| 期 | 区分 | 売上高 | 利益※ | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 2000/2 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 0億円 | - | - |
| 2001/3 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 1億円 | -8億円 | -493.7% |
| 2002/3 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 6億円 | -8億円 | -141.6% |
| 2003/3 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 9億円 | -2億円 | -28.8% |
| 2004/3 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 15億円 | 2億円 | 12.9% |
| 2005/3 | 単体 売上高 / 当期純利益 | 28億円 | 4億円 | 15.2% |
| 2006/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 64億円 | 14億円 | 23.1% |
| 2007/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 141億円 | 25億円 | 17.9% |
| 2008/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 297億円 | 67億円 | 22.7% |
| 2009/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 376億円 | 79億円 | 21.1% |
| 2010/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 481億円 | 113億円 | 23.4% |
| 2011/3 | 連結 売上高 / 当期純利益 | 1,127億円 | 316億円 | 28.0% |
| 2012/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 1,465億円 | 311億円 | 21.2% |
| 2013/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 2,024億円 | 455億円 | 22.4% |
| 2014/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 1,813億円 | 316億円 | 17.4% |
| 2015/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 1,424億円 | 149億円 | 10.4% |
| 2016/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 1,437億円 | 113億円 | 7.8% |
| 2017/3 | 連結 売上収益 / 当期純利益 | 1,438億円 | 308億円 | 21.4% |
| 2018/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,393億円 | 229億円 | 16.4% |
| 2019/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,241億円 | 127億円 | 10.2% |
| 2020/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,213億円 | -491億円 | -40.5% |
| 2021/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,369億円 | 256億円 | 18.6% |
| 2022/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,308億円 | 305億円 | 23.3% |
| 2023/3 | 連結 売上収益 / 当期利益 | 1,349億円 | 88億円 | 6.5% |
DeNAの創業期はオークション事業「ビッターズ」でヤフオクに対抗したが、ネットワーク効果の差を覆せず市場シェアの獲得には至らなかった。しかし、インターネットバブル期に実施した2度の資金調達で確保した現金と、無借金経営の維持により、事業撤退ではなく再選択が可能な財務余力を残した。バブル崩壊後に23億円の資本取り崩しを経てもなお現預金約5億円を保持できた事実は、創業期の資金戦略が次のモバイル転換を可能にした構造的要因であった。
1999年3月、南場智子はマッキンゼーを退職し、株式会社ディー・エヌ・エーを設立した。当時はインターネットバブルの最盛期であり、ECやオークションといった分野には資金と人材が集まりやすい環境が整っていた。携帯電話の普及も始まりつつあり、既存産業に比べて参入障壁が低いと見られていた。
DeNAは創業初期の事業としてオークションサービス「ビッターズ」を選択したが、この領域ではすでにヤフージャパンが「ヤフオク」を展開し、強いネットワーク効果を形成し始めていた。加えて、楽天市場もECモールとして成長しており、後発参入のDeNAにとって市場環境は厳しかった。それでも当時の環境下では、EC・オークションは最も合理的に見える成長分野であった。
DeNAは2000年3月に13億円、2001年には9.1億円の資金調達を実施した。評価額はインターネットバブル崩壊の影響で下落したものの、創業期に十分な現金を確保したことで、事業継続の余地を残した。一方で、当初外注していたシステム開発が機能せず、開発が進んでいないことが判明するなど、事業運営上の問題も表面化した。
この状況を受けて、南場はシステム開発の内製化を決断し、社内エンジニアによる短期間での再構築を指示した。結果として1999年11月に「ビッターズ」はリリースされたが、ヤフオクとの差は埋まらず、ユーザー獲得競争では劣勢に立たされた。それでもDeNAは撤退を選ばず、資金を消耗しながらも事業を継続する判断を下した。
ビッターズ事業は最終的に市場シェアを獲得できず、DeNAの業績は悪化した。2003年には欠損補填のため、資本準備金14億円と資本金9億円、合計23億円を取り崩す事態に至った。事業面では成功とは言い難い結果であったが、創業期に調達した資金が残存していたことにより、現預金約5億円を確保した状態で次の選択肢を検討できた。
また、DeNAは無借金経営を維持しており、インターネットバブル崩壊という外部環境の急変に対して、致命的な財務危機には陥らなかった。この期間は、事業としては失敗であった一方、後年のモバイル事業への転換を可能にする「時間」を買った局面であったと言える。
| FY | 総資産額 | 自己資本比率 | 従業員数 |
| 2000/3 | 20.3億円 | 95.3% | 18名 |
| 2001/3 | 17.5億円 | 85.8% | 50名 |
| 2002/3 | 11.0億円 | 87.7% | 62名 |
| 2003/3 | 9.1億円 | 75.6% | 70名 |
DeNAの創業期はオークション事業「ビッターズ」でヤフオクに対抗したが、ネットワーク効果の差を覆せず市場シェアの獲得には至らなかった。しかし、インターネットバブル期に実施した2度の資金調達で確保した現金と、無借金経営の維持により、事業撤退ではなく再選択が可能な財務余力を残した。バブル崩壊後に23億円の資本取り崩しを経てもなお現預金約5億円を保持できた事実は、創業期の資金戦略が次のモバイル転換を可能にした構造的要因であった。
1999年、DeNAを起業しました。あのときの情熱は、まるで熱病にかかったようでした。
当時、私はマッキンゼーのコンサルタントで、同社のパートナーになっていました。普及が進んでいた携帯電話でオークションサイトをやったら面白いんじゃないかというアイデアを思いついて、コンサルタントとして他社の知り合いに熱心に勧めたのです。するとその人から「君がやればいいじゃない」と言われた。私は他人にアドバイスするのが仕事でしたから、自分がやるという発想がありませんでした。一瞬、「え?」って思ったけれど、次の瞬間から「わーっ」と情熱がわいてきたのです。
本当に企画を作って、開発は遠隔地のシステム開発会社に丸投げ。それでなんと、今日開発が終わって明日からテストという日に、コードが1行も書けていないという事態に見舞われます。ちょっと被害者のように言っちゃいけないね、自分が起こした問題なので。でも、そういうことが起こった。
既に競合の「ヤフオク!」などは始まっているし、企画も何回もやり直した末なので、もうこれ以上は遅れられないというデッドライン。開発が終わっているはずの日にコードがないという状況なので、私はどうしたかっていうと、まあパニックになりましたね。
そこに4人目の社員としていたこの人、我が社初めての、そしてその時オンリーワンのエンジニア。匿名希望の茂岩祐樹さんです。この人が、メチャクチャがんばった。もうコードが1行も書けていないというその日から自宅に帰らず、アパート引き払って会社に住民票を移して。本当に自宅に帰らないの。それも1週間や2週間じゃないんですね。数ヶ月。
DeNAのモバイル転換は、ヤフオクに対するPC向けオークションでの敗北が背景にある。既存事業の成長が頭打ちとなったことで、モバイル領域という新たな競争軸への移行が経営上の必然となった。大手が未参入のモバイル市場にいち早くリソースを集中させた判断は、後のモバゲーやソーシャルゲーム事業における急成長の基盤を形成した。
2004年3月、DeNAはモバイル(ガラケー)向けオークション「モバオク」のサービス提供を開始した。それまでDeNAの主力事業はPC向けオークション「ビッターズ」であったが、同領域ではヤフージャパンが展開する「ヤフオク」が圧倒的なネットワーク効果を形成しており、後発のDeNAがシェアを奪うことは困難な状況にあった。ビッターズの成長が頭打ちとなるなかで、DeNAはベンチャー企業として次の成長軸を必要としていた。
2004年以降、日本国内ではガラケーの普及が急速に進み、モバイルからのインターネット利用が拡大していた。PC向けサービスとは異なる利用動線と課金構造がモバイル領域には存在しており、既存の大手が未だ本格参入していない市場でもあった。DeNAにとってモバイル領域は、PC向けオークションで築けなかった競争優位を獲得しうる数少ない選択肢であった。
DeNAはモバオクをガラケーからのアクセスに完全特化したサービスとして設計し、PCとは異なるユーザー体験を前提に構築した。この判断は、ビッターズをモバイルに移植するのではなく、モバイル固有の操作性や利用頻度に最適化した新サービスを投入するものであった。FY2005/3Q(2005年12月)にはモバイル領域の売上高がビッターズを上回り、DeNAの主力事業はPC向けオークションからモバイルコンテンツへと明確に移行した。
この事業転換により、DeNAはモバイルコンテンツのサービス会社へと変貌を遂げた。ヤフオクとの正面競争を回避し、成長余地のあるモバイル領域にリソースを集中させた判断は、後年のモバゲーや怪盗ロワイヤルに至る成長の起点となった。ビッターズ単体では描けなかった売上成長を、モバイル領域の拡大によって実現した形である。
DeNAのモバイル転換は、ヤフオクに対するPC向けオークションでの敗北が背景にある。既存事業の成長が頭打ちとなったことで、モバイル領域という新たな競争軸への移行が経営上の必然となった。大手が未参入のモバイル市場にいち早くリソースを集中させた判断は、後のモバゲーやソーシャルゲーム事業における急成長の基盤を形成した。
KDDIとの提携は、DeNAが自社の利益率よりも携帯キャリアという流通チャネルの確保を優先した判断である。子会社を介したOEM供給モデルは利益の一部移転を伴うが、キャリアの公式メニューからの集客力を確保することで、モバイル領域での事業基盤を安定させた。コンテンツ事業者がキャリアとの関係をいかに設計するかという論点において、DeNAの選択は一つの類型を示している。
2005年1月、DeNAはKDDIとの事業提携を発表した。提携の骨子は、KDDI向けのコンテンツサービスとして「モバオク」を展開するために子会社「株式会社モバオク」を設立し、同社に対してKDDIが第三者割当増資により3億円を出資するというものであった。当時のモバイルコンテンツ市場では、携帯キャリアが公式メニューへの掲載権を握っており、キャリアとの関係構築はコンテンツ事業者にとって集客と収益の両面で決定的な意味を持っていた。
DeNAはモバオクの提供開始によってモバイル領域での事業基盤を築きつつあったが、コンテンツ事業者としてはキャリアのプラットフォーム上で安定的にサービスを供給できる体制を整える必要があった。KDDIはau向けサービスの拡充を進めており、オークション分野でのコンテンツ供給者を求めていた。両社の利害が合致する形で提携が実現した。
DeNAはKDDIとの提携にあたり、子会社モバオクを通じてau向けにオークションサービスをOEM供給する形態を選択した。2006年にはau向けサービスの名称を「auオークション」に変更し、NTTドコモおよびソフトバンク向けには「モバオク」のブランドでサービスを継続した。子会社を介する構造はKDDIへの利益の一部移転を伴うものであったが、DeNAはキャリアとの安定的な取引関係を確保することを優先した。
この判断は、自社の利益率を一部犠牲にしてでも、携帯キャリアという流通チャネルを押さえる戦略であった。モバイルコンテンツ市場ではキャリアの公式メニューからの集客力が圧倒的であり、DeNAはKDDIとの関係を軸にモバイル領域での事業規模を拡大する体制を整えた。
KDDIとの提携は、DeNAが自社の利益率よりも携帯キャリアという流通チャネルの確保を優先した判断である。子会社を介したOEM供給モデルは利益の一部移転を伴うが、キャリアの公式メニューからの集客力を確保することで、モバイル領域での事業基盤を安定させた。コンテンツ事業者がキャリアとの関係をいかに設計するかという論点において、DeNAの選択は一つの類型を示している。
怪盗ロワイヤルのリリースは、DeNAが広告収入に依存した事業構造からアイテム課金を前提とするモバイルゲーム事業へと明確に舵を切った転換点であった。単一タイトルの商業的成果以上に、ユーザー間の競争と協力を課金動機に変換する設計思想と、外部決済に依存しない自社プラットフォーム上での収益回収体制を構築した点に、この意思決定の本質がある。以後のDeNAの成長モデルはこの構造の上に成り立つこととなった。
2000年代後半、日本のインターネット業界では、SNSやコミュニティサービスの利用者数は拡大していたものの、広告モデルだけで安定的な収益を確保することは難しい状況にあった。DeNAもオークション事業やポータル運営を通じて一定の売上を確保していたが、ユーザー数の成長と収益成長が必ずしも連動しない構造に直面していた。国内市場では、検索連動型広告やディスプレイ広告において先行企業が優位を確立しており、新規参入者が同じ手法で規模拡大を図る余地は限定的であった。
一方、携帯電話の高機能化と定額通信の普及により、モバイル向けコンテンツの利用時間は急速に増加していた。従来のWebサービスとは異なり、モバイル領域では利用頻度が高く、かつ個人単位での課金が成立しやすい特性が見え始めていた。DeNA内部でも、広告収益に依存しないモデルを構築しなければ、事業規模の拡大と収益性の両立は難しいという認識が共有されつつあり、新たな収益源の探索が現実的な経営課題として浮上していた。
DeNAは、モバイル領域におけるユーザー行動の変化を踏まえ、アイテム課金を前提としたソーシャルゲームの開発と提供に踏み切った。その象徴的な施策が、2009年にリリースされた「怪盗ロワイヤル」である。このタイトルでは、従来のゲーム機向け作品のような完成度や操作性よりも、短時間での反復利用と他者との関係性を軸に設計が行われた。ゲーム内での競争や協力を通じて、ユーザー同士の行動がコンテンツ消費を促進する構造が意図的に組み込まれていた。
また、課金要素はゲーム進行を直接的に左右する位置付けとされ、無課金でも参加は可能だが、時間短縮や優位性を得るためには支払いが発生する設計が採用された。DeNAはこの仕組みを自社プラットフォーム上で展開し、外部決済に依存しない形で収益を回収できる体制を整えた。広告モデルからの転換は一時的な試行ではなく、事業の中核を移す判断として位置付けられており、人的資源や開発体制もソーシャルゲーム向けに再配分された。
怪盗ロワイヤルの提供開始後、DeNAの売上構成は短期間で大きく変化した。従来は広告収入や取引手数料が中心であったが、ゲーム内アイテム課金が主要な収益源として台頭し、四半期ベースでの売上水準を押し上げた。ユーザー一人当たりの課金額は限定的であっても、利用頻度の高さとユーザー数の増加によって、総額としての収益規模が拡大する構造が形成された。
この結果、DeNAはモバイルソーシャルゲームを軸とする事業モデルを確立し、後続タイトルの投入や外部パートナーとの連携を進める基盤を得た。一方で、収益の多くが特定ジャンルに集中する構造も同時に生まれ、事業ポートフォリオの偏りという新たな論点も顕在化した。怪盗ロワイヤルのリリースは、単一タイトルの成功にとどまらず、DeNAの収益構造そのものを転換させる契機として位置付けられることになった。
怪盗ロワイヤルのリリースは、DeNAが広告収入に依存した事業構造からアイテム課金を前提とするモバイルゲーム事業へと明確に舵を切った転換点であった。単一タイトルの商業的成果以上に、ユーザー間の競争と協力を課金動機に変換する設計思想と、外部決済に依存しない自社プラットフォーム上での収益回収体制を構築した点に、この意思決定の本質がある。以後のDeNAの成長モデルはこの構造の上に成り立つこととなった。
ngmocoの4億ドルでの買収は、DeNAが国内フィーチャーフォン向けソーシャルゲームの高収益モデルをそのまま海外に横展開できないと認識し、現地企業の取り込みによって即時参入を図った意思決定であった。しかし、日本発の運営型ゲームモデルと米国のプロダクト志向型開発文化の間にはギャップが存在し、即座の収益貢献には至らなかった。この経験はグローバル展開の現実的難度を学ぶ投資として、以後の戦略再設計の起点となった。
2009年以降、DeNAは怪盗ロワイヤルを起点とするモバイルソーシャルゲーム事業によって急成長を遂げていたが、その収益基盤は日本国内市場に大きく依存していた。国内ではフィーチャーフォン向けゲームが高い収益性を持っていた一方、市場環境や規制、プラットフォーム構造が海外とは大きく異なり、この成功モデルをそのまま海外に展開することは困難であった。
同時期、米国を中心にスマートフォンが急速に普及し、App Storeを中心としたアプリエコシステムが形成されつつあった。ゲーム市場の重心はフィーチャーフォンからスマートフォンへ移行し始めており、DeNAにとっても、国内成功に安住すれば中長期的な成長機会を失うという危機感が強まっていた。しかし、自社単独で海外市場に参入し、現地の開発文化やプラットフォーム仕様に適応するには時間と経験が不足していた。
こうした背景のもと、DeNAは2010年10月、米国のモバイルゲーム開発会社ngmocoを約4億ドルで買収する決断を下した。ngmocoはiPhone向けゲーム開発で実績を持ち、米国市場における開発力とプラットフォーム理解を備えていた。DeNAはこの企業を取り込むことで、海外市場への即時参入とスマートフォン領域での知見獲得を同時に実現しようとした。
この買収は、国内で確立した高収益モデルを海外に横展開するのではなく、現地企業を中核に据えるという点で、DeNAにとって初めての本格的なグローバルM&Aであった。短期間での事業立ち上げを優先し、内製による段階的展開ではなく、外部の開発組織と人材を一体で取り込むという選択がなされた。
ngmocoの買収により、DeNAは北米を中心とした海外ゲーム市場に拠点と開発力を確保し、スマートフォン向けゲーム開発に関する知見を獲得した。一方で、日本発の運営型ソーシャルゲームモデルと、米国主導のプロダクト志向型開発文化との間にはギャップが存在し、組織運営や戦略の統合は容易ではなかった。
結果として、買収は即座に大きな収益貢献をもたらしたわけではなく、海外事業は試行錯誤の局面が続いた。それでもこの経験は、DeNAにとって海外展開の現実的な難易度を認識し、以後のグローバル戦略を再設計するための重要な学習機会となった。ngmoco買収は、成長の延長線ではなく、事業モデル転換期における先行投資として位置付けられることになった。
ngmocoの4億ドルでの買収は、DeNAが国内フィーチャーフォン向けソーシャルゲームの高収益モデルをそのまま海外に横展開できないと認識し、現地企業の取り込みによって即時参入を図った意思決定であった。しかし、日本発の運営型ゲームモデルと米国のプロダクト志向型開発文化の間にはギャップが存在し、即座の収益貢献には至らなかった。この経験はグローバル展開の現実的難度を学ぶ投資として、以後の戦略再設計の起点となった。
「国内においてはスマートフォンの普及が想定以上に早く、国内外において、スマートフォン対応をスピーディーに実現することが課題であると認識しております。 2011年は当社の将来を大きく左右する年になると思いますが、課題はチャンスでもあると 考えており、既存の携帯電話からスマートフォンに事業を拡大することでグローバルに展 開できるよう、グループ一丸で取り組んでまいります。 これまでの国内の成功に固執することなく、世界で戦っていくことが大事だと考えており、当社がやれなくて誰ができるんだという気持ちで取り組んでまいります。」
2011年にDeNAの社長に創業期からの社員であった守安功が就任し、創業者の南場智子氏は取締役会長となった。以後、守安社長と南場会長の2頭体制で、DeNAが経営された。
2011年にDeNAは球団ビジネスに参入するために、横浜ベイスターズの株式を議決権ベースで66.92%を65億円で取得した。アドバイザリー費用は約600万円で、DeNAは買収に伴って59億円の「のれん」を計上した。
買収の狙いは、DeNAという会社の知名度を全国的に向上させることにあったと思われる。買収から5年を経た2015年に南場智子会長は「日本全国に社名が知られるようになった。新入社員の両親が『その新興企業は何だ』とならず応援する機運が出てきた。人材が命の当社にとって本業に資するところがある」(2015/2/14週刊東洋経済)と述べている。
2012年に携帯ゲーム業界では、18歳未満の青少年が重課金する問題が顕在化し、ゲームのガチャを有料課金によって行うことから「コンプガチャ問題」と呼ばれた。そこで、GREE、DeNA、mixi、サイバーエージェント、ドワンゴ、NHNの6社は、コンプガチャの全廃を取り決めた。
そこで、DeNAはコンプガチャ問題への対応として、18歳未満のユーザーに関しては月額10,000円、15歳未満のユーザーに関しては月額5,000円までと、有料課金の幅を制限した。
新規事業としてキュレーションメディアに参入するために、iemoおよびペロリの2社の買収を決定。個別の買収価格は非開示だが、2社合算の取得価格は37億円。
なお、これらのキュレーションメディアの買収および運営上の問題によって、DeNAは社会的な信頼を喪失した。
DeNAは株式会社横浜DeNAベイスターズを通じて、株式会社横浜スタジアムの株式76.87%を取得。取得対価は80.7億円であったが、同社の純資産130億円から非支配持分20億円を差し引いた20億円を「負ののれん発生益」として計上した。
DeNAとしては横浜ベイスターズとともに、球場経営を一体的に行うことで事業収益を改善する狙いがあった。
2006年から展開していた業者向けEC「DeNA BtoB Market」について、事業売却を決定。新設する株式会社NESTAに事業を継承し、同社の全株式をオークファンに譲渡して撤退した。譲渡価格は12.5億円であった。
FY2015に投資有価証券を231億円で取得。DeNAが保有する現預金の比率が高まり、資産運用による収益の確保を目論んだと推定。取得内容の内訳は非開示
WelQ問題は、DeNAがスピードと実験を優先するベンチャー的意思決定様式を、医療・健康情報という公共性の高い領域にそのまま適用した結果として顕在化した。第三者委員会は「永久ベンチャー」というスローガンが事業拡大の免罪符として機能していた点を指摘しており、成長フェーズの延長線上で社会的責任やリスク統制の設計が後追いになった構造的問題が露呈した。この対応は経営スタイルそのものの限界を示す転機となった。
2010年代半ば、DeNAはゲーム事業への依存を低減するため、ヘルスケアやメディア分野への多角化を進めていた。その一環として、医療・健康情報を扱うキュレーションメディア「WelQ」を立ち上げ、検索流入を軸に急速な規模拡大を図っていた。インターネット広告市場では、検索エンジン経由のトラフィックを獲得できるメディアが高い収益性を持つ構造が形成されており、量的拡大を優先するインセンティブが強く働いていた。
一方で、医療・健康情報は情報の正確性や信頼性が強く求められる分野であり、一般的なエンタメ系メディアとは異なる社会的責任を伴っていた。しかし、事業拡大のスピードを優先する中で、編集体制や監修プロセスの整備が十分に追いつかない状態が続いていた。
2016年12月、WelQを巡る記事内容の信頼性や制作体制に対する批判が社会的に拡大し、DeNAは事態の重大性を受け止める形で、WelQを含む複数のキュレーションメディアの公開を停止した。同時に、社内調査にとどまらず、外部有識者による第三者委員会を設置し、問題の原因究明と再発防止策の検討を委ねる判断を下した。
この決断は、短期的な収益や事業継続よりも、社会的信頼の回復を優先する姿勢を明確にするものであった。自社の管理体制や意思決定プロセスに構造的な問題があった可能性を認め、外部の視点を取り入れて検証するという、当時のDeNAにとって重い選択であった。
第三者委員会の調査結果を踏まえ、DeNAはキュレーションメディア事業から事実上撤退し、WelQは再開されることなく終了した。これにより、同社はメディア事業を成長の柱とする戦略を見直し、事業ポートフォリオの再構築を迫られることになった。
一方で、この対応を通じて、DeNAは事業拡大と社会的責任のバランスを経営課題として再認識し、ガバナンスやリスク管理の強化に舵を切る契機を得た。WelQ問題は、短期的には企業価値を毀損する出来事であったが、結果として経営の前提条件を見直す転換点となった。
WelQ問題は、DeNAがスピードと実験を優先するベンチャー的意思決定様式を、医療・健康情報という公共性の高い領域にそのまま適用した結果として顕在化した。第三者委員会は「永久ベンチャー」というスローガンが事業拡大の免罪符として機能していた点を指摘しており、成長フェーズの延長線上で社会的責任やリスク統制の設計が後追いになった構造的問題が露呈した。この対応は経営スタイルそのものの限界を示す転機となった。
経営会議や取締役会の資料では、iemoのプラットフォーム化やプロ責法について指摘されていたものの、プロ責法の適用の有無を意識した形で、iemoをメディアとして運営していくべきか、プラットフォームとして運営すべきかという点について、明確な結論が出た証跡は見受けられず、その点は曖昧なままになった可能性が高い。また、iemo社法務調査報告書では、記事テキストに関する著作権侵害のリスクは抽象的にしか指摘されていなかったこともあり、最も重要視されていたリスクは、あくまでも画像に関する著作権侵害のリスクであった。その結果、DeNAにおける議論は、画像の掲載方法を直リンク方式へと変更することに主要な重点が置かれるようになり、記事のテキストに関する著作権侵害のリスクや、それを踏まえたiemoプラットフォーム化に関する問題意識は、取締役の間で共有されなかった。
「DeNAの組織風土にも問題がある。売上高、利益を上げることが至上命題であり、このようなDeNAの思想が今回の問題の根っこにあると思う」「ロボットよりも人間が評価される組織に生まれ変わることを願っている」
DeNAは、自らの成長により他の立派な企業から得られた評価と信頼に応えようと意識していた一方で、いつの間にか自らが欲することを行いやすくするための「免罪符」として「永久ベンチャー」というスローガンを都合よく唱えるようになってしまっていたのではないか。(略)当委員会は、複雑で不明確さが多いキュレーション事業を遂行していく過程で、DeNAが事業の拡大の喪に気を取られて、それに伴うリスクの拡大・拡散を適切に発見・把握し、かつ対応するための体制とプロセスの構築および運用を怠ったことが、本問題における大きな問題点の一つであったと考える。
DeNAが掲げた新規事業への80億円投資は、ゲーム事業への収益依存から脱却する意思を明確にした施策であった。ライブ配信・オートモーティブ・ヘルスケアの3領域に分散投資する方針は、特定事業への集中リスクを回避する狙いがあったが、いずれの領域もゲーム事業に匹敵する収益規模には到達しなかった。分散投資が奏功しなかった事実は、後年の固定費削減と経営体制刷新を促す要因となった。
2018年度、DeNAは新規事業に対する投資額を80億円に拡大し、ゲーム事業に匹敵する新たな収益の柱を育てる方針を発表した。当時のDeNAはモバイルゲーム事業が収益の中核を占めていたが、ソーシャルゲーム市場の成熟化とヒットタイトルへの依存度の高さから、ゲーム単体での持続的成長には限界が見え始めていた。WelQ問題を経てキュレーションメディア事業からも撤退しており、成長戦略の再構築が経営課題として浮上していた。
DeNAが注力先として選定したのはライブ配信・オートモーティブ・ヘルスケアの3領域であった。ライブ配信ではPocochaとSHOWROOMへの投資を本格化し、オートモーティブでは2015年から参入していた自動運転・タクシー配車分野での事業化投資を加速させた。ヘルスケアでは大手保険会社のSOMPOホールディングスとの提携を軸に、保険商品の販売拡大を目論んだ。
3領域のなかでもオートモーティブ事業は、DeNAが最も大きな投資を行った分野であった。神奈川県タクシー協会との共同研究や日産自動車との自動運転の共同実験を経て、2018年にタクシー配車アプリ「MOV」をリリースした。ゲーム事業で培ったモバイルアプリの開発力を、交通領域のサービスに転用する試みであった。
しかし、いずれの新規事業もゲーム事業に匹敵する収益規模には至らなかった。ライブ配信は市場自体が成長過程にあり、オートモーティブは規制や業界構造の壁に直面し、ヘルスケアも収益化に時間を要した。80億円の投資枠は多角化への意思を明確にするものであったが、投資の成果がDeNAの業績を押し上げるには至らず、後年の業績低迷と経営体制刷新の伏線となった。
DeNAが掲げた新規事業への80億円投資は、ゲーム事業への収益依存から脱却する意思を明確にした施策であった。ライブ配信・オートモーティブ・ヘルスケアの3領域に分散投資する方針は、特定事業への集中リスクを回避する狙いがあったが、いずれの領域もゲーム事業に匹敵する収益規模には到達しなかった。分散投資が奏功しなかった事実は、後年の固定費削減と経営体制刷新を促す要因となった。
2019年5月にDeNAは500億円(発行済み株式の約26%)を上限とする自社株買いを実施する方針を発表。2019年度において、321億円で自己株式を取得した。
ゲーム事業で減損損失511億円を計上。ngmoco社の買収は失敗へ
2021年の社長交代は、DeNAがベンチャー的な意思決定様式と成長期に膨張した組織規模を維持したまま、新たな収益軸を確立できずにいた現実を突き付けた出来事であった。ゲーム事業の成熟、海外展開の頓挫、新規事業の収益化遅延が重なり、成長を前提とした固定費構造と実態の収益水準との乖離が拡大した。固定費削減から着手された改革は、成長なきベンチャーという矛盾を解消するための必然的な対応であった。
2010年代後半のDeNAは、ゲーム事業の成熟と海外展開の不確実性、さらにWelQ問題後の事業整理によって、成長の軸を見失った状態にあった。かつて高収益を生んだモバイルゲームは競争環境の変化とヒット依存度の高さから業績が不安定化し、他方でヘルスケアや新規事業は十分な収益貢献に至らなかった。
この結果、売上成長が鈍化する一方で、組織規模や人件費、開発投資といった固定費構造は、成長期の延長線上に置かれたままとなっていた。事業ごとの収益性とコスト配分の乖離が拡大し、経営としては戦略以前にコスト構造そのものを見直す必要性が明確になっていた。
2021年4月、DeNAは業績不振を背景として社長交代を決定し、経営体制の刷新に踏み切った。この人事は、個別事業の立て直しではなく、経営全体の前提条件を見直す意思表示として位置付けられた。新体制の下で、まず着手されたのが固定費削減であった。
具体的には、人員配置の見直しや間接部門のスリム化、投資案件の選別などを通じて、成長を前提としたコスト構造から、収益水準に見合った体制への転換が進められた。これは短期的な成長回復を狙う施策ではなく、事業の選択と集中を行うための前段階としての意思決定であった。
社長交代と固定費削減の開始により、DeNAは成長企業としての振る舞いから、収益性と持続性を重視する経営フェーズへと移行した。事業拡大を前提としない体制構築が進められ、各事業に対して投下資本と成果の関係がより厳しく問われるようになった。
この人事は、DeNAが永久ベンチャー的な経営スタイルから脱却し、成熟企業としての経営規律を受け入れた転換点と位置付けられる。結果として、社長交代は単なるトップ人事ではなく、企業の成長前提を更新する象徴的な出来事となった。
2021年の社長交代は、DeNAがベンチャー的な意思決定様式と成長期に膨張した組織規模を維持したまま、新たな収益軸を確立できずにいた現実を突き付けた出来事であった。ゲーム事業の成熟、海外展開の頓挫、新規事業の収益化遅延が重なり、成長を前提とした固定費構造と実態の収益水準との乖離が拡大した。固定費削減から着手された改革は、成長なきベンチャーという矛盾を解消するための必然的な対応であった。
ライブストリーミング事業を強化するためにIRIAM社の買収を決定。株式100%を89億円で取得した。
医療・ヘルスケア分野を強化するために、アルム社の買収を決定。株式52.3%を247億円で取得した。
FY2023/3Qにおいて、買収企業であるアルム社およびIRIAM社について、業績不振を理由に減損損失の計上を決定。加えてゲーム事業でも減損計上した結果、FY2023/1Q-3Qにおいて、DeNAは189億円の最終赤字に転落した。