大手天然繊維メーカーであった倉敷紡績は「化学繊維(レーヨン)」の将来性に着眼し、フランスからの技術導入や京都大学との共同研究を進める中で事業化を決定。1926年6月に倉敷絹織株式会社(クラレ)を設立し、倉敷紡績の子会社としてレーヨンの事業展開を開始した。
生産拠点としては、倉敷紡績の拠点が存在する岡山県内を選定し、高梁川の流路変更によって廃川となった用地の払い下げを決定。1928年に本社工場(倉敷工場)を新設し、同年11月からレーヨンの生産を開始した。
円高により繊維事業の採算が悪化したことを受けて、クラレ(中村尚夫・社長)は経営改革を決断。1988年に「第2次中期経営計画」を策定し、繊維事業(レーヨン・ビニロン・ポリエステルなど)の合理化・非繊維事業(ポバール・エバール・イソプレン)の拡大を打ち出し、祖業であるレーヨンの生産縮小を開始した。
2018年5月19日(午前10:28)に米国子会社Kuraray America, Inc. における「エバール第二系」の工場で火災事故が発生。周辺の外注作業員を含めて266名が被災した。火災事故の原因は、定期修繕における誤操作であった。重合槽でエチレンを昇圧中に温度の異常低下が発止し、この対策として重合槽を加熱したが、気圧低下の操作に失敗し、エチレンが大量に放出された。ここに着火し、爆発火災事故が発生した。
これを受けて、被災者側は精神的苦痛を含めて、800億円の和解金を請求。これを受けて、2019年12月期にクラレは訴訟関連損失として505億円、翌年度の2020年12月期には同じく231億円を計上し、累計736億円を特別損失として計上した。