日揮ホールディングスの直近の動向と展望

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日揮ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

繰り返される大型契約の代償

2022年3月期、オーストラリアのイクシスLNGプロジェクトで発注者INPEXとの増額費用をめぐる訴訟が決着し、日揮ホールディングスは575億円の特別損失を計上した。これにより当期純損失はマイナス356億円に達している。続く2024年3月期にはサウジアラビアの原油・ガス分離設備プロジェクトなどで工事損失引当金の追加計上が相次いだ。その背景として、同国のローカリゼーション政策で顧客指定ベンダーへの発注が集中した結果、機器の納期遅延が建設コストを押し上げた。売上高8,326億円に対して営業損益はマイナス190億円となり、翌2025年3月期にもマイナス115億円の赤字が続いた。1972年のアルジェリアから半世紀、ランプサム契約に起因する損失は形を変えて繰り返されている。

2026年2月時点の決算説明会によれば、工事損失引当金を計上したプロジェクト群の売上高は連結全体の約2割を占めており、これらは粗利益率ゼロで計上する扱いに改めた。問題を抱えた案件を除いて計算した場合の粗利益率は9〜10%の水準を維持しており、損失案件の完工が進めば、連結全体の利益率は回復に向かう構造にあるとされる。つまり過去の受注が生んだ損失の残高が消化されるのを待つ段階である。経営陣は中期的な採算改善の道筋を株主に説明しつつ、次の成長期に向けた受注基盤の整備も同時に進めている。すなわち残務処理と次期成長の準備が並走している段階にある。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23(2024/5)
  • 決算説明会 FY24(2025/5)
  • 決算説明会 FY25-3Q(2026/2)

選別受注への転換、量から質へ

2023年度の巨額損失計上を受け、日揮グローバルは受注の考え方を見直した。まず社内の人材リソースの可視化を徹底し、必要な人員を配置できる案件にだけ受注対象を絞り込む仕組みに改めた。複数のチェック項目とプロジェクト経験者を含む精査プロセスを導入し、「受注目標をクリアするためだけに受注判断はしていない」(2025年5月決算説明会)と経営陣は言い切っている。サウジアラビアの機器納入遅延や米国の建設コスト高騰といった地域別リスクも受注判断に反映させ、信頼できる建設パートナーが確保できない案件は見送る方針とした。その結果、受注件数より受注の質を優先する体制へと切り替わったのである。

中期経営計画「ビーエスピー2025」は営業利益600億円を掲げていたが、損失案件の長期化で目標未達の見通しとなっている。現在策定中の新たな中期経営計画では、受注期待案件としてインドネシアの陸上液化天然ガス、モザンビークの浮体式液化天然ガス、持続可能な航空燃料SAF製造プラントなどが具体的に挙げられている。2025年度は損失案件の完工が進む端境期と位置づけられ、売上高は一時的に減少するものの採算は改善する見通しだとされる。つまり「量で攻める」から「質で守る」への経営方針の転換が、日揮の長い歴史のなかで初めて明示的に打ち出され、創業以来の受注思想が書き換えられようとしている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23(2024/5)
  • 決算説明会 FY24(2025/5)
  • 決算説明会 FY25-3Q(2026/2)

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1982/8/23
日経ビジネス 1993/7/19
決算説明会 FY23(2024/5)
決算説明会 FY24(2025/5)
決算説明会 FY25-3Q(2026/2)