住友商事 の歴史

創業

1945年

創業者

古田俊之助

創業地

大阪府大阪市

直近売上高(2026/3)

73,373億円

長期業績と転換点(1997/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ商社を25年禁じた住友が、1945年に自ら禁令を解いて商事会社を発足させたのか
A 終戦で軍需が消え、復員した社員の生活基盤を確保する必要に迫られたからである。鉱工業だけでは雇用を吸収しきれず、新たな事業領域の開拓が避けられなかった。住友財閥は1920年に総理事の鈴木馬左也氏が「商社設立禁止宣言」を発令し、25年にわたり商社を持たなかったが、1945年8月の終戦を受けて古田俊之助総理事がこの禁令を撤回し、同年11月に日本建設産業を商事会社として発足させた。禁じ手を破って生まれた以上、業績悪化はその判断の否定を意味するため、住友商事の経営は当初からリスク回避へ傾いた
Q なぜ1981年に植村光雄氏が掲げた「手を出さない」堅実経営が、1996年の銅地金事件で会社を救ったのか
A 禁じ手を破って生まれた以上、業績の悪化は禁令を撤回した判断そのものの否定を意味するため、堅実経営が組織的な必然になっていたからである。1981年に社長へ就いた植村光雄氏は「10年以上の長期プロジェクトには手を出さない」と明言し、三菱のブルネイLNGや三井のIJPCには参画せず利益剰余金を厚くした。1996年に非鉄金属部長の浜中泰男氏の簿外取引が発覚し、1997年3月期に銅地金関連損2,852億円を計上したが、植村時代に蓄えた自己資本がこの損失を吸収し、債務超過を免れた
Q なぜ「手を出さない」はずの住友商事が、2005年に資源投資へ踏み込み撤退まで追い込まれたのか
A 2000年代に資源価格が上昇するなか、競合商社が資源投資から最高益を上げる一方で後発の住友商事だけが出遅れる状況を経営陣が嫌い、その劣位を資源開発で覆そうとしたからである。2005年、植村光雄氏が引いた「手を出さない」境界を越え、マダガスカルのニッケル事業アンバトビーへ出資比率47.7%で参画した。だが建設費が72億ドルへ膨張し、2015年3月期に資源全般で3,103億円を減損する。2026年5月には全持分の売却による撤退を発表し、累計損失は4,000億円を超えた

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1945年〜 商社を持たない財閥が不動産会社から商社を興すまで

住友商事の業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1945年 25年続いた商社設立禁止の撤回と、不動産会社を母体とした商事部門の開設 職を失う社員を抱えるか、祖訓を守るか——住友が自ら封じた商社をどう解禁したか
  2. 1945年 日本建設産業に商号変更
  3. 1946年 営業部を開設
  4. 1947年 田路舜哉氏が社長に就任
  5. 1952年 住友商事に商号変更
  6. 1962年 商品本部制を導入
  7. 1969年 住商コンピューターサービスを設立

25年の禁令を解いた復員社員の受け皿づくり

住友財閥は1920年、総理事の鈴木馬左也氏が商社設立禁止を宣言[1]し、以後25年にわたり商社事業への参入を自ら封じた。三井が三井物産を、三菱が三菱商事を擁して総合商社機能を確立する[2]なかで、住友は商社を持たない財閥として事業を営んだ。のちに住友商事となる法人の母体も商社ではなく、1919年12月に大阪北港地帯の埋立と港湾修築を目的として設立された資本金3,500万円の大阪北港株式会社[3]である。同社は1927年に住友合資の系列下へ入り[4]、1944年11月に住友ビルディングを合併して社名を住友土地工務へ改め[5]、翌12月には長谷部竹腰建築事務所の営業を譲り受けて、不動産経営と土木建築の設計監理を営む総合不動産会社[6]となった。

  • 住友商事社史
    • [1]1920年 総理事 鈴木馬左也 商社設立禁止を宣言
    • [2]三井は三井物産・三菱は三菱商事を擁するなか住友は商社を持たない財閥
    • [4]1927年 住友合資の系列下へ編入
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [3]1919年12月 大阪北港株式会社 設立/資本金3,500万円・大阪北港地帯の埋立と港湾修築
    • [5]1944年11月 住友ビルディングを合併し住友土地工務へ改称
    • [6]1944年12月 長谷部竹腰建築事務所の営業を譲受し総合不動産会社となる

1945年8月の終戦で軍需が消滅し、復員した社員の受け皿確保が急務となったため、古田俊之助総理事が禁令の撤回を決断した[7]。同年11月、住友土地工務は社名を日本建設産業へ改め[8]、住友連系各社をはじめ各業界の大手生産会社の製品を扱う商事会社として新発足した。定款の事業目的には土木建築用資材その他各種製品の販売を加えている[9]。社長を兼務していた住友本社常務理事の北澤敬二郎氏が辞任し、後任には竹腰健造専務が就いた[10]。商事部門を主宰する人選では、住友本社の経理部と人事部が全職員から3人の候補を挙げ、住友金属工業取締役伸銅所副所長の田路舜哉氏に決まった[11]。田路氏は12月11日に常務取締役へ就任し、3週間後の1946年1月1日付で営業部を開設[12]できるよう組織と人事を整えた。

  • 住友商事社史
    • [7]古田俊之助総理事 商社設立禁令の撤回を決断
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [8]1945年11月 日本建設産業へ改称し商事会社として新発足
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商事部門の開設準備」
    • [9]定款の事業目的に土木建築用資材その他各種製品の販売を追加
    • [10]北澤敬二郎の社長辞任と竹腰健造専務の社長就任
    • [11]商事部門の主宰者を全住友職員の3候補から選定/住友金属工業取締役伸銅所副所長 田路舜哉に決定
    • [12]1945年12月11日 田路舜哉が常務取締役就任/1946年1月1日 営業部開設

本店は大阪[13]に置いた。1945年末の在籍人員は270名だったが、1948年末までに住友本社と連系各社から復員・引揚者を含む350名が転入し、合計720名[14]となった。転入者の内訳は住友本社159人、住友金属工業106人、住友電気工業32人[15]が上位を占めた。営業部が最初に手がけたのは、爆撃で埋没した住友金属工業伸銅所のアルミニウム板やジュラルミン板、枕崎台風の高潮で水没した住友電気工業の電線類[16]を掘り出し、洗浄と手直しを施して売る仕事だった。1947年1月に公職追放令が財界へ及ぶと、戦時中に常務取締役以上だった竹腰社長ら3名が該当し、3月27日の取締役会で田路氏が第2代社長[17]に選ばれた。

  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商事部門の開設準備」
    • [13]本店は大阪に設置
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商社活動の開始」
    • [14]1945年末の在籍270名/1948年末までに転入350名・合計720名
    • [15]転入者内訳 住友本社159人・住友金属工業106人・住友電気工業32人
    • [16]営業部の初仕事は被爆・水没した金属材と電線類の回収と再販
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「社長交替と事業活動の展開」
    • [17]1947年1月 公職追放令の財界拡大/同年3月27日 田路舜哉が第2代社長に就任
  • 住友商事社史
    • [1]1920年 総理事 鈴木馬左也 商社設立禁止を宣言
    • [2]三井は三井物産・三菱は三菱商事を擁するなか住友は商社を持たない財閥
    • [4]1927年 住友合資の系列下へ編入
    • [7]古田俊之助総理事 商社設立禁令の撤回を決断
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [3]1919年12月 大阪北港株式会社 設立/資本金3,500万円・大阪北港地帯の埋立と港湾修築
    • [5]1944年11月 住友ビルディングを合併し住友土地工務へ改称
    • [6]1944年12月 長谷部竹腰建築事務所の営業を譲受し総合不動産会社となる
    • [8]1945年11月 日本建設産業へ改称し商事会社として新発足
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商事部門の開設準備」
    • [9]定款の事業目的に土木建築用資材その他各種製品の販売を追加
    • [10]北澤敬二郎の社長辞任と竹腰健造専務の社長就任
    • [11]商事部門の主宰者を全住友職員の3候補から選定/住友金属工業取締役伸銅所副所長 田路舜哉に決定
    • [12]1945年12月11日 田路舜哉が常務取締役就任/1946年1月1日 営業部開設
    • [13]本店は大阪に設置
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商社活動の開始」
    • [14]1945年末の在籍270名/1948年末までに転入350名・合計720名
    • [15]転入者内訳 住友本社159人・住友金属工業106人・住友電気工業32人
    • [16]営業部の初仕事は被爆・水没した金属材と電線類の回収と再販
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「社長交替と事業活動の展開」
    • [17]1947年1月 公職追放令の財界拡大/同年3月27日 田路舜哉が第2代社長に就任

上場と改称を経て固まった金ヘン商社の形

1949年8月、日本建設産業の名のまま大阪・東京の両証券取引所[18]へ株式を上場した。1950年7月には土木建築の設計監理部門を日建設計工務として独立させ[19]、不動産会社としての出自を切り離している。1952年3月に米国へNikken New York Inc.を設立[20]して海外拠点を置き、同年6月には社名を住友商事へ改め[21]た。住友金属工業や住友金属鉱山などグループ各社の販売機能を担う役割から取扱品目は鉄鋼と非鉄金属に傾き、業界では「金ヘン商社」と呼ばれた[22]。田路舜哉氏は1932年から6年間、住友上海洋行の支配人を務めており、発足時の役員のなかで唯一の商事経験者[23]だった。

  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [18]1949年8月 大阪・東京両証券取引所へ上場
    • [19]1950年7月 土木建築の設計監理部門を日建設計工務として独立
    • [20]1952年3月 米国にNikken New York Inc.を設立
    • [21]1952年6月 社名を住友商事へ変更
  • 住友商事社史
    • [22]グループ各社の販売機能を担い鉄鋼・非鉄に傾斜/「金ヘン商社」の呼称
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「社長交替と事業活動の展開」
    • [23]田路舜哉 1932年から6年間 住友上海洋行支配人/役員中で唯一の商事経験者

1962年12月には大阪・東京の営業部門を一体として商品本部制を導入し、鉄鋼・非鉄金属・電機・機械・農水産・化成品・繊維・物資燃料・不動産の9本部[24]を設置した。資本金は1956年12月の10億円から1967年6月の105億円まで積み増され[25]、1967年度の事業構成は金属52%、機械17%、物資燃料12%、化学品9%、食品8%、不動産その他2%[26]となった。繊維部門の強化やサミットストアなど消費部門への進出にも乗り出し、同年度の取扱高は約7,900億円に達した。東京神田の住友商事ビルは3年で手狭になるほど取扱規模が膨らんだ。1970年8月には相互貿易を合併[28]している。 [27]

  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [24]1962年12月 商品本部制を導入し9本部(鉄鋼・非鉄金属・電機・機械・農水産・化成品・繊維・物資燃料・不動産)を設置
    • [28]1970年8月 相互貿易を合併
  • 読売新聞(1967年2月8日)
    • [25]資本金 1956年12月10億円→1967年6月105億円
    • [26]1967年度事業構成 金属52%・機械17%・物資燃料12%・化学品9%・食品8%・不動産その他2%
    • [27]1967年度取扱高 約7,900億円/東京神田の住友商事ビルが3年で手狭に
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [18]1949年8月 大阪・東京両証券取引所へ上場
    • [19]1950年7月 土木建築の設計監理部門を日建設計工務として独立
    • [20]1952年3月 米国にNikken New York Inc.を設立
    • [21]1952年6月 社名を住友商事へ変更
    • [24]1962年12月 商品本部制を導入し9本部(鉄鋼・非鉄金属・電機・機械・農水産・化成品・繊維・物資燃料・不動産)を設置
    • [28]1970年8月 相互貿易を合併
  • 住友商事社史
    • [22]グループ各社の販売機能を担い鉄鋼・非鉄に傾斜/「金ヘン商社」の呼称
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「社長交替と事業活動の展開」
    • [23]田路舜哉 1932年から6年間 住友上海洋行支配人/役員中で唯一の商事経験者
  • 読売新聞(1967年2月8日)
    • [25]資本金 1956年12月10億円→1967年6月105億円
    • [26]1967年度事業構成 金属52%・機械17%・物資燃料12%・化学品9%・食品8%・不動産その他2%
    • [27]1967年度取扱高 約7,900億円/東京神田の住友商事ビルが3年で手狭に

1973年〜 手を出さない20年と、一人の担当者が壊した信用

住友商事の業績推移

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1975年 マツダ向けの自動車販売を開始
  2. 1981年 10年以上の長期プロジェクトを手がけない原則の明示と、体力に見合った経営の徹底 売上競争に加わるか、体力の範囲に留まるか——後発商社が選んだ規模の抑制
  3. 1981年 経常利益率0.38%で業界1位
  4. 1988年 「総合事業会社構想」——トレーディング依存から事業投資への転換 手数料で稼ぐ「顔のない会社」は、なぜ事業に資本を入れる投資家へ変わろうとしたのか
  5. 1991年 中期事業計画「戦略95」を策定
  6. 1995年 ジュピターテレコムを設立
  7. 1996年 銅地金の不正取引(浜中事件)——損失の公表と、当局への全面協力を最優先した危機対応 名門商社で、なぜ一人のトレーダーの簿外取引を会社は10年も止められなかったのか

10年以上の長期案件を原則として避けた経営

1979年6月に営業部門制を導入し、商品本部を鉄鋼・機電・非鉄化燃・生活物資の4営業部門[29]へ束ねた。1981年の社長就任にあたり、植村光雄氏は派手な大型案件を狙う必要はなく、10年以上の長期プロジェクトには手を出さないことを原則にすると明言した[30]。三菱商事がブルネイLNGへ、三井物産がのちに巨額損失を招くイランIJPCへそれぞれ資金を投じるなかで、住友商事は海外の大型プロジェクトへの参画を見送り[31]続けた。この方針は業績に表れ、1981年3月期は売上高を27.0%伸ばして業界4位の丸紅に迫り、経常利益率0.38%で業界1位[32]に立っている。

  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [29]1979年6月 営業部門制を導入し4営業部門(鉄鋼・機電・非鉄化燃・生活物資)へ再編
  • 住友商事社史
    • [30]1981年 植村光雄社長 10年以上の長期プロジェクトには手を出さない方針を表明
  • 日経ビジネス 1981年11月16日号「住友商事の快進撃スタディ」
    • [31]三菱商事はブルネイLNG・三井物産はイランIJPCへ投資するなか大型案件を見送り
    • [32]1981年3月期 売上高27.0%増/経常利益率0.38%で業界1位

社内では、三菱のブルネイの成功を見てより積極的に動くべきだったとする役員と、三井のIJPCの失敗を見て慎重な方針を支持する役員とに意見が割れていた[33]。長期案件を避ける一方で事業領域そのものは広げており、1963年にリース事業へ参入し[34]、1969年10月には大阪府に住商コンピューターサービスを設立して情報サービス事業に乗り出した[35]。1975年にはマツダ向けの北米自動車販売を開始し[36]、1976年には住友金属工業と共同でサウジアラビア向けのシームレスパイプに投資している[37]。1988年には総合事業会社構想を掲げ、従来のトレーディングに加えて事業投資を本格的に進める方針へ転じ、1991年には中期事業計画「戦略95」[38]を策定した。

  • 日経ビジネス 1981年11月16日号「住友商事の快進撃スタディ」
    • [33]社内は積極論と慎重論に二分(三菱ブルネイLNGの成功/三井IJPCの失敗)
  • 住友商事社史
    • [34]1963年 リース事業へ参入
    • [36]1975年 マツダ向け北米自動車販売を開始
    • [38]1988年 総合事業会社構想を発表/1991年 中期事業計画「戦略95」策定
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [35]1969年10月 大阪府に住商コンピューターサービスを設立(現SCSK)
  • 産業と経済(1976年6月)
    • [37]1976年 住友金属工業と共同でサウジアラビア向けシームレスパイプへ投資
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [29]1979年6月 営業部門制を導入し4営業部門(鉄鋼・機電・非鉄化燃・生活物資)へ再編
    • [35]1969年10月 大阪府に住商コンピューターサービスを設立(現SCSK)
  • 住友商事社史
    • [30]1981年 植村光雄社長 10年以上の長期プロジェクトには手を出さない方針を表明
    • [34]1963年 リース事業へ参入
    • [36]1975年 マツダ向け北米自動車販売を開始
    • [38]1988年 総合事業会社構想を発表/1991年 中期事業計画「戦略95」策定
  • 日経ビジネス 1981年11月16日号「住友商事の快進撃スタディ」
    • [31]三菱商事はブルネイLNG・三井物産はイランIJPCへ投資するなか大型案件を見送り
    • [32]1981年3月期 売上高27.0%増/経常利益率0.38%で業界1位
    • [33]社内は積極論と慎重論に二分(三菱ブルネイLNGの成功/三井IJPCの失敗)
  • 産業と経済(1976年6月)
    • [37]1976年 住友金属工業と共同でサウジアラビア向けシームレスパイプへ投資

簿外取引2,852億円の公表と当局への全面協力

1995年1月には東京都にケーブルテレビ事業の統括運営を行うジュピターテレコムを設立[39]している。翌1996年6月、非鉄金属部長だった浜中泰男氏が1987年から約10年にわたりロンドン金属取引所で簿外取引を続け[40]、巨額の損失を発生させていた事実が公表された。浜中氏は世界の銅取引量の5%を動かすといわれ、業界では「ミスター・カッパー」と呼ばれた[41]。取引は関係取引先との個人的な関係を使ったもので、会社が承知しないまま続いていた[42]。当初1,900億円と推定された損失は調査の進展で膨らみ、1997年3月期に特別損失「銅地金取引関連損」2,852億円を一括計上して、当期純損失は1,456億円[43]となった。

  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [39]1995年1月 東京都にジュピターテレコムを設立(現JCOM)
  • 森田政夫「住友商事の巨額損失事件に係る会計監査の問題」(現代監査 No.7, 1997年4月)
    • [40]1996年6月 浜中泰男の銅簿外取引を公表/1987年から約10年間
    • [42]取引先との個人的関係を用い会社の承知しないまま継続
  • ダイヤモンド・オンライン(2008年1月30日)「トレードの大損世界記録を更新した青年の謎」
    • [41]浜中泰男は世界の銅取引量の5%を動かすとされ「ミスター・カッパー」と呼ばれた
  • 住友商事 有価証券報告書(1997年3月期)
    • [43]当初推定1,900億円/1997年3月期 銅地金取引関連損2,852億円・当期純損失1,456億円

宮原賢次社長は損失を公表したうえで、米国の弁護士事務所を起用し、外部会計監査人の協力も得て事実の究明にあたった[44]。米商品先物取引委員会と英証券投資委員会の調査には全面的に協力し[45]、国際的な信用の維持を対応の最優先に据えている。連結自己資本比率は13.2%から10.3%へ低下したが債務超過には至らず[46]、長期案件を避けて蓄えた自己資本が損失を吸収した。同社は事業を継続し、以後は法令遵守の徹底を経営の最優先に置いた[47]。事件から20年以上を経てもなお、新入社員研修で違反の重さを語り継いで[48]いる。

  • 森田政夫「住友商事の巨額損失事件に係る会計監査の問題」(現代監査 No.7, 1997年4月)
    • [44]宮原賢次社長 米弁護士事務所の起用と外部会計監査人の協力による事実究明
    • [45]米商品先物取引委員会・英証券投資委員会の調査へ全面協力
  • 住友商事 有価証券報告書(1997年3月期)
    • [46]自己資本比率 13.2%→10.3%/債務超過には至らず
  • ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2019年4月4日)「終わりなき法令遵守の決意、トップは社員と対話を」
    • [47]事業を継続し法令遵守の徹底を経営の最優先に
    • [48]事件から20年以上を経ても新人研修で違反の重さを語り継ぐ
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [39]1995年1月 東京都にジュピターテレコムを設立(現JCOM)
  • 森田政夫「住友商事の巨額損失事件に係る会計監査の問題」(現代監査 No.7, 1997年4月)
    • [40]1996年6月 浜中泰男の銅簿外取引を公表/1987年から約10年間
    • [42]取引先との個人的関係を用い会社の承知しないまま継続
    • [44]宮原賢次社長 米弁護士事務所の起用と外部会計監査人の協力による事実究明
    • [45]米商品先物取引委員会・英証券投資委員会の調査へ全面協力
  • ダイヤモンド・オンライン(2008年1月30日)「トレードの大損世界記録を更新した青年の謎」
    • [41]浜中泰男は世界の銅取引量の5%を動かすとされ「ミスター・カッパー」と呼ばれた
  • 住友商事 有価証券報告書(1997年3月期)
    • [43]当初推定1,900億円/1997年3月期 銅地金取引関連損2,852億円・当期純損失1,456億円
    • [46]自己資本比率 13.2%→10.3%/債務超過には至らず
  • ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2019年4月4日)「終わりなき法令遵守の決意、トップは社員と対話を」
    • [47]事業を継続し法令遵守の徹底を経営の最優先に
    • [48]事件から20年以上を経ても新人研修で違反の重さを語り継ぐ

1997年〜 トレーディングから事業投資へ主力を移した時代

住友商事の業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1997年 欧州住友商事会社を設立
  2. 1997年 銅地金取引関連損2852億円を特別損失に計上
  3. 2000年 住友商事北海道を設立
  4. 2001年 9事業部門28本部の体制に再編
  5. 2005年 アンバトビーニッケル事業への参画を決定
  6. 2010年 ジュピターテレコム(J:COM)の争奪とTOBによる筆頭株主の確保 15年育てたケーブルテレビ最大手を、住友商事はなぜKDDIと競り合ってでも手放さなかったのか
  7. 2011年 住商情報システムとCSKが統合しSCSKが発足

事業会社を抱える商社への組み替え

2001年4月、大阪本社と東京本社の名称を廃止し、6グループのコーポレート部門と9事業部門28本部の営業部門からなる本社へ再編した。同年6月には東京都中央区へ本店を移している。2011年には住商情報システムと経営難にあったCSKを統合してSCSKを発足させ、住友商事はSCSK株式の48%を持つ筆頭株主[50]となった。住商情報システムの前身は1969年10月に設立した住商コンピューターサービスで、1989年2月に東京証券取引所へ株式を上場していた[51]。事業会社へ資本参加し経営に関与する形が、この時期に組織の建て付けとして[52]固まった。 [49]

  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [49]2001年4月 6グループのコーポレート部門と9事業部門28本部へ本社再編/同年6月 東京都中央区へ本店移転
    • [51]住商コンピューターサービスは1969年10月設立・1989年2月に東証上場
  • 住友商事社史
    • [50]2011年 住商情報システムとCSKを統合しSCSK発足/住友商事の持株比率48%
    • [52]事業会社への資本参加と経営関与が組織の建て付けとして定着

2010年には、住友商事が米リバティ・グローバルと共同で設立し15年かけて育てた国内ケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム[53]をめぐって、KDDIとの争奪が起きた。KDDIが1月にリバティの保有分を約3,617億円で取得して筆頭株主に立つ[54]と、住友商事は2月15日、直近株価を5割以上上回る1株13万9,500円での公開買付を発表し、保有比率28%を最大40%まで高める計画[55]を示した。約1,222億円を投じた買付は4月に成立[56]し、筆頭株主の座を取り戻している。ただし過半には届かず、第2位株主となったKDDIとの協調が経営の前提となった[57]

  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施」
    • [53]J:COMは住友商事と米リバティ・グローバルが共同設立し15年かけて育てた事業
  • KDDI(2010年1月25日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
    • [54]2010年1月 KDDIがリバティ保有分を約3,617億円で取得し筆頭株主化
  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施"
    • [55]2010年2月15日 TOB発表/1株13万9,500円・保有比率28%を最大40%へ
  • 日本経済新聞(2010年4月15日)「住商、JCOMの筆頭株主に TOB成立」
    • [56]投じた額 約1,222億円/2010年4月にTOB成立・筆頭株主へ復帰
  • KDDI(2010年4月22日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加における住友商事株式会社との協力について」
    • [57]過半に届かず第2位株主KDDIとの協調が前提に
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [49]2001年4月 6グループのコーポレート部門と9事業部門28本部へ本社再編/同年6月 東京都中央区へ本店移転
    • [51]住商コンピューターサービスは1969年10月設立・1989年2月に東証上場
  • 住友商事社史
    • [50]2011年 住商情報システムとCSKを統合しSCSK発足/住友商事の持株比率48%
    • [52]事業会社への資本参加と経営関与が組織の建て付けとして定着
  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施」
    • [53]J:COMは住友商事と米リバティ・グローバルが共同設立し15年かけて育てた事業
  • KDDI(2010年1月25日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
    • [54]2010年1月 KDDIがリバティ保有分を約3,617億円で取得し筆頭株主化
  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施"
    • [55]2010年2月15日 TOB発表/1株13万9,500円・保有比率28%を最大40%へ
  • 日本経済新聞(2010年4月15日)「住商、JCOMの筆頭株主に TOB成立」
    • [56]投じた額 約1,222億円/2010年4月にTOB成立・筆頭株主へ復帰
  • KDDI(2010年4月22日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加における住友商事株式会社との協力について」
    • [57]過半に届かず第2位株主KDDIとの協調が前提に

避けてきた長期の資源案件への相次ぐ参画

2005年10月、住友商事はマダガスカルのニッケル一貫事業アンバトビーへ出資比率47.7%[58]で参画を決めた。カナダのシェリット・インターナショナル、韓国鉱物資源公社との共同事業で、住友商事の投資額は2,600億円超[59]と見込まれた。プロジェクト全体の投資規模は当初37億ドルの計画だったが、建設段階で費用が膨らみ最終的に72億ドルとおよそ2倍[60]に達している。2000年代の資源価格上昇を背景に、三菱商事と三井物産が資源で最高益を重ねるなかでの決定[61]だった。植村光雄氏が1981年に示した10年以上の長期案件を避ける原則[62]に照らせば、その線を越える判断にあたる。

  • 住友商事社史
    • [58]2005年10月 アンバトビーへ出資比率47.7%で参画決定
    • [59]共同事業者はシェリット・インターナショナルと韓国鉱物資源公社/住友商事の投資額2,600億円超
    • [62]植村光雄が1981年に示した長期案件回避の原則を越える判断
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期)
    • [60]プロジェクト総投資 当初37億ドル→最終72億ドル
  • 日本経済新聞(2014年10月9日)「巨額損失の住商、見つめ直す「浮利の禁」」
    • [61]2000年代の資源価格上昇と三菱商事・三井物産の資源最高益が決定の背景

住友には「浮利を追わず」「浮利の禁」の家訓があり、投機的な案件と距離を置く経営[63]が受け継がれてきた。資源への傾斜はその後も続き、2010年7月にはブラジルのウジミナス鉱山の権益30%を約1,700億円で取得[64]した。2012年には米テキサス州のタイトオイル事業へ約1,100億円を投じ、Devon Energyから権益30%[65]を得ている。三菱商事や三井物産が資源で最高益を上げるなかで住友商事だけが取り残される状況を、経営陣が強く嫌った[66]事情も指摘された。2014年4月には国内ブロック制を廃止し、関西支社、中部支社、九州支社[67]を設置している。

  • 日本経済新聞(2014年10月9日)「巨額損失の住商、見つめ直す「浮利の禁」」
    • [63]住友の家訓「浮利を追わず」「浮利の禁」/投機的案件と距離を置く経営
    • [66]競合が資源で最高益を上げるなか取り残される状況を経営陣が忌避
  • 日本経済新聞(2010年7月1日)「住商、ブラジル鉄鉱山の買収発表」
    • [64]2010年7月 ブラジル・ウジミナス鉱山の権益30%を約1,700億円で取得
  • 住友商事 プレスリリース(2012年8月2日)「米国テキサス州におけるタイトオイル開発プロジェクトへの参画」
    • [65]2012年 米テキサス州タイトオイル事業へ約1,100億円/Devon Energyから権益30%
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [67]2014年4月 国内ブロック制を廃止し関西・中部・九州の各支社を設置
  • 住友商事社史
    • [58]2005年10月 アンバトビーへ出資比率47.7%で参画決定
    • [59]共同事業者はシェリット・インターナショナルと韓国鉱物資源公社/住友商事の投資額2,600億円超
    • [62]植村光雄が1981年に示した長期案件回避の原則を越える判断
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期)
    • [60]プロジェクト総投資 当初37億ドル→最終72億ドル
  • 日本経済新聞(2014年10月9日)「巨額損失の住商、見つめ直す「浮利の禁」」
    • [61]2000年代の資源価格上昇と三菱商事・三井物産の資源最高益が決定の背景
    • [63]住友の家訓「浮利を追わず」「浮利の禁」/投機的案件と距離を置く経営
    • [66]競合が資源で最高益を上げるなか取り残される状況を経営陣が忌避
  • 日本経済新聞(2010年7月1日)「住商、ブラジル鉄鉱山の買収発表」
    • [64]2010年7月 ブラジル・ウジミナス鉱山の権益30%を約1,700億円で取得
  • 住友商事 プレスリリース(2012年8月2日)「米国テキサス州におけるタイトオイル開発プロジェクトへの参画」
    • [65]2012年 米テキサス州タイトオイル事業へ約1,100億円/Devon Energyから権益30%
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [67]2014年4月 国内ブロック制を廃止し関西・中部・九州の各支社を設置

2015年〜 減損3,103億円と資本効率をめぐる株主への約束

住友商事の業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2015年 リスク回避路線の転換と資源投資の膨張——2005年アンバトビー参画から2015年3月期の3,103億円減損まで 「浮利を追わず」を20年守った住友商事は、なぜ自らその慎重さを手放したのか
  2. 2015年 コーポレート部門のグループ制を廃止
  3. 2020年 バークシャー・ハサウェイが5%超の株式取得を公表
  4. 2021年 5大商社で唯一の最終赤字に転落
  5. 2024年 エリオットの株式取得と中期経営計画2026での株主還元強化 バフェット効果に出遅れた5番手をどう引き上げるか——物言う株主の接近と過去最大の還元をめぐる応答
  6. 2025年 エア・リース・コーポレーションの共同買収に参画
  7. 2025年 SCSKの完全子会社化を決定

路線を変えて10年で表面化した損失

2014年後半から本格化した資源価格の下落[68]が、積み上げた資源ポートフォリオを直撃した。2015年3月期には米国タイトオイル事業で1,992億円、ブラジル鉄鉱石事業で623億円、米国シェールガス事業で311億円、合わせて3,103億円の減損を一括計上[69]し、最終損益は731億円の赤字となって16年ぶりの最終赤字に転落した[70]。この減損額は1996年の銅地金取引で計上した2,852億円を上回り[71]、同社史上で最大の財務的打撃となっている。同年4月にはコーポレート部門のグループ制を廃止し、担当役員制を導入した[72]

  • 日本経済新聞(2014年9月29日)「住友商の純利益96%減、米豪事業で減損 15年3月期」
    • [68]2014年後半からの資源価格下落が資源ポートフォリオへ影響
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期)
    • [69]2015年3月期 減損内訳 米国タイトオイル1,992億円・ブラジル鉄鉱石623億円・米国シェールガス311億円/合計3,103億円
    • [71]減損3,103億円は1996年の銅地金関連損2,852億円を上回る
  • 日本経済新聞(2015年5月1日)「住友商事、16年ぶり最終赤字 15年3月期731億円」
    • [70]2015年3月期 最終赤字731億円/16年ぶりの最終赤字
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [72]2015年4月 コーポレート部門のグループ制を廃止し担当役員制を導入

アンバトビー事業はマダガスカルで2012年に操業を開始した後も、設備の不具合とニッケル価格の長期低迷が重なり、2015年3月期から2023年3月期にかけて累計およそ2,660億円の減損を計上した[73]。2020年にはコロナ禍で操業が一時全面停止し、パートナーのシェリットが経営不振に陥ったため、住友商事はプロジェクト会社株式の追加取得[74]を迫られている。累計の減損は当初見込んだ2,600億円超の投資額とほぼ同水準[75]に達した。2021年3月期には5大商社で唯一の最終赤字に沈み、その後もPBR1倍割れ[76]が続いた。

  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期・2024年3月期)
    • [73]アンバトビー FY2015〜FY2023 累計減損 約2,660億円
  • 住友商事 有価証券報告書(2021年3月期)
    • [74]2020年 コロナ禍で操業一時全面停止/シェリットの経営不振で株式追加取得
  • 住友商事 有価証券報告書(2024年3月期)
    • [75]累計減損が当初見込みの投資額とほぼ同水準に到達
  • 週刊東洋経済 2020年11月28日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】住友商事 5大商社で唯一の赤字見通し 成長担う『3事業』の重責」
    • [76]2021年3月期 5大商社で唯一の最終赤字/その後もPBR1倍割れが継続
  • 日本経済新聞(2014年9月29日)「住友商の純利益96%減、米豪事業で減損 15年3月期」
    • [68]2014年後半からの資源価格下落が資源ポートフォリオへ影響
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期)
    • [69]2015年3月期 減損内訳 米国タイトオイル1,992億円・ブラジル鉄鉱石623億円・米国シェールガス311億円/合計3,103億円
    • [71]減損3,103億円は1996年の銅地金関連損2,852億円を上回る
  • 日本経済新聞(2015年5月1日)「住友商事、16年ぶり最終赤字 15年3月期731億円」
    • [70]2015年3月期 最終赤字731億円/16年ぶりの最終赤字
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [72]2015年4月 コーポレート部門のグループ制を廃止し担当役員制を導入
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期・2024年3月期)
    • [73]アンバトビー FY2015〜FY2023 累計減損 約2,660億円
  • 住友商事 有価証券報告書(2021年3月期)
    • [74]2020年 コロナ禍で操業一時全面停止/シェリットの経営不振で株式追加取得
  • 住友商事 有価証券報告書(2024年3月期)
    • [75]累計減損が当初見込みの投資額とほぼ同水準に到達
  • 週刊東洋経済 2020年11月28日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】住友商事 5大商社で唯一の赤字見通し 成長担う『3事業』の重責」
    • [76]2021年3月期 5大商社で唯一の最終赤字/その後もPBR1倍割れが継続

物言う株主の接近と数値で示した株主還元

2020年8月にバークシャー・ハサウェイが5大商社株の5%超取得を公表し[77]、商社株は世界的な再評価を受けた。各社の株価が切り上がるなかで住友商事の出遅れが残り、2022年4月には東京証券取引所市場第一部からプライム市場へ移行している[78]。2024年4月、米エリオット・マネジメントが住友商事株を数百億円規模で取得し[79]、株式価値の向上策をめぐって会社と協議していることが表面化した。エリオットは株主提案や公開書簡には至らず、水面下の協議で価値の向上を求めて[80]いる。バークシャー・ハサウェイは以後も商社株を買い増した[81]

  • 週刊東洋経済 2020年12月5日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】バフェット銘柄の成長戦略 5大商社『次の一手』後編」
    • [77]2020年8月 バークシャー・ハサウェイが5大商社株の5%超取得を公表
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [78]2022年4月 東証市場第一部からプライム市場へ移行
  • 日本経済新聞(2024年4月29日)「アクティビストの米エリオット、住友商事株を数百億円取得」
    • [79]2024年4月 エリオット・マネジメントが住友商事株を数百億円規模で取得
  • Bloomberg(2024年4月29日)「エリオットの住商株取得、日本の変化浮き彫り-存在感増す物言う株主」
    • [80]株主提案・公開書簡には至らず水面下の協議
  • 日本経済新聞(2025年3月17日)「バフェット氏のバークシャーハザウェイ、三菱商事など商社株買い増し」
    • [81]バークシャー・ハサウェイが商社株を買い増し

4日後の5月2日、就任間もない上野真吾社長は中期経営計画2026を発表した[82]。ROE12%以上の維持、3年間で総額7,000億円以上という過去最大の株主還元、累進配当、500億円の自社株買いを掲げ[83]、資産入れ替え8,000億円・投融資1.8兆円以上と併せて示している。それまで曖昧と評されてきた還元方針を、数値の約束へ置き換えた。以後2年続けて800億円の自社株買いを実施し、株価は上場来高値を更新[85]している。バークシャー・ハサウェイの保有比率は2026年に10%[86]を超えた。同年4月には営業部門を戦略ビジネスユニットへ再編し、9つの営業グループを設置[87]している。2025年9月には米航空機リース大手エア・リース・コーポレーションの共同買収に3,000億円を拠出[88]し、翌10月には上場子会社SCSKの完全子会社化を8,800億円で決めた。同社として過去最大の投資となり、投融資額は中期経営計画の枠を超えている[90][84][89]

  • 日本経済新聞(2024年5月2日)「決算:物言う株主が狙う住友商事、『曖昧』な還元策の解消急ぐ」
    • [82]2024年5月2日 上野真吾社長が中期経営計画2026を発表
  • 住友商事「株主還元情報」(公式IRサイト)
    • [83]中計2026 ROE12%以上・3年で総額7,000億円以上の還元・累進配当・500億円の自社株買い
  • 週刊東洋経済 2024年7月13日号「トップに直撃 住友商事 社長 上野真吾『8000億円の資産を入れ替えて変革を急ぐ』」
    • [84]資産入れ替え8,000億円・投融資1.8兆円以上/曖昧と評された還元方針を数値目標へ
  • 日本経済新聞(2025年5月1日)「決算:住友商事の純利益最高 26年3月期1%増、800億円自社株買い」
    • [85]2年連続で800億円の自社株買いを実施/株価は上場来高値を更新
  • 日本経済新聞(2026年5月)「住友商事と丸紅、米バークシャー・ハザウェイの持ち株比率10%超す」
    • [86]2026年 バークシャー・ハサウェイの保有比率が10%超
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [87]2024年4月 営業部門を戦略ビジネスユニット(SBU)へ再編し9営業グループを設置
  • 週刊東洋経済 2025年11月22日号「【特集 商社 大異変】PART2 注力事業の成算 市場の信頼を獲得できるか 住友商事 失敗しない投資戦略」
    • [88]2025年9月 エア・リース・コーポレーション共同買収へ3,000億円を拠出
    • [89]2025年10月 上場子会社SCSKの完全子会社化を8,800億円で決定/同社として過去最大の投資
  • 住友商事 2025年度第3四半期決算説明会 質疑応答(2026年2月4日)
    • [90]投融資額が中期経営計画2026の枠1.8兆円を超過
  • 週刊東洋経済 2020年12月5日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】バフェット銘柄の成長戦略 5大商社『次の一手』後編」
    • [77]2020年8月 バークシャー・ハサウェイが5大商社株の5%超取得を公表
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
    • [78]2022年4月 東証市場第一部からプライム市場へ移行
    • [87]2024年4月 営業部門を戦略ビジネスユニット(SBU)へ再編し9営業グループを設置
  • 日本経済新聞(2024年4月29日)「アクティビストの米エリオット、住友商事株を数百億円取得」
    • [79]2024年4月 エリオット・マネジメントが住友商事株を数百億円規模で取得
  • Bloomberg(2024年4月29日)「エリオットの住商株取得、日本の変化浮き彫り-存在感増す物言う株主」
    • [80]株主提案・公開書簡には至らず水面下の協議
  • 日本経済新聞(2025年3月17日)「バフェット氏のバークシャーハザウェイ、三菱商事など商社株買い増し」
    • [81]バークシャー・ハサウェイが商社株を買い増し
  • 日本経済新聞(2024年5月2日)「決算:物言う株主が狙う住友商事、『曖昧』な還元策の解消急ぐ」
    • [82]2024年5月2日 上野真吾社長が中期経営計画2026を発表
  • 住友商事「株主還元情報」(公式IRサイト)
    • [83]中計2026 ROE12%以上・3年で総額7,000億円以上の還元・累進配当・500億円の自社株買い
  • 週刊東洋経済 2024年7月13日号「トップに直撃 住友商事 社長 上野真吾『8000億円の資産を入れ替えて変革を急ぐ』」
    • [84]資産入れ替え8,000億円・投融資1.8兆円以上/曖昧と評された還元方針を数値目標へ
  • 日本経済新聞(2025年5月1日)「決算:住友商事の純利益最高 26年3月期1%増、800億円自社株買い」
    • [85]2年連続で800億円の自社株買いを実施/株価は上場来高値を更新
  • 日本経済新聞(2026年5月)「住友商事と丸紅、米バークシャー・ハザウェイの持ち株比率10%超す」
    • [86]2026年 バークシャー・ハサウェイの保有比率が10%超
  • 週刊東洋経済 2025年11月22日号「【特集 商社 大異変】PART2 注力事業の成算 市場の信頼を獲得できるか 住友商事 失敗しない投資戦略」
    • [88]2025年9月 エア・リース・コーポレーション共同買収へ3,000億円を拠出
    • [89]2025年10月 上場子会社SCSKの完全子会社化を8,800億円で決定/同社として過去最大の投資
  • 住友商事 2025年度第3四半期決算説明会 質疑応答(2026年2月4日)
    • [90]投融資額が中期経営計画2026の枠1.8兆円を超過

住友商事の沿革1919〜2026年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
大阪北港を設立
住友財閥が商社設立禁止を宣言★★
住友合資の系列下に移行
住友ビルディングを合併
住友土地工務に商号変更
長谷部竹腰建築事務所の営業を譲受
25年続いた商社設立禁止の撤回と、不動産会社を母体とした商事部門の開設職を失う社員を抱えるか、祖訓を守るか——住友が自ら封じた商社をどう解禁したか 詳細を読む★★★
日本建設産業に商号変更
営業部を開設
田路舜哉氏が社長に就任
在籍人員が720名に増加
大阪・東京の両証券取引所に上場
設計監理部門を日建設計工務として分離
Nikken New York Inc.を設立
住友商事に商号変更★★
資本金を10億円に増資
商品本部制を導入★★
東西興業を設立
資本金を105億円に増資
住商コンピューターサービスを設立★★
相互貿易を合併
大阪本社・東京本社の二本社制に移行
マツダ向けの自動車販売を開始
住商エレクトロニクスを設立
住友金属工業と共同でシームレスパイプに投資
英文社名を SUMITOMO CORPORATION に変更
営業部門制を導入
10年以上の長期プロジェクトを手がけない原則の明示と、体力に見合った経営の徹底売上競争に加わるか、体力の範囲に留まるか——後発商社が選んだ規模の抑制 詳細を読む★★★
住商オートリースを設立
経常利益率0.38%で業界1位★★
住商リースが大阪証券取引所市場第二部に上場
「総合事業会社構想」——トレーディング依存から事業投資への転換手数料で稼ぐ「顔のない会社」は、なぜ事業に資本を入れる投資家へ変わろうとしたのか 詳細を読む★★★
秋山富一情報サービス子会社が東京証券取引所に上場
秋山富一秋山富一氏が社長に就任
秋山富一中期事業計画「戦略95」を策定★★
岡素之ジュピターテレコムを設立★★
岡素之銅地金の不正取引(浜中事件)——損失の公表と、当局への全面協力を最優先した危機対応名門商社で、なぜ一人のトレーダーの簿外取引を会社は10年も止められなかったのか 詳細を読む★★★
岡素之欧州住友商事会社を設立
岡素之銅地金取引関連損2852億円を特別損失に計上★★
岡素之住友商事北海道を設立
岡素之9事業部門28本部の体制に再編
岡素之本店を移転
岡素之住友商事東北を設立
岡素之住商オートリースを株式交換で完全子会社化
岡素之アンバトビーニッケル事業への参画を決定★★
岡素之住友商事九州を設立
加藤進ジュピターテレコム(J:COM)の争奪とTOBによる筆頭株主の確保15年育てたケーブルテレビ最大手を、住友商事はなぜKDDIと競り合ってでも手放さなかったのか 詳細を読む★★★
加藤進ウジミナス鉱山の権益30%を取得
中村邦晴住商情報システムとCSKが統合しSCSKが発足★★
中村邦晴タイトオイル開発事業に参画
中村邦晴国内ブロック制を廃止
中村邦晴リスク回避路線の転換と資源投資の膨張——2005年アンバトビー参画から2015年3月期の3,103億円減損まで「浮利を追わず」を20年守った住友商事は、なぜ自らその慎重さを手放したのか 詳細を読む★★★
中村邦晴コーポレート部門のグループ制を廃止
兵頭誠之本店を移転
兵頭誠之バークシャー・ハサウェイが5%超の株式取得を公表★★
兵頭誠之5大商社で唯一の最終赤字に転落★★
兵頭誠之エネルギーイノベーション・イニシアチブを新設
兵頭誠之プライム市場に移行
上野真吾アンバトビー事業の減損が累計2660億円に到達
上野真吾エリオットの株式取得と中期経営計画2026での株主還元強化バフェット効果に出遅れた5番手をどう引き上げるか——物言う株主の接近と過去最大の還元をめぐる応答 詳細を読む★★★
上野真吾営業部門を戦略ビジネスユニットに再編
上野真吾中期経営計画2024-2026を公表
上野真吾自己株式を取得
上野真吾エア・リース・コーポレーションの共同買収に参画★★
上野真吾SCSKの完全子会社化を決定★★
バークシャー・ハサウェイが保有比率10%超に到達
出典・参考
  • 住友商事社史
  • 住友商事 有価証券報告書【沿革】
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商事部門の開設準備」
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「商社活動の開始」
  • 私の住友昭和史(津田久 編著/東洋経済新報社、1988年)「社長交替と事業活動の展開」
  • 読売新聞(1967年2月8日)
  • 日経ビジネス 1981年11月16日号「住友商事の快進撃スタディ」
  • 産業と経済(1976年6月)
  • 森田政夫「住友商事の巨額損失事件に係る会計監査の問題」(現代監査 No.7, 1997年4月)
  • ダイヤモンド・オンライン(2008年1月30日)「トレードの大損世界記録を更新した青年の謎」
  • 住友商事 有価証券報告書(1997年3月期)
  • ニュースイッチ by 日刊工業新聞社(2019年4月4日)「終わりなき法令遵守の決意、トップは社員と対話を」
  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施」
  • KDDI(2010年1月25日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
  • 週刊東洋経済 2010年2月27日号「NEWS TOP401 放送 KDDI2度目の誤算 住友商事がTOB実施"
  • 日本経済新聞(2010年4月15日)「住商、JCOMの筆頭株主に TOB成立」
  • KDDI(2010年4月22日)「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加における住友商事株式会社との協力について」
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期)
  • 日本経済新聞(2014年10月9日)「巨額損失の住商、見つめ直す「浮利の禁」」
  • 日本経済新聞(2010年7月1日)「住商、ブラジル鉄鉱山の買収発表」
  • 住友商事 プレスリリース(2012年8月2日)「米国テキサス州におけるタイトオイル開発プロジェクトへの参画」
  • 日本経済新聞(2014年9月29日)「住友商の純利益96%減、米豪事業で減損 15年3月期」
  • 日本経済新聞(2015年5月1日)「住友商事、16年ぶり最終赤字 15年3月期731億円」
  • 住友商事 有価証券報告書(2015年3月期・2024年3月期)
  • 住友商事 有価証券報告書(2021年3月期)
  • 住友商事 有価証券報告書(2024年3月期)
  • 週刊東洋経済 2020年11月28日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】住友商事 5大商社で唯一の赤字見通し 成長担う『3事業』の重責」
  • 週刊東洋経済 2020年12月5日号「【第2特集 5大商社『次の一手』】バフェット銘柄の成長戦略 5大商社『次の一手』後編」
  • 日本経済新聞(2024年4月29日)「アクティビストの米エリオット、住友商事株を数百億円取得」
  • Bloomberg(2024年4月29日)「エリオットの住商株取得、日本の変化浮き彫り-存在感増す物言う株主」
  • 日本経済新聞(2025年3月17日)「バフェット氏のバークシャーハザウェイ、三菱商事など商社株買い増し」
  • 日本経済新聞(2024年5月2日)「決算:物言う株主が狙う住友商事、『曖昧』な還元策の解消急ぐ」
  • 住友商事「株主還元情報」(公式IRサイト)
  • 週刊東洋経済 2024年7月13日号「トップに直撃 住友商事 社長 上野真吾『8000億円の資産を入れ替えて変革を急ぐ』」
  • 日本経済新聞(2025年5月1日)「決算:住友商事の純利益最高 26年3月期1%増、800億円自社株買い」
  • 日本経済新聞(2026年5月)「住友商事と丸紅、米バークシャー・ハザウェイの持ち株比率10%超す」
  • 週刊東洋経済 2025年11月22日号「【特集 商社 大異変】PART2 注力事業の成算 市場の信頼を獲得できるか 住友商事 失敗しない投資戦略」
  • 住友商事 2025年度第3四半期決算説明会 質疑応答(2026年2月4日)

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