1971年4月
株式会社東洋情報システムを設立

三和銀行を中心としたグループ企業60社の出資により、資本金6億円で東洋情報システムを設立。高額だった大型コンピューターの利用を、三和グループで共同で行うことを意図して設立された。この経緯から、三和銀行系のJCBなどとの取引もあり、クレジットカード・信販会社向けのシステム構築に特色があった

1975年10月
東京支社を新設

首都圏に進出

1975年10月
東洋コンピューターサービスと合併

シンクタンク(調査業務)の事業がメインであったが、オイルショックによる経費削減の流れで需要が縮小。事務計算サービスを提供する東洋コンピューターサービスを合併し、景気に左右されないビジネスを志向

1984年12月
東京第一センターを新設
1987年11月
大阪証券取引所第2部に株式上場
1990年2月
東京証券取引所第1部に株式上場
1993年3月
減収決算。急成長に終止符

1990年代以降、大企業向けのシステム構築は「内製化」から「SAP」などのERPが主流となった。加えて大企業向けのシステム内製化の需要が一巡し、TISは大企業のシステム内製化支援の市場で苦戦。1990年代後半にERPのカスタマイズに活路を見出すまで業績低迷が続いた。

決算
TISの業績
1993年3月期(単体)
売上高
595
億円
1998年3月
小松製作所子会社(コマツソフト)を買収
2001年1月
商号をTIS株式会社に変更
2004年
売上目標5000億円(2010年)を公言

2004年に代表取締役に就任した岡本社長は、2010年までにTISの売上高5000億円を目標に据えた。達成のために、大型買収に視野に入れていることも明かした。

決算
TISの業績
2005年3月期(連結)
売上高
1996
億円
当期純利益
73
億円
2004

JCBから基幹システム刷新の大型受注(※炎上あり)

JCBのシステム構築

2004年からTISでは、JCBのクレジットカードに付随する基幹システムの刷新プロジェクトを開始し、新基幹システム「JENIUS」として稼働を目指した。10年前に構築した基幹システムの入れ替えが主眼であった。TIS社内でも大型プロジェクトとなり、史上最大規模の人員が動員されたという。

JENIUSにおける重要な要件は2つあった。

1つ目は「ビジネス成長に対する拡張性の確保」であり、クレジットカードの会員増加に耐えるシステム構築が要求された。

2つ目は「サービス停止の最小化」であり、24時間の稼働を前提として決済インフラに影響が出ない連続稼働のシステムが要求された。

ハードウェアおよびソフトウェアは日本IBMの「IBM System z」が採用され、当時としては一般的なオンプレ構成であり、並列処理による処理能力の高さが決め手となった。Java(オンライン処理)と一部COBOL(バッチ)で稼働するシステムであり、TISが構築に関わった。

開発遅延が発生

詳細な理由は非開示だが、TISによるJCB向けの構築プロジェクトで大幅な遅延が発生。当初想定した稼働開始に間に合わなくなり炎上する形となった。

受注損失引当金51億円を計上

FY2006〜FY2007にかけて、JCB向けの売上高は年間200〜300億円におよび、クレジットカードのシステム構築はTISの業績を左右する大型案件であった。このため、開発の遅延によるTISへの業績の影響も大きく、FY2007に受注損失引当金51億円をBSに計上した。TISはJCBの開発遅延を開示していないため詳細は不明であるが、この引当金はJCB向けの開発遅延によるものが大きいと推察される。なお、最終的なTISによる開発の追加コストは「80億円」(2007/10/26 日経XTECH)と言われており、TISの業績を圧迫するプロジェクトとなった。

証言
岡本圭介氏(JCB・システム本部インフラ開発部主幹)

「第一の要件としてビジネスの成長に対応できる拡張性が挙げられました。おかげさまで当社のサービスをご利用のクレジットカード会員様は年々増加を続けています。インターネット・ショッピングの決済などお客様のご利用用途も拡大し、これに伴う処理件数も増加しているため、将来の成長に柔軟に対応できるシステムが求められました。第二の要件はサービスの停止の最小化です。クレジットカードのサービスは社会インフラであり、これが止まってしまうと決済が滞り、大きな影響を与えてしまいます。また私どものカードは世界中のお客様にご利用いただいているため、24時間のサービスをご提供する必要があり、夜間の計画停止も許されません。以前のシステムでは、やむをえず週末や深夜にシステムの保守を行うことがありましたが、新しいシステムではより高い連続稼働が要求されました

決算
TISの業績
2005年3月期(連結)
売上高
1996
億円
当期純利益
73
億円
2005年4月
旭化成情報システムを買収
2007年3月
最終赤字転落。JCB案件の遅延が影響
2008年1月
インテックHDと経営統合(IT HD発足)

2008年にTISはインテックとの経営統合を決断し、ITホールディングス(TIS)を発足した。統合の背景としては、システムの案件規模が増大する中で、独立系SIerの2社が協力することで「受注拡大」「重複業務の効率化」を狙うとともに、大手SIerとして売上を拡大する狙いがあった。なお、JCB案件の炎上について、当時の岡本社長(TIS)によれば「全く関係がない」(2007/12/13日経XTECH)と発言したが、規模拡大により炎上による財務リスクを抑える狙いもあったと推察される。

決算
TISの業績
2008年3月期(連結)
売上高
1992
億円
当期純利益
42
億円
2011年2月
子会社再編(ソラン・ユーフィットを合併)

IT HDの100%子会社である「TIS(大阪吹田本社)・ソラン(東京港区三田本社)・ユーフィット(名古屋市西区本社)」の3社について合併を決定。重複業務の解消を狙った合併と推察される。

決算
TISの業績
2011年3月期(連結)
売上高
3231
億円
当期純利益
60
億円
2011年4月
桑野徹氏が代表取締役社長に就任

1976年に東洋情報システムに入社した生え抜き出身。1989年から1995年まで、信販会社(大阪本社の某企業)のシステム構築を担当し、炎上(担当役員3人交代)からの再建を経験。2004年からJCB向けプロジェクトに従事し、巨額損失を含む炎上(受注損失引当金51億円を計上)を経て、2008年11月にサービスイン。2008年4月には専務として金融・カード事業を管掌するなど、JCBプロジェクトのキーマンだったと推定される。2021年までの10年にわたってTISの社長を歴任した

証言
桑野徹氏(当時TIS代表取締役社長)

1976年に東洋情報システム(当時)に入社し、SE、PMを10年間担当し、その後人事部に異動になり3年でまた現場に戻り、大阪で信販会社のシステム開発のPMを担当しました。システムは95年2月にサービスインしましたが、1月に阪神大震災があり大変な中でのスタートでした。97年に東京異動後は企画部長として企画、広報などを3年、その後産業系事業部へ異動し2000年に取締役に就任しました。2004年、クレジットカード会社の新基幹システム開発を担当し、システムは2008年11月にサービスインしましたが、まさに「やり遂げた」という感一杯のプロジェクトでした。その後金融部門を担当し、2011年にTISの社長となり現在に至っています。

決算
TISの業績
2012年3月期(連結)
売上高
3274
億円
当期純利益
21
億円
2012年3月
400名の人員削減。構造改革を実施

旧TISにおける人員削減(400名)を決定。「オフィス移転(西新宿への拠点集約)」や「特別転身プログラム」により、FY2011に特別損失78.5億円(構造改革に係る一過性の費用)を計上した。

決算
TISの業績
2012年3月期(連結)
売上高
3274
億円
当期純利益
21
億円
2014年12月
連結子会社アグレックスをTOB

上場子会社であったアグレックスについて、TOBを通じて株式を追加取得(50.6%→93.3%)した。TIS社内のBPOの業務をアグレックスに集約する狙いがあった

決算
TISの業績
2015年3月期(連結)
売上高
3610
億円
当期純利益
102
億円
2018年4月
中期経営計画(2018-2020)を開始

ソフトウェア開発・企業買収などの予算枠として最大800億円の投資を計画。KPIとして高単価案件である「戦略比率」の向上を重視

決算
TISの業績
2019年3月期(連結)
売上高
4207
億円
当期純利益
260
億円
2019年3月
三菱商品が127億円の賠償請求(係争中)

TISが参画した三菱食品向けの基幹システムの刷新案件において、プロジェクトが頓挫。三菱食品はインテックに対して127億円の賠償請求を行った。2022年時点においても、三菱食品とTISは係争中

決算
TISの業績
2019年3月期(連結)
売上高
4207
億円
当期純利益
260
億円
2021年4月
岡本安史氏が代表取締役社長に就任

1985年東洋情報システムに入社した生え抜き出身。社長交代により、桑野元社長は代表権のない取締役会長に就任した

決算
TISの業績
2022年3月期(連結)
売上高
4825
億円
当期純利益
394
億円
2021年4月
官公庁向け事業の一部をインテックに継承
2021年11月
中央システム株式会社を売却(+60億円)

中央システムはTISの完全子会社だったが、中小企業向けのシステム(勤怠システム「レコル」など)に集中しており、大企業向けの開発業務は行なっていなかった。そこで、TISは選択と集中のため、中央システムを投資ファンド「ベーシック・キャピタル・マネジメント」に売却することを決定。TISは売却に伴う特別利益として60億円を計上した。

決算
TISの業績
2022年3月期(連結)
売上高
4825
億円
当期純利益
394
億円
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