計画策定の背景
日産化学は1887年の創業以来、基礎化学から農薬、機能性材料へと事業領域を拡張してきたが、1970年代以降の石油化学市況悪化を受け、1988年に石油化学事業から完全撤退するという抜本的な構造転換を経験した。この撤退を契機に、同社は規模拡大型の化学メーカーではなく、研究開発力を基軸とする高付加価値型企業への転換を明確にし、農薬、医薬、機能性材料といった分野に経営資源を集中してきた。その結果、ニッチながらも高収益な製品群を積み重ね、安定したキャッシュフロー創出力を確立してきた。
2010年代以降は、半導体材料や農業化学品を中心に成長を加速させ、Vista2027 Stage I(2022〜2024年度)では収益性・資本効率・株主還元の全指標を目標通り達成した。一方で、成長分野への投資拡大に伴い、事業選別や投資回収のスピードを一段と高める必要性も顕在化した。こうした状況を踏まえ、日産化学は2030年を見据えた成長の礎を築くフェーズとして、Vista2027 Stage IIを策定した。
経営の基本方針
Vista2027 Stage IIでは、機能性材料および農業化学品を中核事業と位置づけ、半導体材料、新規農薬、新剤・動物薬といった成長分野に経営資源を集中的に投下する方針を明確にしている。研究開発から設備投資までを一体で設計し、Go/Stop判断の迅速化によって新製品創出の確度とスピードを高めることで、既存事業の利益拡大と次世代製品の育成を同時に進める。
同時に、成熟事業や収益性の低い領域については、固定費削減や外部委託、不採算製品の整理を通じて収益構造を改善し、全社として20%以上の営業利益率を維持する体制を構築する。財務面では高い資本効率とキャッシュ創出力を前提に、成長投資と総還元性向75%以上の株主還元を両立させる。Vista2027 Stage IIは、売上規模の拡大を追う計画ではなく、高収益体質を持続させながら次の成長ドライバーを育てるための中期戦略として位置づけられている。