ソフトバンクインベストメントを設立
SBIの歴史は、1999年にインターネットによる金融分野への参入を目的として、ソフトバンクの旧管理本部55名によって子会社「ソフトバンクファイナンス」が設立されたことに始まる。旧管理本部は、ソフトバンクの北尾吉孝氏が管轄しており、同氏がソフトバンクファイナンス(現SBIホールディングス)の実質的な創業者となった。
1999年はインターネットバブルによって株式上場が相次ぎ、ネット企業は事業内容が杜撰であっても株式市場から高い評価を獲得していた。ソフトバンクファイナンスは、これらの未上場のネット企業に投資をすることによって利益を出す投資事業を主軸とした。
2000年には「ソフトバンク・インターネット・テクノロジーファンド1号〜3号」(当初出資金1,505億円)を設立したが、この直後にネットバブルが崩壊。ベンチャー企業の株式上場が冷え込む時期に突入してしまった。
そこで、ソフトバンクファイナンスは、2003年に経営方針が大きく転換した。ソフトバンクの子会社であったネット証券会社「イートレード証券」を保有するイートレード株式会社を吸収合併し、それまでのベンチャー投資会社ではなく、ネット証券への本格投資を開始した。
以後、2021年の現在に至るまでSBIホールディングスの稼ぎ頭はネット証券事業であり続けている。
ナスダックジャパンに株式上場
イー・トレード株式会社と合併
ファイナンスオールを買収
モーニングスターを買収
ソフトバンクとの資本関係を解消し、商号をSBIホールディングスに変更
ソフトバンクとの資本関係を解消
SBIにおける転機は、2005年に親会社のソフトバンクが、子会社のソフトバンクインベストメントの株式を売却し、資本政策の転換によって独立企業として再出発したことである。
SBIがソフトバンクから独立した理由は(1)リスク志向の強いソフトバンクが財務的な安定が必要な金融事業を兼業することは困難、(2)実質創業者である北尾吉孝氏がSBIの独立を志向した、の2つであった。
ソフトバンクにおける財務リスクの発生
親会社のソフトバンクの財務状況が悪化した理由は、2003年から開始したADSLへの先行投資が主な原因であった。インターネット回線を日本でも安く普及することを狙った投資であったが、年間1,000億円を超える赤字を3年連続で計上し、ソフトバンクの財務基盤が揺らいだ。
このため、ソフトバンクの子会社として経営されていたSBIは、親会社の先行投資によって財務リスクを抱えることになった。
財務基盤の悪化は、日本の金融行政が最も嫌うことであり、最悪の場合、SBIが取得した金融事業の免許が剥奪される可能性もあったと思われる。
北尾吉孝氏による金融事業の独立志向
SBIの経営を実質的に担っていた北尾吉孝氏は、ソフトバンクとSBIとの親子関係を見直すように、ソフトバンク創業者の孫正義氏に要請し、これが受け入れられた。北尾氏によれば、孫正義氏によるSBIとの資本関係の解消は「円満」に行われたという。
この結果、2006年までにSBIの大株主からソフトバンクが消え、SBIはネット証券事業を主軸とする独立企業となった。
住友信託グループと提携
なお、SBIは金融事業を強化するために独立企業となったものの、2006年に住友信託銀行グループと「多面的業務提携」の契約を締結した。主に、銀行・信託、証券、住宅ローンの3分野に関して、事業を加速させるための提携であった。
このため、2006年のソフトバンクからの独立は、総合金融企業として発展するために、事業関連度の高い住友信託銀行と提携する布石でもあった。
住信SBIネット銀行を開業
証券事業をSBI証券に集約
ブリリアントカットを提唱し、事業の「選択と集中」を実施
2000年代を通じてソフトバンクファイナンスは、金融に関する様々な分野へ投資を行った。
しかし、SBIは2010年3月期時点で、58の事業を経営しており、収益性の悪い事業体が含まれたことが問題視された。
そこで、2010年にSBIは「ブリリアンカット」という経営方針を打ち出し、それまでの規模の拡大路線を終え、当期純利益を重視して収益性が低い事業からは撤退することを決めた。具体的には不採算事業の売却を打ち出した。
一方で、SBIは「銀行」「証券」「保険」の3分野についてはコア領域と位置付けて集中投資を実施。収益性の改善を受けて、2015年にはピーシーエー生命を吸収することで、先行投資による赤字が予想される生命保険分野に再参入している。
ピーシーエー生命保険を買収
ネット証券事業の好調を受けて、メガバンク構想を推進
2021年3月期におけるSBIホールディングスの純利益975億円のうち、その大半は100%子会社であるSBI証券(2021年3月期の純利益616億円)からもたらされた。
ネット証券による利益を元手に、2019年にSBIは地銀連合構想を発表し、メガバンクとして業容を拡大する方針を打ち出した。
地銀連合構想の根底には、SBIが日本全国の顧客を確保したいという狙いがあった。一方で地銀にとっては、経営体力が乏しい中でシステム(IT)への追加投資が難しい状況があり、SBIホールディングスとシステムに対して共同投資することで生き残りたいという目論見があり、それぞれが提携する要因になっている。
2021年にはSBIは、地銀連合構想の延長線上で業容を拡大するために、新生銀行(旧日本長期信用銀行)に対するTOBを発表した。
このように、SBIホールディングスは、ネット証券(SBI証券)が生み出す潤沢な利益をバックグラントとして、銀行業界の再編を主導する立場に躍り出た。
新生銀行を買収
アルヒを買収
住信SBIネット銀行が株式上場
SBIグループ会社のSBI住信ネット銀行が株式を上場。上場後もSBIホールディングスはSBI住信ネット銀行に対して34.2%の株式を保有
新生銀行に追加出資
子会社の新生銀行について、同社の大株主である村上ファンド系の投資会社から株式の取得を実施。取得予定額は約500億円