システム開発会社の株式会社アイネス(証券コード:9742)は、デビットカードによる決済代行に参入するために1999年9月にシー・オー・シーを設立。設立時点の資本関係は不明だが、2005年時点でアイネスがシー・オー・シーの株式46.8%を保有しており、実質的な支配関係にあることから子会社として運営していた。2010年にGMOに売却するまで、アイネスの決済事業子会社としての位置づけとして経営された。
株式会社シー・オー・シーはアイネスの子会社として経営された関係から、歴代の代表取締役社長はアイネスの取締役が担当した。
2005年5月〜:花崎勝吉(アイネス取締役を兼務)
2009年5月〜:田上賢三(アイネス常務を兼務)
※2005年以前の社長は不明
2000年前後に日本国内では「欧米のようにデビットカードが普及する」と考えられており、銀行口座を連携するために国内の銀行が参加したJ-Debitも誕生した。
ところが、日本国内では2000年代を通じて交通系ICカードが急速に普及したことや、加盟店開拓の面でJ-Debitが苦戦したこともあり、デビットカードは普及しなかった。加えて、最大の強豪である、日本のクレジットカード会社はポイント還元が盛んに行われたこともあり、デビットカードを選択が決済の主流として定着することはなかった。
この結果、2001年にシー・オー・シーはクレジットカード決済に参入するものの、すでに先発企業が存在する市場であり、芳しい業績を残すことは叶わなかった。
2000年代を通じてシー・オー・シーの事業展開は不審に終わっており、2009年12月に親会社のアイネスはシー・オー・シーの株式売却を決定し、3100万円の売却損を計上した。決済の黎明期において、主流となる決裁を読み間違えたことで、厳しい結果に終わった。
GMOペイメントゲートウェイは、アイネスより株式会社シーオーシーの株式を推定46%取得。同社の商号をGMOフィナンシャルゲートに変更し、ペイメントゲートウェイから高野明氏を社長として送り出した。同社の経営状況は悪く、2010年代前半は債務超過の状態であった。
私自身は社会人になってから営業一筋でやってきました。カシオ計算機を皮切りにさまざまな会社で営業を軸に仕事をしてきましたが、2010年に前身の会社がGMOインターネットグループ入りしたタイミングで入社し、社長に就任することになりました。当時、GMO-PGを率いていた相浦社長に、業績低迷していた当社を、営業力を活かして立て直してほしいと請われたことがきっかけです。私も相浦社長もかつては日本IBMに所属し、同じチームで仕事をしていたというご縁があったのです。
債務超過を解消するため、GMOフィナンシャルゲートウェイはベンチャキャピタルからの資金調達を実施。三菱UFJキャピタルの清水孝行氏が投資を決断した。その後、三菱UFJキャピタル以外の銀行系のVCからも調達に成功し、財務状況の改善を試みた。
私が社長に就任してからも業績は芳しくなく、資金繰りには非常に苦労しましたね。2011年、これ以上の銀行借入は、当社の赤字と債務超過が親会社であるGMO-PGの連結対象に移転されてしまう状況に陥り、自力での資金調達が必要という局面に立たされたときに、成長をコミットしたうえで資金調達をする選択肢が浮かび上がりました。真の意味で背水の陣というわけです。そのときにGMO-PGの相浦社長に「いい人がいる」と紹介されたのがMUCAPの清水さんでした。
開示資料によれば、FY2013時点で2000万円の債務超過。売上高2.2億円に対して経常損失▲0.2億円
2012年にUCカードと加盟店契約を締結していたが、2014年に大手クレジットカード会社である三井住友カードとの包括代理店契約を締結
FY2015にGMOフィナンシャルゲートが黒字転換したことを受けて、筆頭株主のGMOペイメントゲートウェイ(相浦社長)はGMOフィナンシャルゲートに対する投資を強化。株式を追加取得することで完全子会社化(49.6%→65.0%)し、連結子会社として端末決済を担う企業として経営することを目論んだ。また、GMOフィナンシャルゲートウェイは、GMOペイメントゲートウェイと取引があったグローバルカードサービス(以下GCS)の買収を画策し、端末決済の領域をフィナンシャルゲートを中心に担う体制に転換することを目論んだ。
GCSは2008年に決済における加盟店募集の代行会社であったと推察される。2008年に東京クレジットサービス株式会社と加盟店募集の代行に関する契約を締結し、2014年には楽天ファイナンス(包括代理加盟店契約)やトヨタファイナンス(加盟店募集医薬契約)といった大手企業とも契約を締結していた。
FY2015にGMOフィナンシャルゲートは黒字化を達成して債務超過状態を解消したものの、依然としてキャッシュに乏しい状況であった。自己資本比率はFY2015末時点で38.8%(総資産6.7億円・純資産2.6億円)であり、GCSの買収費用を捻出するのは難しかったと推察される。
そこで、GMOフィナンシャルゲートへは、親会社のGMOペイメントゲートウェイへの第三者割当増資を実施して買収資金を確保した。増資による資金調達によって、GMOフィナンシャルゲートは、GCSの株式100%を7.7億円で取得した。
提携に先立つこと2015年に、SMBCグループはGMOペイメントゲートウェイを決済パートナーとして協業することを決めていた。三井住友カードとしては自前でECなどのネットに対応した決済を構築することが難しく、EC向けで実績のあったGMOペイメントとの協業を選択。三井住友銀行51%・GMOペイメントゲートウェイ49%の出資で、SMBC GMO PAYMENT株式会社を合弁設立した。この合弁会社設立が、GMOペイメントゲートウェイと、三井住友フィナンシャルグループとの結びつきが深まる契機となった。
2018年にSMBCグループの三井住友カードは、GMOペイメントゲートウェイおよびGMOフィナンシャルゲートと協業して、次世代の店舗向けの決済端末の開発に乗り出す方針を発表。その後VISAジャパンが加わり、店舗向け決済端末Steraの開発へとつながっていった。
Steraの狙いは、キャッシュレスの普及により、店舗レジ周りが複雑化する問題を解消することで、その対価として決済ネットワークの利用にかかる収入でGMO・三井住友カード・VISAの3社で独占することにあった。Steraではあらゆる決裁を1つの端末で処理できる点を訴求。ECはGMOペイメントゲートウェイ、店舗決済ではGMOフィナンシャルゲートが役割を担い、決裁ネットワークを三井住友カードとVISAが担当する座組みとなった。Steraの由来は「steer era(新時代の舵を切る)」による
2020年6月から三井住友カード・GMOペイメントゲートウェイ・GMOフィナンシャルゲートの3社は、加盟店に対する店舗端末Stera Terminalの設置を開始した。市場投入に先立つこと2019年に、三井住友カードの大西社長(当時)は「日本のキャッシュレスをリードする」と意気込むなど、期待がかかったプロジェクトであった。
GMOフィナンシャルゲートはSteraの店舗端末における決済センターを担っている。端末の製造元はパナソニックであり、フィナンシャルゲートは決済というトランザクションベースの付加価値に特化したと思われる。
GMOフィナンシャルゲートにおけるStera関連の収益は非開示のため不明である。ただし、FY2023の決算説明会の開示において、GMOフィナンシャルゲートは売上総利益の減少要因について「低粗利率端末であるsteraの売上構成比率上昇」と明記しており、Steraとの協業は粗利率を悪化させる要因になっていると推察される。