商号をキヤノンカメラに変更
日本企業としては珍しかった「カタカナ」による社名を採用してカメラのブランド名と一致させた。カメラの海外輸出に備えた施策であった。ただし1949年の株式上場にあたって「カタカナの社名」が問題視されるなど、それなりの苦労を伴った変更であった。
東京証券取引所に株式上場
株式市場の再開に伴い、東京証券取引所に株式を上場した。上場後の1953年9月時点で、筆頭株主は東亜火災海上保険(10.0%)であり、御手洗毅氏は3.81%を保有。すなわち、上場時点でキヤノンは御手洗家の所有物でなくなっていた。1953年9月末時点の保有数順の大株主は下記の通り。
カメラ不況により減収決算へ
1956年頃に日本経済が一時的な不況に陥ったことでカメラの売上高が低迷。キヤノンは減収決算へ
中級機カメラに進出(キヤノンフレックス発売)
低迷を打破するために、キヤノンは中級カメラに新規参入を決定した。1958年以降のキヤノンは海外輸出とともに、国内向けの中級機の需要を取り込む経営方針のもとで開発を実施。1961年に発売した中級機「キヤノンフレックス」が爆発的なヒットを遂げ、キヤノンは「海外向け高級機メーカー」から「国内向け中級機メーカー」に転身した。
一方で、日本に数十社存在していた中級機のカメラメーカーはキヤノンなどの大企業の進出によってシェアを喪失し、その大半が消滅している。この点で、高級機にいち早く進出し、量産体制を整えて、中級機でも量産効果を発揮したキヤノンに軍配があがった。
経済不況により減益決算
中級機ブームの一巡と経済不況(昭和40年不況)の到来が重なり、キヤノンの売上成長も低迷。カメラに次ぐ新商品・新規事業の開拓が急務となった。
「右手にカメラ、左手に事務機」の方針策定
景気に左右されるカメラ需要
undefined
精密加工を軸に新規事業を展開
undefined
カメラと事務機に注力する方針を策定
undefined
新事業の1つであった電卓の競争激化。赤字転落へ
undefined
無配転落。電卓事業の撤退
賀来龍三郎氏が代表取締役社長に就任
前田社長が急逝。経営再建が急務
賀来龍三郎氏が代表取締役社長に就任
前田社長の急逝に伴って賀来龍三郎(当時51歳)がキヤノンの代表取締役社長に就任。専務と副社長を飛ばした社長就任劇として注目された。賀来社長はキヤノンの前任経営陣を「キヤノンの経営陣があまりもだらしなかった」(1985/2/4日経ビジネス)と公言し、組織および事業面の経営改革を推進した。
事業部制の導入。組織に危機感を醸成
組織面では、事業部制の導入により多角化に即した組織に変更。
多角化を整理。カメラと事務機に集中投資
事業面では、研究開発投資を重視して事務機の開発を急ぐとともに、グローバル展開でHP社と提携するなど、外部パートナーとの協業による業容拡大を目論んだ。
連結売上高1兆円を突破
HP社と業務協力提携を締結。LBPのOEM供与へ
レーザープリンタの開発で世界先発
HP社へのLBPのOEM供与を決定。長期取引へ
HP向け販売高6000億円を突破(FY2002)
BJP「BJ-10v」の発売(BtoC向け)
複写機→LBP→BJPの順に展開して事務機の需要を取り込み。PCの普及を見据えてBtoC向けのプリンタとしてグローバル展開
御手洗冨士夫氏が代表取締役社長に就任
実質的な創業家である御手洗冨士夫氏がキヤノンの代表取締役社長に就任。以後、2023年現在に至るまで、社長もしくは会長を歴任し、キヤノンの実質的な経営トップとして振る舞った。この間、御手洗氏の会長在任期間には、キヤノンの社長は何度か交代しており、実質的な社長人事を握っていたと思われる。ただし、御手洗冨士夫氏のキヤノンの株式保有比率は約0.01%(2022年末時点)であり、議決権における影響は軽微である。
セル生産方式を導入
原価改善により過去最高収益へ
リーマンショックで減収減益。本業が頭打ちに
リーマンショックで業績が悪化するとともに、2010年代を通じてキヤノンの売上高は低迷。カメラはスマートフォンの普及、事務機はソフトウェアの発展により需要が低迷し、キヤノンは事業ポートフォリオの転換を経営課題に据えた。ただし、社内では新規事業が育っておらず、御手洗冨士夫会長は巨額買収による事業転換を目論んだ。
オセ社を買収発表
オランダの産業印刷機械メーカーであるオセ社(従業員数2.2万名)の買収を決定。売上高の40%が米国向けのグローバル企業。2008年に競合のリコーが米アイコンオフィスソリューションズ社(買収前はキヤノン製品を販売)を買収したため、キヤノンは米国における事務機の売上減少に対応するため、米国での販路を持つオセ社の買収を決定した。
Axis Communicationsを買収発表
監視カメラで世界シェアトップのAxis社(スウェーデン本社・従業員数1900名)を買収し、産業向けカメラに本格参入。スマートフォンの普及によりキヤノンの祖業であるカメラ事業の売上が低迷しており、産業領域のカメラに注力するために買収を決定した。
東芝メディカルを買収
経営危機の東芝から医療機器子会社を買収。富士フイルムとの入札競争で価格が吊り上がる
海外機関投資家が御手洗社長の解任を支持
キヤノンは、取締役5名の全員が男性という選任案を出したことに対して、女性の取締役登用を怠ったとみなされて海外の機関投資家(投資助言会社を含む)が「取締役の多様性の欠如」として問題視。2023年3月の株主総会において、御手洗冨士夫社長の取締役専任に対する賛成比は50.59%となり、解任ギリギリの低水準となった。