バンドマンであった前澤友作氏は、趣味でやっていた輸入CDの販売を本格化させるために、東京都江戸川区に有限会社として「スタートトゥデイ(出資金300万円)」を設立した。有限会社の設立以前にも、前澤氏は自宅(千葉県鎌ヶ谷)を拠点にして、カタログ通販事業を営んでおり、有限会社化はビジネスに本腰を入れる意味合いもあったと推察される。
創業当時は、前澤友作氏のバンド関係の友人の合計3名とともに、CD・レコードの輸入とカタログ販売に従事。ビジネスの規模は「月商は500万円」ほどであったという。
創業者の前澤氏はバンドを辞めてビジネスに専念することを決定。2002年に有限会社から株式会社に組織変更を行い、株式会社スタートトゥデイを資本金1500万円で設立。社長には前澤氏が就任した。
2002年の株式会社への組織変更において資本金1500万円としたが、2005年までの約4年間にわたって増資を行わず、借入金を中心とした財務政策をとった。当時は、ネットバブル崩壊によって、VCからの調達が難しい資金環境であり、増資は諦めざるを得なかったと推察される。
ただし、ECサイトの運営にあたっては、在庫確保などの資金が必要であり、結果として自己資本比率が低下。2005年3月末時点でZOZOは自己資本比率11.8%という低い水準で推移した。
事業面において、「紙によるカタログ販売(月間流通部数:2万部)」からの撤退を決断し、インターネットによるCDの販売に移行。2000年1月に「STMonline」を開設してECに移行した。2000年前後はインターネットが普及しつつあり、紙のカタログ需要が消滅することを見込んだ施策であった。
2000年10月に新規事業としてファッションECサイトに参入。自社で商品を買い取って販売するセレクトショップ「EPROZE」を解説した。この時点では「ZOZOTONW」というブランドによる展開(受託販売)ではなく、自社買付商品を販売するECとして運営した。この意味で、ZOZOTOWNと同じファッションECではあったものの、厳密には業態(買取 vs 受託)の面で大きく異なっていた。
最初は音楽から始まりました。僕が欲しいレコードがどこを探しても見つからない。「じゃあ、自分でやっちゃえ」ということで、輸入レコードなどの通信販売を始めました。洋服もそんな感じで、好きなショップの服をまとめて手軽に買えたらと始めたんです。
そのうちに仲間が増えて、皆の楽しいことや好きなことが増えてきた。事業の成長や株式上場は、それを実現するための過程。基本的には、楽しいサイトを軸に、さらにどんどん楽しいことをしましょうという会社です。
2001年にZOZOは本社を千葉県美浜区に移転し、在庫で手狭になっていた小岩の事務所から移転した。美浜区に移転した理由は、創業メンバーの大半が千葉県出身であったことや、創業支援を行なっていた「幕張VCサポートセンター」の紹介が決め手となった。
美浜区の本社は、幕張の「ワールド・ビジネス・ガーデン」の16階に設けられ、企業としての体裁を整えた。
売上がさらにアップし、同時に在庫も人も増えてきた。マンションではさすがに狭く、移転先を探そうということになりました。その時、現在のWBG(ワールドビジネスガーデン)にあるベンチャー企業支援施設「幕張VCサポートセンター」が、格安でオフィスを貸してくれることを聞きつけ、紹介してもらったのです。最先端ビルですし外見もいい。主要メンバーのほとんどが千葉出身だったこともあり、違和感なく決まりましたね。これが01年1月のことで、スペースは35坪でした。
ファッション分野の取り扱い品目を拡大するために、従来のwebのサイトを大幅なリニューアルを決定。2004年12月にセレクトショップを集積したECサイト「ZOZOTOWN」のサービスを開始し、自社で展開した17のセレクトショップのブランドを廃止した。
2005年にZOZOはセレクトショップを運営する「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」との取引を開始した。契約形態としては、UAがZOZOTOWNに出店し、ZOZOはUAの商品を受託販売する業務を担った。当時、無名のECサイトであったZOZOTOWNに対して、著名企業のユナイテッドアローズが出店したため、異例の取引開始となった。
取引に至ったトリガーは、ZOZO創業者の前澤氏と、ユナイテッドアローズの創業者の重松理氏による、経営トップの話し合いの末に決定された。最初に前澤氏からUAに対してアプローチを実施。それに対して、UA創業者である重松理は、前澤氏自身がファッション好きであることを高く評価し、ZOZOTOWNに出店することを決定したという。
ユナイテッドアローズの取引開始を受けて、セレクトショップ業界における競合企業も相次いでZOZOに出店を決定した。
2005年度内にZOZOはBEAMS、SHIPSとの取引を開始(受託販売預り金から判明)。ZOZOTOWNに有名セレクトショップが揃うことにより、ZOZOTOWNの認知度が高まるきっかけとなった。
地道な営業に尽きます。メーカーやブランドさんを回って、ウチで扱わせてくださいと正面からお願いするわけです。最初はほとんど断られましたね。でも、そこから何度も何度も通って粘り強く交渉するんです。声をかけるところは僕が好きなブランドばかりだったので、苦ではありませんでした。
2005年度の時点でZOZOにおける販売受託手数料(テイクレート)は、受託取扱高と受託売上高をもとに算出すると約18%の水準であった。
当時のECサイトの手数料は10%前後が一般的な水準であったと思われるが、ZOZOは相場よりも高い手数料率を設定したことを意味する。これは、ZOZOが「ECサイト運営」に加えて物流業務「商品撮影・在庫保管・梱包・発送」といった業務を請け負っており、これらの業務による付加価値をベースに手数料率を割高に設定できたことに起因する。
ZOZOにおける委託販売手数料のテイクレートは年々上昇しており、2011年度には30%に到達した。これは、ZOZOの認知度の拡大のために、様々な販促施策をZOZO負担で実施するようになり、これらの販促費を念頭においたテイクレートを設定したためと推定される。
ZOZOTOWNの運営にあたって、物流機能を強化するために、本社の隣に物流拠点ZOZOBASE(1000坪)を新設した。従来は本社ビル内を使って在庫を保管していたが、在庫数が膨大になったため、物流倉庫への投資を決めた。
入荷から最短1日以内に商品撮影・採寸(他社基準をZOZOTOWN基準に変換する作業)・データ入力・サイト掲載を完了し、注文があった場合に「最短3時間」で発送できる体制をとった。
物流拠点に商品が入荷されると、商品のサンプルはすぐに採寸と撮影に回される。倉庫にはモデルとカメラマンが常駐しており、撮影スタジオで5〜10カットの撮影をこなす。終わると、傍らにあるパソコンから、サイトのデザイン担当にデータが送られる。ここまでが1日以内で進むため、ショップの担当者は即日、商品をサイトに掲載することができる。(略)
受注した商品の情報は、毎朝8時30分〜9時頃に一気に処理される。そして、ピッキングから梱包、発送までを昼の12時までに完了させる素早さ。9時前に受注した商品が、わずか3時間で発送されることもあるという。こうした独自の物流システムがあるからこそ、ゾゾタウンは賞味期限の短い限定商品を次々と送り出せる。ユナイテッドアローズなどの人気店が入居する理由もここにある。
ZOZOは株式会社設立以来、資本金1500万円で増資を行わずにビジネスを行ってきた。だが、ZOZOTOWNの本格稼働によるユナイテッドアローズとの取引開始や、GMVに対応するための物流施設の賃貸など、成長のための資金需要が発生した。
そこで、2007年3月にZOZOは第三者割当増資を実施して15億円を調達(評価額179億円)。割当先は伊藤忠商事や東京海上などであり、ZOZOの株式上場を見据えた増資でもあった。この増資により、ZOZOは自己資本比比率を11.8%(2006年3月末時点)から45.0%(2007年3月末時点)に改善するとともに、投資資金を確保した。
受託販売の増加の一方で、ZOZOは従来の主力事業であった買取型の販売を縮小。買取型はZOZOとして在庫リスクを負うため、ZOZOは受託販売の売上比率向上を優先した。
この結果、委託販売比率の向上が、全社利益の改善に直結した。委託販売のテイクレートを18〜30%という高い水準で確保することによって、ZOZOは受託販売比率が向上するとともに全社利益率を改善。高収益なECプラットフォームの運営会社としての地位を確保するに至った。
根底には「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念がある。「アパレルEC(電子商取引)最大手」とか言われるけど、それは人が勝手にラベルを貼っているだけ。「日本一のECサイトになる」なんて、言ったこともないし、気持ち悪くて言えない。僕らのメッセージが一番伝わりやすいと思っているから、カッコいい服を仕入れたり、預かったりして販売しているんです。
2010年12月にZOZOはiPhoneアプリをリリース。リリース当初にAppStoreで無料アプリランキング2位に入るなど急速に普及し、2011年7月時点でiPhoneアプリのダウンロード数は累計70万件を突破した。
2011年4月にZOZOは、カヤックの第三者割当増資を引き受けること決定し、システムの受託開発ビジネスを行う「カヤック社(鎌倉市本社)」に対して出資した。なお、2007年にカヤック社はZOZOに出資を行っており、ZOZOの株主でもあった。
ZOZOの狙いは、当時普及しつつあったスマートフォンに対応するため、スマホアプリを開発することにあった。ZOZOTOWNはPCサイトないしモバイル(ガラケー)によって閲覧されることを前提としており、スマホアプリへの対応が課題となっていた。
2011年にZOZOはiPhoneアプリからの購入に際して、従来はPC版を簡易的に表示していたUIを改善してスマホに最適化した。
2012年5月にはAndroid版の「ZOZOTOWNアプリ」をリリース。これをもって、ZOZOはiOS/Androidのアプリ対応に先鞭をつけた。
2011年度より出荷件数におけるスマホ比率が向上し、2013年度4Q(2014/1-3)にはスマホ比率が52.7%を記録した。スマホは2011年から日本国内でも急速に普及したが、ZOZOはいち早くスマホ対応することにより、若年層を中心にユーザーの確保に成功した。
2013年にZOZOは商品の取扱量を増加させるために、プロロジス社の「プロロジスパーク4習志野4」(3万坪)の建物フロアの全ての賃借を決定。習志野における年間賃借料は3億円から15億円に拡大
物流センターの新設稼働により、ZOZOTOWNでは出荷件数対比で35%の注文を当日配送可能な状態を整えた。
これを受けて、2014年3月より「即日配送サービス」の提供を開始。配送先が首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の場合において、商品の購入者が500円のオプション料金を支払うことで即日配送サービスを利用できるようになった。
後払い決済を導入。商品購入後の支払い期限が2ヶ月後に設定することが可能で、コンビニでの支払いに対応した決済方法。購入の機会損失を防止する目論みがあった。債権の回収業務はGMOペイメントサービスが請け負った。利用拡大のために、2017年3月からTV CMによるキャンペーンを展開。
物流拠点の拡張を発表。プロロジスパークつくば1から全フロアを賃貸。つくばにおける年間賃借料は12.3億円(FY2019)
商号をスタートトゥデイからZOZOに変更し、ブランド名と社名を一致させた。
2018年時点において、ZOZOのシステムは完全な内製化ではなく、外部の複数のベンダーに受託しており、AWSアカウントのコスト増加といったボトルネックになっていた。
また、データ分析基盤が整備されておらず解析が難しいといったことが問題視された。
そこで、2020年にZOZOはエンジニアの組織改革を実施。中途採用を積極化することでエンジニアリングの内製化の体制を整えつつベンダーを整理。また分析基盤にはBigQueryを導入するなど、技術的な負債を解消することを目論んだ。
2018年4月、当時ZOZOのエンジニアリング組織には非常に多くの課題がありました。(中略)ZOZOTOWNの主要アーキテクチャは16年前から現在まで一度も変わることなく運営されてきました。それらを構成する技術スタックはVBScript / IIS / SQLServer / オンプレミスとなっており、SQLServer上のストアドプロシージャに全てのロジックが記述されている状態でテストもなく、品質管理チームによる手動テストで品質を担保している状態でした。
ZOZOとしては初となる中計を策定
物流拠点の拡張を発表。プロロジスパークつくば2から全フロアを賃貸。ZOZOにおける取扱総額6000〜7000億円の増加に対応。「つくば1・2」における年間賃借料は22.3億円へ
ZOZOは売上高を順調に伸ばしたものの、ZOZOSUITと海外事業からの撤退を決めた、2019年3月期で上場来初となる減益決算(経常利益257億円・前年同327億円)を計上した。
ヤフージャパンとLINEを主体とするZホールディングがZOZOの買収を決断。なお、2010年からZOZOはヤフーショッピングの連携でヤフージャパンと業務提携しており取引関係にあった。
ZOZOの創業者である前澤友作氏は社長兼CEOを退任して経営の一線から退き、後任には澤田宏太郎が社長兼CEOに就任した。
FY2020の売上高1747億円(YoY+17.4%)、営業利益441億円(YoY+58.3%)を計上。ペイペイモールでのGMVの伸びが寄与しており、ZHDとの競合効果が現れた
ZHDによる子会社化によってZOZOは株式の流動比率35%を下回る見込みとなった。このため、上場維持のため2021年5月にZOZOは自己株式の取得計画を発表し、最大320億円の取得を公表した。この結果、FY2021において319億円の自己株式の取得を実施し、株式の流動性を確保した。
物流拠点の拡張を発表。プロロジスからの賃貸へ