1945年の終戦によりアンリツは軍需を喪失。終戦直後はラジオ製造などの民需転換を志向するが社員全員(1948年時点で約2300名)を雇用することが難しく、1948年に600名の希望退職者を募集した。加えて翌年には追加で400名の指名解雇を実施し、労働組合との深刻な対立に直面した。アンリツの財務状況も厳しく、業界内では「安立は倒産する」(1995/12実業往来)という噂が流れたという。
特に問題だったのが、過激な労働組合による妨害活動であり、正常な企業運営を妨げていた。
アンリツの経営陣は労働問題を解決するために、1949年4月に全従業員の解雇及び工場の閉鎖を決定。この翌日に技術者を中心に200名を再雇用した。これにより実質的に残り1000名を解雇し、最盛期に2300名いた人員は約1/10に縮小された。
また、1950年に企業再建整備計画に基づく第二会社として「安立電気」を設立した。再雇用では技術者を中心に据えることで研究開発を重視しつつ、過激な思想を持つ社員を排除することで正常な企業運営に立ち戻った。
1960年時点のアンリツの売上高は50%が電電公社向けの製品であり、政府の電話インフラの整備計画に依存していた。そこで、アンリツは1960年に5ヵ年の経営計画を策定し、民需製品の拡大を目標に据えた。具体的にはテレビやラジオの製造工程で使用する各種計測機への参入を目指した
テレビ・ラジオなどの組立では、熟練技術者が勘に頼って製作するのが多かったが、これらは測定器を数多く使用することで熟練技術者は不要になっていく。だから計数器も万能型より単能型を数多く各種の測定器を用途に応じたものを多量に作っていく方針だ
光ファイバーの製造で必要な測定器を開発。以後、光を軸とした通信計測機器の開発を継続。1980年代には「光のアンリツ」という業界内の評判を確立した
米軍向け施設の新設につき、東京の一等地である広尾の本社工場を閉鎖。本社機能と製造機能を厚木に移転した。なお、現在に至るまで、アンリツは継続的な賃貸収入を確保しており(FY2021時点で年間20億円)、当該地を賃貸している可能性もある。
米国の通信大手ATTにマイクロ波の計測器の納入に成功し、海外展開を本格化。20億円規模の受注(FY1979に売上3億円、FY1980に売上7億円、FY1981に売上10億円の見込み)
高度経済成長の波に乗り、電電公社(NTT)向けのボックス用公衆電話機(黄色電話)において日本国内で「独占メーカー」(1981年2月号「Space」)と形容された。ただし、FY1979におけるアンリツの公衆電話機の売上高は全社売上高の20%(約60億円)であり、公衆電話依存の体質からは脱却していた
業績悪化を受けて、アンリツは「特別転進支援制度」の実施を公表。583名の従業員が同制度を活用してリストラされた。加えて、117名がグループ会社に転籍となった。ただし、アンリツは特別損失56億円を計上して特別退職金を捻出しており、金銭的な補償に配慮している。
アンリツは経営再建を兼ねた中期経営計画を発表。携帯電話の通信インフラが普及すると判断して「W-CDMA計測市場でNo.1の地位をグローバルに展開」という方針を掲げた。数値目標としては、FY2005に「売上高1000億円以上・営業利益100億円以上・売上高営業利益率10%以上」の達成を掲げた
旧本社の資産売却を受けて、事前に本社を厚木事業所に移転
財務体質の悪化を受けて資産売却を決定。日比谷線広尾駅前のアンリツ本社ビル(東京都港区南麻布5-72-1)の資産売却を実施。譲渡価格は51.4億円。売却先は株式会社モリモト(分譲マンションの企画販売)
財務体質の改善を急ぐため、転換社債の発行を決定。主幹事は大和証券で、欧州における海外募集。資金用途は、設備投資に約70億円(主にW-CDMA関連)、有利子負債の返済に約50億円、運転資金に約30億円の予定
業績不振の原因となった光デバイスの事業責任を明確化するために、アンリツデバイスを100%子会社として設立。母体となった光デバイス事業は、FY2003の売上高9.59億円に対して、営業赤字▲24.62億円という厳しい決算であった。
デンマークに拠点を置くNetTest社を買収し、モニタリング事業に参入。顧客に対して計測サービスを提供する企業で、ワイヤレスネットワークモニタリングで世界シェアno.2。インドにおけるソフトウェア開発に特色。顧客として欧米・東欧・ロシアの通信事業者を抱える。ただしネットバブル崩壊により損失体質であり、買収と同時にリストラを実施
計測事業統轄本部・本部長であった戸田博道氏が社長に就任。米ウィルトロンの買収直後に同社に出向した経験あり。通信計測を伸ばす方向性を継続。前社長の塩見氏は代表取締役会長に就任
アンリツネットワーク、アンリツエンジニアリング、アンリツプロアソシエの3社を吸収