2013年12月にグッドパッチは事業会社の「デジタルガレージ」から1億円の資金調達を実施。第三者割当増資であり、グッドパッチにとっては初の大型資金調達となった。
当時グッドパッチは、年間売上高1億円・年間利益1000〜2000万円で黒字経営であったが、従業員ボーナスに対する税金の計算ミスでキャッシュフローが悪化。金融機関からの借入を模索するが2000万円が上限だったため、資本調達に切り替えた。この調達を機に、グッドパッチは株式上場を目指して経営されるようになった。
その後、グッドパッチは業容拡大のために資金調達を継続。2015年に3.9億円、2017年に4.0億円をそれぞれ第三者割当増資によって調達。営業活動なしで案件を受注できたことや、デザインに対するニーズの高まりが予想されたことで、資金調達は比較的順調に進んだと推定される。
資金調達を受けて、2014年からデザイナーを中心とした中途採用を積極化。2015年8月までに社員数59名を抱えるなど、急拡大した。
グッドパッチが人員採用を積極化した理由は、デザインパートナーの事業モデルが、グッドパッチの社員をいかにアサインできるかという「受託請負」の形態を取っていたためであった。市場全体でスマホアプリが普及するという重要の引き合いが強い中で、グッドパッチは人員を採用できれば、その分アサインできる(=請負案件)プロジェクトの数が増えるため、稼働人員数と売上が相関していたと思われる。
このため、資金調達によって株式上場を目指す過程で、売り上げを増大させるためには、人員採用を積極化して組織拡大を目指すことが必須となっていた。
海外進出のためにドイツ・ベルリンに拠点を新設
2020年6月にグッドパッチは東証マザーズへの株式上場を果たした。ただし同年4月からコロナウイルスの蔓延により、経済不況の到来が予想されたことで、IPOにおける売出価格は厳しい結果となった。
主幹事の証券会社に提示されたグッドパッチの評価額は約40億円であり、資金調達額は2.5億円(オファリングサイズ5億円)に限られた。直近のグッドパッチの資金調達(2017年4月)における評価額は約38億円であり、時価総額は据え置かれた。
ところが、株式上場後のグッドパッチの時価総額は200億円で推移。結果として、グッドパッチの株価は株式上場時点で過小評価された疑いがある。これは、本来の時価総額の10%である20億円と、実際の調達額4億円の差分である16億円の機会損失を被ったことを意味する。
このため、東証マザーズへの上場における証券会社の評価姿勢が問題視されることになり、2021年に公正取引委員会が調査に乗り出した。ただし、すでに株式上場を果たしてしまったグッドパッチとしては、市場の歪み(主幹事の要請)の被害者になってしまった側面もある。
2021年にグッドパッチは第三者割当増資による24億円の資金調達を発表した。グッドパッチの上場前の評価額は40億円であったが、その後の時価総額は200億円台で推移しており、企業価値が高い状態で大規模な資金調達を試みた。
ただし、株式上場直後の第三者割当による増資によって、9.9%の株式が希薄化することから既存株主の価値が低下することを恐れた投資家にとって、ネガティブな反応を示した。このため、第三者割当増資の発表とともにグッドパッチの株価は暴落し、TwitterではグッドパッチのMSワラントによる第三者割当増資に関する話題が「炎上」した。
2021年12月にグッドパッチは、デザイン領域に強いwebページの企画制作会社「株式会社スタジオディテイルズ」を7億円で買収。同社の売上高3.02億円・当期純損失0.13億円であり、赤字企業の買収となった。グッドパッチは買収に伴い、のれん5.7億円を計上した。
買収の狙いはデザイン領域の強化で、Web制作を中心とした事業強化が目的であった。
出資比率は丸井60%・グッドパッチ40%。発足時の人員は、丸井から3名、グッドパッチから2名の5名体制。グッドパッチにより丸井の事業展開におけるUXを支援する体制を構築
執行役員全4名のうち2名が退任へ
2023年4月にグッドパッチはサイバーエージェントと業務資本提携の締結を決定。同年5月に第三者割当増資により、サイバーエージェントから約5億円を資金調達した。グッドパッチとしては、サイバーエージェントに対する組織面およびプロダクトのUX/UI支援に乗り出すことを意図した。
増資の結果として、2023年8月末時点におけるグッドパッチの筆頭株主は土屋氏(32.79%)であり続けたが、第2位の株主としてサイバーエージェントが7.84%の株式を保有した。