2024/12 売上高29,394億円YoY+6.2%
2024/12 営業利益1,931億円YoY+9.8%
2024/12 従業員-
創業19491949年上場)
創業地大阪府吹田市
創業者鳥井駒吉・外山脩造ら

1949年、大日本麦酒の分割により朝日麦酒として発足し、西日本を地盤に再出発した。長期のシェア低迷を経て住友銀行主導の経営刷新を受け、1987年のスーパードライ発売でビール市場の勢力図を塗り替えた。国内成熟市場での反転経験を原型に、2016年以降は欧州・豪州で計2兆円超の大型買収を断行し、プレミアムビールを軸にしたグローバル三極体制を構築した。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上収益営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高

歴史概略

第1期: 分割からの再出発と長期低迷(1949〜1985)

西日本偏重の事業基盤と首都圏の壁

1949年9月、大日本麦酒の分割により朝日麦酒が発足した。吹田・西宮・博多の各工場を引き継ぎ、西日本を主要な事業基盤とした。全国網を失った同社は、特に首都圏における供給力と販売網の不足が長期の課題となった。1954年にはニッカウヰスキーへの資本参加により酒類ポートフォリオの拡張を図ったが、ビール事業のシェア回復には結びつかなかった。

1962年に東京・大森に新工場を建設して首都圏での供給制約を緩和したが、各社の設備投資が応酬に発展し、供給能力は需要成長を上回るペースで拡大した。1963年に業界3位に後退し、量の競争ではキリンとの差を埋められない現実が明確になった。シェアは9.6%まで低下し、構造的な劣位が固定化していった。

有価証券報告書 沿革

住友銀行が送り込んだ経営者たち

メインバンクの住友銀行は1976年に元行員の延命直松を社長に据えたが業績は好転せず、1982年にマツダ再建を手がけた元副頭取の村井勉を社長に送り込んだ。村井は問題を「組織の体質」に求め、家庭用市場を主戦場として再定義し、研修制度を整備して組織の動き方を変える土台作りに着手した。

村井は「ビールを売るのも預金を集めるのも似たようなもの。足腰を強くして歩いて稼ぐしかない」と語り、ビール業界の常識に縛られない視点で改革を進めた。この組織基盤の上に、1986年に社長に就任した同じく住友銀行出身の樋口廣太郎が立つことになる。銀行出身者が連続して経営を担ったことが、後のスーパードライ投入を可能にする組織的前提を形成した。

日経ビジネス 1982/10/4

第2期: スーパードライ革命と国内首位の奪取(1986〜2015)

スーパードライの発売とシェア逆転

1987年3月、アサヒスーパードライが発売された。約5000人規模の消費者調査に基づき「すっきり」「キレ」を特徴とする味が選ばれた。同時に広告宣伝・販促に年間約570億円を集中投下し、東京都内の取扱率を47%から99.8%に引き上げた。初年度の販売は計画100万箱に対し約1350万箱、売上高は約860億円に達した。

競合は類似商品を投入したが、既存顧客を大量に抱える高シェア企業ほど主力ブランドの味を全面的に切り替えることが困難であった。シェア9.6%という劣位が逆に守るべきものの少なさを意味し、非連続な転換を可能にした。1989年にシェアは24.9%まで回復して業界2位に浮上し、2001年にはキリンを抜いて首位に立った。

日経ビジネス 1989/2/15

カルピス買収と飲料事業の質的転換

2012年10月、アサヒグループHDは味の素が保有するカルピスの全株式を約920億円で取得した。90年以上の歴史を持つカルピスは価格競争に陥りにくい定番ブランドであり、短期のヒットに依存しない安定的なキャッシュフローを生む資産であった。飲料業界で単独3位のポジションを確保し、新商品依存型の収益構造からの脱却を図った。

国内酒類市場が成熟局面に入る中、カルピス買収は海外M&Aとは異なるアプローチで国内基盤を強化する一手であった。既に消費者に定着したメガブランドの取得によって事業の質を転換させ、飲料事業のキャッシュフローの予見可能性を高めた。規模拡大ではなく事業の安定性を高めるM&Aとして、アサヒの事業ポートフォリオ再構築の象徴となった。

有価証券報告書決算説明資料

第3期: グローバルプレミアム戦略の構築(2016〜現在)

欧州事業の一括取得と三極体制の確立

2016年、アサヒはABインベブによるSABMiller買収に伴い売却対象となった欧州ビール事業を約1.2兆円で取得した。Peroni Nastro AzzurroやPilsner Urquellなど、各国で高いブランド力を持つプレミアムビール群を一括で手にした。2020年6月にはABインベブの豪州事業CUBを約1.17兆円で取得し、日本・欧州・豪州の三極体制が確立された。

成長市場ではなく成熟市場を投資先として選択した点に特徴がある。1994年に進出した中国からは2017年に撤退する一方、先進国の既存ブランドを取得することで数量成長に依存しない安定収益基盤を構築した。国内でスーパードライという成熟市場でのシェア転換を経験した企業が、固まった市場でポジションを確保しプレミアム化で収益性を高める戦略を海外でも展開している。

有価証券報告書決算説明資料

成熟市場の集合体としてのグローバル経営

計2兆円超の海外M&Aにより、アサヒの海外売上比率は大幅に上昇し、国内依存型の収益構造からの脱却が進んだ。欧州事業は各国でのローカルブランドの安定シェアとプレミアム戦略の相互展開を両立し、豪州事業は業務用に強固な販売網を持つCUBを軸に5年で100億円以上のコストシナジーを目指す計画が進められた。

このモデルは成熟市場の集合体による地域分散とプレミアムブランドの相互展開を基本設計としている。伸びている市場で量を取るのではなく、固まった市場でポジションを確保する発想が国内戦略と海外戦略を貫いている。成長市場を追わないことで安定性を得るこの戦略が長期的な企業成長とどこまで両立するかは、今後の検証を待つことになる。

有価証券報告書決算説明資料

沿革

沿革一覧
4founding
朝日麦酒株式会社を発足
分割による西日本偏重と全国再構築の起点
4
ニッカウヰスキーに資本参加
自前投資を避けた協業によるウイスキー参入
4
大森工場を新設
首都圏攻略の工場新設が招いた設備投資の応酬
4crisis
住友銀行が経営支援
銀行主導の経営刷新がスーパードライの前提を築いた
4
アサヒスーパードライを発売
劣位の自由度が可能にした味覚革命と市場逆転
4acquisition
カルピスを買収
メガブランド取得による飲料事業の質的転換
4acquisition
SABMillerの欧州および中東事業を買収
プレミアム軸のグローバル戦略を欧州で確立
4acquisition
AB InBev社の豪州事業を買収
売り手の財務制約を活かした豪州事業の一括取得
8

取締役人事

荻田伍
泉谷直木
小路明善
勝木敦志
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
荻田伍
社長
社長
社長
社長
泉谷直木
社長
社長
社長
社長
社長
社長
小路明善
社長
社長
社長
社長
社長
勝木敦志
社長
社長
社長
社長
取締役
社長常務以上取締役監査・社外社長交代
FY24
取締役 勝木敦志

重要な意思決定

19499
朝日麦酒株式会社を発足

1949年の大日本麦酒の分割により、朝日麦酒は西日本を地盤とする限定的な事業基盤で再出発した。全国網を失い、特に首都圏での供給力不足は長期にわたる課題となった。一方で、分割は独立した意思決定の自由度をもたらし、後年の非連続な戦略転換を可能にする組織的条件を整えた。劣位からの出発が、結果として攻める経営の前提を形成した。

19548
ニッカウヰスキーに資本参加

ウイスキー市場でサントリーが先行する中、朝日麦酒は自社での垂直統合ではなくニッカとの資本提携を選んだ。設備投資と熟成リスクを抑えつつ、自社の販売網とニッカの製造能力を組み合わせる補完関係が設計の基盤であった。この協業型の参入判断は、後年のアサヒグループにおけるM&Aを通じた事業拡張の原型ともいえる選択であった。

19625
大森工場を新設

大森工場の新設は首都圏での供給力強化を目的とした前進配置であったが、サッポロが関西に対抗投資を行うなど、各社の設備投資は相互の重点市場を突く応酬に発展した。供給力の増強はシェア改善に直結せず、朝日麦酒は1963年に業界3位に後退した。量の競争ではキリンの優位を崩せないという現実が、この時期の投資から浮かび上がった。

19823
住友銀行が経営支援

1982年の住友銀行による経営支援は、朝日ビールの低迷を組織構造の問題として捉え直す転機であった。村井社長は家庭用市場への視点転換と組織行動の質的改善を推進し、即座の業績回復ではなく再挑戦の条件を整えることに注力した。この時期に形成された組織基盤が、後年のスーパードライという非連続な戦略転換を可能にする前提となった。

19873
アサヒスーパードライを発売

スーパードライは、消費者調査を起点に味を再定義し、広告販促への集中投資でブランドを浸透させた非連続な一手であった。シェア9.6%という劣位が、逆に既存を捨てる自由度を生んだ。競合は既存顧客を抱えるがゆえに主力の味覚転換に踏み込めず、先行者の優位が構造的に保護された。成熟市場でシェア構造を書き換えた稀有な事例である。

201210
カルピスを買収

カルピス買収は、新商品開発の積み上げではなく、既に定着したメガブランドの取得によって飲料事業の質を転換させた案件であった。90年の歴史を持つ定番ブランドは価格競争に陥りにくく、安定的なキャッシュフローを生む。業界3位の規模確保以上に、新商品依存からの脱却と事業の予見可能性向上がこの買収の本質的な意義であった。

20162
SABMillerの欧州および中東事業を買収

SABMiller欧州事業の取得は、量の競争から降りてプレミアムで戦う土俵を海外に求めた戦略転換であった。総額約1.2兆円でPeroniやPilsner Urquellなど高収益ブランド群を一括取得し、欧州に安定収益基盤を確立した。中東欧の高マージン事業を含む買収は、国内依存からの脱却を構造的に推進し、グローバルプレミアム戦略の基盤となった。

20206
AB InBev社の豪州事業を買収

ABインベブがSABMiller買収後の負債圧縮を急ぐ中、アサヒは買い手として交渉上の優位を確保し、豪州ビール市場の約5割を占めるCUB事業を取得した。欧州に続く大型買収により日本・欧州・豪州の三極体制が確立され、地域分散とプレミアム戦略の相互展開が可能となった。売り手の事情を活かした高収益事業の連続取得である。

全社の業績指標

売上高(長期)売上収益(2025/12)29,394億円
純利益(長期)当期利益(2025/12)1,931億円
売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上収益営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2001/122002/122003/122004/122005/122006/122007/122008/122009/122010/122011/122012/122013/122014/122015/122016/122017/122018/122019/122020/122021/122022/122023/122024/12
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結
売上高億円14,33413,75314,00314,44214,30014,46414,64114,62714,72514,89514,62715,79117,14217,85518,57417,06920,84921,20320,89020,27822,36125,11127,69129,394
売上原価億円---9,7869,5409,5019,6129,5359,5849,4339,0729,74710,32910,73411,00510,98212,95413,03212,97312,83213,83215,89317,70218,417
売上総利益億円---4,6564,7604,9625,0295,0935,1405,4615,5556,0446,8147,1207,5696,0877,8958,1707,9177,4468,5299,2189,98910,977
販売費及び一般管理費億円---3,6433,8584,0754,1594,1474,3124,5084,4834,9595,6395,8376,2184,6025,9315,9575,7885,7686,3496,7807,3538,126
営業利益億円---1,0139028878709458289531,0721,0841,1751,2831,3511,3691,8322,1182,0141,3522,1192,1702,4502,691
営業外収益億円---519496137139159132112141131132194---------
営業外費用億円---108828210512082747477708386---------
経常利益億円6075767059579159019029659051,0111,1091,1481,2361,3321,4591,5011,9702,0731,9741,2541,9982,0602,4192,670
特別利益億円---1682392429196361104944334180---------
特別損失億円---389239128109165220447309243175381412---------
当期純利益億円1361482323063994484484504765315515726176917648921,4101,5111,4229281,5351,5161,6411,921
粗利率%---32.233.334.334.334.834.936.738.038.339.739.940.835.737.938.537.936.738.136.736.137.3
営業利益率%---7.06.36.15.96.55.66.47.36.96.97.27.38.08.810.09.66.79.58.68.89.2
経常利益率%4.24.25.06.66.46.26.26.66.16.87.67.37.27.57.98.89.49.89.46.28.98.28.79.1
純利益率%0.91.11.72.12.83.13.13.13.23.63.83.63.63.94.15.26.87.16.84.66.96.05.96.5
総資産額億円13,41112,94712,44412,50812,18212,88513,24412,99114,33714,05415,29917,32217,91619,36619,01620,94333,46830,79331,40844,39445,47748,30352,85954,034
自己資本億円3,8603,8753,9824,1784,5495,0985,2985,3465,7776,1276,4387,2698,2758,9658,9188,36411,45111,46412,46315,16117,57120,60724,60526,688
自己資本比率%28.829.932.033.437.339.640.041.240.343.642.142.046.246.346.939.934.237.239.734.238.642.746.549.4
営業CF億円1,1017801,1541,1298721,0586961,0611,0641,2561,0851,0931,5731,4681,1281,5452,3172,5242,5352,7593,3782,6603,4754,037
投資CF億円-367-615-308-548-445-822-1,178-582-1,806-418-1,712-1,343-657-922-756-2,685-8,858225-1,037-12,434-143-692-1,177-1,187
財務CF億円-797-197-887-557-357-222361-464785-908671430-849-358-7301,1966,619-2,706-1,5889,568-3,203-2,196-2,267-2,728

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
セグメント別ROIC%
業績データ一覧
セグメント業績
FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
酒類億円10,78910,25410,07610,1239,9579,5829,6639,2179,2229,2599,4209,7299,5049,4208,8488,5927,2106,969---
飲料億円2,1742,6702,8312,9973,1673,5523,0673,2483,7084,6114,7154,9023,5603,6603,6243,6733,4533,509---
食品・薬品億円222253538671792924---------------
その他億円1,2581,1231,019851711668---------------
食品億円------9549801,0161,0621,1001,1501,0911,1221,1471,1661,2251,251---
国際億円------9779421,5791,9202,3322,4972,4786,1857,1026,9947,92910,174---
日本億円------------------12,97213,53213,543
欧州億円------------------5,7276,8767,798
オセアニア億円------------------5,8086,4957,134
東南アジア億円------------------516572654
セグメント別利益
酒類億円9097817827939087898721,0101,1331,1371,1691,1871,1121,1361,0621,030720568---
飲料億円81867746678311474155213224328444347306289641---
食品・薬品億円-684131927---------------
その他億円29262217109---------------
食品億円------364237496081114109118126112105---
国際億円-------51-29-39-46-1235-03487747615211,111---
日本億円------------------9641,1131,363
欧州億円------------------552594658
オセアニア億円------------------802897818
東南アジア億円------------------61018
セグメント別利益率
酒類%8.47.67.87.89.18.29.011.012.312.312.412.211.712.112.012.010.08.1---
飲料%3.73.22.71.50.20.22.73.52.03.44.54.69.212.19.68.38.418.3---
食品・薬品%-2.73.20.82.02.53.0---------------
その他%2.32.32.12.01.41.3---------------
食品%------3.84.23.64.65.57.010.49.710.310.89.18.4---
国際%-------5.3-3.1-2.5-2.4-0.51.4-5.610.910.96.610.9---
日本%------------------7.48.210.1
欧州%------------------9.68.68.4
オセアニア%------------------13.813.811.5
東南アジア%------------------1.21.82.7
セグメント別ROIC
酒類%10.29.49.69.811.610.710.714.516.616.716.315.715.515.514.915.311.89.1---
飲料%6.15.14.42.10.30.24.35.72.24.56.07.111.315.611.99.89.924.3---
食品・薬品%-3.54.50.51.72.13.0---------------
その他%2.32.42.32.01.31.1---------------
食品%------4.34.84.25.56.68.712.712.012.913.111.210.6---
国際%-------1.7-0.7-0.8-0.8-0.20.5-1.64.03.91.63.2---
日本%------------------9.710.712.9
欧州%------------------3.13.03.2
オセアニア%------------------4.24.33.9
東南アジア%------------------1.41.83.3

出所