バンダイナムコHD

の歴史

創業
1950年
創業地
東京
創業者
※バンダイ+ナムコ
上場
1986年
売上高(2026/3)
1.35 兆円
営業利益(2026/3)
1,895 億円
従業員数(2026/3)
経営トップ
浅古有寿
バンダイナムコHDの長期業績と経営の転換点売上高と利益率の長期推移
売上高(億円純利益率(%)

2005 玩具とゲームの統合がIP軸経営に行き着くまで

  1. 2005年バンダイとナムコが経営統合し持株会社バンダイナムコHDを設立
  2. 2005年初代社長に髙須武男が就任
  3. 2006年ナムコからアミューズメント施設事業を新設分割し新生ナムコを設立
  4. 2008年バンプレスト景品事業の新設分割とゲーム事業の吸収合併
  5. 2008年石川祝男が社長に就任
  6. 2010年初の当期純損失▲299億円を計上
  7. 2011年黒字回復(営業利益163億円、純利益18億円)

バンダイナムコHDの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書・会社四季報等

ガンダム共同開発が引き寄せた経営統合

2005年9月、バンダイとナムコが株式移転で共同持株会社バンダイナムコHDを設立し、東証一部に上場した。統合前年度の売上高はバンダイ2,699億円(営業利益243億円)、ナムコ1,785億円(営業利益150億円)で、合わせて4,500億円規模のエンタメ複合企業が生まれた。当時の玩具・アミューズメント業界は少子化で国内市場の縮小が見込まれ、IPを展開できる規模の確保が業界共通の課題となっていた。統合の発端は2004年から両社が共同で手掛けたプレイステーション2向けソフト「機動戦士ガンダム1年戦争」の開発にある。共同開発を通じて両社の技術と事業の補完性が確認され、ナムコがバンダイに経営統合を打診した。統合比率はナムコ1株に対し新会社1株、バンダイ1株に対し新会社1.5株とバンダイに有利な条件で決まり、規模で勝るバンダイ主導の体制が枠組みとして敷かれた。 [1][2]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [1]2005年9月 バンダイとナムコが株式移転で共同持株会社バンダイナムコHDを設立し東証一部に上場
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [2]両社合算で4,500億円規模のエンタメ複合企業

ゲームソフトの外注に頼ってきたバンダイは、自社開発体制の厚いナムコと組むことで、企画から開発までの内製化に道を開いた。物販の少ない国内アミューズメント市場に縛られていたナムコは、バンダイが持つIP商品群を北米中心の販路へ乗せ、グローバル展開に着手した。少子化で国内の玩具市場やアーケード市場が縮むという時代認識を両社が共有したことも統合を後押しした。初代社長にはバンダイ出身の髙須武男が就き、持株会社の組織枠組みづくりと、バンダイとナムコの異なる企業文化の橋渡しを担った。両社はそれぞれ玩具とアーケードという別々のチャネルで顧客接点を持ってきた経緯があり、商品企画とデジタル開発の融合は組織文化の摺り合わせから始める必要があった。 [3]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [3]初代社長はバンダイ出身の髙須武男(FY05就任)
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [1]2005年9月 バンダイとナムコが株式移転で共同持株会社バンダイナムコHDを設立し東証一部に上場
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [2]両社合算で4,500億円規模のエンタメ複合企業
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [3]初代社長はバンダイ出身の髙須武男(FY05就任)

事業再編の渦中で迎えた299億円の赤字

統合から数年は合併後の事業再編が続いた。2006年3月にはナムコからアミューズメント施設事業を新設分割して新生ナムコを設立し、同時にバンダイのビデオゲーム事業部門をナムコ(後のバンダイナムコゲームス)へ吸収分割で承継した。2008年4月にはバンプレストから景品事業を新設分割し、バンダイナムコゲームスがバンプレストのゲーム事業を吸収合併する再編を実施し、翌2009年にはバンダイネットワークスも吸収合併した。玩具、ゲーム、アミューズメントの各業態を専門子会社へ整理する作業が断続的に続くなか、2010年3月期にバンダイナムコHDは初の当期純損失299億円を計上した。 [4][5][6]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [4]2006年3月 ナムコからアミューズメント施設事業を新設分割し新生ナムコを設立、バンダイのビデオゲーム事業をナムコへ吸収分割で承継
    • [5]2008年4月 バンプレストから景品事業を新設分割、バンダイナムコゲームスがバンプレストのゲーム事業を吸収合併
    • [6]2009年(2009年4月)バンダイナムコゲームスがバンダイネットワークスを吸収合併

リーマンショック後の需要減で売上高は3,785億円まで落ち、営業利益はわずか19億円まで縮んだ。さらにアミューズメント施設事業等の減損を含む特別損失219億円が上乗せされ、赤字を拡大させた。2008年6月にはナムコ出身の石川祝男が2代目社長に就いており、この赤字期に構造改革の指揮を執った。翌2011年3月期には営業利益163億円まで戻ったが、発足初年度にあたる2006年3月期の357億円には届かず、統合の経営的果実を形にするにはなお時間を要した。統合5年目での当期純損失計上は、事業ポートフォリオの寄せ集めが外部環境の変動に耐えうるかを問う試金石となった。アミューズメント施設は集客が景気循環の影響を直接受けやすく、玩具やゲームと収益サイクルが揃わない事業特性があらためて浮き彫りとなった。 [7]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [7]2008年6月 ナムコ出身の石川祝男が2代目社長に就任
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [4]2006年3月 ナムコからアミューズメント施設事業を新設分割し新生ナムコを設立、バンダイのビデオゲーム事業をナムコへ吸収分割で承継
    • [5]2008年4月 バンプレストから景品事業を新設分割、バンダイナムコゲームスがバンプレストのゲーム事業を吸収合併
    • [6]2009年(2009年4月)バンダイナムコゲームスがバンダイネットワークスを吸収合併
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [7]2008年6月 ナムコ出身の石川祝男が2代目社長に就任

IP軸戦略が業績回復を牽引した転換期

2012年3月期に営業利益は346億円まで戻り、2013年3月期には486億円、売上高は4,872億円に達した。回復を牽引したのはコンテンツ事業(現デジタル事業)で、2013年3月期にはセグメント売上2,517億円、セグメント利益364億円と統合後最高の水準を記録した。トイホビー1,659億円、アミューズメント施設601億円という事業ポートフォリオのなか、コンテンツ事業が利益の柱として前面に出てきた時期にあたる。玩具とゲームの垣根を越えて同一の知的財産を複数カテゴリーで同時展開する手法が具体的な数字に表れ始め、統合時に描いた事業間の相乗効果がようやく収益面で裏づけられた。携帯電話やスマートフォンを通じたソーシャルゲーム市場の急拡大も追い風となり、自社IPをデジタル領域へ広げる戦略が業績を押し上げた。

有利子負債はピーク時の2009年3月期208億円から2014年3月期には55億円まで縮小し、無借金に近い状態まで財務体質が軽くなった。自己資本比率も66%前後の水準を安定して維持し、統合後の再編期を乗り越えた体質の強さがうかがえた。ただしコンテンツ事業が好調に推移する一方、国内アミューズメント施設事業は2014年3月期にセグメント赤字9億円を計上するなど、事業間の収益格差は残ったままだった。デジタル領域で稼ぎ、施設運営で苦戦する構図は、後年に施設事業を専門子会社へ分離する判断にもつながる事業間の体質差を示していた。中核IPがデジタル事業で稼ぎ頭となる一方、リアルな店舗運営は依然として景気感応度の高さに足を引っ張られる構造が続いた。

2015 IP軸経営と大人向け市場の開拓が重なった成長期

  1. 2015年売上高5,654億円、営業利益563億円で過去最高を更新
  2. 2015年田口三昭が社長に就任
  3. 2017年中国本土の地域統括会社Bandai Namco Holdings China Co., Ltd.を設立
  4. 2017年BANDAI S.A.S.がトイホビー事業を譲渡し欧州持株会社に役割変更
  5. 2018年BANDAI SPIRITSを設立しハイターゲット事業を集約
  6. 2019年売上高7,323億円、営業利益840億円でさらに過去最高を更新
  7. 2021年川口勝が社長に就任

バンダイナムコHDの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書・会社四季報等

田口三昭のもとで始まった連続最高益への助走

2014年4月にバンダイ出身の田口三昭が3代目社長に就いた。2015年3月期の売上高は5,654億円、営業利益は563億円となり、いずれも統合以来初めて発足初年度の水準を上回った。ドラゴンボール、アイカツ、アイドルマスター、機動戦士ガンダムなどの中核IPがデジタルとトイホビーの双方で同時に伸び、特定のヒット作品に依存しない収益構造が見え始めた。複数のIPを同時並行で育て、それぞれを複数の事業領域で展開する手法が安定収益の源泉として根づきつつあった。この年を境に、統合以降で最も長い業績拡大期に入り、複数IPの同時展開という手法が成長の柱になった。 [8]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [8]2014年4月 バンダイ出身の田口三昭が3代目社長に就任

2018年3月期には売上高6,783億円、営業利益750億円に到達した。セグメント構成はトイホビー2,132億円(利益144億円)、ネットワークエンターテインメント4,035億円(利益523億円)、映像音楽520億円(利益125億円)と、玩具単独でもゲーム単独でもない複合型の収益構造に固まった。2015年から2018年までの3年間で売上は1,200億円増え、営業利益は190億円積み上がった。統合以降で最大の連続成長期を記録した時期であり、後に5代目社長の浅古有寿はIP軸経営の土台を築いた時期として総括している。玩具とゲームの垣根を越えた多事業展開が、統合時に描いた相乗効果をようやく数字で裏づけた段階にあたる。ネットワークエンターテインメント事業の利益率が13%近くに乗り、玩具中心時代の収益構造から距離を取る形が見えてきた。 [9]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [9]浅古有寿は5代目社長(FY24就任)
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [8]2014年4月 バンダイ出身の田口三昭が3代目社長に就任
    • [9]浅古有寿は5代目社長(FY24就任)

ハイターゲット市場を切り開いた組織再編

2018年4月、バンダイのハイターゲット向け事業とバンプレストの景品事業を新会社BANDAI SPIRITSへ承継させる組織再編に踏み切った。同時にバンダイナムコエンターテインメントのアミューズメント機器事業を新生ナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)へ承継させる吸収分割も実施した。子供向け玩具と大人向けフィギュア・ホビーを事業体として分離し、20代後半以上のコア層に照準を合わせた商品開発を専業化する狙いだった。ガンプラに代表される組み立て模型や、コレクター向けフィギュアといった高単価商品を扱う専門組織を設け、商品企画から販売までの意思決定を速める体制を整えた。 [10][11]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [10]2018年4月 バンダイのハイターゲット向け事業とバンプレスト景品事業を新会社BANDAI SPIRITSへ承継
    • [11]同時にバンダイナムコエンターテインメントのアミューズメント機器事業を新生ナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)へ吸収分割で承継

再編の効果は早い段階で表れた。2019年3月期の売上高は7,323億円、営業利益は840億円に達し、いずれも過去最高を更新した。ガンプラをはじめとするハイターゲット商材の売上拡大は、少子化が進む国内市場でも単価と粗利率の高いコア層へ主力を移せば成長が可能であることを裏づけた。海外展開面では2017年12月に中国本土の地域統括を担うBandai Namco Holdings China Co., Ltd.を設立し、翌年には欧州でもBANDAI S.A.S.がトイホビー事業を譲渡して地域持株会社へ役割を切り替えた。各地域の統括機能整備が並行して進み、日本発のIPを世界で展開するための現地拠点の役割分担が形を取り始めた時期にあたる。中国・欧州の地域統括会社設置は、それまで日本本社が直接手掛けてきた現地販売を、地域ごとの市場特性に合わせた経営判断へと委ねる転換でもあった。 [12][13]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [12]2017年12月 中国本土の地域統括会社Bandai Namco Holdings China Co., Ltd.を設立
    • [13]欧州ではBANDAI S.A.S.がトイホビー事業を譲渡し地域持株会社へ役割変更(2017年9月)
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [10]2018年4月 バンダイのハイターゲット向け事業とバンプレスト景品事業を新会社BANDAI SPIRITSへ承継
    • [11]同時にバンダイナムコエンターテインメントのアミューズメント機器事業を新生ナムコ(現バンダイナムコアミューズメント)へ吸収分割で承継
    • [12]2017年12月 中国本土の地域統括会社Bandai Namco Holdings China Co., Ltd.を設立
    • [13]欧州ではBANDAI S.A.S.がトイホビー事業を譲渡し地域持株会社へ役割変更(2017年9月)

コロナ禍の巣ごもり需要と統合17年目の最高益

2021年4月、4代目社長に川口勝が就いた。川口はIR向けインタビューで、IP軸・事業軸・ターゲット軸・エリア軸の4軸からなるポートフォリオ経営を同社の強みとして提示し、単一のIPや単一の事業に依存するリスクを同時に避ける枠組みを示した。同じIPでも玩具とゲームで別々のターゲット層に届け、同じ事業でも地域ごとに異なる展開を取るという多軸の戦略が、以後の業績拡大を支える土台となった。川口はバンダイ出身として玩具の現場経験を持ちつつ、ナムコ・バンダイ両社のDNAを等しく引き継ぐ世代の社長として、IP経営の総合力を問う時期の舵取りを担った。 [14][15][16]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [14]2021年4月 川口勝が4代目社長に就任
    • [16]川口勝はバンダイ出身(1983年バンダイ入社の生え抜き)
    • [15]川口はIP軸・事業軸・ターゲット軸・エリア軸の4軸からなるポートフォリオ経営を強みとして提示

2022年3月期、売上高は8,892億円、営業利益は1,254億円、純利益は927億円に達し、いずれも過去最高を更新した。コロナ禍の巣ごもり需要が追い風となるなかELDEN RINGが世界的ヒットを記録し、デジタル事業を押し上げ、並行してトイホビー事業も過去最高を記録した。統合から17年が経過し、IP軸経営が外部環境の追い風と重なった結果として、第1期に計上した299億円の赤字からの回復ぶりを示す数字となった。同年4月には東証プライム市場への移行と同時に、サンライズを吸収分割してバンダイナムコフィルムワークスを設立し、ガンダムIPの映像制作と権利管理を一元化した。川口は同時期のインタビューで、社員とともにさらにアグレッシブな会社にしていく方針として、次の成長像を語った。 [17][18]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [17]コロナ禍の巣ごもり需要のなかELDEN RINGが世界的ヒットしデジタル事業を押し上げた
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [18]2022年4月 東証プライム市場へ移行、サンライズを吸収分割しバンダイナムコフィルムワークスを設立
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [14]2021年4月 川口勝が4代目社長に就任
    • [16]川口勝はバンダイ出身(1983年バンダイ入社の生え抜き)
    • [15]川口はIP軸・事業軸・ターゲット軸・エリア軸の4軸からなるポートフォリオ経営を強みとして提示
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [17]コロナ禍の巣ごもり需要のなかELDEN RINGが世界的ヒットしデジタル事業を押し上げた
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
    • [18]2022年4月 東証プライム市場へ移行、サンライズを吸収分割しバンダイナムコフィルムワークスを設立

2022 売上1兆円突破と浅古体制による成長基盤の再設計

  1. 2022年売上高8,892億円、営業利益1,254億円で過去最高を大幅更新
  2. 2023年売上高9,900億円、営業利益1,164億円
  3. 2024年売上高1兆502億円で初の1兆円台到達
  4. 2025年売上高1兆2,415億円、営業利益1,802億円で過去最高を大幅更新
  5. 2025年プラモデル新工場バンダイホビーセンターが竣工
  6. 2025年Legendary Picturesとガンダム実写映画の共同投資契約を締結
  7. 2025年Bandai Namco Filmworks America, LLCを設立

バンダイナムコHDの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書・会社四季報等

売上高1兆円到達とガンプラ増産投資

2023年3月期の売上高は9,900億円、営業利益は1,164億円だった。コロナ特需の反動と家庭用ゲームの新作端境期が重なり前期比では微減だったが、2年連続で統合以来の最高水準を維持した。翌2024年3月期には売上高が1兆502億円と初めて1兆円台に到達し、エンタメ複合企業としての規模感に達した。ただし営業利益は906億円と前期比258億円の減益で、プラモデルの生産能力に制約があったことと家庭用ゲームのヒット不在が収益面の重しとなった。売上は1兆円の節目を突破したものの成長の踊り場が同時に訪れ、数字の拡大と収益の質の両立という新たな経営課題が前面に出た。

供給面ではガンプラの世界的需要拡大に既存の工場能力が追いつかず、新工場バンダイホビーセンターへの投資が決まった。新工場は2025年1月に竣工し、同年夏に稼働を始め、2026年に本格稼働を予定する。多色成形機10台と単色成形機84台を順次設置し、プラモデル事業全体で2023年度比約35%の増産を可能とする計画である(決算説明会 FY24-2Q)。IPの人気が供給制約として跳ね返り、ファンの購入意欲に工場の生産能力が追いつかないという、成長企業ならではの課題が前面に出た。モノづくりの競争力が外注ではなく自社工場に依存する構造が、IP価値の拡大を受け止めきれない場面を生んだ。同時期、川口はIP商品を世界同時展開する方針を語り、商品供給を世界規模で同時化する考えを示した。 [19][20]

  • バンダイナムコHD IR
    • [19]ガンプラ新工場バンダイホビーセンターが2025年1月に竣工、同年夏稼働・2026年本格稼働予定
  • バンダイナムコHD 決算説明会(2023年11月/FY24-2Q)
    • [20]多色成形機10台・単色成形機84台を順次設置し、プラモデル事業全体で2023年度比約35%の増産を可能とする計画
  • バンダイナムコHD IR
    • [19]ガンプラ新工場バンダイホビーセンターが2025年1月に竣工、同年夏稼働・2026年本格稼働予定
  • バンダイナムコHD 決算説明会(2023年11月/FY24-2Q)
    • [20]多色成形機10台・単色成形機84台を順次設置し、プラモデル事業全体で2023年度比約35%の増産を可能とする計画

浅古有寿への社長交代と360投資構想

2025年、川口勝は会長に退き、経営企画やCFO、CISO、CSOを歴任した浅古有寿が5代目社長に就いた。副社長にはグループ戦略担当として桃井が就き、浅古が経営基盤の強化を担い桃井が攻めの戦略を担う分担が敷かれた。浅古は就任の所信表明で「初代社長の高須がグループの形をつくり、続く石川、田口が魂を吹き込み、現社長の川口が強固なエンジンで拡大させてきた」(決算説明会 FY24-3Q)と統合から20年の歩みを総括し、自らを次なる成長基盤の強化役と位置づけた。財務の知見を武器にした管理系の経営者が社長に就く人事は、統合第1世代から第2世代への本格的な移行を示した。営業・商品出身者がトップを担ってきた歴代体制から、財務・経営企画の出身者がトップに立つ体制への移行は、規模拡大期から基盤整備期への重心の移し方を物語る。 [21][22][23]

  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [21]2025年 川口勝が会長に退き、経営企画・CFO・CISO・CSOを歴任した浅古有寿が5代目社長に就任
    • [22]副社長にグループ戦略担当として桃井(信彦)が就任
  • バンダイナムコHD 決算説明会(FY24-3Q)
    • [23]浅古の所信表明での歴代社長総括(初代髙須→石川・田口→現社長川口)

浅古体制は「360投資」という概念を掲げた。IPファン、社員、パートナー、株主、社会という5方向のステークホルダーに対し5年後や10年後を見据えた投資を行うという考え方であり、M&Aは手段の一つに過ぎず双方がWIN-WINとなる関係構築を前提とすると説明された。2025年3月期の売上高1兆2,415億円、営業利益1,802億円、純利益1,293億円といういずれも過去最高の業績を踏まえ、中期計画最終年度に掲げた営業利益目標2,000億円が現実味を帯びるなかでの社長交代となった。攻めの川口体制から基盤強化の浅古体制への移行は、成長軌道の踊り場を見据えた次の段階のための布陣替えと説明された。短期的な株主還元と長期的な事業投資の両立を、財務出身トップが整理して説明する役割を担う構図でもある。 [24][25]

  • バンダイナムコHD IR
    • [24]浅古体制は「360投資」概念を掲げた(IPファン・社員・パートナー・株主・社会の5方向への投資)
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [25]中期計画最終年度の営業利益目標2,000億円
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
    • [21]2025年 川口勝が会長に退き、経営企画・CFO・CISO・CSOを歴任した浅古有寿が5代目社長に就任
    • [22]副社長にグループ戦略担当として桃井(信彦)が就任
  • バンダイナムコHD 決算説明会(FY24-3Q)
    • [23]浅古の所信表明での歴代社長総括(初代髙須→石川・田口→現社長川口)
  • バンダイナムコHD IR
    • [24]浅古体制は「360投資」概念を掲げた(IPファン・社員・パートナー・株主・社会の5方向への投資)
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
    • [25]中期計画最終年度の営業利益目標2,000億円

北米ガンダム展開と映像事業の再編

2025年4月、Bandai Namco Filmworks America, LLCが設立された。北米におけるガンダムのブランディング施策は2026年4月以降の本格稼働が予定されており、Legendary Picturesとの実写映画共同投資契約は2025年1月に締結済みで制作が進んでいる(決算説明会 FY25-2Q)。映像単体で利益を追うのではなく、商品展開と組み合わせてグループ全体で収益を最大化する狙いが示され、チーフガンダムオフィサー(CGO)のもとで世界各エリアが連携しIP価値を高める体制を敷いた。北米という日本アニメの最大消費地に専用の映像会社を置き、ガンダムの世界展開は日本・アジア中心から北米を含む3極体制へ踏み込んだ。地域ごとの異なる文化的文脈に応じて作品の届け方を最適化する土台がようやく整った。 [26][27][28]

  • バンダイナムコHD IR
    • [26]2025年4月 Bandai Namco Filmworks America, LLCを設立
    • [27]北米ガンダムブランディングは2026年4月以降の本格稼働を予定
    • [28]Legendary Picturesとの実写映画共同投資契約は2025年1月に締結済み

映像音楽事業は長年にわたり海外比率の低さが構造的な課題とされてきた。2025年度にはワールドワイド展開、多様なIPの創出と育成、音楽出版機能の集約を目的とした国内事業再編に踏み切った。日本発のガンダムファンサイトは90カ国以上で閲覧できる状態にまで広がり、2025年に開催された大阪・関西万博では「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」を通じて初めてガンプラを購入する来場者も多く、海外からのコスプレ来場者も目立った。ガンダムIPの売上は四半期あたり約600億円規模で安定して推移し、日本やアジア中心だった人気が北米エリアへ広がる初期段階に入った。海外比率の改善は映像音楽事業の長年の課題であり、その解決の糸口がようやく見えた。

  • バンダイナムコHD IR
    • [26]2025年4月 Bandai Namco Filmworks America, LLCを設立
    • [27]北米ガンダムブランディングは2026年4月以降の本格稼働を予定
    • [28]Legendary Picturesとの実写映画共同投資契約は2025年1月に締結済み

バンダイナムコHDの沿革1950〜2025年における主な出来事を抜粋

年月区分社長・CEO出来事重要度
会社設立萬代屋(現バンダイ)を東京で創業★★★
会社設立中村製作所(現ナムコ)を横浜で創業★★★
ナムコが「スペースインベーダー」後に業務用ゲーム機市場で台頭★★★
バンダイが機動戦士ガンダムのプラモデル(ガンプラ)発売開始★★★
バンダイが携帯ゲーム「たまごっち」を発売★★★
企業買収セガ・エンタープライゼスとの対等合併を電撃発表するも、4カ月後の5月に契約締結前に解消★★★
企業買収髙須武男バンダイとナムコが経営統合し持株会社バンダイナムコHDを設立★★★
社長交代初代社長に髙須武男が就任★★
組織再編ナムコからアミューズメント施設事業を新設分割し新生ナムコを設立★★
組織再編石川祝男バンプレスト景品事業の新設分割とゲーム事業の吸収合併★★
社長交代石川祝男が社長に就任★★
組織再編バンダイナムコゲームスがバンダイネットワークスを吸収合併
初の当期純損失▲299億円を計上★★★
黒字回復(営業利益163億円、純利益18億円)★★
田口三昭売上高5,654億円、営業利益563億円で過去最高を更新★★★
社長交代田口三昭が社長に就任★★
組織再編BANDAI S.A.S.がトイホビー事業を譲渡し欧州持株会社に役割変更
中国本土の地域統括会社Bandai Namco Holdings China Co., Ltd.を設立★★
組織再編BANDAI SPIRITSを設立しハイターゲット事業を集約★★★
売上高7,323億円、営業利益840億円でさらに過去最高を更新★★★
社長交代川口勝川口勝が社長に就任★★
組織再編欧州持株会社がBandai Namco Entertainment Europe S.A.S.を吸収合併
売上高8,892億円、営業利益1,254億円で過去最高を大幅更新★★★
組織再編東証プライム市場に移行。サンライズを吸収分割しバンダイナムコフィルムワークスへ★★
組織再編監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行
売上高9,900億円、営業利益1,164億円★★★
浅古有寿売上高1兆502億円で初の1兆円台到達★★★
組織再編欧州デジタル事業の吸収分割をBandai Namco Entertainment Europeに承継
設備投資プラモデル新工場バンダイホビーセンターが竣工★★★
経営計画Legendary Picturesとガンダム実写映画の共同投資契約を締結★★★
売上高1兆2,415億円、営業利益1,802億円で過去最高を大幅更新★★★
組織再編Bandai Namco Filmworks America, LLCを設立★★★
社長交代浅古有寿が5代目社長に就任★★★
経営計画米国相互関税の影響を早期施策で約20億円に抑制★★
出典・参考
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【沿革】
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書
  • バンダイナムコHD 有価証券報告書【役員の状況】
  • バンダイナムコHD IR(2022年1月)
  • バンダイナムコHD IR
  • バンダイナムコHD 決算説明会(2023年11月/FY24-2Q)
  • バンダイナムコHD 決算説明会(FY24-3Q)

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