2005
4月

山之内製薬と藤沢薬品工業が合併・アステラス製薬株式会社を発足

山之内製薬と藤沢薬品工業が合併

2004年2月に山之内製薬と藤沢薬品工業は、2005年4月を目処とした合併に基本合意したことを発表した。新会社の商号は「アステラス製薬株式会社」に決定し、2005年4月をもって合併した。

合併に至る背景

2005年を前後して国内の製薬業界では大規模な再編が進行した。医療用医薬品の開発に際して、開発費が高騰する趨勢の中で、グローバルで製薬業界の再編が進行。国内の医薬品メーカー(創薬企業)においても、巨額化する医療用医薬品の製造に対応するために、有力企業の合併が選択肢として浮上した。

国内の医薬品業界では、2005年4月にアステラス製薬(山之内製薬+藤沢薬品工業)が発足したのに加え、2005年9月には第一三共(第一製薬+三共)、2005年10月には大日本住友製薬(大日本製薬+住友製薬)、2007年には田辺三菱製薬(田辺製薬+三菱ウェルファーマ)がそれぞれ発足し、業界再編が進行した。

業界再編の流れに対して、独立経営の道を選んだ医薬品大手メーカー(創薬)は、武田薬品および塩野義製薬、外資企業からの出資を受ける道を選択したのが中外製薬であり、それぞれの企業で打ち手が割れた。

合併後の経営体制

アステラス製薬の発足に際して、合併比率は山之内製薬1に対して、藤沢薬品工業0.71に決定され、山之内製薬にとって有利な合併比率となった。ただし、合併時点における経営体制は2社から取締役(社内)がそれぞれ均等に選出されており、名目上は対等合併の形をとった。

1894年
藤沢商会を創業(のちの藤沢薬品工業)
1923年
4月
山之内薬品商会を創業(のちの山之内製薬)
2004年
2月
山之内製薬と藤沢薬品工業が合併で基本合意
藤沢薬品の合併比率 0.71 x
2005年
4月
アステラス製薬株式会社を発足
決算
アステラス製薬の業績
2006年3月期(連結)
売上高
8793
億円
当期純利益
1036
億円
営業CF
1401
億円
投資CF
-876
億円
財務CF
-767
億円
従業員数
14965
2006年4月
一般用医薬品子会社「ゼファーマ」を第一三共に売却
2007年12月
米Agensys社を買収
2010年6月
米OSI社を買収(敵対的買収)

アステラス製薬は約3500億円で米OSI社の買収(TOB)を決定。OSIはがん治療剤「タルセバ」をグローバルに展開しており、アステラス製薬としては手薄であった「がん」における治療薬の拡充を狙った。

決算
アステラス製薬の業績
2011年3月期(連結)
売上高
9539
億円
当期純利益
676
億円
営業CF
1006
億円
投資CF
-2426
億円
財務CF
-932
億円
従業員数
16279
2011年7月
過活動膀胱治療剤「ベニタス」を国内発売
2012年9月
前立腺がん治療剤「XTANDI」を米国発売(エンザルタミド)
2012年10月
過活動膀胱治療剤「ミラべトリック」を米国発売
2014年4月
2型糖尿病治療剤「スーグラ」を国内発売
2014年5月
前立腺がん治療剤「イクスタンジ」を国内発売
2016年2月
米Ocata社を買収
2016年12月
独Ganymed社を買収
2017年5月
欧Ogeda社を買収
2018年1月
米Mitobridge社とUC社を買収
2018年8月
英Quethera社を買収
2018年11月
B細胞性急性リンパ性白血病治療剤「ビーリンサイト」を国内発売
2018年12月
急性骨髄性白血病治療剤「ゾスパタ」を国内および米国で発売
2019年1月
米Audentes社を買収(AT132取得)

米国の医薬品ベンチャー企業・Audentes社を約3062億円(子会社取得による支出)で買収。同社では、希少疾患を対象とした治療薬「AT132」を開発中であり、開発の進展を見据えて買収を決定した。

ところが、2021年にAT132の臨床試験において死亡事例が発生。臨床試験の中断が決まり、2021年度にアステラス製薬はAT132の開発計画の修正による減損損失として312億円を計上した。

2019年
1月
米Audentes社を買収
子会社取得による支出 3062 億円
2022年
3月
臨床試験中の「AT132」で治験中断
AT132の開発計画見直しに伴う減損損失 312 億円
決算
アステラス製薬の業績
2019年3月期(連結)
売上収益
13063
億円
当期利益
2222
億円
営業CF
2586
億円
投資CF
-417
億円
財務CF
-2336
億円
従業員数
16243
2023年12月
米国にバイオテクノロジー拠点を新設
2023
7月

米IVERIC bio, Inc.を買収(ACP取得)

2023年にアステラス製薬(岡村直樹・社長)は、米国IVERIC bio社の買収を決断。取得価格は7641億円であり、明日テラスの歴史において最大規模の買収額となった。

IVERIC社は従業員数300名未満の中堅企業であったが、米国において加齢黄斑変性治療薬「ACP」の承認が目前となっていた。患者数も米国において100万人〜200万人と言われ、高齢化とともに患者数が増加するため、市場拡大が予想される治療薬であった。このため、アステラス製薬は米国における承認を期待し、巨額買収に踏み切った。

「イクスタンジ」の特許失効対策

アステラス製薬としては、2027年にイクスタンジの特許が失効するため、次の大型新薬の確保が最重要経営課題となっていた。

2023年
12月
IVERIC bio, Inc.を買収
子会社取得による支出 7641 億円
証言

決算
アステラス製薬の業績
2024年3月期(連結)
売上収益
16036
億円
当期利益
170
億円
営業CF
1724
億円
投資CF
-8458
億円
財務CF
6140
億円
従業員数
14754