日本写真印刷株式会社を設立
企業合同により会社設立
日本写真印刷は、京都における美術出版向けの印刷会社が統合したことが誕生の契機であった。戦時下の1942年に京都写真製版工業組合によって、日本写真印刷(有)が設立。終戦後の1946年に同社と似玉堂が事業を統合することにより、日本写真印刷が株式会社として設立された。
設立にあたっては、日本写真印刷が発足する際に統合した1社を経営していた鈴木直枝氏が主導したことから、日本写真印刷は実質的に鈴木家による同族経営を志向した。なお、1961年に日本写真印刷は株式上場を実施したが、2025年現在に至るまで鈴木家の出身者が社長を歴任しており、同族経営を継続している。
美術出版向けの中小企業として経営
1946年の日本写真印刷の発足時点では、引き続き主に美術出版向けの印刷に従事。京都における「西陣織」「寺社仏閣」の美術印刷を手がける中小企業であった。
大手との取引により業容を拡大
転機は大手顧客との取引開始であった。1950年に毎日新聞との取引開始によって、大手出版社との美術図書の受注に繋がった。主な出版印刷の実績としては、1949年東京日日新聞「NEW JAPAN」、1962年毎日新聞社「国宝」、1966年小学館「原色日本の美術」などであった。
1952年に松下電器との取引を開始。取引の詳細は不明だが、同社の販売店向けの出版物、同社が展開する書籍事業(PHP研究所)における印刷業務を請け負ったと推定される。
この結果、高度経済成長期を通じて、日本写真印刷は美術出版向けの印刷や、特定顧客向けの印刷によって業容を拡大。特に、美術出版においては、高品質な印刷メーカーとして競合の大手印刷メーカーとの差別化を志向した。
東京出張所を開設
大阪出張所を開設
大阪証券取引所市場第二部に株式上場
1961年に日本写真印刷は大阪証券取引所に株式を上場。その後、1969年に東証第二部にも上場。東証直前の1968年12月時点における筆頭株主は鈴木正三氏(創業家)であり、12.17%の株式を保有した。
株主名称 | 株式数 | 保有比率 |
鈴木 正三 | 1,339,020株 | 12.17% |
日本勧業銀行 | 1,039,500株 | 9.46% |
日本電池(株) | 630,000株 | 5.73% |
明治生命保険(相) | 525,000株 | 4.77% |
日興証券 | 511,925株 | 4.65% |
鈴木産業(株) | 420,000株 | 3.81% |
(株)島津製作所 | 252,000株 | 2.29% |
大日本インキ化学工業(株) | 246,750株 | 2.24% |
日本食糧倉庫(株) | 243,750株 | 2.22% |
松下不動産(株) | 236,250株 | 2.15% |
日写不動産株式会社設立
八千代工場の新設決定
関東における印刷拠点を拡充するため、千葉県八千代市に1.8万平方メートルの土地を取得。八千代工場の新設を決定した(2019年に閉鎖売却)
木目転写箔を開発。テレビキャビネットを販売
松下電器と印刷物で取引関係にあった経緯から、1967年にテレビ向けキャビネット(木目調の化粧シート)を開発。商業出版にとどまらない事業展開を開始した。
抵抗膜方式透明タッチセンサーを開発
名古屋営業所開設
米国にNissha USA, Inc.を設立
マレーシアにSouthern Nissha Sdn. Bhd.を設立
韓国にNissha Korea Inc.設立
ナイテック工業株式会社設立
中国・台湾に投資
ドイツにNissha Europe GmbHを設立
ナイテック工業株式会社甲賀工場竣工
Southern Nissha Sdn. Bhd.工場竣工
Nissha USA, Inc.がEimo Technologies, Inc.(米国)を買収
創業家出身の鈴木順也氏が社長に就任。2013年以降はスマホ向けフィルム(タッチセンサー)への積極投資、2015年以降は買収を通じたグローバル化及び、新規事業(メディカル)展開を重視。不採算に陥った祖業である印刷事業の縮小も並行することで、業態転換を推進した。
ナイテック工業株式会社甲賀第二工場竣工
日写不動産株式会社が日写興業株式会社を吸収合併
中国に日写(深圳)商貿有限公司設立
スマホ向けフィルムタッチセンサーを開発
スマホ向けタッチセンターに投資
日本写真印刷は、増大するスマホ需要を見越して「スマホ向けタッチフィルムセンサー」への生産投資を決定。姫路工場および加賀工場における設備投資を決定し、2014年度において両2工場で合計274億円の設備投資を決定した。日本写真印刷としては大型の設備投資であり、スマホ向けタッチセンサー(デバイス事業)に注力する意思決定となった。
工場名 | 方式 | 2013年05月時点実績 | 2013年10月時点計画 | 設備投資額(累積) |
姫路工場 | 静電容量 | 24,000千台 | 24,000千台 | 17,427百万円 |
加賀工場 | 静電容量 | - | 24,000千台 | 10,000百万円 |
合計 | - | 24,000千台 | 48,000千台 | 27,427百万円 |
日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社設立
第5次中期経営計画を策定・買収を積極化
2015年4月から日本写真工業は「第5次中期経営計画」を開始。第5次中計画では「事業ポートフォリオの組み替えを徹底」することを明言し、不採算事業からの撤退と、企業買収を積極推進することによりメディカルなどの新事業に注力する方針を固めた。
定量目標としては、最終年度の2018年3月期時点において「新製品・新事業の売上高比率35%」を盛り込むことで、業態転換を一つの目標指標に据えた。
M&Aによる無形固定資産の増加
2015年以降、日本写真工業は大型M&Aを積極化。2015年8月には欧州のSARL社(ベルギーに拠点を置く蒸着紙メーカー・食品パッケージ向けに販売)を150億円で、2016年にはGraphic Controls社(米国の医療機器メーカー)を141で買収するなど、買収により新領域における海外展開を推進した。
この結果、2015年度から2017年度にかけて、日本写真工業の「無形固定資産(IFRSにおける無形資産・のれん)」は増加した。
Luxembourg Holdings SARLを買収
Graphic Controls Holdings, Inc.およびそのグループ会社を買収
日本写真印刷株式会社からNISSHA株式会社に商号変更
第6次中期経営計画を策定
共同印刷株式会社に事業を一部譲渡
日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社が東京地区の商圏と事業基盤を共同印刷株式会社に譲渡
メディカル事業を買収で強化
2019年以降、NISSHAは新規事業としては、買収を通じたメディカル事業に注力。欧州におけるカテーテルの製造受託、国内における医薬品DDS(ゾンネボード製薬の買収)など、地域および事業内容を問わずメディカル領域の事業を取得した。
八千代工場を閉鎖売却
印刷事業の再現を上kて、2019年1月にそれまで印刷工業として稼働していた八千代工場(千葉県)を閉鎖。同年9月に八千代工場跡地を売却し、固定資産売却益として49億円を計上。
スマホ向けフィルムが販売不振・希望退職者を募集
減損による赤字転落
2019年12月期に産業資材セグメントで52億円、デバイスセグメントで106億円の減損損失を計上。産業資材では「AR Metallizing」における16億円の減損損失。デバイス事業では生産設備における70億円の減損が主要因であった。この結果、2019年12月期にNISSHAは最終赤字に転落した。
スマホ向けデバイス事業が不振
減損の主要因が、デバイス事業におけるスマホ向け部品の販売不振であった。スマホ向けの「タッチセンサー」の輸出が低迷したことで、売上高が前年比で18%減少する事態に直面。この結果、生産設備における稼働率が低下し、設備減損に至った。
250名の希望退職者を募集
2020年2月にNISSHAは希望退職者の募集を発表。国内の従業員を中心に約250名の退職者を募集した。
Eurofoil Paper Coating GmbHを買収
第7次中期経営計画を策定
Isometric Intermediate LLCを買収
医療機器メーカーのIsometric社を104億円で買収。同社は精密加工技術を活かした医療機器の製造に強み