丹下大氏(株式会社インクス出身・当時31歳)が株式会社SHIFTを設立。インクスに勤務していた頃に「製造業向けの業務改善コンサルティング」の事業に携わっており、SHIFTの創業当時も製造業向けの業務改善コンサルティグを展開した。製造工程の可視化と標準化により、熟練工のノウハウを一般化し、オペレーションを最適していったという。
創業から2年間は製造業向けのコンサルティングが主力事業であり、ソフトウェアのテストとは無縁の事業を展開していた。
コンサルティング事業の他に「アイドルがどこにいるかわかる追っかけツール」や「ポルシェのレンタカー屋」、「仮想通貨の投げ銭」といったサービスを展開したという。
だが、いずれも軌道に乗らず、経営は迷走した。SHIFTの売上高はテスト参入後のFY2010で1億円であり、2000年代後半のSHIFTは売上高1億円に満たない中小企業だった可能性がある。
某企業から「外注先のソフトウェアテストの見積もり妥当生」を検証する依頼を受けて、ソフトウェアとの関わりを持った。この時に、製造業のプロセス改善と同様の手法を用いて見積もりを算出し、ソフトウェアのテスト工程の見積もり妥当性を検証したという。この受注を機に、SHIFTはソフトウェア向けテストの事業展開を本格化した。
祖業である製造業向けコンサルティングからの撤退を決め、ソフトウェアテスト事業に集中投資する方針を決定した。
全社売上高の23.0%(FY2013)がワークスアプリケーション向けであることを公表
財務危機に陥ったワークスアプリケーションズを救済するために、SHIFTは包括業務提携の締結を決定した。SHIFTはワークスアプリケーションズに対して3.6億円出資し、ワークスアプリケーションズ が開発するERPパッケージ製品「HUE」の品質保証を担う契約を締結した。
ただし、ワークスアプリケーションズは人員の過剰採用や、ソフトウェアの品質問題による訴訟もあり、2018年ごろには経営が行き詰まっている。
ワークスアプリケーション向け販売だが、FY2016に15.43億円から、FY2017に9.08億円へと減少。同社は財務状況悪化による人員削減などのリストラを遂行したため、SHIFTも影響を被った。大口顧客向けの販売減少により、FY2017のSHIFTは増収を確保するものの、減益決算(FY2016経常利益5.69億円→FY2017同4.40億円)となった。
すなわち、ワークスアプリケーションズはSHIFTを活用しながらも、自らのソフトウェアの品質問題を解決することができなかった。なお、SHIFTとワークスアプリケーションズにおける係争は確認できず。
2010年代後半を通じて、webを中心としたアプリケーションの普及や、クラウド化によるERPの刷新需要が増加。ソフトウェアのテスト需要も増加したが、エンジニアの採用競争が加熱し、事業成長におけるボトルネックとなった。
そこで、2018年からSHIFTは採用費の増額を実施。FY2018には給与支給額6.70億円に対して、採用費5.14億円を計上するなど、販管費の大半を「給与・採用」に投資した。
この結果、SHIFTの社員数も急増。FY2017に966名、FY2018に1271名、FY2019に2001名となり、わずか3年で人員が倍増(+1000名超)した。
なお、人員確保の手段として、採用費の増額のほかに、ソフトウェア企業の子会社化(買収)も実施している。
FY2021を通じて5社を連結子会社化することで人員を拡充。合計の株式取得額は45.1億円。丹下社長は買収について「EBITDA5倍以下の案件しか買わない」(2019FastGrow)という方針を掲げ、投資家への理解を求めた。
また、買収先企業についても「僕は創業社長のいる会社を狙ってM&Aしている」「社員に対しても交流会を早々に催したり、とにかく「僕らは敵じゃない」ことをアピールします」(2019FastGrow)とし、人員の流出を抑えるためのPMIを目指した。
当社は、ざっくり言うとエンジニアの人数×単価で売上や利益が出る、とても分かりやすいビジネスモデルです。毎年数百人規模で採用しており、売り上げはオーガニックに毎年100億円伸びる。日本には中小のソフトウェア開発会社が約1万5千社あるので、M&Aのオポチュニティはすごく大きいですね。会社を100個買えば、営業利益20億円分に相当します。開発会社にとって、SHIFTグループに入ってもらうことによるメリットは3つあると考えています。1つは営業力。さまざまなクライアントの仕事をプライムで取りに行けるようになります。2つ目は会社のグロースのカギを握る採用力。もともと年間の採用人数が5人程度だった企業が、SHIFTグループにジョインすることで採用力が5倍も伸びたという実績もあります。そして、3つ目はコンサルティング力。ホワイトハッカーのようなすごい技術を持ったトップがいても、それだけではスケールは難しい。
FY2022における採用費に31億円を計上。同年度の給与及び手当が30億円であり、採用費が給料支給額を上回った。
日本企業がDXを進めて生産性を高めるためには、IT業界が基幹産業にならなければいけない。システム企業などのIT業界には約100万人が従事しているが、基幹産業であれば400万人くらいまで拡大すべきだろう。人を集めるには給料を高めなければならない。当社は給与水準を高めるために下請けに回らず利益率の高い仕事をする。その結果、当社の社員の年収は平均で毎年10%以上増えている