計画策定の背景
日本触媒は戦後の化学工業成長期において、アクリル酸(AA)および高吸水性樹脂(SAP)といった基礎化学品を軸に事業基盤を確立し、需要拡大局面では設備増強と供給能力の拡大によって成長を遂げてきた。特に1980年代から本格展開しているSAPは、P&G向けの紙おむつ需要の拡大を背景に長期的な成長事業となり、同社の収益とキャッシュフローを支える中核事業として機能してきた。一方で、事業特性上、投資判断は市況や需給見通しに強く依存し、グローバルでの供給能力増強が進む中では価格変動リスクと、設備投資による資本効率の低下を内包する構造でもあった。
2000年代以降、中国を中心とした生産能力の急拡大や市況変動の影響により、マテリアルズ事業は安定収益源であると同時に、成長と資本効率の両立が難しい事業へと性格を変えていった。こうした環境変化に対し、日本触媒は機能性材料やライフサイエンス分野への展開を進めてきたが、事業化や収益貢献のスピードは限定的であり、前中期経営計画では利益目標やROE・ROAが未達となった。この結果を踏まえ、同社は従来の量的拡大を前提とした成長モデルを見直し、2030年を見据えた事業ポートフォリオ転換を本格化させる局面として、中期経営計画2027を策定した。
経営の基本方針
中期経営計画2027では、マテリアルズ事業に依存した収益構造から段階的に脱却し、ソリューションズ事業を成長の中核に据えることを経営の基本方針としている。スペシャリティ、エレクトロニクス、電池、健康・医療といった分野に対しては、研究開発と設備投資を一体で進め、事業化までのリードタイム短縮と収益貢献の早期化を図ることで、利益構成の転換を進める方針を明確にしている。
同時に、マテリアルズ事業については、需要動向を踏まえた生産体制の最適化とコスト競争力の強化を通じて、安定したキャッシュ創出力を維持し、その資金を成長事業へ再配分する役割を担わせる。各事業のROICをモニタリングし、投資回収を前提とした資本配分を徹底することで、2027年度に営業利益350億円、ROIC6%以上、ROE7%以上の達成を目指す。本計画は、市況回復を前提とした短期的な業績改善ではなく、日本触媒が長期的に持続成長できる事業構造へ移行するための転換点として位置づけられている。