2005年9月、丹下大氏は東京都渋谷区に株式会社SHIFTを資本金700万円で設立した。同志社大学工学部を1997年に卒業後はフリーターとなり、2000年に京都大学大学院工学研究科を修了しインクス(現SOLIZE)へ入社した。"プロセステクノロジー"の特許を取得し、3人のチームを売上50億円・140名へ育て、個人で2億円のコンサルフィーを稼いだ。2004年、29歳で退職を決意する。インクスで社長になるには早くても20年はかかると見立て、20代の起業は経験知不足、40代以降は体力不足のリスクがあると考えた。辞めるとローンが組めないため在籍中に自宅マンションと高級外車を買い、翌朝辞表を出した。社名の"シフト"は日産のCMから思いつき、就職氷河期の第二次ベビーブーム世代が価値観を動かす意を込めた。創業時の主事業もインクスと同じ製造業向けコンサルティングで、ソフトウェアテストとは無縁だった。
創業から4年余、SHIFTは製造業の生産プロセス改善を主力としたが、事業は一つに定まらなかった。創業2年目くらいから採用を始めた丹下大社長は、コンサルティングと並行して携帯電話のGPS機能を使ったSNS事業やレンタル事業を立ち上げたが、いずれも半年ほどで撤退した。BtoCは自社に向かないと判断してBtoBへ集中する過程で、18名まで増えていた社員は12名に減った。転機は、ある大手ネット企業から請け負った社内テスト部隊のコンサルだった。丹下大社長の目に、テストの現場はほぼ人力で効率化がまったくなされていないものと映った。仕組み化できれば確実に競争優位に立てると見て、2009年後半に主力事業をソフトウェアテストへ移し、同年11月にソフトウェアテスト事業部を設立した。
最初の受注は2010年3月、東北地方に本社を置く医療施設向けシステム会社の案件である。事業を始めるにあたっては、1人1時間あたり1,480円でテストすると書いたチラシを1,000枚ほど配った。当初のテスト拠点は赤坂のマンションの一室に置いた。丹下大社長は1人当たり250万円のフィーという従来のコンサル型はこの市場に合わないと考え、テストの工程そのものを仕組み化・IT化し、業界を問わず格安で提供する売り方を選んだ。SHIFTは2010年9月に北海道札幌市へ札幌テストセンターを、2011年12月に福岡テストセンターを開設し、首都圏の外にテスト人材を置いた。2010年11月にはソフトウェアテストの適性能力を測定する"CAT検定"をリリースし、同じ"CAT"の名でテスト活動を統合するクラウドシステムも自社開発した。
CAT検定の狙いは人材の標準化にある。丹下氏はインクス時代、オペレーションを簡素化して標準化し、ツールを押せば誰でもコンサルティングできる仕組みを作っていた。丹下大社長はその標準化をソフトウェアテストの人材に当てはめ、適性能力を測る"CAT検定"を設けた。新規採用したエンジニアを社内研修と検定を経て3カ月〜半年で現場に投入できる体制は、テスト需要の急増に応じた人材供給を可能にし、その後の事業規模拡大の基盤となった。丹下大社長は2020年の取材で、本当にテストに必要なスキルを持つエンジニアが必要な時に必要な人数だけオンデマンドで供給される体制を事業モデルの中核として語っている。連結従業員数はFY15の233名からFY20の2,958名へ5年で12.7倍に拡大した。FY25には連結11,688名(うち単体6,201名)に達し、創業20年で1万人企業の規模となった。
2012年9月にはシンガポール共和国にSHIFT GLOBAL PTE. LTD. を設立し、初の海外拠点を開設した。同年3月には三井物産、NTTインベストメント・パートナーズなどから総額4億7,200万円の増資を受けた。2012年12月の取材の時点で、スタッフは280名、サービス導入企業は約120社、テスト拠点は東京・札幌・福岡とインドに広がっていた。同じ取材で語った市場観は、国内のソフトウェアテスト市場4兆円のうち外部へ発注されて表に出ているのは1%の400億円にすぎず、残る3兆9,600億円をこれから取りにいくというものだった。FY13の連結売上高は13億円、経常利益は-78百万円の赤字だった。丹下大社長はこの事業モデルに行き着くまでに5年を費やしたとふり返っている。
2014年11月、SHIFTは東京証券取引所マザーズ市場に上場した。創業から9年、ソフトウェアテストへ主力を移してから5年での上場となる。上場時のFY14連結売上高は21.5億円、経常利益1.2億円で、連結従業員数は148名(うち単体130名)だった。前期は経常損益が赤字で、上場は黒字へ転じた期に重なる。ソフトウェアテスト事業に着手した2010年のメンバーは12名だったと丹下大社長は述べている。上場翌期のFY15には連結売上高32.8億円・営業利益3.1億円となり、売上高は1年で1.5倍に伸びた。
2014年1月、SHIFTは本社及び東京テストセンターを東京都港区麻布台に移転した。2015年4月には株式会社SHIFT PLUSを設立し、2016年3月にはベトナム社会主義共和国にSHIFT ASIA CO., LTD. を設立してオフショアの開発・テスト拠点を開設した。同年6月には株式会社SHIFT SECURITYを設立し、ソフトウェアテストの周辺にあるセキュリティ領域へ入った。人員は上場した2014年8月期の連結148名から、5年後の2019年8月期には2,001名へ13.5倍に増えた。単体でも130名から1,026名となった。
創業10年目にあたる2015年8月期の連結売上高は32.8億円、営業利益は3.1億円だった。翌2016年8月期は売上55.1億円・営業利益5.2億円、2017年8月期は売上81.7億円・営業利益3.9億円、2018年8月期は売上127.9億円・営業利益12.0億円となり、売上高は3年で約3.9倍に伸びた。SHIFTが他社を子会社にしたのは2016年9月のメソドロジックが最初で、2015年8月期から2016年8月期への1.7倍は買収を伴わない伸びである。子会社化はその後、2016年11月のALH、2018年4月のAiritechと続いた。2017年8月期は売上が5割近く増える一方で、営業利益は前期を下回った。
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| 2005〜2013年製造業コンサルから始まった4年の試行錯誤とソフトウェアテスト業態転換 | 丹下大 | 東京都渋谷区にて設立 | ★ | |
| 丹下大 | 製造業向けコンサルティングからの撤退を伴う業態転換 2009年、製造業向けコンサルとして創業したSHIFTが、丹下大社長の主導でソフトウェアテスト専業へ業態を転換し、テスト人材を標準化して大量に育てる事業モデルへ移した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 丹下大 | ソフトウェアテスト適性能力を測定する「CAT検定」を発売 | ★★ | ||
| 丹下大 | シンガポール共和国にSHIFT GLOBAL PTE. LTD. を設立 | ★ | ||
| 2014〜2022年連続M&Aによる事業領域拡張と「SHIFTグロース・キャピタル」構想 | 丹下大 | 東京証券取引所マザーズ市場に上場 | ★ | |
| 丹下大 | SHIFT PLUSを設立 | ★ | ||
| 丹下大 | ベトナム社会主義共和国にSHIFT ASIA CO., LTD. を設立 | ★ | ||
| 丹下大 | SHIFT SECURITY を設立 | ★ | ||
| 丹下大 | メソドロジックを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | ALHを子会社化 | ★★ | ||
| 丹下大 | Airitechを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | システムアイを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | 海外募集による新株式の発行により資金調達を実施 | ★ | ||
| 丹下大 | 専門会社の設置による連続M&Aと買収後統合の仕組み化 2022年3月、SHIFTがM&AとPMI(買収後の統合)を専門に担う投資子会社"SHIFTグロース・キャピタル"を設立し、それまで本体経営陣が個別に判断していた買収を、専門組織による継続実行体制へ移した経営判断。丹下大社長の主導で、ソフトウェアテストの周辺領域を取り込む連続M&Aを成長エンジンとして制度化した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 2023〜2026年コンサル領域への質的拡張と「SHIFT3000」3,000億円計画 | 丹下大 | EQIQからバイリンガル人材紹介事業を吸収分割により承継 | ★ | |
| 丹下大 | SHIFT Enterprise Consultingを設立 | ★★ | ||
| 丹下大 | ネットワールド・クラブネッツを子会社化 | ★ | ||
| 丹下大 | 資本を投じての事業領域の拡張と、かつて手がけた領域への回帰 2025年4月、ソフトウェアの品質保証(テスト)を祖業に開発・SESへ広げてきたSHIFTが、東証グロース上場の総合コンサルティング会社ライズ・コンサルティング・グループへ取得原価7,668百万円を投じて議決権の33%を取得し、持分法適用関連会社化と資本業務提携に踏み切った経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 丹下大 | ライズ・コンサルティング・グループの株式を取得 | ★★ |
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事実根拠:出所(SHIFT)