友クレジットもリボ払い(分割払い)に参入
リボ機能はわれわれにとって永年の悲願であったが、スタートの時期としては環境が悪いかなというのが実感である。したがって、各社ともリボには慎重な取り組みだが、逆に言えばこれは結構なことではないだろうか。米国のカード会社は収益の70%が金利収入で、これに対して日本のカード会社の金利収入は約15%となっている。リボ導入で将来的に金利収入は増えていくだろうが、米国の比率までは行かなくとも40〜50%程度までは持っていく必要があるだろう。長期的観点からは収益の柱に育てていかなけらばならない。(略)
多重債務発生の未然防止策についてはカード業界全体、それぞれのグループ、さらには各社ベースで具体的に動いている。当グループとしてはクレジットラインの引き下げやリボの枠も抑制している。現在、カード業界では信用情報の一本化に取り組んでいるが、そのチェック体制が万全となるまでの過程において、あらゆる策を講じていく方針だ。
親会社の住友銀行が三井系のさくら銀行と経営統合したことを受けて、クレジットカード事業も統合。商号を三井住友カードに変更
NTTドコモは三井住友カードの株式34%を約980億円で取得(推定評価額・約2900億円)
三井住友カードの大株主は「三井住友FG66%・NTTドコモ34%」であったため、三井住友FGはドコモからSMCCの株式を500億円で取得(推定評価額1500億円)し、完全子会社化を実施。三井住友FGとしてクレジットカードへの投資を強化する方針を示した
三井住友FGの完全子会社化に伴う課税影響約▲900億円の損失を計上。特別損失の計上と思われ、営業利益および経常利益への影響はない
個人情報の取り扱いをめぐり、批判が相次ぐ