2025/3 売上高7,021億円YoY+3.2%
2025/3 営業利益383億円YoY+3.8%
2025/3 従業員-
創業1942
創業地東京都中央区
創業者水産会社を中心に18社などの出資により設立

ニチレイの源流は太平洋戦争下の1942年に日本水産・日魯漁業など大手水産会社の陸上部門を統合して発足した帝国水産統制株式会社にあり、戦時下の鮮魚需給管理という国策要請のもとで全国二百二十余か所の冷凍・製氷・冷蔵工場を承継した特異な出発であった。終戦後の1945年に日本冷蔵へと改称して民間企業として再出発し、1949年の東証上場を経て独立系の冷蔵倉庫会社としての地位を固めた。1951年就任の木村幸鉱二郎社長のもとで水産・冷凍・煉製品・缶詰・畜産の五分野を軸とする総合食品メーカーへの転換が図られたが、1980年には創業以来の主力であった水産部門が赤字転落し、経営資源の配分を根本から見直す構造改革へと踏み切ることになった。

1985年の社名変更による「ニチレイ」ブランドへの統一を起点に、家庭向け冷凍食品・システム物流・都心不動産という三つの柱を育て、2005年の持株会社体制への移行を経て食品・物流・不動産の事業別経営が確立された。2007年以降は純国産鶏「純和鶏」の垂直統合や欧州低温物流買収など原料調達と海外物流の両面での深化が進み、本格炒め炒飯に代表される品質訴求型の主力商品群も確立された。しかし2025年以降は原材料高騰と値上げ疲れによる低価格志向の拡大で加工食品事業の利益構造に変調が生じ、2026年に北米イノバジアン事業向けに一億ドル超を投じる新工場建設を決断するなど、国内再設計と海外内製化を同時並行で進める新たな経営局面へと移行している。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益その他費用販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
歴代社長
FY01
FY02
FY03
FY04
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
FY25
FY26
FY27
FY28
FY29
FY30
浦野光人
代表..
村井利彰
代表取締役社長
大谷邦夫
代表取締役社長
大櫛顕也
代表取締役社長
歴代社長
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
浦野光人
代表取締役社長
村井利彰
代表取締役社長
大谷邦夫
代表取締役社長
大櫛顕也
代表取締役社長

歴史概略

1942年〜1984帝国水産統制会社の発足から総合食品メーカーへの転換と構造改革

国策統合が平時の競争優位に化けた出発

1942年12月、日本水産や日魯漁業を含む大手水産会社十八社の陸上部門を統合する形で帝国水産統制株式会社が設立された。資本金は五千万円という当時としてかなり大きな規模で、全国約二百二十か所の冷凍・製氷・冷蔵工場を一括して継承し、各港湾ごとに分散配置されていた拠点網がそのまま新会社の事業基盤として包括的に引き継がれた格好である。個社の成長戦略ではなく戦時下の国家による鮮魚需給管理を優先した国策的な統合であり、製氷事業が主力として位置づけられたのも軍需優先の鮮魚流通を支える実務的要請に応える必要があったためであった。戦時統制経済の枠組みのなかで官民一体の物資統制機関としての性格を強く帯びた極めて特異な出発となったという経緯がある。

終戦後の1945年12月、会社は社名を日本冷蔵株式会社へと正式に改称し、冷蔵倉庫業と水産加工を中心とする民間企業として改めて再出発を切った。1949年には東京証券取引所への上場を果たし、日本水産をはじめとする大株主との資本関係を段階的に整理したうえで独立系企業へと位置づけが明確に転換された。戦時期に全国規模で構築されていた分散型の工場拠点網は地域リスクを自然に分散する効果を持ち合わせており、戦後復興期の不安定な需給環境においても極めて安定した収益源として機能し続けることとなった。統制会社という出自は戦後の自由競争下においても立地的な優位性という形で実質的な経営資源として継続的に残存し、以後のニチレイの多角化展開を下支えする堅固な基盤となったのである。

有価証券報告書 沿革ニチレイ社史日本冷凍食品協会資料

量の拡大が主力の水産を赤字へ追い込む帰結

1951年に社長へと就任した木村幸鉱二郎氏は、保管と一次加工のみに依存してきた従来の事業形態に対して強い疑問を抱き、ニチレイを「設備を持つ会社」から「食品を売る会社」へと根本的に転換させるという基本方針を明確に掲げた。水産食品・冷凍食品・煉製品・缶詰・畜産食品という五分野に事業領域を一気に拡張する積極戦略を採用し、1961年度の総合五カ年計画では累計百七十億円という当時として極めて大規模な投資を実行に移し、冷凍関連に八十億円、食品事業に九十億円という配分で巨額の資金を投下する決断を下したのである。売上構成では冷凍が中心でありながら投下資本の面においては食品へと意図的に大きく傾斜させる判断が下された点に、総合食品メーカーへの転換意志が明確に示されたといえる。

しかし1970年代に入ると利益を大きく超える規模の設備投資が借入金によって賄われる状況が続き、財務負担が経営全体の重荷としてじわじわと蓄積していった。五分野のうち水産食品や缶詰といった分野は他社との差別化が難しく、煉製品や畜産食品もそれぞれの専業メーカーとの熾烈な競争に直面するという結果となった。1980年3月期には創業以来の主力事業であった水産部門がついに赤字に転落し、取扱量の拡大を前提としたビジネスモデルは原料価格の変動に対してあまりに脆弱であるという事実が経営上の危機として明確に露呈した。ニチレイは不採算な取引や品目の整理を迅速に進め、水産部門を「量の事業」から「選別された事業」へと位置づけ直す大規模な構造改革へと本格的に踏み出したのである。

有価証券報告書 沿革ニチレイ社史日本冷凍食品協会資料

1985年〜2006ニチレイ商号変更と家庭用冷凍食品・システム物流・不動産の三本柱確立

倉庫会社を捨て食品会社へと自己定義し直す再出発

1985年、日本冷蔵株式会社は商号を「ニチレイ」へと正式に変更し、「N」マークを中核として据えた新しいCIを全面的に刷新する大改革を実行した。冷蔵倉庫の会社という社会的連想を意図的に切り離したうえで、総合食品企業としての認知を市場と消費者に対して再構築していくという明確な経営上の狙いがあった。社内では「明日のニチレイ」キャンペーンや「FN運動」と呼ばれた大規模な全社運動が段階的に展開され、品質管理と職場改善を通じた現場主導の改善活動が組織の隅々にまで徐々に浸透していった。商号変更は単なる社外向けのブランド施策にとどまらず、倉庫会社から食品会社へという従業員の意識転換を実態面から裏づけていく長期的で実質的なプロセスとして機能したのである。

同時期、家庭向け冷凍食品を対象としたマーケティングが一気に本格化していく局面を迎えた。1985年の「24hr.」シリーズの投入、1986年のお弁当向け商品群の展開、1988年のアセロラドリンク発売、1989年の「原宿ドッグ」家庭向け転用といった具合に、商品開発と広告投資を組み合わせた施策が矢継ぎ早に市場へと展開されていった。冷凍食品の売上は1990年代の初頭までに一千億円規模にまで到達するという大きな成長を遂げ、日本の家庭の食卓における冷凍食品の存在感は短期間で一気に高まっていった。ただし特売による値下げの常態化が収益性を強く圧迫するという構造問題は本質的には解消されず、数量的な成長と利益率のあいだに矛盾を抱え込んだままニチレイは次の成長局面へと進んでいくことになった。

有価証券報告書 沿革ニチレイ社史日経新聞朝刊

保管から移動へ、跡地が都心資産に化ける転換

1989年、ニチレイは社内に「物流プロジェクト」と呼ばれる組織横断の推進体制を正式に発足させ、既存の冷凍物流事業の根本的な再定義に着手することとなった。保管を前提とせず商品の移動と処理を事業の中心に据えるという「システム物流」の新しい構想が経営陣から提示され、仕分け・通関・軽加工・配送を一体で提供する付加価値型のビジネスモデルへの抜本的な転換が図られた。1990年には従来の「冷凍工場」という名称を「物流サービスセンター」へと改称し、L字型プラットフォームによるバース集約やオンライン化を通じた情報管理の新しい仕組みが本格的に導入されていった。これが大手小売業との取引拡大に直接つながることとなり、冷凍倉庫業は物流サービス事業へとその事業性格を根本から変えていくことになったのである。

この物流事業改革と並行する形で、戦時統制期に取得した都心部の旧工場跡地の再開発も本格的に進められていくこととなった。1988年に旧明石町の工場跡地をオフィスビルとして再開発したのを皮切りに、勝鬨橋工場跡地・東京工場跡地・湊ビルなどが次々と都市再開発の対象地として選定されていった。売却するのではなく保有を続けたまま賃貸収入を継続的に得ていくという戦略的な選択が明確に取られ、食品事業や物流事業とは性格の大きく異なる安定した収益源がグループ全体のなかに確保されることとなった。戦時統制期に取得された分散立地の工場拠点が四十年以上という長い時間の経過を経て都心の貴重な不動産資産としての価値を持つに至るという、時間軸の大きな資産戦略の成功事例となったのである。

有価証券報告書 沿革ニチレイ社史日経新聞朝刊

2007年〜2023原料川上統合と欧州低温物流買収によるグローバル深化

輸入依存への自衛が差別化の武器に変わる逆説

2007年、ニチレイフレッシュは株式会社イシイとの合弁事業によって岩手県九戸郡洋野町に洋野農場を建設し、純国産品種である「純和鶏」の育成を本格的に開始した。独立行政法人家畜改良センター兵庫牧場で育種改良された原種鶏を導入し、原種鶏から孵化・飼育に至るまでの全工程を自社で一貫管理する直営養鶏事業へと踏み出した点で画期的な取り組みであった。日本の養鶏産業は肉用鶏の原種鶏の約九割以上を海外からの輸入に完全に依存しており、鳥インフルエンザの発生等による突然の供給途絶リスクは業界全体における構造的な脆弱性となっていた。純和鶏プロジェクトはこうしたリスクに対する垂直統合による自衛策であると同時に、供給安定性を長期的な競争優位として確保していく戦略でもあった。

2012年には処理・加工・販売の各機能を専門的に担う「フレッシュチキン軽米」が新たに設立され、生産から加工までの全工程を自社グループ内で完結させていく一貫体制が本格的に構築されることとなった。年間百五十万羽から百六十万羽規模の出荷を想定した純国産鶏の大規模な生産体制は、原料から最終製品に至るまでの全工程にわたるトレーサビリティの完全な確保を明確な目的としており、安全性と品質をブランド価値として市場に向けて訴求していく中核戦略の実務的な基盤として機能し始めた。原料調達という川上領域での垂直統合は、単なる価格競争力ではなく品質訴求を軸とした差別化を可能にするという構造的な経営資源として確実に機能し始めたのである。この戦略は後の海外展開の基礎にもなっていった。

有価証券報告書ニチレイ IRBloomberg決算説明資料

国内の一体運営ノウハウが欧州へ渡る瞬間

2010年7月、ニチレイロジグループの欧州子会社はフランスの低温物流事業を営む現地会社四社を総額約二千四百万ユーロで買収する大型案件を実行した。中核企業となったTransports Godfroy社は北フランスを拠点としてフランス全土への広範な配送網を有しており、ルアーブル港をはじめとする主要港湾と内陸部を結ぶ戦略的に重要な立地に明確な強みを持っていた。冷蔵倉庫三社との組み合わせによって保管と輸送を一体で提供する運営体制が欧州市場で新たに構築され、国内で長年磨いてきた一体運営のノウハウを欧州の異なる市場環境へと適用する本格的な試みとして位置づけられた案件であった。コールドチェーンの海外展開が具体的な事業として形になり始めた歴史的な瞬間である。

国内においては冷凍米飯の需要拡大という追い風に対応していくため、2023年に福岡県宗像市における新工場の建設計画が正式に決定された。投資額は百十五億円規模を予定しており、既存の船橋工場と合わせる形で東西二拠点による生産体制を確立することで、長距離物流コストの大幅な低減と供給網の強靭化の両方を狙う戦略的に重要な投資として位置づけられた。2013年の米国食品会社取得なども含めて、コールドチェーンの国内深化と海外展開を両輪で同時に推進していく経営姿勢がニチレイには一貫して維持されてきた歴史がある。加工食品の品質訴求と物流の一体運営、さらに都心不動産による安定収益という三本柱の経営構造がこの時期に完成形へと近づいていったといえる局面であった。

有価証券報告書ニチレイ IRBloomberg決算説明資料

直近の動向と展望

値上げ疲れが利益構造の前提を崩し始める局面

2025年11月、大櫛顕也社長は第2四半期決算説明会の場で「過去四〜五年にわたり為替や原材料価格の変動によって約九十億円規模の減益要因が継続しており、来期も同程度のコストアップを見込んでいる」との認識を示し、従来の価格改定だけでは吸収しきれない構造変化への対応方針を経営トップとして明確に表明する重要な場面となった。これまでは価格改定と数量増の両立によって増収増益を実現してきた加工食品事業において、低価格志向の顧客離反と販売促進費の想定超過増加が限界利益率を押し下げる新しい問題として一気に表面化してきた局面である。大櫛社長は「望んでいる利益効果が出ていない」と率直に認めたうえで、戦略の本格的な見直しに着手する姿勢を投資家に明示した。

対応策として2026年2月に米飯類・ハンバーグ・春巻・ポテトコロッケ等を含む広範な価格改定を予定し、並行して価格対応型商品を年間約五十億円規模で投入する計画が示された。既存戦略カテゴリーである米飯類とチキン加工品への経営資源集中方針自体は堅持しつつ、販売促進費の商品別・チャネル別の細分化管理によって数億円規模のコスト削減効果を第4四半期に見込んだ。来期については新商品投入に時間を要することからV字回復は困難であり、中期経営計画の期間内での逸失利益リカバリーを目指す「地盤固めの年」として位置づける方針が経営陣から明示された。構造変化への対応をコスト削減ではなく商品ポートフォリオと販売促進の再設計から始める選択である。

IR 決算説明QA FY26-2Q 2025/11/11IR 決算説明QA FY26-3Q 2026/2/3IR 決算説明QA FY26-1Q 2025/8/5

OEM依存を捨て北米を自前で作り直す決断

2026年2月、ニチレイは北米子会社のイノバジアン・クイジーン社における新工場建設計画を正式に発表した。投資規模は一億ドルを超える大型案件であり、2028年12月期の早い段階における稼働開始を明確な目標として掲げている。これまで北米事業では現地企業の買収という選択肢も幅広く検討されてきた経緯があるが、最終的には自社新設に一本化する判断が経営陣によって下された。既に2022年の時点でイノバジアン・クイジーン社は米飯類の生産施設を完全子会社化済みであり、今回の新工場によってアジアンフーズカテゴリー全体を自社生産でカバーするという内製化体制が完成する見通しである。生販一体の体制強化を通じて北米事業の収益力の抜本的な向上を狙うという戦略的意図が示された案件であった。

2025年時点のイノバジアン・クイジーン社の営業利益率は四%と目標の五%に届かない状況にあり、OEM依存の収益構造を抜本的に見直す必要性が経営課題として強く認識されていた。内製化によるコスト構造の改善と並行して、アジアンブランドの販売促進費を来期は成長に向けて適切に投入し、家庭用市場での売上拡大に加えてクラブ業態や外食チャネルにおける拡販にも注力していく方針が示されている。一方でラテンブランドについては集約を積極的に進めたうえで、アジアンフーズ領域に経営資源を集中する方向性が明確化された局面である。国内における構造対応と北米における内製化という二正面作戦によって、2027年以降の中計最終年度に向けたグループ全体の利益体質の本格的な再構築が開始されたといえる。

IR 決算説明QA FY26-2Q 2025/11/11IR 決算説明QA FY26-3Q 2026/2/3IR 決算説明QA FY26-1Q 2025/8/5

沿革

沿革一覧
4
帝国水産統制株式会社を設立
国策統合が形成した全国220拠点という非意図的な参入障壁
4
加工食品に参入
五分野への分散投資が冷凍食品への集中を導いた探索過程
4
設備投資を継続
利益を超える設備投資を借入で補った拡張戦略の代償と帰結
4
水産部門で赤字転落
創業事業の赤字転落が迫った「量から採算」への構造転換
4
商号をニチレイに変更
社名から「冷蔵」を外すことで倉庫会社から食品会社へ再定義
4
物流プロジェクトを発足
「冷凍工場」から「物流サービスセンター」への改称が示した事業再定義
4
冷凍食品の家庭向けマーケティングを本格化
売上1000億円到達と「ニチレイだから選ぶ」理由の不在という二面性
4
アセロラドリンクを発売
冷凍技術を飲料に転用した「新生ニチレイ」の象徴商品の設計
4divestiture
工場跡地を再開発
戦時統制で取得した倉庫用地が40年後に不動産収益源へ転換
4
サクサクコロッケを開発
「油で揚げる」という調理前提を外した冷凍食品設計の転換点
4
岩手県で養鶏場を直営
原種鶏の輸入依存99%に対する川上統合という構造的リスク対応
4
Transports Godfroyを取得
総額24百万ユーロで既存4社を取得した欧州低温物流への参入設計
4
冷凍食品の強化
特売依存を脱するために味そのものを購買理由にした品質転換
13

重要な意思決定

194212
帝国水産統制株式会社を設立

帝国水産統制は戦時国策として設立されたが、全国約220か所の冷蔵・製氷工場を一社に集約した結果、終戦後も競合が容易に再現できない拠点網が形成された。港湾ごとに分散配置された工場群は、個社が新規に構築するにはコストと時間を要する規模であり、日本冷蔵の独占的地位を構造的に支えた。戦時統制という短期的な政策目的に基づく統合が、企業競争上の長期的な優位性を生んだ構造は、意図せざる参入障壁形成の事例である。

19518
加工食品に参入

ニチレイは1950年代から1960年代にかけて、水産・冷凍・煉製品・缶詰・畜産の5分野に事業を広げた。結果として多くの分野は専業メーカーとの競争に直面したが、冷凍食品では冷蔵倉庫業から継承した低温物流網が参入障壁として機能した。どの事業に集中すべきかが事前に判断できない局面において、複数分野への探索的投資が事後的に有効な選択肢を絞り込んだ構造である。

197012
設備投資を継続

ニチレイは食品事業の利益回収を背景に、冷蔵倉庫への再投資を加速させた。設備投資額が税引前利益を恒常的に上回る計画を容認し、不足分を借入で補う方針は、売上倍増をもたらした一方で借入金比率の高止まりを招いた。設備産業における成長投資は利益の先行投下を伴うが、その規模と期間の設定次第で財務の柔軟性が失われる。成長と健全性の緊張関係が後年の経営課題として残された。

19803
水産部門で赤字転落

水産部門の赤字転落は、漁業権益を持たず買付に依存するモデルが200カイリ規制という外部環境の変化に対して脆弱であったことを示した。ニチレイにとって水産加工は創業以来の事業であったが、構造的に収益が安定しない領域に経営資源を割き続ける合理性は低下していた。この赤字を契機に、事業ポートフォリオの再配分が進み、冷凍食品と物流への資源集中が加速する転換点となった。

19852
商号をニチレイに変更

「日本冷蔵」から「ニチレイ」への変更は、冷蔵倉庫業を連想させる社名が食品事業の拡大に制約を与えていたことへの対応であった。社名変更は単なる略称化ではなく、事業の中心が冷蔵倉庫から冷凍食品に移った事実を対外的に示す判断であった。社内運動と連動させた点は、名称変更だけでは組織の意識は変わらないという認識に基づいており、ブランド施策と組織改革を一体で進めた事例である。

1989
物流プロジェクトを発足

ニチレイは物流拠点を「冷凍工場」から「物流サービスセンター」に改称した。この変更は保管業から物流サービス業への転換を組織内外に示す行為であり、評価軸を保管面積から処理能力に切り替える判断を伴っていた。倉庫業の延長では小売側の多品種少量・短納期ニーズに応えられないという構造的限界を認識し、事業の定義そのものを書き換えた点に意味がある。

1986
冷凍食品の家庭向けマーケティングを本格化

家庭向け冷凍食品への投資は売上1,000億円規模を実現したが、特売依存と価格競争の構造は解消されなかった。冷凍食品は保存性が高いため在庫調整の手段として値下げが常態化しやすく、ヒット商品を投入しても中長期の利益確保が難しい。当時の社長が「自社が何を提供する会社かを伝える努力が不足していた」と述懐した通り、量的成長とブランド価値の構築は別の課題であることを示した事例である。

19884
アセロラドリンクを発売

アセロラドリンクは、冷凍・低温管理技術という既存の能力を飲料という新領域に転用した商品であった。鮮度劣化の早いアセロラを安定的に加工・保存できる点がニチレイの技術的優位であり、素材の希少性と機能的価値が差別化の根拠となった。1988年度の売上1,800万円から1990年の80億円への急成長は、大量広告投下の効果であると同時に、食品企業としての認知を消費者に届ける手段としても機能した。

198812
工場跡地を再開発

ニチレイの都心倉庫跡地は、1942年の帝国水産統制設立時に継承された資産であった。冷蔵倉庫としての用途を終えた土地を売却せず保有のまま用途転換した判断は、資産の時間価値を活用するものであった。倉庫用途では減価する設備が、不動産用途では地価上昇の恩恵を受けるという非対称性を捉え、事業キャッシュフローとは異なる回収手段を組み込んだ点が特徴である。

1994
サクサクコロッケを開発

サクサクコロッケは味や原材料の改良ではなく、調理行動そのものを設計の起点に据えた商品であった。電子レンジの普及を前提に、冷凍コロッケの「油で揚げる」という暗黙の制約を外すことで、購入頻度の制約要因そのものを取り除いた。衣の多層化や水分制御という技術的解決は手段であり、本質は「誰がどのように調理するか」を起点に商品を定義し直した点にある。

2007
岩手県で養鶏場を直営

日本の養鶏産業は原種鶏の99%を海外輸入に依存しており、鳥インフルエンザによる輸入停止は供給途絶のリスクを現実化させた。ニチレイフレッシュが直営養鶏に踏み切った判断は、調達先の分散では対処できない構造リスクに対して、川上統合という手段で対応したものである。原料の内製化は通常コスト増を伴うが、供給安定性とトレーサビリティをブランド価値に転換することで投資を正当化する設計がとられた。

20107
Transports Godfroyを取得

ニチレイが選択したフランス進出の手法は、自前で拠点を構築するのではなく、既存の運送会社と倉庫会社を一括取得するものであった。保管と輸送を別々に確保するのではなく、4社を一体で取り込むことで低温物流に必要な機能をパッケージとして獲得した。総額24百万ユーロという投資額は参入リスクを限定しつつ、国内で確立した一体型モデルを海外に展開する足がかりを短期間で確保する設計であった。

20144
冷凍食品の強化

ニチレイの「本格品質」路線は、冷凍食品における競争軸を価格から味の水準へ移す試みであった。保存性の高さから特売の対象になりやすい冷凍食品において、継続購入の理由を価格から品質に転換するには、家庭では再現できない調理水準を冷凍食品で提供する必要があった。1980年代から積み上げてきた量的成長の成果と課題を踏まえ、「何を売る会社か」を商品品質で再定義した判断である。

全社の業績指標

ニチレイ:過去75ヵ年の売上高
連結単体
単位:億円
直近の売上高2024/36,622億円
出所: 証券時報(159)、証券時報(252)、会社年鑑、投資月報44(12)、有価証券報告書
ニチレイ:過去75ヵ年の純利益
連結単体
単位:億円
直近の純利益2024/3215億円
出所: 証券時報(159)、証券時報(252)、会社年鑑、投資月報44(12)、有価証券報告書
売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益その他費用販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結
売上高億円5,5825,6344,9664,6144,6944,5774,6364,7454,3814,3784,5494,7015,1125,2005,3545,3975,6805,8015,8495,7286,0276,6226,8017,021
売上原価億円---3,7263,7783,6893,7383,8723,5023,5043,6803,7874,1794,4624,5434,4854,7524,8694,8584,7405,0055,5335,5995,759
売上総利益億円---8889168888988738808748699159337388119119289329919881,0221,0891,2011,262
販売費及び一般管理費億円---754756707724722711707707735775564595618629637680659708759832879
営業利益億円140183140135160181174151168167162179158174216293299295310329314329369383
営業外収益億円---322727242116192019212017142118191814202831
営業外費用億円---383135283130253026352519161414121212151416
経常利益億円117163121129157174169142155161153172144169214291307299318335317334383399
特別利益億円---3566511271251131723125111595217146
特別損失億円---5692331635221242353141210181514252817212527
当期純利益億円4152-1959631089660914079988995135188191199196212234216245247
粗利率%---19.319.519.419.418.420.120.019.119.518.214.215.116.916.316.116.917.317.016.417.718.0
営業利益率%2.53.22.82.93.44.03.73.23.83.83.63.83.13.34.05.45.35.15.35.85.25.05.45.5
経常利益率%2.12.92.42.83.33.83.63.03.53.73.43.72.83.34.05.45.45.15.45.95.35.15.65.7
純利益率%0.70.9-0.41.31.32.42.11.32.10.91.72.11.71.82.53.53.43.43.43.73.93.33.63.5
総資産額億円3,5343,3072,8472,7642,6852,6922,5782,8732,7752,8462,9052,9793,1853,4203,3853,4623,6733,7733,9004,0574,2764,5734,8524,992
自己資本億円8769079029401,0261,1311,1651,1321,2271,1771,1871,2531,3681,5231,5551,6471,6971,8381,9142,1042,1792,3352,6592,760
自己資本比率%24.827.431.734.038.242.045.239.444.241.440.942.143.044.545.947.646.248.749.151.951.051.154.855.3
営業CF億円172306131156239224203153333173199235111278370408299313394455347379624532
投資CF億円-117-60138-837-59-64-147-136-182-124-96-176-224-145-114-203-179-243-322-260-268-316-324
財務CF億円-79-245-234-152-276-166-139161-33364-76-9726-61-204-219-137-91-102-107-142-86-313-168

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
セグメント別ROIC%
業績データ一覧
セグメント業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
加工食品億円---------1,6161,7381,8372,0411,9361,9862,0472,2032,2622,3442,2522,4402,7542,9063,113
水産億円---------665654634684685686693714711656630677689616585
畜産億円---------765736741782870898863883890862817776830788638
低温物流億円---------1,2501,3541,4221,5331,6371,7051,7231,8001,8541,9041,9572,0722,2672,4032,596
不動産億円---------533736383434333434333129302933
売上高(内訳なし)億円5,5825,6344,9664,6144,6944,5774,6364,7454,381---------------
セグメント別利益
加工食品億円---------465260345480139146146167172142140174188
水産億円---------621427832451010614
畜産億円---------45514416131591312101011
低温物流億円---------7374868987100106113114118131146151158157
不動産億円---------362423242122212221202017181719
セグメント別利益率
加工食品%---------2.93.03.31.72.84.06.86.66.57.17.65.85.16.06.0
水産%---------0.90.30.10.60.41.01.10.40.30.70.81.41.41.02.4
畜産%---------0.50.70.70.20.40.41.91.51.61.11.61.51.21.31.7
低温物流%---------5.85.56.05.85.35.86.26.36.16.26.77.16.76.66.1
不動産%---------67.062.962.761.862.065.364.964.161.959.465.657.059.157.058.0
セグメント別ROIC
加工食品%---------5.86.27.03.44.97.512.312.211.713.012.49.58.19.710.1
水産%---------2.60.90.31.60.92.32.91.00.71.62.03.43.42.66.4
畜産%---------2.83.43.30.92.12.09.06.67.54.86.75.94.95.26.3
低温物流%---------5.65.66.56.45.96.67.17.26.97.07.27.57.57.36.8
不動産%---------18.412.612.813.411.913.013.613.312.812.712.110.511.110.111.2

出所

有価証券報告書 沿革
ニチレイ社史
日本冷凍食品協会資料
日経新聞朝刊
有価証券報告書
ニチレイ IR
Bloomberg
決算説明資料
IR 決算説明QA FY26-2Q 2025/11/11
IR 決算説明QA FY26-3Q 2026/2/3
IR 決算説明QA FY26-1Q 2025/8/5