2012年度の新規契約件数6.0万件をピークに、2016年度までの新規契約件数は伸び悩んだ。特に、FY2013〜FY2015の3期連続で新規契約者が減少した。
2013年度以降は財務規律を維持するために広告宣伝費を絞ったことも要因だが、問題は広告効率(新規1件獲得にかかる広告宣伝費のコスト)が改善しないことであった。ライフネット生命の認知度を高めるための投資であったが、認知度が十分に定着しなかっとものと推察される。
最大の要因は、ネット生命保険における競争の激化であった。許認可ビジネスであったが金融商品のために差別化が難しく、ライフネット生命の独占は形成されなかったため、新規獲得件数が伸び悩んだ。
2015年にライフネット生命は、KDDIと業務資本提携を締結し、資金を調達するとともに、auユーザーに対する保険の販売を開始した。また、2014年10月〜12月にかけて、スルガ銀行、豊通保険パートナーズ、ほけんの窓口といったリアルチャネルを持つ企業とも、ライフネットの商品に関する販売契約を締結した。
販売チャネルの拡大によって、ネット経由での生命保険の販売の難しさが浮き彫りとなり、競合によるネット生保への参入も相次いだことから、ライフネットの将来性を悲観するメディア記事も多くなった。
2017年にライフネット生命の共同創業者である出口治明氏は、同社の取締役を退任して経営を退いた。その後、2018年から出口氏は、大分に拠点を置く立命館大学APUの学長に就任し、実業界から教育界に転身した。
岩瀬大輔氏が社長を退任し、後任に森亮介氏(当時34歳)が代表取締役社長に就任した。森亮介氏はゴールドマンサックスを経て、2012年にライフネット生命に入社(当時28歳)して新商品の開発などに携わった。なお、2018年6月の株主総会において、森亮介氏を代表取締役社長に選出する議案は、95.09%の賛成で株主によって可決された。
交代の経緯は不明だが、思うように契約数が伸びず、大株主の意向によって、社長交代に結びついたものと推察される。議決権行使結果を見ても、95%の賛成比率であったことから大株主の同意を取った上での交代であったと思われる。
森亮介氏は、業務提携の強化による販路の拡大や、スマホ対応における集客改善、就業不能保険などの新商品の開発といった打ち手を繰り出し、ライフネットの新規加入者獲得を目論んだ。