リーマンショックによる不況で法人顧客の開拓で苦戦。Sansanは資金ショートし、給料の支払いが危ぶまれる状況に陥った(債務超過状態に陥ったと推定される)。会社側は資金繰りが苦しくなった時点で、その事実を株主に開示しなかった疑いがある。
法人存続のために、株主の赤浦氏が第三者割当先を開拓。2009年にサイバーエージェントやGMOなどから5000万円の調達を実施して、財務状況を改善した。
でも実はですね、Sansanは1度、お金がショートしているんです。ショートしそうだったときに言ってくれないからショートした。
Sansanは徐々に普及したが、データベース設計において名刺の名寄せが考慮されておらず「一人の人物に対して、複数の名刺データが存在するが、紐付けがなされていない」状況となり、テーブル設計の欠陥が露呈した。
そこで、従来は名刺の読み取りの度にUserデータを生成していた方針を転換し「人物を主体としたデータベース設計」に移行する。この結果、競合製品との差別化(競合は名寄せに問題があるテーブル設計を採用)を果たし、Sansanが名刺管理市場でシェアを獲得する原動力となった。
この後Sansanによく似たサービスが市場に出てきたが、データ管理の中心にあったのは名刺で、人物ではなかった。結果的に、この判断が競合製品との差別化につながった
Sansanは企業向けのプロダクトであったが、ビジネスパーソンが個人で名刺を管理できる「Eight」の提供を開始。なお、プロダクト技術には、当時、webフレームワークの主流になりつつあったRuby on Railsが採用された。
マネタイズの観点では、ビジネスパーソン向けのSNS「LinkedIn」をよく研究しています。協業できる部分があれば一緒にやりたいですね。2〜3年後には上場も視野に入れています。米Facebookや米Twitterは、一つのサービスで世界に出て成功しています。もちろん、我々も名刺管理一本で世界に出ていきます。
名刺入力は、海外やクラウドソーシングを活用していたが、入力コスト低減のためにオペレーションの改善チームを発足
それから僕らの場合は、いわゆるテクノロジーだけじゃなくて名刺を手で入力をするというのがあって、これ、ものすごく大変なんですよ。もう本当に大変。4年ぐらい前までは、「ヤバい、大洪水だ」ということがあると、夜中にみんなで手作業で入力するぐらいの感じでした。名刺の入ってくる流量に対して処理できないとか、コスト爆発みたいなこととか、そういうものに対処していくのは大変でした。今でいうチャーンレートもね、「名刺をスキャンしたらデータ化してPCと携帯で見れるんですよ、便利でしょ」と言って導入してもらっても、「そんなデータ、これじゃ誰も使わんでしょ」とか言われたりね。
いろいろな会社に行って「名刺を出してください」って言って、机の引き出し開けて勝手にスキャンするとかね。毎日10時間スキャンするとかしていましたからね、僕ら。とにかくどうやって使ってもらうかを含めて、毎日まいにち全部に必死でした。
優先株式の発行による第三者割での資金調達を志向。上場までにB種〜E種までの株式を発行
Sansanの認知度を拡大するために、テレビCMの放送を開始。当時はBtoB商材のテレビCMは珍しかったため、この分野の先駆者であるOBC(会計ソフト)を参考に投資を決定した。資金調達額の大半を広告宣伝費として投下
OBCに行って聞いたら、使っている金額がヒト桁億円だったんですよね。「その金額に対してあれだけインパクトがあるのか」と思って、やりようがあるんだろうなと思いました。クリエイティブがキーだろうな、とかいろいろ考えたりね。当時はSaaSのマトリクスなんて概念がなかったんですね。それこそ「売り上げいくらです」って言ったら、SIの売り上げと比較されちゃうぐらいの時代ですから。そこの違いも誰も分かっていないっていう時代でした。でも、こっちは自分たちである程度わかっていて、手元のチャーンレートと単価、それに対する粗利、それからライフタイムバリューを考えたら、このぐらい取れるんだな、そうしたらCMに5億円を使ったとしても、200件の新規顧客が取れれば元が取れるじゃんって。どう考えても200件取れるよねと。
スピーチやIR(決算説明会)を書き起こしてwebに公開するサービスを展開するログミーの買収を決定。同社の株式70.1%を取得しており、取得原価は非開示。
ログミー社の官報によれば、2020年7月時点で総資産9900万円に対して、年間当期純損失1423万円、自己資本比率15%(純資産1293万円)であり、赤字が続けば翌2021年までに財債務超過に陥る状況であったと推定される。
なお、買収前後でSansanの無形資産に有意な変動はないため、経営不振のログミーを救済する意図(0円買収の可能性もある)であったと思われる。また、買収によるログミー社から引き継がれた債務の処理状況は不明である。
広告事業の失敗で財務危機に陥っていた上場企業Fringe81(2020/12時点の自己資本比率0.9%)の救済を決定。同社の第三者割当増資による引受を決定し、19億円を投じてFringe81の株式を取得した。なお、投資額が大きいことから、Sansanは日本政策投資銀行(DBJ)と共同で第三者割当増資の引き受けを行うスキームを構築した。
Sansanとしては、Fringe81が注力する非広告事業(unipos)をグループ会社で展開する新規事業として取り込みたい意図があった。
業務資本提携の契約では、Fringe81がUnipos事業を軌道に乗せた時点で、SansanがA種優先株式の取得請求権を行使し、Fringe81を子会社化する条項が付与されており、子会社化後もFringe81を上場維持する記載がされている。つまり、SansanとしてはUniposの事業が軌道に乗った時点で、同社を買収し、親子上場というガバナンス上の欠陥を抱えることを許容している。