JFEホールディングス の歴史

更新:

2002年、川崎製鉄と日本鋼管(NKK)の共同株式移転で発足。JFEスチールへの再編、広州鋼鉄との合弁、インドJSWとの提携、倉敷高炉の電炉転換までの沿革と経緯を執筆。

創業

2002年

創業者

※日本鋼管+川崎製鉄

創業地

東京都千代田区

直近売上高(2026/3)

45,393億円

長期業績と転換点(2002/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ2002年に川崎製鉄と日本鋼管は対等合併ではなく株式移転による持株会社統合を選んだのか
A 2002年9月、両社が選んだのは対等合併ではなく共同株式移転による持株会社の設立だった。国内需要の低迷と設備過剰のなか、存続会社を立てずに両社を持株会社の傘下へ並べれば、経営権を一度そこへ集約したうえで翌2003年4月に事業会社へ会社分割する段取りが取りやすい。統合比率は日本鋼管0.75対川崎製鉄1.00とされ、財務体質が相対的に良好だった川鉄が経営の実権を握った。この統合は1970年の新日鉄誕生以来続いた高炉大手5社体制を崩す先陣であり、新日鉄・住友金属工業・神戸製鋼が資本を含む提携に動いたのはその後である
Q なぜ2023年に京浜地区の上工程を休止して国内の高炉を減らしたのか
A 発足直後の中国特需で2006年3月期に純利益3,259億円の最高益へ達した一方、特需が中国の過剰供給へ反転すると同じ振幅で跳ね返り、リーマンとコロナ下で2度の最終赤字を出した。この乱高下を断つため、2023年9月、JFEは京浜地区の上工程(高炉・製鋼)を休止し高炉を8基から7基へ減らした。固定費を年450億円削り、量を追わず高付加価値品比率を48%へ引き上げ、規模より単価で稼ぐ方針へ変えた北野嘉久社長は「苦渋の決断」と述べている
Q なぜ2025年に倉敷の高炉を一時休止し配当を110円から80円へ下げたのか
A 2025年、米国の関税措置と中国の過剰輸出で国内外の鋼材需要が減るなか、JFEは倉敷地区の第3高炉を一時休止(バンキング)し、2023年の京浜上工程休止に続いて国内設備の削減を二段構えで進めた。あわせて年間配当を110円から80円へ引き下げ、配当性向30%・下限80円という新たな還元基準を敷いた。財務悪化のなかでカーボンニュートラル投資の余力を確保するため、北野体制は国内の減産と株主還元の両面を一段と絞り込んだ

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2002年〜 二社統合のもと中国特需で最高益に駆け上がった発足期

JFEホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2002年 川崎製鉄とNKK(日本鋼管)の経営統合とJFEホールディングス発足(2002年成立) 新日鉄に対抗する「2位連合」はなぜ生まれ、鉄鋼業界の2極化を起こしたのか?
  2. 2003年 両社の会社分割契約書締結を承認
  3. 2003年 事業会社をJFEスチール・JFEエンジニアリング・JFE都市開発・JFE技研に再編
  4. 2003年 無名の広州鋼鉄と組み中国で自動車用鋼板の現地生産に踏み出す垂直分業 中国最大手と組む新日鉄をよそに、なぜJFEは実績ゼロの地方メーカーを選んだのか——名より実の海外戦略
  5. 2005年 數土文夫が代表取締役社長に就任
  6. 2008年 日立造船とJFEエンジの保有株式取得によりユニバーサル造船を子会社化

共同株式移転による発足と、協調体制からの決別

JFEホールディングスは2002年9月、川崎製鉄と日本鋼管(NKK)の共同株式移転[1]により両社の完全親会社として発足し、東京・大阪・名古屋の各証券取引所第一部に上場[2]した。旧両社の普通株式は同時に上場廃止[3]となり、国内の高炉メーカーは新日鉄・JFE・神戸製鋼の三極へ集約[4]された。両社を合わせた粗鋼生産量は年約2,500万トンで、新日本製鐵に匹敵[5]する規模となった。新会社が引き受けたのは、1990年代を通じて両社が抱え込んだ設備過剰[6]である。発足に先立つ2002年5月、川鉄の千葉第5高炉と水島第1高炉を廃棄する方針[7]を発表し、銑鉄生産能力の約1割にあたる350万トン[8]を削る計画を示した。あわせて圧延35ラインのうち6〜7ラインを休止[9]し、180万〜230万トンの製品出荷能力[10]を落とすとした。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]2002年9月 川崎製鉄と日本鋼管の共同株式移転によりJFEホールディングス設立
    • [2]東京・大阪・名古屋の各証券取引所第一部へ上場
    • [3]旧両社の普通株式は上場廃止
  • 週刊東洋経済 2002年11月2日号
    • [4]統合後の国内高炉メーカーは新日鉄・JFE・神戸製鋼の三極体制
    • [5]統合後の粗鋼生産量 年約2,500万トン(新日本製鐵に匹敵)
  • 週刊東洋経済 2002年5月25日号
    • [6]統合が引き受けた課題は1990年代に両社が抱えた設備過剰
    • [7]2002年5月 千葉第5高炉・水島第1高炉の廃棄方針を発表
    • [8]銑鉄生産能力の削減幅 約1割・350万トン
    • [9]圧延35ラインのうち6〜7ラインを休止
    • [10]製品出荷能力の削減幅 180万〜230万トン

能力を消す狙いは価格の主導権にあり、「顧客に対しても量の拡大を前提とした値引きに物理的に応じられなくなる[11]」(數土文夫氏・川崎製鉄社長、週刊東洋経済 2002年5月25日号)と説明された。設備を抱え続けた背景には業界の横並びがあり、江本寛治氏は「各社がシェアを変えないように調整し合う協調体制が出来上がっていた[12]」「90年代に鉄鋼業界を悪くした原因は何か、と問われれば、それは協調体制だと答えるしかない[13]」(日経ビジネス 2004年1月5日号)と振り返っている。江本氏は1995年の川鉄社長就任会見で「もう横並びはやらん」と宣言[14]し、変わるべき時期は石油危機直後の1970年代後半[15]だったとも述べた。

  • 週刊東洋経済 2002年5月25日号
    • [11]數土文夫氏 設備削減の狙いは量の拡大を前提とした値引きへの物理的な不能化
  • 日経ビジネス 2004年1月5日号
    • [12]江本寛治氏 各社がシェアを変えないよう調整し合う協調体制の存在を指摘
    • [13]江本寛治氏 1990年代に鉄鋼業界を悪くした原因は協調体制と評価
    • [14]江本寛治氏 1995年の川崎製鉄社長就任会見で横並びの否定を宣言
    • [15]江本寛治氏 変革の適期は石油危機直後の1970年代後半だったと回顧

2003年1月に両社の会社分割契約書締結を承認[16]し、同年4月、両社の事業を会社分割によりJFEスチール・JFEエンジニアリング・JFE都市開発・JFE技研の4社へ再編[17]した。同時に川崎マイクロエレクトロニクスを完全子会社とする会社分割[18]も実施している。鉄鋼事業では旧NKKの京浜・福山と旧川崎製鉄の千葉・水島の4製鉄所を東西2製鉄所へくくり直し[19]、それぞれを1人の製鉄所長の下に置いた。福山と水島を束ねた西日本製鉄所は年産1,800万トン規模[20]である。一体運営は「絶対に譲れない条件だ」[21](江本寛治氏・川崎製鉄前会長、週刊東洋経済 2002年11月2日号)と統合交渉で繰り返された構想で、発足時には東西の幹部の3分の1を相互に入れ替え[22]、八幡・富士の合併から30年を経てなお利害対立が残った新日鉄の前例を避けた[23]。統合効果は2002年度に200億円[24]、2005年度までに合計800億円[25]を目標に掲げた。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [16]2003年1月 両社の会社分割契約書締結を承認
    • [17]2003年4月 JFEスチール・JFEエンジニアリング・JFE都市開発・JFE技研の4社へ再編
    • [18]2003年4月 川崎マイクロエレクトロニクスを完全子会社とする会社分割を実施
  • 週刊東洋経済 2002年11月2日号
    • [19]4製鉄所を東西2製鉄所へ再編しそれぞれ1人の製鉄所長の下に置く
    • [20]西日本製鉄所の規模 年産1,800万トン
    • [21]江本寛治氏 製鉄所の一体運営を統合の譲れない条件と位置づけ
    • [22]発足時に東西の幹部の3分の1を相互に入れ替え
    • [23]八幡・富士の合併後も利害対立が残った新日鉄の前例を避ける判断
    • [24]2002年度のコスト削減見通し 200億円
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [25]2005年度までの統合効果目標 合計800億円
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]2002年9月 川崎製鉄と日本鋼管の共同株式移転によりJFEホールディングス設立
    • [2]東京・大阪・名古屋の各証券取引所第一部へ上場
    • [3]旧両社の普通株式は上場廃止
    • [16]2003年1月 両社の会社分割契約書締結を承認
    • [17]2003年4月 JFEスチール・JFEエンジニアリング・JFE都市開発・JFE技研の4社へ再編
    • [18]2003年4月 川崎マイクロエレクトロニクスを完全子会社とする会社分割を実施
  • 週刊東洋経済 2002年11月2日号
    • [4]統合後の国内高炉メーカーは新日鉄・JFE・神戸製鋼の三極体制
    • [5]統合後の粗鋼生産量 年約2,500万トン(新日本製鐵に匹敵)
    • [19]4製鉄所を東西2製鉄所へ再編しそれぞれ1人の製鉄所長の下に置く
    • [20]西日本製鉄所の規模 年産1,800万トン
    • [21]江本寛治氏 製鉄所の一体運営を統合の譲れない条件と位置づけ
    • [22]発足時に東西の幹部の3分の1を相互に入れ替え
    • [23]八幡・富士の合併後も利害対立が残った新日鉄の前例を避ける判断
    • [24]2002年度のコスト削減見通し 200億円
  • 週刊東洋経済 2002年5月25日号
    • [6]統合が引き受けた課題は1990年代に両社が抱えた設備過剰
    • [7]2002年5月 千葉第5高炉・水島第1高炉の廃棄方針を発表
    • [8]銑鉄生産能力の削減幅 約1割・350万トン
    • [9]圧延35ラインのうち6〜7ラインを休止
    • [10]製品出荷能力の削減幅 180万〜230万トン
    • [11]數土文夫氏 設備削減の狙いは量の拡大を前提とした値引きへの物理的な不能化
  • 日経ビジネス 2004年1月5日号
    • [12]江本寛治氏 各社がシェアを変えないよう調整し合う協調体制の存在を指摘
    • [13]江本寛治氏 1990年代に鉄鋼業界を悪くした原因は協調体制と評価
    • [14]江本寛治氏 1995年の川崎製鉄社長就任会見で横並びの否定を宣言
    • [15]江本寛治氏 変革の適期は石油危機直後の1970年代後半だったと回顧
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [25]2005年度までの統合効果目標 合計800億円

中国特需への反転と、広州での垂直分業

統合直後の経営陣に余裕はなく、「鉄鋼業界は数年前、地獄の淵まで見たわけです。JFEにしても、統合時には『収益第一』という経営方針しか出せなかったし、それ以外のことを考える余裕は全くなかった」(數土文夫氏・JFEスチール社長、日経ビジネス 2004年12月13日号)と振り返る状態から出発した。ところが世界の鉄鋼生産量は1999年まで約20年間7億トン台で推移[27]した後、2000年に8億トンを超え、2004年には10億5,000万トンに達する[28]とされた。中国の成長を軸に2億5,000万トンの新しい市場が現れた[29]計算になる。発足の直前にも數土氏は「01年に初めて8億トン台に乗せた世界の粗鋼生産量は遠からず九億に達するでしょう。それだけの需要があるんですから、何も安売りする必要はない」(週刊東洋経済 2002年9月21日号)と述べていた。 [26][30]

  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [26]數土文夫氏 統合時の経営方針は「収益第一」以外を考える余裕がなかったと回顧
    • [27]世界の鉄鋼生産量 1999年まで約20年間7億トン台
    • [28]世界の鉄鋼生産量 2000年に8億トン超・2004年に10億5,000万トン
    • [29]中国の成長を軸に2億5,000万トンの新市場が出現
  • 週刊東洋経済 2002年9月21日号
    • [30]數土文夫氏 2002年時点で世界粗鋼生産の9億トン到達と安売り不要を予測

數土氏は川崎製鉄社長への就任にあたり「ROSをミニマム10%にする[31]」との目標を掲げていた。戦後の日本の鉄鋼業の売上高経常利益率は平均2.5%程度[32]にとどまっており、守れない公約だと忠告する声もあったが、2004年度は15%台の見通し[33]となった。それでも數土氏は台湾の中国鋼鉄が35〜40%、韓国のポスコが25%程度[34]である点を挙げて「全然ダメ」と評している。掲げたのはJFEスチールにしか作れない「オンリーワン」と、品質・量・コストで圧倒的に優位に立つ「ナンバーワン」の商品[35]を増やす方針で、統合時に売上高の6〜7%しかなかった比率は2004年度上期に15%へ達した[36]。普段は75%程度の稼働率にすぎない設備を好況に備えて温存する「上方弾力性」の発想[37]も、このとき退けられた。

  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [31]數土文夫氏 川崎製鉄社長就任時にROS10%を目標に設定
    • [32]戦後の日本の鉄鋼業の売上高経常利益率 平均2.5%程度
    • [33]2004年度の売上高経常利益率見通し 15%台
    • [34]數土文夫氏 台湾中国鋼鉄35〜40%・韓国ポスコ25%程度と比べ自社水準を不十分と評価
    • [35]オンリーワン・ナンバーワン商品を増やす方針
    • [36]オンリーワン・ナンバーワン比率 統合時の売上高6〜7%から2004年度上期15%へ
    • [37]好況に備え低稼働率の設備を温存する「上方弾力性」の発想を否定

海外では2003年9月、JFEスチールが中国の広州鋼鉄企業集団との合弁会社設立を発表[38]し、約50億円を出資して出資比率51%[39]で経営の主導権を握った。相手は粗鋼生産201万トン・自動車用鋼板の実績を持たない企業[40]だったが、ホンダ・日産・トヨタが集まる広州の立地[41]を重視した選択である。母材は日本から供給し現地は冷延・表面処理の下工程に絞る垂直分業[42]で、「鉄鋼生産の上工程に当たる製鉄・製鋼工程は技術の固まりだから、絶対に日本が守らなければならない[43]」(江本寛治氏・JFEホールディングス会長、日経ビジネス 2004年1月5日号)という考え方に沿っていた。2005年4月には川崎製鉄出身の數土文夫氏が代表取締役社長に就任[44]し、NKK出身の下垣内洋一氏から引き継いだ。2006年3月期の連結売上高は3兆984億円[45]、当期純利益は3,259億円と、当時として過去最高[46]を記録した。

  • 週刊東洋経済 2003年10月11日号
    • [38]2003年9月 広州鋼鉄企業集団との合弁会社設立を発表
    • [39]広州合弁への出資 約50億円・出資比率51%
    • [40]合弁相手の粗鋼生産201万トン・自動車用鋼板の実績なし
    • [41]ホンダ・日産・トヨタが集まる広州の立地を重視
  • 日経ビジネス 2004年1月5日号
    • [42]母材は日本から供給し現地は下工程に絞る垂直分業
    • [43]江本寛治氏 製鉄・製鋼の上工程は国内に残すべきとの方針
  • 週刊東洋経済 2002年9月21日号
    • [44]2005年4月 川崎製鉄出身の數土文夫氏が代表取締役社長に就任(下垣内洋一氏から交代)
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第4期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [45]2006年3月期 連結売上高3兆984億円
    • [46]2006年3月期 当期純利益3,260億円(当時として過去最高)
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [26]數土文夫氏 統合時の経営方針は「収益第一」以外を考える余裕がなかったと回顧
    • [27]世界の鉄鋼生産量 1999年まで約20年間7億トン台
    • [28]世界の鉄鋼生産量 2000年に8億トン超・2004年に10億5,000万トン
    • [29]中国の成長を軸に2億5,000万トンの新市場が出現
    • [31]數土文夫氏 川崎製鉄社長就任時にROS10%を目標に設定
    • [32]戦後の日本の鉄鋼業の売上高経常利益率 平均2.5%程度
    • [33]2004年度の売上高経常利益率見通し 15%台
    • [34]數土文夫氏 台湾中国鋼鉄35〜40%・韓国ポスコ25%程度と比べ自社水準を不十分と評価
    • [35]オンリーワン・ナンバーワン商品を増やす方針
    • [36]オンリーワン・ナンバーワン比率 統合時の売上高6〜7%から2004年度上期15%へ
    • [37]好況に備え低稼働率の設備を温存する「上方弾力性」の発想を否定
  • 週刊東洋経済 2002年9月21日号
    • [30]數土文夫氏 2002年時点で世界粗鋼生産の9億トン到達と安売り不要を予測
    • [44]2005年4月 川崎製鉄出身の數土文夫氏が代表取締役社長に就任(下垣内洋一氏から交代)
  • 週刊東洋経済 2003年10月11日号
    • [38]2003年9月 広州鋼鉄企業集団との合弁会社設立を発表
    • [39]広州合弁への出資 約50億円・出資比率51%
    • [40]合弁相手の粗鋼生産201万トン・自動車用鋼板の実績なし
    • [41]ホンダ・日産・トヨタが集まる広州の立地を重視
  • 日経ビジネス 2004年1月5日号
    • [42]母材は日本から供給し現地は下工程に絞る垂直分業
    • [43]江本寛治氏 製鉄・製鋼の上工程は国内に残すべきとの方針
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第4期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [45]2006年3月期 連結売上高3兆984億円
    • [46]2006年3月期 当期純利益3,260億円(当時として過去最高)

2009年〜 リーマンショックと中国過剰生産に挟まれた構造赤字の10年

JFEホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2009年 JFE技研のエンジニアリング研究機能をJFEエンジへ移転
  2. 2009年 JFE技研をJFEスチールへ統合
  3. 2009年 インドJSWスチールとの包括提携 世界再編に乗り遅れたJFEは、なぜ最後発でインドの民間鉄鋼大手と組み、高級鋼の技術供与で新興市場を取りに行ったのか
  4. 2010年 馬田一が代表取締役社長に就任
  5. 2011年 JFEスチールがJFE都市開発を吸収合併し保有不動産活用事業を承継
  6. 2012年 JFE商事を株式交換により完全子会社化
  7. 2013年 ジャパンマリンユナイテッドを設立

発足後初の最終赤字と、事業の組み替え

2008年9月のリーマンショックで鉄鋼需要は急減し、2010年3月期の連結売上高は2兆8,443億円[47]、当期純利益は456億円まで縮小[48]した。2012年3月期には欧州債務危機・円高・タイ洪水が重なり、JFE発足後初の最終赤字となる純損失366億円[49]を計上した。2005年度に約16.7%あった売上高営業利益率[50]は2012年3月期には1.4%まで沈み[51]、中国特需期に積み上げた稼ぐ力は失われた。2010年4月には川崎製鉄出身の馬田一氏が代表取締役社長に就任[52]し、投資を絞りながら踏みとどまった。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [47]2010年3月期 連結売上高2兆8,443億円・当期純利益456億円
    • [48]2010年3月期 当期純利益456億円
    • [49]2012年3月期 JFE発足後初の最終赤字 純損失366億円
    • [51]2012年3月期の売上高営業利益率 1.4%
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第4期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [50]2005年度の売上高営業利益率 約16.7%
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [52]2010年4月 川崎製鉄出身の馬田一氏が代表取締役社長に就任

造船事業では2008年3月、日立造船とJFEエンジニアリングが保有する株式の取得によりユニバーサル造船を子会社化[53]した。2013年1月にはユニバーサル造船を存続会社としてIHIマリンユナイテッドと経営統合[54]し、ジャパンマリンユナイテッドを設立して持分法適用関連会社へ移した[55]。2009年4月にはJFE技研が持つエンジニアリング関連の研究機能をJFEエンジニアリングへ移転[56]するとともに、JFE技研本体をJFEスチールへ統合[57]している。2011年4月にはJFEスチールがJFE都市開発を吸収合併して保有不動産活用事業を承継[58]した。成長投資の原資が細るなかで、持株会社体制のスリム化と既存資産の組み替えが並行[59]して進んだ。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [53]2008年3月 日立造船とJFEエンジニアリング保有株式の取得によりユニバーサル造船を子会社化
    • [54]2013年1月 IHIマリンユナイテッドとの経営統合によりジャパンマリンユナイテッドを設立(持分法適用関連会社)
    • [55]ジャパンマリンユナイテッドは持分法適用関連会社
    • [56]2009年4月 JFE技研のエンジニアリング関連研究機能をJFEエンジニアリングへ移転しJFE技研をJFEスチールへ統合
    • [57]JFE技研本体をJFEスチールへ統合
    • [58]2011年4月 JFEスチールがJFE都市開発を吸収合併し保有不動産活用事業を承継
    • [59]持株会社体制のスリム化と既存資産の組み替えが並行

海外の提携では出遅れが指摘され、有力な相手はドイツのティッセンクルップとの自動車用鋼板の開発提携にとどまっていた[60]。合併前に持っていた北米・南米のパートナーは1990年代の鉄鋼不況で失っていた[61]。2009年12月、JFEスチールはインドの民間鉄鋼最大手JSWスチールと包括的な提携契約を締結[62]し、自動車用高級鋼材などの技術を供与したうえで、半製品を日本国内で製造して供給[63]する体制を敷いた。中国・韓国メーカーへの半製品供給は各国の高炉増設で細るおそれ[64]があり、提携は販路の確保でもあった。競合の新日本製鉄がタタ製鉄と組んで先行[65]するなかでの巻き返しで、林田英治氏は「JSWのジンダル社長によれば『インドでは供給が需要を創り出す[66]』」(週刊東洋経済 2009年12月5日号)と述べている。

  • 週刊東洋経済 2007年3月24日号
    • [60]有力な提携相手はティッセンクルップとの自動車用鋼板の開発提携のみで国際提携の遅れが指摘された
    • [61]合併前の北米・南米のパートナーを1990年代の鉄鋼不況で喪失
  • 週刊東洋経済 2009年12月5日号
    • [62]2009年12月 JSWスチールと包括的提携契約を締結
    • [63]自動車用高級鋼材の技術供与と半製品の国内製造・供給
    • [64]中国・韓国の高炉増設により半製品取引が中期的に減少するおそれ
    • [65]新日本製鉄はタタ製鉄と提携し先行していた
    • [66]林田英治氏 インドでは供給が需要を創り出すというJSW社長の言を引用
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [47]2010年3月期 連結売上高2兆8,443億円・当期純利益456億円
    • [48]2010年3月期 当期純利益456億円
    • [49]2012年3月期 JFE発足後初の最終赤字 純損失366億円
    • [51]2012年3月期の売上高営業利益率 1.4%
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第4期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [50]2005年度の売上高営業利益率 約16.7%
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [52]2010年4月 川崎製鉄出身の馬田一氏が代表取締役社長に就任
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [53]2008年3月 日立造船とJFEエンジニアリング保有株式の取得によりユニバーサル造船を子会社化
    • [54]2013年1月 IHIマリンユナイテッドとの経営統合によりジャパンマリンユナイテッドを設立(持分法適用関連会社)
    • [55]ジャパンマリンユナイテッドは持分法適用関連会社
    • [56]2009年4月 JFE技研のエンジニアリング関連研究機能をJFEエンジニアリングへ移転しJFE技研をJFEスチールへ統合
    • [57]JFE技研本体をJFEスチールへ統合
    • [58]2011年4月 JFEスチールがJFE都市開発を吸収合併し保有不動産活用事業を承継
    • [59]持株会社体制のスリム化と既存資産の組み替えが並行
  • 週刊東洋経済 2007年3月24日号
    • [60]有力な提携相手はティッセンクルップとの自動車用鋼板の開発提携のみで国際提携の遅れが指摘された
    • [61]合併前の北米・南米のパートナーを1990年代の鉄鋼不況で喪失
  • 週刊東洋経済 2009年12月5日号
    • [62]2009年12月 JSWスチールと包括的提携契約を締結
    • [63]自動車用高級鋼材の技術供与と半製品の国内製造・供給
    • [64]中国・韓国の高炉増設により半製品取引が中期的に減少するおそれ
    • [65]新日本製鉄はタタ製鉄と提携し先行していた
    • [66]林田英治氏 インドでは供給が需要を創り出すというJSW社長の言を引用

海外に求めた成長と、川鉄主導の人事

業績は一進一退が続き、2014年3月期には連結売上高3兆6,668億円・当期純利益1,023億円[67]と回復したが、2016年3月期には売上高3兆4,317億円・純利益336億円[68]へ再び沈んだ。林田英治氏はグループ会社を含めて3,200万トンある粗鋼生産量を2020年までに4,000万トン、2025年に5,000万トンへ引き上げる[69]構想を掲げ、「こうして増やしていく部分はすべて海外だ[70]」として、ベトナムの高炉への出資や提携先のインドJSWからの鉄源調達[71]を挙げた。増やす手段は電炉の海外展開ではなくアライアンスの活用[72]に置かれた。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第14期(2016年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [67]2014年3月期 連結売上高3兆6,668億円・当期純利益1,023億円
    • [68]2016年3月期 売上高3兆4,317億円・純利益336億円
  • 週刊東洋経済 2015年7月17日号
    • [69]粗鋼生産量3,200万トンを2020年4,000万トン・2025年5,000万トンへ引き上げる構想
    • [70]林田英治氏 増分はすべて海外で確保する方針
    • [71]ベトナムの高炉への出資とインドJSWからの鉄源調達を成長手段に想定
    • [72]増分の確保は電炉の海外展開ではなくアライアンスの活用による方針

この間、社長は數土文夫氏(2005〜2010)、馬田一氏(2010〜2015)[73]林田英治氏(2015〜2019)、柿木厚司氏(2019〜2024)[74]と交代した。初代社長の下垣内洋一氏はNKK出身[75]だったが、數土氏・馬田氏・柿木氏はいずれも川崎製鉄の入社[76]で、統合比率に表れた川鉄主導の構図は人事の面でも続いた。2012年7月には川崎マイクロエレクトロニクスの全株式をメガチップスへ譲渡[77]して非中核事業を整理し、同年10月にJFE商事を株式交換により完全子会社化[78]して、鉄鋼・エンジニアリング・商事の三事業による持株会社体制が整った。2019年3月期の連結売上高は3兆9,617億円、営業利益2,218億円、当期純利益1,642億円[79]で、中国特需期の水準には戻らないまま推移した。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [73]歴代社長 數土文夫氏2005〜2010・馬田一氏2010〜2015・林田英治氏2015〜2019・柿木厚司氏2019〜2024
    • [74]林田英治氏2015〜2019・柿木厚司氏2019〜2024
  • 週刊東洋経済 2001年4月28日号
    • [75]初代社長 下垣内洋一氏はNKK出身
    • [76]數土文夫氏・馬田一氏・柿木厚司氏はいずれも川崎製鉄入社
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [77]2012年7月 川崎マイクロエレクトロニクスの全株式をメガチップスへ譲渡
    • [78]2012年10月 JFE商事を株式交換により完全子会社化
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(連結損益計算書)
    • [79]2019年3月期 連結売上高3兆9,617億円・営業利益2,218億円・当期純利益1,642億円
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第14期(2016年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [67]2014年3月期 連結売上高3兆6,668億円・当期純利益1,023億円
    • [68]2016年3月期 売上高3兆4,317億円・純利益336億円
  • 週刊東洋経済 2015年7月17日号
    • [69]粗鋼生産量3,200万トンを2020年4,000万トン・2025年5,000万トンへ引き上げる構想
    • [70]林田英治氏 増分はすべて海外で確保する方針
    • [71]ベトナムの高炉への出資とインドJSWからの鉄源調達を成長手段に想定
    • [72]増分の確保は電炉の海外展開ではなくアライアンスの活用による方針
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [73]歴代社長 數土文夫氏2005〜2010・馬田一氏2010〜2015・林田英治氏2015〜2019・柿木厚司氏2019〜2024
    • [74]林田英治氏2015〜2019・柿木厚司氏2019〜2024
  • 週刊東洋経済 2001年4月28日号
    • [75]初代社長 下垣内洋一氏はNKK出身
    • [76]數土文夫氏・馬田一氏・柿木厚司氏はいずれも川崎製鉄入社
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [77]2012年7月 川崎マイクロエレクトロニクスの全株式をメガチップスへ譲渡
    • [78]2012年10月 JFE商事を株式交換により完全子会社化
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(連結損益計算書)
    • [79]2019年3月期 連結売上高3兆9,617億円・営業利益2,218億円・当期純利益1,642億円

2020年〜 二度目の最終赤字1,977億円が迫った京浜上工程休止の決断期

JFEホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2020年 初の最終赤字を計上(純損失▲1,977億円)
  2. 2022年 商号をジェイ エフ イー HDからJFEHDへ変更
  3. 2022年 倉敷の高炉1基を休止し大型電炉へ置き換える脱炭素の生産体制転換 二酸化炭素削減のために主力の高炉を止めるか——鉄鋼2位が選んだ「脱高炉」への転換
  4. 2023年 京浜地区の上工程(高炉・製鋼)を休止
  5. 2024年 JSWと方向性電磁鋼板JV「J2ES」を設立
  6. 2024年 北野嘉久が代表取締役社長に就任
  7. 2024年 グループ事業利益倍増の長期ビジョンを公表

二度の赤字と、脱炭素を理由にした高炉休止

2020年3月期、JFEは1,977億円という発足以来最大の最終赤字[80]を計上した。連結売上高は3兆7,297億円、営業損益も2,009億円の赤字[81]だった。翌2021年3月期にはコロナ禍で粗鋼生産が急減し、売上収益は3兆2,272億円[82]、事業損益は129億円の損失、当期損益は219億円の損失[83]となった。本業ベースの赤字は発足以来初めて[84]で、統合19年目にして事業構造そのものへの問い直しが避けられなくなった。2019年4月に柿木厚司氏が代表取締役社長に就任[85]しており、構造改革の青写真を描くことが最優先の課題となった。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [80]2020年3月期 発足以来最大の最終赤字1,977億円
    • [82]2021年3月期 売上収益3兆2,272億円
    • [83]2021年3月期 事業損失129億円・当期損失219億円
    • [84]本業ベースの赤字は発足以来初
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(連結損益計算書)
    • [81]2020年3月期 連結売上高3兆7,297億円・営業損失2,009億円
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [85]2019年4月 柿木厚司氏が代表取締役社長に就任

高炉は鉄鉱石から酸素を取り除く還元の過程で大量の二酸化炭素を排出し、鉄鋼業界の排出量は国内産業部門の約4割、日本全体の約13%[86]を占める。JFEは2020年9月末に2030年度の排出量20%以上削減(2013年度比)[87]と、2050年以降のできるだけ早い時期でのカーボンニュートラルを公表した。2022年9月1日、JFEスチールは2027年度以降に西日本製鉄所倉敷地区の高炉1基を休止[88]し、同地区に新設する大型電炉へ置き換えると発表した。休止対象の倉敷第2高炉は1969年に稼働し2003年に3度目の改修[89]を経ており、数百億円を要する4度目の改修の可否[90]を迫られていた。電炉の二酸化炭素排出量は高炉の約4分の1[91]で、年間排出量約4,700万トンのうち置き換えにより約300万トンの削減[92]を見込んだ。2020年以降の高炉休止が過剰能力の是正を目的としたのに対し、二酸化炭素の削減を理由に据えた最初の休止[93]となった。

  • 週刊東洋経済 2022年9月17日号
    • [86]鉄鋼業界の二酸化炭素排出量 国内産業部門の約4割・日本全体の約13%
    • [88]2022年9月1日 2027年度以降に倉敷地区の高炉1基を休止し大型電炉へ置き換えると発表
    • [89]倉敷第2高炉は1969年稼働・2003年に3度目の改修
    • [90]高炉改修は数百億円を要し4度目の可否が迫られていた
    • [91]電炉の二酸化炭素排出量は高炉の約4分の1
    • [92]JFEの年間排出量約4,700万トンのうち置き換えで約300万トン削減を見込む
    • [93]従来の高炉休止は過剰能力の是正が目的で、二酸化炭素削減を理由にした休止は今回が最初
  • 週刊東洋経済 2021年2月6日号
    • [87]JFEは2020年9月末に2030年度の排出量20%以上削減(2013年度比)と2050年以降の早期カーボンニュートラルを公表

構造改革の中心となった京浜地区上工程の休止は2023年9月16日に実施[94]され、JFEスチールは東日本製鉄所京浜地区(川崎・横浜)の高炉を止めた[95]。国内に持つ高炉は8基から7基となり、年間の粗鋼生産能力は400万トン減の2,600万トン体制[96]へ移った。固定費削減効果は年間450億円、予備品・設備廃却に伴う一過性費用として約200億円[97]を計上している。「苦渋の決断でしたが、スリムな事業体質、事業構造にするということで決断しました[98]」(北野嘉久氏・JFEホールディングス社長、2024年3月期 決算説明会)。JFEは京浜の土地を将来収益の柱に据え、扇島・南渡田・扇町の3エリアで開発を進める方針を打ち出した。

  • 週刊東洋経済 2023年9月30日号
    • [94]2023年9月16日 京浜地区の高炉を休止
    • [95]休止対象は東日本製鉄所京浜地区(川崎・横浜)の高炉
    • [96]休止後の国内高炉7基・粗鋼生産能力は400万トン減の2,600万トン体制
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)
    • [97]京浜上工程休止の固定費削減効果 年間450億円・一過性費用 約200億円
    • [98]北野嘉久氏 京浜上工程休止をスリムな事業体質への苦渋の決断と説明
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [80]2020年3月期 発足以来最大の最終赤字1,977億円
    • [82]2021年3月期 売上収益3兆2,272億円
    • [83]2021年3月期 事業損失129億円・当期損失219億円
    • [84]本業ベースの赤字は発足以来初
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(連結損益計算書)
    • [81]2020年3月期 連結売上高3兆7,297億円・営業損失2,009億円
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [85]2019年4月 柿木厚司氏が代表取締役社長に就任
  • 週刊東洋経済 2022年9月17日号
    • [86]鉄鋼業界の二酸化炭素排出量 国内産業部門の約4割・日本全体の約13%
    • [88]2022年9月1日 2027年度以降に倉敷地区の高炉1基を休止し大型電炉へ置き換えると発表
    • [89]倉敷第2高炉は1969年稼働・2003年に3度目の改修
    • [90]高炉改修は数百億円を要し4度目の可否が迫られていた
    • [91]電炉の二酸化炭素排出量は高炉の約4分の1
    • [92]JFEの年間排出量約4,700万トンのうち置き換えで約300万トン削減を見込む
    • [93]従来の高炉休止は過剰能力の是正が目的で、二酸化炭素削減を理由にした休止は今回が最初
  • 週刊東洋経済 2021年2月6日号
    • [87]JFEは2020年9月末に2030年度の排出量20%以上削減(2013年度比)と2050年以降の早期カーボンニュートラルを公表
  • 週刊東洋経済 2023年9月30日号
    • [94]2023年9月16日 京浜地区の高炉を休止
    • [95]休止対象は東日本製鉄所京浜地区(川崎・横浜)の高炉
    • [96]休止後の国内高炉7基・粗鋼生産能力は400万トン減の2,600万トン体制
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)
    • [97]京浜上工程休止の固定費削減効果 年間450億円・一過性費用 約200億円
    • [98]北野嘉久氏 京浜上工程休止をスリムな事業体質への苦渋の決断と説明

量から質への転換と、北野体制の成長投資

2021年3月期に事業損失129億円[99]まで沈んだ後、2022年3月期は当期利益2,880億円[100]まで急回復した。原動力は販売価格の改善と高付加価値品比率の引き上げで、FY23のスプレッドはトン当たり諸物価込みで5,000円、主原料ベースで4,000円改善[101]し、高付加価値品比率は48%に達した[102]。オンリーワン・ナンバーワンと呼ぶ高収益商品の比率は統合時の売上高6〜7%から2004年度上期に15%へ伸びて[103]おり、48%はその延長線上にある。もっとも2025年3月期の売上収益は4兆8,596億円、事業利益は1,353億円、当期利益は918億円[104]へ反落した。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [99]2021年3月期 事業損失129億円
    • [100]2022年3月期 当期利益2,880億円
    • [104]2025年3月期 売上収益4兆8,596億円・事業利益1,353億円・当期利益918億円
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)
    • [101]FY23のスプレッド改善 諸物価込み5,000円・主原料ベース4,000円
    • [102]FY23の高付加価値品比率 48%
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [103]オンリーワン・ナンバーワン比率 統合時6〜7%から2004年度上期15%

2021年12月に名古屋証券取引所の上場を廃止[105]し、2022年4月には東京証券取引所の市場区分の見直しにより市場第一部からプライム市場へ移行[106]した。同年6月には商号をジェイ エフ イー ホールディングスからJFEホールディングスへ変更[107]している。2024年4月、JFEスチール社長を務めた北野嘉久氏が持株会社の代表取締役社長に就任[108]した。北野氏は倉敷の電炉転換を決めた当時のJFEスチール社長でもあり、休止予定を除いても6基が残る高炉[109]について、2030年代に控える改修を電炉へ置き換えるのかどうかは「明確な答えは持っていない[110]」と述べていた。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [105]2021年12月 名古屋証券取引所上場廃止
    • [106]2022年4月 東証の市場区分見直しにより市場第一部からプライム市場へ移行
    • [107]2022年6月 ジェイ エフ イー ホールディングスからJFEホールディングスへ商号変更
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [108]2024年4月 北野嘉久氏が代表取締役社長に就任
  • 週刊東洋経済 2022年9月17日号
    • [109]JFEは休止予定を除いても高炉6基を保有
    • [110]北野嘉久氏 2030年代の高炉改修を電炉へ置き換えるかは未定と発言

2024年2月にはJSWスチールと方向性電磁鋼板の合弁会社J2ESを設立し、2009年に結んだ包括提携は生産拠点の共同運営まで進んだ。2022年に米CEMCO、2024年5月に米豪STUDCOを買収し、同月にはセルビアの電磁鋼板加工会社JSSの設立も発表している。2024年4月にはJFEエンジニアリングが笠岡モノパイル製作所を発足[111]させ、洋上風力の基礎構造に足場を得た。2024年5月の決算説明会では、2027年度に倉敷地区で高炉から電炉へのプロセス転換を検討[112]していること、2030年代半ばまでにカーボンニュートラルを達成するための超革新技術の開発を完了[113]させる方針が示された。

  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [111]2024年4月 JFEエンジニアリングが笠岡モノパイル製作所を発足
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)
    • [112]2027年度に倉敷地区で高炉から電炉へのプロセス転換を検討
    • [113]2030年代半ばまでにカーボンニュートラル達成のための超革新技術の開発を完了させる方針
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
    • [99]2021年3月期 事業損失129億円
    • [100]2022年3月期 当期利益2,880億円
    • [104]2025年3月期 売上収益4兆8,596億円・事業利益1,353億円・当期利益918億円
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)
    • [101]FY23のスプレッド改善 諸物価込み5,000円・主原料ベース4,000円
    • [102]FY23の高付加価値品比率 48%
    • [112]2027年度に倉敷地区で高炉から電炉へのプロセス転換を検討
    • [113]2030年代半ばまでにカーボンニュートラル達成のための超革新技術の開発を完了させる方針
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
    • [103]オンリーワン・ナンバーワン比率 統合時6〜7%から2004年度上期15%
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
    • [105]2021年12月 名古屋証券取引所上場廃止
    • [106]2022年4月 東証の市場区分見直しにより市場第一部からプライム市場へ移行
    • [107]2022年6月 ジェイ エフ イー ホールディングスからJFEホールディングスへ商号変更
    • [111]2024年4月 JFEエンジニアリングが笠岡モノパイル製作所を発足
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
    • [108]2024年4月 北野嘉久氏が代表取締役社長に就任
  • 週刊東洋経済 2022年9月17日号
    • [109]JFEは休止予定を除いても高炉6基を保有
    • [110]北野嘉久氏 2030年代の高炉改修を電炉へ置き換えるかは未定と発言

JFEホールディングスの沿革2002〜2025年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
下垣内洋一川崎製鉄とNKK(日本鋼管)の経営統合とJFEホールディングス発足(2002年成立)新日鉄に対抗する「2位連合」はなぜ生まれ、鉄鋼業界の2極化を起こしたのか? 詳細を読む★★★
下垣内洋一両社の会社分割契約書締結を承認
下垣内洋一事業会社をJFEスチール・JFEエンジニアリング・JFE都市開発・JFE技研に再編★★
下垣内洋一無名の広州鋼鉄と組み中国で自動車用鋼板の現地生産に踏み出す垂直分業中国最大手と組む新日鉄をよそに、なぜJFEは実績ゼロの地方メーカーを選んだのか——名より実の海外戦略 詳細を読む★★★
數土文夫數土文夫が代表取締役社長に就任
數土文夫日立造船とJFEエンジの保有株式取得によりユニバーサル造船を子会社化★★
數土文夫JFE技研のエンジニアリング研究機能をJFEエンジへ移転
數土文夫JFE技研をJFEスチールへ統合
數土文夫インドJSWスチールとの包括提携世界再編に乗り遅れたJFEは、なぜ最後発でインドの民間鉄鋼大手と組み、高級鋼の技術供与で新興市場を取りに行ったのか 詳細を読む★★★
馬田一馬田一が代表取締役社長に就任
馬田一JFEスチールがJFE都市開発を吸収合併し保有不動産活用事業を承継
馬田一初の当期純損失を計上
馬田一川崎マイクロエレクトロニクス全株式をメガチップスに譲渡
馬田一JFE商事を株式交換により完全子会社化★★
馬田一ジャパンマリンユナイテッドを設立★★
林田英治林田英治が代表取締役社長に就任
柿木厚司柿木厚司が代表取締役社長に就任
柿木厚司初の最終赤字を計上(純損失▲1,977億円)★★
柿木厚司商号をジェイ エフ イー HDからJFEHDへ変更
柿木厚司倉敷の高炉1基を休止し大型電炉へ置き換える脱炭素の生産体制転換二酸化炭素削減のために主力の高炉を止めるか——鉄鋼2位が選んだ「脱高炉」への転換 詳細を読む★★★
柿木厚司京浜地区の上工程(高炉・製鋼)を休止★★
北野嘉久JSWと方向性電磁鋼板JV「J2ES」を設立
北野嘉久北野嘉久が代表取締役社長に就任
北野嘉久グループ事業利益倍増の長期ビジョンを公表
北野嘉久倉敷第3高炉をバンキング(一時休止)
出典・参考
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【沿革】
  • 週刊東洋経済 2002年11月2日号
  • 週刊東洋経済 2002年5月25日号
  • 日経ビジネス 2004年1月5日号
  • 日経ビジネス 2004年12月13日号
  • 週刊東洋経済 2002年9月21日号
  • 週刊東洋経済 2003年10月11日号
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第4期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第23期(2025年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(役員の状況)
  • 週刊東洋経済 2007年3月24日号
  • 週刊東洋経済 2009年12月5日号
  • JFEホールディングス 有価証券報告書 第14期(2016年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 週刊東洋経済 2015年7月17日号
  • 週刊東洋経済 2001年4月28日号
  • JFEホールディングス 有価証券報告書(連結損益計算書)
  • 週刊東洋経済 2022年9月17日号
  • 週刊東洋経済 2021年2月6日号
  • 週刊東洋経済 2023年9月30日号
  • JFEホールディングス 2024年3月期 決算説明会(2024年5月7日)

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