2024/3 売上高2,267億円YoY+10.9%
2024/3 営業利益380億円YoY+17.9%
2024/3 従業員3,137
創業18871949年上場)
創業地東京都
創業者高峰譲吉・渋沢栄一・益田孝

高峰譲吉・渋沢栄一らが東京人造肥料会社として設立し、日本初の化学肥料メーカーとして出発した。日産財閥傘下を経て戦後に独立し、一九六五年に石油化学に進出したが二期連続赤字を経験して一九八八年に完全撤退した。撤退後は農薬・医薬品・機能性材料への集中投資に転換し、インテル向け半導体材料や液晶配向膜材料で高収益体質を確立した化学メーカーである。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高

歴史概略

第1期: 化学肥料から石油化学へ(1887〜1987)

東京人造肥料の設立と日産財閥傘下

一八八七年二月に高峰譲吉・渋沢栄一・益田孝ら財界人が化学肥料の国産化を計画し、東京人造肥料会社を設立した。明治時代を通じて肥料会社が全国各地に出現し競争が激化する中、一九二三年に東京人造肥料・関東酸曹・日本化学肥料の三社が合併した。一九三七年十二月には日産財閥傘下に入り「日産化学工業」として再出発した。

一九四九年に東京証券取引所に上場し、企業再建整備法により油脂部門を「日油」として分離した。戦後は基礎化学品と農薬を両輪とする事業構造で成長を続けたが、他の財閥系化学メーカーが石油化学に参入する中、日産財閥の完全解体により財務的後ろ盾を持たない日産化学は後発参入の道を選ばざるを得なかった。

有価証券報告書 沿革

石油化学への後発参入と二期連続赤字

一九六五年に日産化学石油を設立して石油化学に進出し、技術難易度の高い塩化ビニール・ポリエチレン・高級アルコールに特化することで先発企業との差別化を図った。しかし一九六九年には埼玉工場を新設し、同年に王子工場を閉鎖して袖ヶ浦工場に移転するなど生産体制の再編に追われた。

一九七三年のオイルショックを機に石油化学業界全体で過剰生産が深刻化し、日産化学も販売不振と売価下落に直面した。一九八二年三月期と一九八三年三月期の二期連続で最終赤字に転落し、累計損失は五十七億円に達した。後発参入企業として規模の経済で対抗する見込みが乏しく、石油化学事業の存続可否そのものが経営の焦点となった。

有価証券報告書 沿革日経ビジネス 1994/5/2

第2期: 石油化学撤退と高付加価値路線への転換(1988〜2009)

中井社長の決断と完全撤退

一九八八年に社長の中井武夫氏は石油化学の全三部門からの完全撤退を決断した。塩ビ部門は東ソー、高級アルコール部門は協和発酵、ポリエチレン部門は丸善石油化学にそれぞれ事業ごと売却する方式を採った。一九八〇年から合弁方式による段階的な事業移管を開始しており、八年間の準備期間を経て市況好転期に売却を完了した。

中井社長は「撤退は単なる縮小ではなく転換である」と位置づけ、農薬事業を核としたファイン化路線を撤退後のシナリオとして社内に明示した。副社長の徳島氏が約千名の社員と直接対話して改革の必要性を浸透させ、社員の反発を招くことなく撤退を完了した。主力事業を丸ごと手放すという石油化学業界でも類を見ない意思決定であった。

日経ビジネス 1994/5/2

農薬・医薬品・機能性材料の三本柱

撤退後の一九八九年に中期五カ年計画を策定し、農薬・医薬品・機能性材料の三分野に集中投資する方針を打ち出した。農薬部門では一九八九年にシリウス、一九九一年にサンマイト、一九九四年にパーミットを相次いで発売した。医薬品分野では一九九四年にランデル、二〇〇三年にリバロを投入し安定的な収益基盤を構築した。

機能性材料分野では一九八九年に液晶向け配向膜材料、一九九八年に半導体向けコーティング材料に参入した。二〇〇一年に研究開発組織を再編し、液晶パネルと半導体材料の開発体制を強化した。一九九三年三月期には過去最高益となる経常利益五十四億円を達成し、石油化学撤退からわずか五年で収益構造の転換が数字に表れた。

日経ビジネス 1994/5/2有価証券報告書 沿革

第3期: グローバル展開と事業の深化(2010〜現在)

農薬事業の海外買収と拡充

二〇〇一年に韓国、二〇一〇年に台湾、二〇一四年に中国上海、二〇一七年に中国蘇州と相次いで現地法人を新設し、アジアを中心としたグローバル展開を進めた。農薬事業では二〇〇二年に日本モンサントから除草剤事業を買収し、二〇一〇年には米ダウアグロサイエンスから殺菌剤事業を取得した。二〇一九年には米コルテバ社から殺菌剤「キノキシフェイン」事業を買収した。

農薬の海外買収は自社開発品の販路を拡大するとともに、外部から製品ラインナップを補強する両面の効果を持った。ニッチな作物・用途に特化した製品群により、市場規模は限定的ながらも高い利益率を確保する戦略が一貫して維持されている。

有価証券報告書 沿革

基礎化学品の整理と商号変更

二〇一八年に「日産化学工業」から「日産化学」へ商号を変更し、工業会社としての旧来のイメージからの脱却を図った。二〇二二年には基礎化学品であるメラミンの生産を停止し、石油化学撤退後に残った基礎化学品事業の整理をさらに進めた。二〇二三年には日本燐酸株式会社を買収して肥料事業の基盤を補強した。

二〇二四年三月期の売上高は二千二百六十七億円、営業利益は三百八十億円であり、営業利益率は約一七パーセントに達する。石油化学からの撤退と高付加価値品への転換により、規模ではなく利益率を重視する経営方針が数字に結実している。農薬・機能性材料・医薬品の三分野で研究開発力を競争力の源泉とする体制は、中井社長の撤退決断から三十五年を経て確固たるものとなった。

有価証券報告書 沿革有価証券報告書

沿革

沿革一覧
4divestiture
石油化学から完全撤退(塩ビ・ポリエチレン・高級アルコール)
不況期の撤退決断と好況期の売却完了を可能にした8年間の合弁移管
4
中期5カ年計画の策定・高機能材に積極投資
主力事業喪失の危機感が社員の士気を高め新製品開発を加速させた逆説
2

取締役人事

FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
藤本修一郎
社長
社長
木下小次郎
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
社長
八木晋介
社長
社長
社長
社長
社長
社長常務以上取締役監査・社外社長交代
FY24
社長 八木晋介

重要な意思決定

1988
石油化学から完全撤退(塩ビ・ポリエチレン・高級アルコール)

日産化学の石油化学撤退が円滑に進んだ要因の一つは、1987年から1988年の市況好転期に売却を完了した点にある。不況期に撤退の布石を打ち好況期に売却を実行するという時間差は、1980年から合弁方式で段階的に事業を移管していた8年間の準備期間があって初めて可能となった。後発参入ゆえに規模の経済で対抗できないという構造的劣位の認識が撤退判断の根底にあり、この認識が農薬・機能性材料を核とする高収益体質への転換起点となった。

1989
中期5カ年計画の策定・高機能材に積極投資

石油化学撤退後の日産化学では、社員が「目の色を変えて」新規事業に取り組んだと中井社長が述懐している。主力事業を失うという存亡の危機が、逆説的に組織の活性化と個人能力の発揮を促した構造がある。農薬・医薬品・機能性材料の3分野で約10年間に主力製品を揃えた開発速度は、石油化学時代の日産化学では実現し得なかったものであり、事業撤退が研究開発型組織への変質を不可逆的に促した因果関係を示唆する。

全社の業績指標

売上高(長期)売上高(2025/3)2,267億円
純利益(長期)当期純利益(2025/3)380億円
売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結
売上高億円---1,6141,6911,7441,6921,6021,4901,5421,4861,5381,6371,7121,7691,8031,9342,0492,0682,0912,0802,2812,2672,514
売上原価億円---1,1001,1371,1731,0911,0729539999809861,0331,0621,0611,0591,1351,1991,2241,2141,0691,2131,2191,348
売上総利益億円---5145555716015295375435065526046507077447998508458771,0111,0681,0481,165
販売費及び一般管理費億円---341338362353355345345351356381397421429449479458452501545566597
営業利益億円---173217208248174192198155195222253286314350371386425510523482568
営業外収益億円---242526263425202326302925232931262838505343
営業外費用億円---232922294024251917151916201711131411151931
経常利益億円---174213212244169192194159205237264295317362391400439537558516580
特別利益億円---1668--17---31---181634151353
特別損失億円----115101466---1143---8-2971239
当期純利益億円---113137140155101128130110139167182224240271294308335388411380430
粗利率%---31.932.832.735.533.036.035.234.035.936.938.040.041.341.341.540.842.048.646.846.246.4
営業利益率%---10.712.812.014.610.912.812.910.412.713.614.816.217.418.118.118.720.324.522.921.322.6
経常利益率%---10.812.612.214.510.512.912.610.713.314.515.416.717.618.719.119.321.025.824.522.823.1
純利益率%---7.08.18.09.26.38.68.47.49.010.210.612.613.314.014.314.916.018.618.016.817.1
総資産額億円---1,6941,8321,7731,7271,7231,8141,8341,9011,9922,0802,2392,2822,3172,4902,4702,4952,6552,7972,9873,2353,308
自己資本億円---7859209801,0019561,0731,1131,1861,2561,3661,4981,5541,6201,7461,8031,8391,9882,0592,1842,2752,333
自己資本比率%---46.450.255.358.055.559.160.762.463.065.666.968.169.970.173.073.774.973.673.170.370.5
営業CF億円116144195190236198190146266249219228238205300325377321356399419352337592
投資CF億円-157-259-55-56-135-109-146-110-154-85-99-93-135-81-84-132-152-109-156-129-124-196-187-176
財務CF億円5765-118-150-62-63-72-8-62-96-52-101-118-121-173-190-203-226-252-256-279-250-221-356

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
セグメント別ROIC%
業績データ一覧
セグメント業績
FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
化学品事業億円830892----297287261265251252257255260249219260265235252
農業化学品事業億円647655----322316329362422437478543575587575580703674707
医薬品事業億円2751----951001261158887807570696666676259
その他の事業億円11093----1351141091141031051019610210397109121112115
全社(セグメントなし)億円--1,7441,6921,6021,490---------------
機能性材料事業億円------323292328376437458464520557578626697662672736
卸売事業億円------370378384405412430423445486482508596755783904
セグメント別利益
化学品事業億円146158----2416191919393834301415381402
農業化学品事業億円2541----4844506292108132164184193182183231234256
医薬品事業億円-513----444653492320171210949302819
その他の事業億円87----10378651069787966
全社(セグメントなし)億円--208248174192---------------
機能性材料事業億円------79487288120120125142150174224277254225290
卸売事業億円------141314151718171820212529373741
セグメント別利益率
化学品事業%17.617.7----8.25.67.37.27.615.614.913.311.75.56.814.65.20.20.7
農業化学品事業%3.86.2----15.014.115.317.221.924.827.630.231.932.931.631.632.934.736.2
医薬品事業%-19.325.4----46.046.641.743.026.423.120.816.514.413.65.414.444.945.232.1
その他の事業%6.97.6----7.52.76.36.65.64.59.66.39.16.88.66.47.35.15.2
全社(セグメントなし)%--12.014.610.912.8---------------
機能性材料事業%------24.516.521.823.427.526.227.027.326.930.035.839.838.433.539.4
卸売事業%------3.73.63.53.74.14.24.04.14.24.44.94.94.94.74.5
セグメント別ROIC
化学品事業%15.5--------------------
農業化学品事業%3.5--------------------
医薬品事業%-13.2--------------------
その他の事業%7.5--------------------
全社(セグメントなし)%---------------------
機能性材料事業%---------------------
卸売事業%---------------------

出所