GameWithの創業者である今泉氏は、GamwWith創業前にも起業家としてビジネスを営んでいた。だが、最初の起業は軌道に乗らなかったため、2013年3月までに会社を清算した。
2度目の挑戦として、2013年6月に今泉氏(当時24歳)は、インキュベイトファンドからの出資を受けて株式会社GameWithを設立した。2013年当時、普及しつつあったスマートフォン向けのゲームに着目し、攻略サイトの運営ビジネスを開始した。
僕が起業した2013年は、ゲーム業界が一変した年でもありました。インストール不要で手軽に遊べる「ブラウザゲーム」から、スマートフォンでアプリをダウンロードして遊ぶ「ネイティブゲーム」へと、市場が大きく転換したのです。
前回お話しした「失敗」の後、僕とインキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介さんの2人で、次に向けた会議を始めました。週に1回会っては、起業のアイデアをばーっと出し合う。その中には、ゲーム関連の事業も含まれていました。
ネイティブゲームの普及は、ゲーム市場をより魅力的にしていました。というのも、ネイティブゲームではブラウザゲームでは難しかったリッチな表現が可能となり、クオリティがゲーム機でできるものに近づいていきました。また、ゲーム機やソフトを買わなくても、スマホさえあれば簡単に無料で始められる。
2013年9月にスマホゲーム向けの攻略サイト「GamwWith」のサービス展開を開始した。当時流行していたブログ形式の運営ではなく、今泉社長が自身でコーディングをすることでwebサービスとして展開した。
GameWithは無料サイトとして運営し、サイト内の広告枠を企業向けに販売することで「広告枠の販売」をビジネスの中心に据えた。このため、GameWithでは攻略サイトを閲覧するPV数・ユーザー数が広告収入に直結するため、サイトへの集客が鍵となった。
そこで、GameWithはゲームの攻略記事の質を高めるために、外注ではなく内製化を選択。アルバイトで筋金入りのゲーム好き(ゲーム人口の上位0.1%に相当するプレイヤー)を雇ってコンテンツの制作を任せて、高品質な記事を量産した。また、評価が高いライターを正社員に登用する体制を整えた。この仕組みによって、素人による記事ではなく、ゲーム好きにも評判の高いゲーム攻略の記事が量産する体制を整えた。
また、GameWithではGoogleからの検索流入を重視し、SEOに注力した。当時はゲームタイトルに対する検索クエリは激戦区であったものの、ゲームキャラクターの名前における検索クエリは空白地帯となっていた。そこで、GameWithは「キャラクター名 + 評価」という検索クエリを重点的に抑えて、ゲーム攻略の記事を量産する体制を整えた。
これらの施策は、2013年時点においてスマホゲームがまだ普及途上にあったこともあり、ゲーム攻略では後発だったGameWithがアクセス数を確保するための追い風となった。特に、たまたま時を同じくして、2013年9月にミクシィがリリースしたスマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」が社会現象となるヒットを記録しており、ほぼ同じタイミングでサービスをリリースしたGameWithが「モンスト向け攻略」を展開したことで、PVを確保する原動力になったと推察される。
インキュベートファンドなどから調達
2015年にGameWithは年間経常利益1.24億円を計上し、設立2年目で黒字転換した。月間1億PVを超える膨大なアクセスによって、広告枠の販売が順調に進んだことで高収益を達成した。
アクセス数が急増した理由は、スマホゲームは従来のハードウェアのゲームと「アップデート」の頻度が大きく異なり、頻繁なアップデートのたびに、ユーザーがゲーム攻略サイトにアクセスするという連続性にあった。GameWithはゲーム攻略の記事内製化によって、アップデートのたびに質の高い記事を制作することで、アクセスを確保した。
これらの施策がGoogleなどのアルゴリズムにも良い評価となり、GameWithはゲーム攻略サイトの検索順位で上位を確保したと推察される。この結果、アクセス数を集め、広告収入を確保して黒字を達成した。
ゲーム攻略に関しては、個人も含めて非常にたくさんの競合があるところではあるんですが、このゲーム攻略という分野においては、弊社は昨年の3月、今年の3月ぐらいの数値で言うと、競合と比較して約4倍から5倍ほどのトラフィック差があると。
外部のSimilarWebであったりとか、そういったデータの中で取得したデータの差としてはそれぐらいの差がついておりまして。ゲーム攻略においての強みというのは、記事の質だったり、その記事を出すスピードが速い。こういったところが強みと考えている部分でございます。
この組織体制の強化というところに、先ほども説明したんですけれども、こちらに4年間ずっと取り組んでまいったところでございまして、例えば高い質の記事を出そうとする時に、実際その記事を書くライターさんが上位プレイヤーである必要があると。そういったところの採用をずっと強化しておりまして、ここで提供する記事の質であったりとか、そういうのを出すスピードというところに差をつけているところでございます。
2017年にGameWithは、広告運用チームを内製化してPV単価の改善を開始した。2016年時点では、株式会社ジーニーが提供するアドネットワークを活用していたが、2017年までに販売の大半をGoogleからの直接収入によってカバーする体制となった。
この結果、GameWithは広告単価の改善に成功し、2017年から2019年にかけて、広告単価は約2倍に向上した。
2017年にGameWithは東証マザーズへの株式上場を果たした。
2017年時点のGameWithは「ゲーム攻略サイト」が収益源であり、全社売上高の53%をGoogle向け、21%をジーニー(アドネットワーク業者)向けで占めており、特定の広告会社との取引に依存していた。すなわち、広告単価(=PV単価)の価格下落によっては、業績が左右されるリスクがあった。
このため、上場にあたって今泉社長は「攻略情報サイト」に限ったビジネスではなく、ゲーム業界のインフラになることを目指した。
2019年8月にGameWithは東証1部に株式を上場した。
2019年を境に、GameWithを取り巻く広告業界の環境が変化した。売上高の面では、Googleの検索アルゴリズムの変更によってGameWithのPV数が減少した。2019年の時点でGameWithは主要3タイトルのPVに依存しており、これらの領域で検索順位が低下したものと推察される。
つまり、今までスマートフォンゲームの中でのトップタイトルというところにPV数を大きく依存しておりましたが、トップタイトルに対する攻略ニーズが、本当この半年で大きく減少してきました。
(略)
特定のタイトル名は公表しませんが、運営してから5年、6年経過しているタイトルに関して、大幅な攻略ニーズの減少が見られました。それが主な要因となって、PV数が7.1億だったところから6.8、6.2、5.5と落ちてきたといったところが背景となります。
2020年5月期にGameWithは広告単価の下落によって、減収減益決算を発表した。新型コロナウイルスの流行によってゲーム人口は増加した一方で、広告史上全体で単価が下落した影響を被った。
この結果、2019年以降のGameWithは従来の「広告枠の販売」というビジネスからの脱却が大きなテーマになった。
2020年12月からGameWithはタレントの本田翼を起用したテレビCMを開始した。GameWithのサイトを紹介するCMであり、PVの増加を目論んだと推察される。
著名タレントを起用したためGameWithの広告宣伝費は増加し、FY2021の広告宣伝費の累計は約6.1億円を投資した。
GameWithはFY2021/1Q〜3Qにかけて広告投資を実施し、FY2021/4Qに広告宣伝費の縮小を決めた。縮小を決定した理由は同社発表で「プロモーション戦略の見直し」とされているが、その真意はGameWithに対するPVが思うように増えなかったためと推察される。
コロナの蔓延により現預金を確保するため、金融機関4行より借入調達を実施。5年間の借入で無担保にて13億円を調達