セコムの直近の業績・経営課題と展望

/

セコムの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高11,999億円YoY+3.9%
2025/3売上総利益3,712億円YoY+3.9%
2025/3販売費及び一般管理費2,269億円YoY+4.7%
2025/3営業利益1,443億円YoY+2.6%
2025/3経常利益1,751億円YoY+5%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益1,081億円YoY+6%
2025/3自己資本比率59.2%YoY+0.4pt
2025/3有利子負債合計417億円前年比+39億円
2025/3現金同等物期末残高4,084億円YoY▲3.7%
経営トップ吉田保幸代表取締役社長
2025/3従業員数64,655前年比▲89人
2025/3平均給与655万円前年比+34万円

機械警備の利益で複数の収益柱を育てられるか(筆者所感)

セコムの60年を貫いたのは、人手で警備するのではなく機械で安全を売るという、創業期の発想を原型にした経営の型だった。1962年に飯田亮と戸田壽一が東京で創業した時点では、「安全はタダ」という社会通念のもと民間警備の業態自体が存在せず、家業の酒問屋から離れて前金で代金が取れる業態を選んだ飯田の判断が、社会的に未開拓だった警備市場との出会いを生んだ。1964年の東京オリンピック選手村警備の単独受注で社会的認知を広げ、1965年に法人からの警戒注文が殺到した時点で人手依存の限界が見えた。1966年6月のSPアラーム発売は、センサーが異常を検知し通信回線で監視センターに通報し駆けつけ要員が現場へ向かう仕組みで、契約数が増えるほど初期投資が薄まるストック収益型のビジネスを警備業界で初めて成立させた。

この機械警備モデルへの確信を試したのが、1968年12月の東京府中3億円事件である。無人警備では犯行を防げないという批判が一部で出たなかで、飯田は1969年に「今後は無人警備以外の注文をとるな」と社内に指示し、巡回警備の主流から離れて機械警備一本へ賭けを通した。1974年時点で全国250カ所の警報基地、従業員3,300人、年30%超の成長率という数字は、機械警備が市場で受け入れられた証であり、1974年6月東証二部、1978年5月一部指定への到達も、この賭けの帰結である。1983年12月の「セコム」への社名変更で飯田が掲げた「社会システム産業」への転身宣言は、警備業の枠を越えて1991年の在宅医療、1998年の保険、2001年の自由診療保険「メディコム」、2006年の能美防災へ事業領域を広げる地ならしになった。

機械警備のストック収益が新領域への参入原資を生む二重構造は、セコムの財務プロファイルを長く決めてきた。FY18にセキュリティサービス事業の営業利益は1,141億円で連結営業利益1,302億円の87%を占め、多角化事業は売上を伸ばしてもセキュリティのような高い利益率には届かなかった。2012年のアット東京、2017年のTMJ、2023年のアルテリア・ネットワークス資本参加で買収による売上拡大を続けたが、FY24の連結売上高1兆1,999億円に対し営業利益1,442億円とFY19の1,428億円からほぼ横ばいで、M&Aによる売上拡大が利益成長に直結していない。2024年4月就任の吉田保幸社長は3年連続のベースアップと東南アジアでの積極展開に動いている。機械警備で稼いだ利益を周辺領域の採算改善とAI警備・処遇改善に振り向けて、複数の収益柱を持つ社会システム産業へ移れるかが問われている。

セコムの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円8,810+4.8%9,281+5.3%9,706+4.6%10,138+4.5%10,601+4.6%10,359−2.3%10,499+1.3%11,013+4.9%11,547+4.9%11,999+3.9%
セキュリティサービス億円4,9285,3435,4585,5845,6935,5585,5815,8336,1416,334
防災億円1,3171,2621,3661,4031,5241,4271,4881,4571,6061,771
メディカルサービス億円640668710723762716746776801863
保険億円402420432448473495527556581594
地理空間情報サービス億円509516539548564621605584
BPO-ICT億円4986979211,0121,1201,1571,2811,2721,285
売上原価億円5,8656,2146,5276,9227,2257,0537,1227,5897,9758,288
売上総利益億円2,9453,0673,1803,2163,3753,3063,3773,4253,5733,712
販管費億円1,6591,7561,8251,9141,9471,9361,9422,0582,1662,269
営業利益YoY億円1,286+4.0%1,311+1.9%1,354+3.4%1,302−3.9%1,429+9.7%1,369−4.2%1,435+4.8%1,367−4.7%1,407+2.9%1,443+2.6%
セキュリティサービス億円1,1211,1351,1561,1421,1581,1181,1611,1151,1271,150
防災億円139132156141182130148115154201
メディカルサービス億円52475451554157595254
保険億円182114-416810102642
地理空間情報サービス億円2127364741685335
BPO-ICT億円7073819912713211611892
経常利益YoY億円1,348−1.4%1,470+9.1%1,443−1.8%1,449+0.4%1,514+4.5%1,390−8.2%1,532+10.2%1,561+1.9%1,669+6.9%1,751+5.0%
当期純利益YoY億円770+2.2%842+9.3%870+3.4%920+5.8%891−3.2%747−16.2%943+26.2%961+1.9%1,020+6.1%1,081+6.0%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%53.154.155.556.457.058.158.858.558.859.2
有利子負債比率%4.83.63.22.82.62.42.32.11.81.9
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円1,3671,7111,2361,4891,7561,8191,6491,4641,6581,678
投資CF億円-1,292-430-582-614-608-485-554-704-1,623-1,008
財務CF億円-268-559-510-550-482-493-874-778-955-852
従業員
連結従業員数42,68743,07154,64856,92358,40459,43659,74565,08764,74464,655
単体従業員数15,31815,40315,67715,98616,15316,29016,27915,92315,67215,674
平均年収(単体)万円597599598595595592595601621655

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY252024年10月1日付で1→2株の株式分割を実施、株主優待制度を導入。自己株式取得は上限600億円・1,800万株(2025年5-12月)を決議し従業員RS付与制度も継続。年間配当(株式分割考慮前換算)195円で前期190円から5円増配。

決算説明資料

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib_2025/kessan37-3-p.pdf
FY24自己株式を活用した従業員RS付与制度を導入(2023年6月)、自己株式取得を上限300億円・450万株(2024年5-8月)で決議、FY24累計439億円取得。年間配当190円・連結配当性向47.2%へ引上げ。

決算説明資料

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib_2024/kessan36-3-p.pdf
FY23吉田社長就任初年度。2023年5月11日に「セコムグループ Road Map 2027」を策定・公表。年間配当185円(前期180円から5円増配)、自己株式取得上限250億円・450万株(2023年2-5月)を決議。

決算説明資料

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib_2023/kessan35-3-p.pdf
FY22株式会社セノンを連結子会社化(2022年7月1日付・発行済株式の55.1%取得)し常駐警備・機械警備・航空保安を強化。年間配当180円(前期170円から10円増配)、自己株式取得は上限300億円・5百万株(2022年2-6月)を決議。中期経営計画期間の構造強化を継続。

決算説明資料

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib_2022/kessan34-3-p.pdf
FY21

決算説明資料

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/kessan33-3-p.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY25「セコムグループ2030年ビジョン」と「あんしんプラットフォーム」構想を中軸に統合報告。サステナビリティ重要課題のKGI・KPIを継続開示。

統合報告書(セコムレポート2025)

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/AR/2025j_full.pdf
FY24「セコムグループ2030年ビジョン」のもと社会インフラ「あんしんプラットフォーム」構想を提示。サステナビリティ実現への取り組み・重要課題KGI/KPIを統合的に開示。

統合報告書(セコムレポート2024)

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/AR/2024j_full.pdf
FY23吉田社長就任年の発行。「セコムグループ2030年ビジョン」と「セコムグループ Road Map 2027」を初公表し中長期戦略を体系化。

統合報告書(セコムレポート2023)

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/AR/2023j_full.pdf
FY22中期経営計画下で「あんしんプラットフォーム」構想を中軸に据えた発信。海外市場での業務提携・M&Aを担う新事業開発チームを設置。警備の業務運営の抜本的改善とテクノロジー活用(ロボット等)を推進し、連結配当性向の一定水準維持と機動的な自己株式取得で株主還元を継続。

統合報告書(セコムレポート2022)

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/AR/2022j_full.pdf
FY21

統合報告書(セコムレポート2021)

https://www.secom.co.jp/corporate/ir/lib/AR/2021j_full.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1973/8/6
読売新聞 1965/12/23
読売新聞 1969/4/8
読売新聞 1974/10/2
日刊工業新聞 2017/3/27
日刊工業新聞 2024/9/17