売上
DeNA:売上高
■単体 | ■連結 (単位:億円)
1,349億円
売上収益:2023/3
利益
DeNA:売上高_当期純利益率
○単体 | ○連結 (単位:%)
6.5%
利益率:2023/3
免責事項
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1999
3月

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)を設立

人物

DeNA創業者・南場智子氏について

1999年3月に南場智子氏株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)を設立した。会社設立前まで、南場智子氏はマッキンゼーの日本法人に勤務していたが、インターネットバブルの興隆を見て起業家に転身した。

証言
南場智子氏(DeNA創業者)

1999年、DeNAを起業しました。あのときの情熱は、まるで熱病にかかったようでした。

当時、私はマッキンゼーのコンサルタントで、同社のパートナーになっていました。普及が進んでいた携帯電話でオークションサイトをやったら面白いんじゃないかというアイデアを思いついて、コンサルタントとして他社の知り合いに熱心に勧めたのです。するとその人から「君がやればいいじゃない」と言われた。私は他人にアドバイスするのが仕事でしたから、自分がやるという発想がありませんでした。一瞬、「え?」って思ったけれど、次の瞬間から「わーっ」と情熱がわいてきたのです。

財務

ネットバブル期に調達成功

当時はインターネットバブルの渦中にあったため、DeNAは2000年3月には13億円(評価額・推定152億円)、2001年には9.1億円(評価額・推定約130億円)の調達を実施した。ダウンラウンドになった理由は、インターネットバブルの崩壊による資金調達の環境悪化によると思われる。

事業

オークション「ビッターズ」を展開

1999年前後にはインターネットにおけるショッピング(EC)が流行の兆しを見せており、南場智子氏もこの分野に着目した。当初は外注先にシステム開発を委託したが、契約通りに開発されなかったことが判明。そこで、南場智子氏は社内のエンジニア(茂岩祐樹氏)に内製化を指示し、不眠普及の末、2ヶ月でシステムを開発した。そして、1999年11月にDeNAはオークションサービス「ビッターズ」をリリースした。

しかし、オークションの領域ではヤフージャパンが「ヤフオク」でユーザーを獲得しつつあり、ECの領域では楽天の「楽天市場」が業績を拡大したため、後発参入だったDeNAはECの領域で苦戦した。

証言
南場智子氏(DeNA創業者)

本当に企画を作って、開発は遠隔地のシステム開発会社に丸投げ。それでなんと、今日開発が終わって明日からテストという日に、コードが1行も書けていないという事態に見舞われます。ちょっと被害者のように言っちゃいけないね、自分が起こした問題なので。でも、そういうことが起こった。

既に競合の「ヤフオク!」などは始まっているし、企画も何回もやり直した末なので、もうこれ以上は遅れられないというデッドライン。開発が終わっているはずの日にコードがないという状況なので、私はどうしたかっていうと、まあパニックになりましたね。

そこに4人目の社員としていたこの人、我が社初めての、そしてその時オンリーワンのエンジニア。匿名希望の茂岩祐樹さんです。この人が、メチャクチャがんばった。もうコードが1行も書けていないというその日から自宅に帰らず、アパート引き払って会社に住民票を移して。本当に自宅に帰らないの。それも1週間や2週間じゃないんですね。数ヶ月。

結果

ヤフオクに対して劣勢。資本金取崩しへ

2003年ごろのDeNAの財務状況は極めて厳しく、2003年6月には欠損補填のために資本金準備金を14億円、同年8月には資本金を9億円、合計23億円を取り崩している。それでも、インターネットバブル前夜に十分な資金を調達していたことが功を奏し、5億円が現預金として手元に残った。

DeNAは無借金経営であったこともあり、インターネットバブルの崩壊という危機に直面しつつも財務的な危機とはほぼ無縁であった。

FY 総資産額 自己資本比率 従業員数
2000/3 20.3億円 95.3% 18名
2001/3 17.5億円 85.8% 50名
2002/3 11.0億円 87.7% 62名
2003/3 9.1億円 75.6% 70名
2004
3月

モバオクのサービス提供を開始

2004年3月にDeNAは、モバイル向けのオークション「モバオク」のサービス提供を開始した。ビッターズがPCからのアクセスに基づくサービスであったのに対して、モバオクはモバイル(ガラケー)からのアクセスに特化したサイトであった。

2004年以降、ガラケーの普及と共に、DeNAの主力事業は「ビッターズ」から「モバイル領域のサービス」へと変化した。FY2005/3Q(2005年12月)には、ビッターズの売上高をモバイル領域が凌駕するなど、DeNAはモバイルコンテンツのサービス会社へと変貌した。

なお、DeNAにおけるビッターズは、Yahooが展開する「ヤフオク」の牙城を崩すことができず、急成長が難しい状況にあった。このため、DeNAはベンチャー企業としては、モバイル領域が伸びたことで、売上成長を実現する形となった。

2005
東証マザーズに株式上場
2005
1月

KDDIと提携

2005年1月にDeNAはKDDIとの提携を発表。KDDI向けのコンテンツサービスとして「モバオク」を展開するために。子会社として「モバオク」を設立し、同社に対してKDDIが第三者割当増資により出資(3億円)する契約を締結した。

DeNAとしては、携帯電話のプラットフォーマーであるKDDIと提携することで、安定的にコンテンツを供給する狙いがあり、子会社モバオクを通じた一部の利益を逃してもKDDIと提携することを選択した。その後、2006年にDeNAはau向けのオークションを「auオークション」に名称変更し、NTT DocomoおよびSoftbank向けについては「モバオク」のブランドでサービスを提供。DeNAはKDDI向けにコンテンツをOEM供給する立場となった。

2005年
1月
KDDIと提携
2005年
1月
auオークションのサービス提供を開始
2005年
6月
株式会社モバオクを設立
2006年
2月
モバゲータウンを開始
2006年
5月
株式会社ペイジェントを設立
2009
10月

怪盗ロワイヤルをリリース

開発

怪盗ロワイヤルのリリース

2008年までのDeNAの収入源は、ソーシャルゲームにおけるアバター(着せ替えアイテム)と広告収入であったが、課金収入が対前年度比で低迷していた。加えて、ソーシャルゲームの競合としてグリーが台頭するなど、モバイルゲームを取り巻く競争環境が激しくなりつつあった。

そこで、DeNAは、守安功氏が中心となったモバイルゲーム事業のテコ入れを決定。従来のアバターへの課金に加えて、ゲームアイテムへの課金を重視するようになった。

この方針の元に、守安功氏によるゲーム開発の直轄プロジェクトがスタートし、2009年10月にリリースした「怪盗ロワイヤル」が大ヒットを記録した。この作品は、2005年にDeNAに新卒入社した大塚剛司氏が中心となって企画されたゲームであり、約半年間の企画・開発を経てリリースされた。

ただし、怪盗ロワイヤルの企画段階において、DeNAの社内には「面白い」という意見が出る一方で、「分からない」「つまらない」という意見も多く噴出したという。2009年8月に社内向けにリリースしたものの「分かりづらい」という意見が大勢でだったらしい。

それでも、大塚氏はゲームのリリース後にパラメータを調整すれば良いと考え、企画案の大筋を変えることなく、2009年10月に怪盗ロワイヤルをリリースした。

ソーシャルゲームの特性である「ユーザー数が増えるほど面白くなる」という効果が働き、リリース直後から大ヒットとなった。

結果

爆発的ヒット。DeNAの大幅増収に寄与

「怪盗ロワイヤル」のヒットによって、DeNAが運営するゲームプラットフォーム「モバゲータウン」へのアクセス数も増加。リリース前は170億PV/月に対して、リリース後の12月には380億PV/月、リリース翌年には700億PV/月を突破し、DeNAはゲームプラットフォームの運営者としての地位を確立した。

また、ゲームアイテムに対する課金体系を充実させたことによって、DeNAの業績にも大きく貢献した。2009年度3Q時点でゲーム内アイテム課金の売上高が35.7億円(2Q時点で同4.3億円と爆発的にに増加し、アバターへの課金売上高14.4億円を上回った。この結果、DeNAは怪盗ロワイヤルのヒットと、ゲーム内のアイテム課金によって、収益性を大幅に向上させた。

2010
10月

米ngmoco社を買収

買収

ngmoco社を買収

2010年10月にDeNAは、スマホ向けのゲームをグローバルで展開するため、米国カリフォルニア州に拠点をおくngmoco社を251〜342億円で買収すると発表した。

DeNAにとっての狙いは、普及しつつあったスマホゲームの拡大にあった。当時、ngmoco社は2500万ユーザーを抱えるコミュニティー「plus+Network」を運営しつつ、自社でスマホ(iPhone向け)のゲームを開発しており、スマホ時代のソーシャルゲームのプラットフォーマになると見られていた。そこで、DeNAは「plus+Network」のユーザーを自社の「Mobage Global」に移管することによって、グローバルでのソーシャルゲーム市場を確保する狙いがあった。

買収に呼応して、2010年12月にDeNAは国内のモバゲーのスマホ対応を行うなど、全社的にスマホへのシフトに注力した。2010年の時点でDeNAの経営陣は、4年後の2014年にはMobageにおいて、携帯電話(ガラケー)での売上高が全体の10%程度になり、スマートフォンが大半を占めることを予想した。

証言
DeNA経営陣(FY2010/3Q決算説明会)

「国内においてはスマートフォンの普及が想定以上に早く、国内外において、スマートフォン対応をスピーディーに実現することが課題であると認識しております。 2011年は当社の将来を大きく左右する年になると思いますが、課題はチャンスでもあると 考えており、既存の携帯電話からスマートフォンに事業を拡大することでグローバルに展 開できるよう、グループ一丸で取り組んでまいります。 これまでの国内の成功に固執することなく、世界で戦っていくことが大事だと考えており、当社がやれなくて誰ができるんだという気持ちで取り組んでまいります。」

FY2010/3Q DeNA:FY2010/3Q決算説明会
計画

経営目標「2014年度売上高4000億円」を策定

ngmocoの買収によって、DeNAは2014年度における業績目標を発表。売上高約4000億円(うち国内と海外が半分ずつ)および営業利益2000億円をそれぞれ目標に据えた。

財務

キャッシュアウト109億円で買収実行

買収資金は(1)第三者割当増資による普通株式の発行で124億円(希薄化3.4%)、(2)新株予約権23億円、(3)現金109億円を組み合わせることによって、合計257億円での買収を実施。買収後の業績に連動するアーンアウト条項を設け、規定値に達した場合は追加で85億円(普通株式26億円、新株予約権10億円、現金48億円)を支払う契約を締結した。

なお、契約期限である2012年度までに、アーンアウト条項による追加取得の形跡はないことから、業績目標は未達に終わった可能性が高い。

また、買収の実行により、DeNAは2011年3月期末にはBSにおいて無形固定資産(のれん)を280億円計上したため、買収後は減損リスクを抱えることになった。なお、のれんの計上金額280億円が、発表時の買収価格257億円と比べて上振れした理由は為替変動が原因と思われる。

なお、2010年の買収時点では12年にわたる償却を予定していたが、2011年からDeNAは会計基準をIFRSに移行しており、のれん償却を回避することができるようになった(代わりに減損テストを実施)ため、買収に伴う毎期ごとのPLにおける償却コストの計上を避けることができた。

結果

目標未達。ngmoco社の解散

2014年3月期のDeNAの売上高は1813億円であり、計画未達となった。このため、2016年10月にDeNAは、ゲームの海外子会社ngmoco(2010年買収)の会社解散を発表した。解散の理由としては、ゲームのヒット作が出なかったことであった。

同時に、DeNAはngmocoの買収によって計上した「のれん」の減損計上について、減損損失の不認識という見解を公表した。減損チェックの対象が「ngmocoという個別企業」ではなく「ソーシャルゲームというセグメント全般」を範囲としており、ソーシャルゲーム事業は国内を中心に好調だったため、減損の計上が見送られたという。すなわち、のれんに関して、減損テストを買収企業に対してではなく、セグメント事業に設定していたことが事の発端と言える。

ただし、仮に買収企業に設定した場合、当該企業は買収当時から赤字であったことから、常に減損テストに引っ掛かるという問題もあったと推察される。

結果

減損損失511億円を計上

2020年にDeNAは国内を含めたソーシャルゲーム事業の業績が悪化した。このため、ソーシャルゲーム事業に対して設定されたのれんに関して、511億円の減損損失の計上を決定し、DeNAは上場以来初となる最終赤字に転落した。

2020年3月期3Q時点で計上した減損損失は494億円で、このうち402億円がのれん(ngcomo社の買収によるもの)であり、81億円が資産計上していたソフトウェアであった。

なお、ngmoco社の買収時点で「のれん」の計上金額は280億円であり、2020年までに402億円まで膨れ上がっている。この背景は、買収時の契約が「米国ドルベース」で行われたため、為替の変動リスクを受けたことが影響している。2010年代を通じて円高ドル安が侵攻したことを受けて、為替レートに応じてDeNAは「のれん」に関して為替換算差額を計上した。

2013年3月期:為替換算差による増減+42億円

2014年3月期:為替換算差による増減+32億円

2015年3月期:為替換算差による増減+52億円

2016年3月期:為替換算差による増減▲27億円

したがって、一見すると401億円の減損は「途方もない数値」に見えるものの、DeNAのキャッシュアウトを伴ったのは「買収対価としての現金100億円」と、株主にとっては3%の希薄化が、それぞれ買収のコストであった

2011

守安功が代表取締役社長に就任

2011年にDeNAの社長に創業期からの社員であった守安功が就任し、創業者の南場智子氏は取締役会長となった。以後、守安社長と南場会長の2頭体制で、DeNAが経営された。

2011

横浜ベイスターズの株式を取得

2011年にDeNAは球団ビジネスに参入するために、横浜ベイスターズの株式を議決権ベースで66.92%を65億円で取得した。アドバイザリー費用は約600万円で、DeNAは買収に伴って59億円の「のれん」を計上した。

買収の狙いは、DeNAという会社の知名度を全国的に向上させることにあったと思われる。買収から5年を経た2015年に南場智子会長は「日本全国に社名が知られるようになった。新入社員の両親が『その新興企業は何だ』とならず応援する機運が出てきた。人材が命の当社にとって本業に資するところがある」(2015/2/14週刊東洋経済)と述べている。

2012
本社を渋谷ヒカリエに移転
2012

コンプガチャ問題

2012年に携帯ゲーム業界では、18歳未満の青少年が重課金する問題が顕在化し、ゲームのガチャを有料課金によって行うことから「コンプガチャ問題」と呼ばれた。そこで、GREE、DeNA、mixi、サイバーエージェント、ドワンゴ、NHNの6社は、コンプガチャの全廃を取り決めた。

そこで、DeNAはコンプガチャ問題への対応として、18歳未満のユーザーに関しては月額10,000円、15歳未満のユーザーに関しては月額5,000円までと、有料課金の幅を制限した。

2013
過去最高益を達成するも、利益の安定に課題。新規事業に相次いで参入
2014
9月

iemo株式会社および株式会社ペロリの買収

新規事業としてキュレーションメディアに参入するために、iemoおよびペロリの2社の買収を決定。個別の買収価格は非開示だが、2社合算の取得価格は37億円。

なお、これらのキュレーションメディアの買収および運営上の問題によって、DeNAは社会的な信頼を喪失した。

2015

株式会社横浜スタジアムの株式取得

DeNAは株式会社横浜DeNAベイスターズを通じて、株式会社横浜スタジアムの株式76.87%を取得。取得対価は80.7億円であったが、同社の純資産130億円から非支配持分20億円を差し引いた20億円を「負ののれん発生益」として計上した。

DeNAとしては横浜ベイスターズとともに、球場経営を一体的に行うことで事業収益を改善する狙いがあった。

2015
7月

DeNA BtoB Marketを売却

2006年から展開していた業者向けEC「DeNA BtoB Market」について、事業売却を決定。新設する株式会社NESTAに事業を継承し、同社の全株式をオークファンに譲渡して撤退した。譲渡価格は12.5億円であった。

2016
3月

投資有価証券を取得

FY2015に投資有価証券を231億円で取得。DeNAが保有する現預金の比率が高まり、資産運用による収益の確保を目論んだと推定。取得内容の内訳は非開示

2016
12月

WelQ問題が発生。第三者委員会を設置

買収

iemoおよびペロリを買収。DeNAパレット構想を提唱

2014年にDeNAはゲームに代わる新規事業として、キュレーションメディアへの参入を決定。インテリアメディアのiemoを運営するMERY(村田マリ社長)と、旅行系のメディアを運営するペロリを買収した。iemoの買収価格は約15億円、ペロリの買収価格は約35億円であり、DeNAは合計50億円をキュレーションへの参入に投資した(出所:第三者委員会・調査報告書2017/3/11)。

買収によって、村田マリ氏はDeNAの執行役員に就任し、新事業としてのキュレーションメディアの展開を担当。2015年4月に守安氏が提唱した「DeNAにより10メディアを自社展開する」ことでプラットフォームを目指すという「DeNAパレット」という構想に基づき、キュレーション事業部では、医療系の記事を扱うWELQなど、9つのキュレーションメディアをリリースした。

記事数を増やすために「クラウドソージング」のサービスを活用してライターを集め、記事のチェックを簡易的なサンプル調査にとどめるなど、DeNAの経営陣はリスクを許容した。DeNAの法務部は、買収時の法務DDにおいて著作権(画像の無断使用・文章の盗用)のリスクが高いことを指摘したものの、DeNAの取締役会では著作権などのリスクについて重視されず、十分に検討されなかった。

証言
第三者委員会・調査報告書

経営会議や取締役会の資料では、iemoのプラットフォーム化やプロ責法について指摘されていたものの、プロ責法の適用の有無を意識した形で、iemoをメディアとして運営していくべきか、プラットフォームとして運営すべきかという点について、明確な結論が出た証跡は見受けられず、その点は曖昧なままになった可能性が高い。また、iemo社法務調査報告書では、記事テキストに関する著作権侵害のリスクは抽象的にしか指摘されていなかったこともあり、最も重要視されていたリスクは、あくまでも画像に関する著作権侵害のリスクであった。その結果、DeNAにおける議論は、画像の掲載方法を直リンク方式へと変更することに主要な重点が置かれるようになりお、記事のテキストに関する著作権侵害のリスクや、それを踏まえたiemoプラットフォーム化に関する問題意識は、取締役の間で共有されなかった。

事故

KPIとして時価総額2500億円を設定。社員が疲弊

キュレーションメディアの業績目標は、DeNAの守安功社長の主導によってKPIが決定された。キュレーションメディアで時価総額2500億円(FY2018)という目標を掲げて、KPIとしてGoogleの検索流入によるPVを据えた(時価総額とPVの相関関係はよくわからない)。

このため、経営陣の無謀なKPIの設定が、DeNAで働く社員を疲弊させることになったと推定される。

証言
第三者委員会・調査報告書(社員の声)

「DeNAの組織風土にも問題がある。売上高、利益を上げることが至上命題であり、このようなDeNAの思想が今回の問題の根っこにあると思う」「ロボットよりも人間が評価される組織に生まれ変わることを願っている」

結果

盗作疑惑により謝罪。特別損失を計上

DeNAの取締役を含めた経営陣による「KPIの重視」という方針によって、DeNAのキュレーションメディアでは盗作疑惑が相次いで浮上した。そして、2016年10月に医療系メディアのWELQに事実誤認の記事があることがSNSにおいて「炎上」すると、DeNAに対する批判が集まった。

2016年12月にDeNAは第三者委員会の設置を公表し、全てのキュレーションメディアの運営を休止した。12月3日には、南場智子氏(DeNA取締役会長)・守安功氏(DeNA代表取締役社長)・小林賢治氏(DeNA取締役)の三名による謝罪会見を実施した。

Youtubeに会見動画あり:THE PAGE

業績面では、2016年12月期(FY2016/3Q)の決算において、DeNAは買収したキュレーション事業の利用価値を「0円」と判定し、減損損失58億円を計上した。

なお、この問題以降も、南場会長および守安社長はDeNAの役職を続投しており、引責辞任は行わなかった。

証言
第三者委員会・調査報告書

DeNAは、自らの成長により他の立派な企業から得られた評価と信頼に応えようと意識していた一方で、いつの間にか自らが欲することを行いやすくするための「免罪符」として「永久ベンチャー」というスローガンを都合よく唱えるようになってしまっていたのではないか。(略)当委員会は、複雑で不明確さが多いキュレーション事業を遂行していく過程で、DeNAが事業の拡大の喪に気を取られて、それに伴うリスクの拡大・拡散を適切に発見・把握し、かつ対応するための体制とプロセスの構築および運用を怠ったことが、本問題における大きな問題点の一つであったと考える。

2018

新規事業に対する投資額を80億円に拡大。タクシー配車アプリ「MOV」のサービス提供を開始

2018年度にDeNAは新規事業に対する投資額を80億円に拡大し、ゲーム事業に匹敵する新事業を育てる方針を発表した。

DeNAが注力した新事業は3つの領域であった。1つ目がライブ配信で、PocochaとSHOWROOMの各サービスへの投資を本格化した。

2つ目がオートモーティブ事業で、2015年から参入していたが、2018年ごろから事業化投資を本格化。神奈川県タクシー協会と共同で次世代タクシーの研究や、日産自動車との共同実験による自動運転車の実験などを行い、2018年にタクシー配車アプリ「MOV」をリリースした。

3つ目がヘルスケア事業で保険事業に着目。大手保険会社のSOMPO HD と提携するなど、保険商品の販売拡大を目論んだ。

2019
5月

自社株買いを公表

2019年5月にDeNAは500億円(発行済み株式の約26%)を上限とする自社株買いを実施する方針を発表。2019年度において、321億円で自己株式を取得した。

2020
3月

最終赤字に転落

ゲーム事業で減損損失511億円を計上。ngmoco社の買収は失敗へ

2020
創業者の南場智子氏が経団連副会長に就任
2021
4月

業績不振により社長交代へ。固定費削減を開始

人事

守安功氏が代表取締役社長を退任

2021年に守安功氏はDeNAの代表取締役社長を退任した。なお、DeNAの退任理由はコンプライアンス違反ではないと思われる。

守安氏の後任として、総務省出身の岡村氏がDeNAの代表取締役に就任し、創業者の南場智子氏は執行への関与を薄めつつ代表取締役会長として続投する議案を株主総会に提出した。

この人事に対して、2021年のDeNAの株主総会では、南場会長の選任に対する賛成率が89.40%、岡村社長の選任に対する賛成率が90.66%であり、同社の取締役の中では最も低い賛成率の2名が(他の取締役の選任の賛成比率は94〜99%)代表取締役として選任される形となった。

なお、守安氏はDeNAの創業期から社員として働いて業績拡大に貢献したものの、2011年の社長就任から2021年の社長退任までにおける売上収益の年平均成長率▲0.8%であった。10年という長期にわたって社長を歴任したものの、同業のサイバーエージェントの躍進と対照的な結果に終わった。

人事

岡村氏が代表取締役社長に就任

2021年4月にDeNAの新社長として岡村氏が就任した。岡村氏は官僚として総務省の出身で、DeNAに転職後はスポーツ事業を統括していた。この意味で、DeNAは安定的な収益が見込めるスポーツ事業への注力を象徴する人事となった。

削減

固定費削減。正社員数が減少

渋谷ヒカリエから退去

業績不振に陥ったDeNAは固定費の削減を開始し、賃料削減のために渋谷ヒカリエからのオフィス撤収を決め、weworkが運営する渋谷シクランブルスクエアへの移転を決定した。本社移転に備えて、2021年3月期にDeNAは「移転損失引当金」を特別損失として17億円計上した。

この移転によって、渋谷ヒカリエにおける象徴的な存在であったDeNAの苦境が浮き彫りとなった。

正社員数が458名減少

2020年度の正規雇用者が2558名に対して、2021年度の正規雇用者は2100名となり、わずか1年間に▲458名の減少(うち単体ベース=本社雇用扱い▲371名)となった。加えて、単体ベースにおいて、2021年3月期の平均勤続年数は5年0ヶ月(平均給与790万円)となり、2020年3月期の3年11ヶ月(平均給与821万円)から逆に伸びている。

このことから、人員減の内訳は、DeNAにおける古参社員ではなく、DeNAに中途入社した勤務歴5年未満の社員(もしくは新卒入社してまもない社員)が、DeNAから別の会社に転職したと推察される。

新規事業の選択と集中

有価証券報告書に記載された事業別の従業員数の推移を見ると、オートモティブや新事業における減少幅が大きいことがわかる。2020年にDeNAはオートモーティブ事業を日本交通と合弁会社を設立するかたちで譲渡しており、DeNAのセグメントから「オートモーティブ事業」が消滅した。

一方で、ライブストリーミング事業のセグメントが2020年度に新設されており、DeNAとしては新事業における投資の選別を行なったと思われる。

なお、DeNAは対外的なリストラの公表や、退職金の計上を行なっていない。このため、社員減少の理由は、事業譲渡による社員の移籍や、自己都合退職と推察される。

2021
8月

IRIAM社を買収

ライブストリーミング事業を強化するためにIRIAM社の買収を決定。株式100%を89億円で取得した。

2022
10月

アルム社を買収

医療・ヘルスケア分野を強化するために、アルム社の買収を決定。株式52.3%を247億円で取得した。

2023
12月

最終赤字に転落

FY2023/3Qにおいて、買収企業であるアルム社およびIRIAM社について、業績不振を理由に減損損失の計上を決定。加えてゲーム事業でも減損計上した結果、FY2023/1Q-3Qにおいて、DeNAは189億円の最終赤字に転落した。

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