村田製作所の直近の動向と展望
村田製作所の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
Resonant社のれん全額438億円減損 ── 2022年買収の前提崩壊
2022年3月に350億円(為替まき直しで438億円)で買収した米Resonant社について、村田は2026年2月の第3四半期決算で、のれん全額438億円の減損を計上した。XBAR技術を獲得してWi-Fi7やFR3(5.5G/6G向け新周波数)といった3GHz以上の高周波帯に対応するという買収当初の狙いは、2つの要因で前提が崩れた。中島規巨は「買収当時の狙いはXBARで3GHz以上の周波数帯に対応することだったが、BAWフィルタの技術向上で競合との境界が曖昧になってきた。新周波数の本格量産は2030年以降にずれ込む見込み」(決算説明会 FY2026-3Q)と背景を説明している。技術の差別化幅と市場の立ち上がり時期の両方が、当初の前提からずれていった形である。高周波領域での競合の設計力も読み切れていなかった。
第1の要因は中華圏競合の台頭で、従来周波数の表面波フィルタの収益性が悪化したことである。第2は5G次世代規格の展開遅延である。XBAR技術そのものは残し、ハイエンドスマートフォン向け高周波モジュールのシェア獲得を最優先に置く方針だが、2022年買収から約3年での全額のれん減損は、村田のM&A史において大きな挫折として記録される規模となった。2025年3月期には第4四半期にMEMS減損104億円、通期で電池事業の構造改革費用145億円も計上しており、2010年代の「第2の柱」投資の再評価が同時多発的に進んでいる。買収による成長加速という方針そのものの見直しが、目の前の課題として置かれた格好である。
- 決算説明会 FY2025
- 決算説明会 FY2026-1Q
- 決算説明会 FY2026-2Q
- 決算説明会 FY2026-3Q
AI・データセンター需要と米政府フレームワーク協定への対応
一方でMLCC・インダクタを中心とするコンポーネント事業はAIサーバー需要を取り込み、2025年度上期の売上収益は過去最高の9,028億円に達した。2025年度通期業績予想は、10月時点で売上1兆8,000億円・営業利益2,800億円へ上方修正された後、Resonant減損の計上を受けて2月に営業利益を2,700億円へ▲100億円下方修正している。自己株式取得は2024年度800億円、2025年度は1回の取得としては過去最大の1,000億円に拡大し、買収への機動的な活用も視野に入れた方針へと転換した。本業の超過利益を資本還元と成長投資に配分する設計が、減損局面のなかでも崩されていない姿が見える。減損と買収枠拡大を同時に打ち出した姿勢に、資本配分の方針転換が読み取れる。
2025年10月28日、トランプ大統領来日時に村田は米国政府とフレームワークアグリーメントを締結した。内容は「アメリカのための投資」という位置づけで、米国データセンター向け重要部品の供給とサプライチェーン強靭化を約束するもので、最大150億ドル規模のビジネス機会が示されている。中島は「このデータセンター投資が我々にとって非常に重要なマーケットであり、ここに関われることは非常に光栄」(決算説明会 FY2026-2Q)と述べた。中期経営計画MTD2027では、2027年度売上2兆円・営業利益率18%・ROIC12%を堅持しつつ、高周波モジュールのシェア奪還、電池事業の黒字化(2025年度Q1で20億円黒字を達成)、データセンター向け電源モジュール事業化の3点を経営の最重要コミットメントに据えている。
- 決算説明会 FY2025
- 決算説明会 FY2026-1Q
- 決算説明会 FY2026-2Q
- 決算説明会 FY2026-3Q