ソロモンブラザーズアジア証券に勤務していた金子英樹氏と三上芳宏氏により設立された。創業当初は大手証券会社向けに、ソロモンで使用したような証券システムを納品するなど、業務によって得たノウハウを転用した可能性がある
2000年時点におけるシンプレクスの代表取締役社長は三上芳宏氏であり、金子英樹氏がシンプレクスの代表取締役社長に就任したのは2002年からである。交代の経緯は不明だが、一般的にシンプレクスの創業者は「金子英樹氏」とされる。
優秀な人材を確保するために、新卒採用を本格化させた。なお、新卒採用開始から7年が経過した2007年3月期における給与データは、従業員数160名に対して平均年齢31.8歳、年間平均給与792万円であった。
創業以来、シンプレクスは証券会社向けの業務システムとしてディーリングシステムの開発が主力事業であったが、2003年に日興コーディアル証券から個人向けの売買システムを受注。インターネットを活用した個人による金融商品取引が拡大するする中で、シンプレクスは個人取引における実績作りに成功する。
東証一部に上場。上場時点(FY2005)における顧客は日興ソリューションシステム、ソニーファイナンス、大和証券、大和証券SMBC、松井証券、みずほインベスターズ証券、三菱UFJ証券など。
かねてより取引のあった松井証券から、ネット証券システムを受注。従来の取引システムは、デイトレード限定であったが、夜間先物取引や無期限信用取引など、新機能を開発している。なお、2006年3月期における松井証券向けの販売実績金額は5.3億円であり、当時のシンプレクスの売上高の約10%に相当した。
新卒を中心とした大量採用を開始。2009年3月末時点の従業員数は236名に対し、2012年3月末には609名へと大幅に増加した。しかし、社員数を拡大した一方、売上増加に結び付かず1人当たり売上高が低迷。人件費が営業利益を圧迫するなど、高収益体質の持続が難しい状況に陥った。
スター為替証券のFX取引でシステム「くりっく365」において障害が発生し、サービスが一時停止。完全停止の期間は2011/8/1(明朝深夜)〜8/3(14時)であり、完全復旧は8/8。この間、利用者に対して「取引ができない」という影響が発生した。スター為替証券は関東財務局より「業務改善命令」を受けた。
このため、開発元のシンプレクスは、保険適用を加味しつつ損害賠償金を「障害損失引当金」として計上した。一方、2013年にスター証券は、シンプレクスに対して損害賠償請求訴訟を提起し、36億円の損害賠償を求めた。
FY2011の営業利益は19.9億円で、前年比▲22.2%の大幅減益となった。不採算案件が3件発生(スター為替証券向け案件と推察される)したことによる減収が主要因であった。
減収に歯止めをかけるために、シンプレクスの経営陣はMBOによる経営再建を決定。6/13の取締役会にて新設するSCKホールディングスがシンプレクスの株式を100%取得する方針を決定した。
SCKホールディングスには「刈田アンドカンパニー系ファンド」と「カーライル系ファンド」が、それぞれ50%を折半出資し、再上場ないし売却による利益の確保を目論んだ。SCKホールディングスによる既存株主からの取得総額は最大255億円を想定。
カーライルはシンプレクスの経営再建が完了したと判断し、シンプレクスとSKホールディングスの合併を決定。保有株式を刈田・アンド・カンパニーと日本政策投資銀行に譲渡した。一連の取引により、シンプレクスはのれん364億円を計上し、FY2023に至るまでのれんを保持(IFRSのため償却なし)。同時に銀行からの借入を実施した(詳細不明)。
FY2016〜FY2017にかけて、単体ベースで最終赤字に転落
FY2016〜FY2017にかけて、単体ベースで最終赤字に転落
三菱UFJ銀行をアレンジャーとして、リファイナンスを実施。借入額は215億円であり、MBOにより抱えた巨額なのれんをバランスさせる措置であったと推定される。借入条件として「2期連続して税引後当期純損失を計上しないこと」といった条項が設定された。担保としてシンプレクス株式会社の株式が設定され、株式上場を行った場合は担保設定が撤廃される契約であった。
MBOによる経営再建を終え、2021年に東証一部に株式上場を果たした。上場直前の株主構成は「刈田・シンプレクス投資事業有限責任組合20.1%」「金子英樹20.73%」「五十嵐充11.66%」。FY2021時点でMBOによる発生したのれんを364億円(資産合計669億円)を計上しており、減損リスクを抱える。
なお、刈田系ファンドが保有する株式の市場売却が上場の目的であり、シンプレクスHDとしての調達額は0円であった。経営陣は、シンプレクスHDの現金控除後の借入金は110億円(MBOによる)であり、年間FCF50億円であることから、市場からの調達ニーズはないと判断した。
市場で売買する投資家からすれば特殊な上場案件であるため、事前に金子氏は海外の機関投資家を中心に上場の理由を説明したという。