東京都新宿区で「いちから株式会社」を設立
VR元年と学生起業の交差点
2016年〜2017年は「VR元年」と呼ばれ、Oculus・PlayStation VR等の民生向けデバイスが相次いで投入されたタイミングだった。一方、後にVTuber業界の起点となる「キズナアイ」が2016年12月にYouTubeへ初投稿された時期でもあり、VR/MRと配信文化が交差する黎明期のスタートアップが立ち上がりやすい環境にあった。
田角陸氏は1996年2月生まれ・早稲田大学在学中で、VR・配信領域に関心を持つ学生として、当時のスタートアップ事業領域の中でVR/MRデバイス向けアプリ開発に注目していた。学生起業家がプライム上場規模に成長させる過程は、戦後の老舗・財閥系大企業が中核を占める日本市場で稀少な経路であり、創業初期の資本金100万円・社員1名・代表者21歳という出発点は、後のプライム上場企業群の中で異例の小規模スタートとなった。
VR/MR事業を主軸とした学生起業
2017年5月、東京都新宿区に「いちから株式会社」を資本金100万円で設立した。創業時の事業はVR(仮想現実)・MR(複合現実)デバイス向けアプリケーション開発であり、当時のVR元年ブームに乗る形で参入した。会社名「いちから」は「事業の出発点としての社名」を意味し、創業の起点としての象徴性が込められていた。
同年11月には新宿区から東京都渋谷区(IT・スタートアップ集積地)へ本店を移転、創業から5ヶ月で本社所在地を変える機動性を示した。事業領域はVR/MRと隣接する配信・コンテンツ領域も含めて検討されており、固定的な事業計画よりも市場機会を見極めて主軸を入れ替える経営姿勢が、創業時点から組み込まれていた。
事業転換の柔軟性を確保
創業時のVR/MRアプリ開発事業は、後の事業転換(2018年1月のVTuber事業立ち上げ)を経て主軸から外れることになる。だが創業期に学生起業として小資本・少人数で出発したことで、市場機会の変化に応じた事業の入れ替えが低コストで可能となり、後の急成長を支える基盤となった。
田角氏が創業から一貫してCEOを務め、後の上場時にも創業者個人で議決権の46.86%(FY21時点)を保有するオーナー経営の基盤も、この創業初期の資本構成によって決定された。
- 東京都新宿区で「いちから株式会社」を設立
- 本店を東京都新宿区から渋谷区へ移転
2017年5月の創業は、VR元年(2016〜2017)の業界ブームに乗ったスタートアップだったが、同社が後に主軸とするVTuber事業はまだ業界として確立していなかった。資本金100万円・社員1名・代表者21歳という小規模の出発点は、後にプライム上場する企業群の中では極めて異例である。創業時点で固定的な事業計画を持たず、市場機会に応じて主軸を入れ替える機動性を確保していたことが、創業8ヶ月後のVTuber事業への大胆な切り替えを可能にした。