2007年3月15日に大丸(奥田社長)と松坂屋HD(茶村社長)の2社は経営統合に合意したことを発表。両社は共に百貨店事業が主力であったが、少子高齢化の進行や、顧客の購買行動の変化によって既存店舗における販売が低迷。競争力を強化するために経営統合を選択した。
特に松坂屋HDは名古屋店(栄)における競争力低下(JR高島屋の台頭)や、店舗面積の小さい銀座店の処遇(再開発問題)など、百貨店事業における収益低下の問題に直面していた。このため、統合は松坂屋HDから大丸に相談する形で実現した。
統合発表前の2006年2月期における各社の業績は、大丸が売上高8225億円・営業利益306億円、松坂屋HDが売上高3439億円・営業利益70億円であった。このため統合比率は大丸に有利な条件となり、大丸の普通株式1株につき持ち株会社の株式1.4を交付、松坂屋HDの普通株式1株につき持ち株会社の株式1株を交付する形で、統合比率が決定された。
2007年9月には経営統合の持株会社としてJフロントリテイリングを設立。CEO兼会長には奥田氏(大丸・社長)が就任した。
発足当初は大丸および松坂屋を傘下に子会社として抱えたが、企業文化の違いなどを考慮して、当初は別会社として運営。この間、店長クラスの人員100名を移動して、両社の企業文化理解する期間を設けた。その後、2010年3月に「株式会社大丸松坂屋百貨店」を発足し、Jフロント傘下の百貨店事業を1社に集約した。
2006年12月に松坂屋HDの茶村社長は、松坂屋銀座店の再開発について相談するため、大丸の奥田社長に接触。この経緯から経営統合の話が進み、2007年1月9日から統合に向けた交渉を開始。約2ヶ月の検討期間を経て、2007年3月15日に経営統合の発表に至った。
Jフロントリテイリング発足後は、経営統合によるコスト削減(営業改革によるオペレーション改善など)に注力しつつ、首都圏を中心に百貨店および都市開発への資本投下を実施。不動産事業では旧松坂屋銀座店について「GINZA SIX」として周辺地権者とともに再開発を実施するなど、百貨店にとらわれない事業経営を志向した。
百貨店業界では、2006年に阪神百貨店および阪急百貨店の経営統合(エイチ・ツー・オー・リテイリングの発足)、2008年に三越および伊勢丹の経営統合(三越伊勢丹HDの発足)が発表され、松坂屋と大丸の経営統合も業界再編の一環として注目を集めた。
2019年12月26日にJフロントリテイリングはパルコへの追加出資による完全子会社化を発表し、2012年7月以来となる2回目のTOBを実施。買付総額として658億円(株式35%の取得)を予定。買付価格は12/25日の終値に対して35.63%のプレミアムによって算出し、1株あたり1,850円とした。
この結果、2020年3月までに買付が完了。Jフロントリテイリングによるパルコへの出資比率は65%から100%となり、完全子会社とした。
完全子会社化に踏み切った理由は、大規模複合施設の共同開発や、保有する土地を有効活用する上で、意思決定スピードを早めるためであった。また、Jフロントリテイリングの不動産事業(大丸松坂屋百貨店の保有不動産)をパルコに集約することで、Jフロントにおける不動産事業をパルコとして展開し、事業運営を効率化する狙いもあった。
2001年に大丸が林兼産業から取得した大丸下関店(旧シーモール下関)について、販売低迷を受けて2010年代を通じて人員削減を実施。2008年2月末時点の下関大丸における従業員数210名(臨時雇用124名)に対して、2020年2月末時点で従業員数59名(臨時雇用35名)へと減少した。
資産効率改善のために、有利子負債(リース負債を除く)の圧縮を開始。2021年度末時点の有利子負債3,177億円に対して、2023年度末時点に同2,139億円となり、2ヵ年で1,038億円の有利子負債を削減した。
eスポーツ事業に参入するために、株式会社XENOZを買収。同社の株式50.8%を取得
ブランド | 店舗 | FY2021 | FY2022 | FY2023 |
大丸 | 大阪心斎橋店 | 528億円 | 708億円 | 957億円 |
大丸 | 大阪梅田店 | 412億円 | 483億円 | 550億円 |
大丸 | 東京店 | 476億円 | 642億円 | 783億円 |
大丸 | 京都店 | 524億円 | 615億円 | 705億円 |
大丸 | 神戸店 | 701億円 | 839億円 | 918億円 |
大丸 | 札幌店 | 493億円 | 620億円 | 754億円 |
松坂屋 | 名古屋店 | 1,039億円 | 1,177億円 | 1,268億円 |
松坂屋 | 上野店 | 208億円 | 239億円 | 254億円 |
松坂屋 | 静岡店 | 170億円 | 175億円 | 177億円 |