古河財閥では、保有する足尾銅山で産出する銅を有効活用するために加工部門に進出。1896年に横浜電線製造株式会社(現・古河電工)を設立し、銅線(電線)の製造を開始した。
ネットバブルにより、光ファイバおよび光通信機器(WDA)を手掛ける古河電工の時価総額が急騰。2000年2月時点で古河電工の時価総額は約1兆円を記録した。
2001年11月に古河電工(古河潤之助・社長)は米国の大手通信機器メーカー「ルーセント・テクノロジー」より、同社の光ファイバ部門の買収を決定。ルーセントによる売却合計額は27億ドルで、このうち古河電工による取得負担額は約20億ドル(2250億円)となり、大規模な買収を決断した。
ルーセント社としては、2000年11月からネットバブルの崩壊の煽りを受け、通信機器の販売が低迷。ルーセント社の財務状況が悪化したため、資金繰りを改善するために光ファイバー部門の他社への売却を決定した。
なお、2000年9月期におけるルーセントの光ファイバ部門の業績は、売上高約2300億円・営業利益約450億円であり、ネットバブル崩壊後という混乱期ではあったが、国内の市場関係者からは「割安で買収できた」(2001/10/8日経ビジネス)と評価されていた。
古河電工は買収に必要な資金について、JDS社の株式売却によって捻出。同社は1991年に出資した光通信機器メーカーであり、ネットバブルによって古河電工は2兆円に及ぶ含み益を確保。JDS社の株式を一部売却することで、ルーセントの光ファイバ部門の買収原資とした。
このため、買収資金のうち約1100億円を米JDSの株式売却によって確保し、残りの約900億円を銀行からの借入で充当した。
2001年時点において、光ファイバ市場においてコーニングのシェアが30%、ルーセントのシェアが19%であり、古河電工の7%であった。このため、古河電工によるルーセントの同部門買収(OFS社として運営)によって、世界2位のシェアを確保する見通しとなった。古河電工としては、世界シェア上位を確保しつつ、ルーセントが保有する光ファイバに関する特許を確保することで、特許収入を確保する狙いもあった。
ところが、買収後からネットバブル崩壊を受けてOFS社の業績が悪化。2003年3月期に古河電工は特別損失の計上などにより、1000億円超の最終赤字に転落。翌年の2004年3月期には約1400億円の赤字に転落し、ルーセントの光ファイバ部門の買収は失敗となった。
買収後の業績が低迷したことを受けて、2003年に古河潤之助氏が社長を退任(代表取締役会長に就任)。古河電工は光ファイバ部門の再建に迫られ、買収によって発生した有利子負債910億円によって財務状況が悪化した。
当社が狙っている光関連部品事業は、とてつもない潜在力を秘めている。どんな国でも今さら銅線は使わず、全部光ファイバーで通信回線を作るようになる。光ファイバーもWDMも技術革新が世界的に進んでいる。だから、経営のスピードをもっと高めて、技術革新が起こっている分野で新製品をどんどん出さねばならない。(略)
古河電工はハイテク企業として足元を固めたら、今度は「エクセレントカンパニー」を目指していきたい。ウェルチ氏(注:GEのCEO)もそうだったが、製造業から金融、証券、リース業などのサービス分野にどんどん出ている。ソニーだって生命保険や銀行は増収増益でしょう。我が社も将来は絶対やったほうがいい。昔の財閥がなぜ銀行や商社を持ったか。それはメーカーだけじゃ駄目だからだ。総合的に持っているほうがいいに決まっているんだから。
採算が悪化していたアルミニウム事業を縮小するため、2003年10月に古河電工の軽金属事業部門を会社分割によって「古河スカイ株式会社」として発足。同社は旧古河電工のアルミニウム事業と、旧昭和電工のアルミニウム事業が統合した企業であり、古河電工としては、業界再編を通じたアルミニウムの事業縮小を狙った。
なお、古河スカイは2013年10月に住友軽金属工業と経営統合し、株式会社UACJを発足。古河電工によるアルミニウム事業会社(UACJ)への出資比率は、2024年3月期末時点で24.96%(筆頭株主)であり、UACJを関係会社としてアルミニウム事業を継続している。
米国司法省は、古河電工による米国での自動車向けワイヤーハーネスの販売について、反トラスト法違反であると判断。2000年1月から約10年にわたって価格操作・不正入札を行なった判断として、古河電工に加え、矢崎創業、フジクラの3社は違反と判断した。
2012年3月期に古河電工は、米国反トラスト法違反罰課金を特別損失として152億円計上。また、関わった社員3名について、米国で禁固刑を受けて収監された。
2017年6月に古河電工の子会社(American Furukawa, Inc.)から、東海理化の子会社(TRAM, Inc.)に納入された部品製品について、TRAMから自動車メーカーに納入された部品がリコールの対象となった。このため、東海理化電機は古河電工に対してリコール費用の負担を求める訴訟を提起した。
この結果、古河電工は「製品補償引当金繰入額」を特別損失として計上し、FY2017〜FY2019の3ヵ年において、同特別損失を累計313億円計上した。