2024/3 売上高20,042億円YoY+0.5%
2024/3 営業利益1,010億円
2024/3 従業員-
創業19591971年上場)
創業地京都府京都市
創業者稲盛和夫

1959年に稲盛和夫が京都市に京都セラミックを設立し、松風工業時代に培ったセラミック技術を基盤に電子部品メーカーとして出発した。創業3年目から米国市場を開拓し、1966年にIBMからIC用基板を受注して半導体パッケージ市場に参入。需要が不透明な段階で鹿児島に量産工場を先行建設し、世界シェア約70%を確保した。買収による多角化で事務機器・通信機器に事業を拡大したが、セラミックの素材転換で苦戦し、祖業の黒字で多角化事業を支える構造が形成された。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上収益営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
歴代社長
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
川村誠
取締役社長
久芳徹夫
取締役社長
山口悟郎
取締役社長
谷本秀夫
取締役社長
歴代社長
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
川村誠
取締役社長
久芳徹夫
取締役社長
山口悟郎
取締役社長
谷本秀夫
取締役社長

歴史概略

第1期: セラミック技術者の起業と半導体パッケージへの参入(1959〜1971)

京都の財界人に支えられた創業

1959年4月、松風工業でアルミナ磁器やフォルステライト磁器の開発に従事していた稲盛和夫は27歳で独立し、京都セラミック(現京セラ)を設立した。設立時の資本金は300万円であり、宮木電機の創業家が稲盛の「情熱」を評価してシード出資を行った。筆頭株主は宮木男也(4300株)であり、稲盛和夫(3500株)は4位にとどまった。稲盛が株式上場までに株式を買い戻して筆頭株主に転じた経緯は、技術者から経営者への転身過程で資本の主導権を回復していく過程でもあった。

創業期の主力製品はブラウン管テレビ向け絶縁部品「U字ケルシマ」であり、松下電器への月産20万本の量産を実現した。1963年には売上高8400万円・営業利益1190万円を計上し、従業員は129名に達した。創業翌年から黒字を確保する高収益体質は、以後の京セラを特徴づけるものとなった。

京セラ・超成長の秘密 1982/5証券アナリストジャーナル 1995/11

IBM受注と積層パッケージによる世界シェア70%

国内の大手電機メーカーから十分な信用を得られなかった京セラは、創業3年目から米国市場の開拓に着手した。稲盛は「日本の電子機器メーカーが米国企業から技術導入している以上、その大本で採用されれば日本でも販売しやすい」と考え、従業員100名以下の段階から渡米を重ねた。1966年にIBMからIC用アルミナ基板の受注に至り、半導体パッケージ市場への本格参入を果たした。

1969年には鹿児島県川内に新工場を建設し、セラミック積層パッケージの量産体制を構築した。稲盛自身が「ギャンブルに近い」と認識する需要不透明な段階での先行投資であった。1971年には国分にも工場を新設し、高度な焼成技術を量産工程に落とし込むことで他社の追随を困難にした。売上高は65億円(FY1971)から503億円(FY1978)へ急拡大し、1983年にはICパッケージで世界シェア約70%を確保した。

証券アナリストジャーナル 1995/11京セラ・超成長の秘密 1982/5

第2期: 多角化と素材転換の壁(1971〜2008)

買収による多角化と利益率の低下

1971年の株式上場後、京セラは買収を通じた多角化を本格化させた。1982年以降、光学精密機器(カメラ)や電子機器(通信・事務機)への進出を進め、1984年には第二電電企画(現KDDI)の設立時に出資して通信事業にも参画した。1990年には米AVX社を連結子会社化し、電子部品事業の海外基盤を強化した。

しかし多角化は利益率の低下を伴った。1994年時点でセラミック関連製品が400〜600億円の事業利益を確保する一方、光学精密機器は赤字、電子機器は100億円未満の利益にとどまった。祖業のセラミック関連製品の黒字が多角化事業の不振を支える構造が形成された。稲盛は中長期経営計画を策定せず「今日一日最善を尽くす」方針で経営したが、1985年に会長に退いた後は経営計画に基づく運営に移行した。

証券アナリストジャーナル 1995/11有価証券報告書

セラミックから樹脂への素材転換の苦戦

1990年代を通じて半導体パッケージの主流素材がセラミックから樹脂製へと転換した。競合のイビデンはいち早く樹脂製パッケージを開発し、1996年にインテルとの取引を開始した。セラミック中心の京セラは樹脂への転換で後れをとり、CPU向けパッケージのシェアをイビデンなどに奪われた。世界シェア70%を誇った祖業の競争優位が、素材のパラダイム転換によって侵食された。

2008年4月には経営危機の三洋電機から携帯電話事業を約500億円で取得し、アメーバ経営によるコスト改善で黒字化を図った。しかしスマートフォンの急速な普及で従来型携帯電話の市場が消滅し、コスト管理の精緻化では対応できない技術パラダイムの転換に直面した。アメーバ経営は既存市場の採算改善には有効であったが、市場構造の根本的変化に対しては無力であることが露呈した。

有価証券報告書

第3期: 事業再構築とグローバル展開(2008〜現在)

電子部品とドキュメントソリューションの二本柱

2010年代以降の京セラは、電子部品事業とドキュメントソリューション事業を軸に事業を再構築した。中国での現地生産は1995年に開始し、2004年には綾部工場で電子部品の増産体制を整備した。2011年にはベトナムでの現地生産も開始し、アジアを中心としたグローバル生産体制を拡充した。

2020年にはドイツのOPTIMAL SYSTEMS社を144億円で買収し、欧州におけるドキュメントソリューション事業を強化した。2021年には米Soraa Laser Diode社を買収して光デバイス分野にも進出するなど、事業ポートフォリオの拡充を継続している。ただしFY2024は電子部品の販売不調で減収減益となり、半導体市況と世界経済の動向に業績が左右される構造は変わっていない。

有価証券報告書

稲盛和夫の経営哲学とその影響

京セラは稲盛和夫の経営哲学、とりわけアメーバ経営で広く知られる。各部門を独立採算の小集団に分割し、部門間で社内取引を行うことで全社員にコスト意識を浸透させる手法である。三洋電機の携帯電話事業など外部からの事業取得においてもアメーバ経営の導入が再建の柱として位置づけられた。

一方、稲盛が1997年に会長を退任した後の京セラは、創業者個人の判断力に代わる組織的な経営体制の構築が課題となった。2019年には空圧・電動工具でグローバル展開を進めるなど事業領域の拡大を続けているが、セラミックパッケージで世界を制した時代の集中度と収益性は、多角化の進展とともに薄まっている。創業者が「戦略なき経営」で築いた企業を、経営計画と組織力でいかに発展させるかが、京セラの現在の課題である。

証券アナリストジャーナル 1995/11

沿革

沿革一覧
4
京都セラミック株式会社を設立
京都の財界人がシード出資した「創業者が筆頭株主でない」起業の資本構造
4
IC向け基板をIBMに納入
国内で信用を得られない中小企業が米国IBM向け受注で半導体市場に参入した構造
4
積層パッケージの量産投資・世界シェア70%を確保
需要が不透明な積層パッケージに先行投資し世界シェア70%を握った構造
4acquisition
三洋電機の携帯電話事業を取得(通信機器)
アメーバ経営で再建を図った携帯電話事業がスマホ普及で市場ごと消滅した誤算
4

重要な意思決定

19594
京都セラミック株式会社を設立

京セラは稲盛和夫が創業した企業であるが、設立時の資本構成では宮木電機の関係者が上位株主を占め、稲盛は4位であった。技術者としての情熱を評価されて京都財界からシード資金を調達したこの構造は、創業者が必ずしも資本面で支配権を持たない起業の一形態である。稲盛が株式上場までに株式を買い戻して筆頭株主に転じた経緯は、技術者から経営者への転身過程で資本面の主導権を回復していく過程でもあった。

1966
IC向け基板をIBMに納入

京セラがIBMからIC用基板を受注した背景には、国内大手から取引先として認知されない中小企業が、技術の源流である米国市場で直接受注を獲得するという迂回戦略があった。従業員100名以下の段階で渡米し、量産工場を先行建設してIBMの選定を勝ち取ったこの経緯は、国内市場での信用不足を海外の大口取引で補完し、その実績を逆輸入する形で国内の信用を構築するという、創業期の中小企業に特有の市場参入パターンを示している。

196910
積層パッケージの量産投資・世界シェア70%を確保

京セラが積層パッケージで世界シェア70%を確保した要因は、需要が未知数の段階で量産工場を建設した先行投資にある。稲盛が「ギャンブルに近い」と認識しながらも投資を断行した背景には、セラミック焼成技術の参入障壁が高く、先行者が量産体制を確立すれば後発の追随が困難になるという技術特性があった。結果的に半導体市場の急拡大と時期が一致したことで、先行投資のリスクは高収益で回収されたが、この構造は市場予測ではなく技術的確信に基づく投資判断であったと考えられる。

20084
三洋電機の携帯電話事業を取得(通信機器)

京セラが三洋電機から取得した携帯電話事業は、アメーバ経営によるコスト改善で黒字化を目指す典型的な再建スキームであった。しかしスマートフォンの普及によって従来型携帯電話の市場自体が消滅し、コスト管理の精緻化では対応できない技術パラダイムの転換に直面した。アメーバ経営は既存市場の採算改善には有効であるが、市場構造の根本的な変化に対しては無力であることを示す事例であり、経営手法の適用範囲と市場変動リスクの関係を問う論点を含んでいる。

全社の業績指標

売上高(長期)売上高(2025/3)20,042億円
純利益(長期)当期利益(2025/3)1,010億円
売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上収益営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結USGAAP・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結
売上高億円---11,80711,81512,83912,90411,28610,73812,66911,90912,80114,47415,26514,79614,22815,77016,23715,99115,26918,38920,25320,04220,145
売上原価億円---8,5518,3839,0058,8388,3667,8808,8898,7019,52410,68511,37110,93510,49512,00911,59711,57911,200----
売上総利益億円---3,2563,4323,8344,0672,9192,8583,7813,2073,2773,7893,8943,8623,7333,7614,6404,4124,069----
販売費及び一般管理費億円---2,2462,4002,4832,5432,4852,2202,2212,2312,5082,5832,9602,9352,6872,8063,6923,4103,363----
営業利益億円---1,0101,0321,3511,5244346391,5599777691,2069349271,0459569481,002706----
営業外収益億円-----------------448482457----
営業外費用億円-----------------854----
当期純利益億円---4596971,0651,0722954011,3018486749501,2531,1421,0948501,1491,1189021,4841,2801,011241
粗利率%---27.629.029.931.525.926.629.826.925.626.225.526.126.223.928.627.626.7----
営業利益率%---8.68.710.511.83.85.912.38.26.08.36.16.37.36.15.86.34.6----
純利益率%---3.95.98.38.32.63.710.37.15.36.68.27.77.75.47.17.05.98.16.35.01.2
総資産額億円---17,45519,31521,30519,76717,73818,48719,46619,94122,82926,36730,21230,95031,10531,57129,68532,50234,935----
自己資本億円---11,74712,89115,14614,51213,23713,45214,20314,69516,46219,10122,15322,84323,34223,36223,62324,54225,914----
自己資本比率%---67.366.771.173.474.672.873.073.772.172.473.373.875.074.079.675.574.2----
営業CF億円1,4091,6086261,4551,7111,4961,9699781,3761,1971,0911,0951,4911,3081,9401,6421,5892,2002,1462,2082,0201,7922,6912,379
投資CF億円-511-585296-1,325-1,655-1,505161-2,014-493-1,214-561-661-1,011-936-1,068-1,121-531-471-1,456-1,838-795-1,688-1,584-1,505
財務CF億円-184-747-204-673-233-218-292-629-380-268-508-314-328-400-506-480-516-891-1,571-810-1,115-613-826-649

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
業績データ一覧
セグメント業績
FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
全社(セグメントなし)億円11,80711,81512,83912,90411,28610,73812,66911,90912,80114,47415,26514,79614,22815,77016,23715,991----
コアコンポーネント億円----------------5,2725,9175,6835,663
電子部品億円----------------3,3843,7773,5133,536
ソリューション億円----------------9,62610,43710,72910,826
その他の事業億円----------------108123118119
セグメント別利益
全社(セグメントなし)億円1,0101,0321,3511,5244346391,5599777691,2069349271,0459569481,002----
コアコンポーネント億円----------------616895572-11
電子部品億円----------------47944165-8
ソリューション億円----------------687422698729
その他の事業億円--------------------
セグメント別利益率
全社(セグメントなし)%8.68.710.511.83.85.912.38.26.08.36.16.37.36.15.86.3----
コアコンポーネント%----------------11.715.110.1-0.2
電子部品%----------------14.211.71.9-0.2
ソリューション%----------------7.14.06.56.7
その他の事業%--------------------

出所