塩野義製薬の直近の動向と展望

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塩野義製薬の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

中国合弁解消とM&Aによる事業ポートフォリオ拡張

2023年7月、米Qpex Biopharmaを買収し、抗菌薬研究開発と米国政府ネットワーク、β-ラクタマーゼ阻害薬Xeruborbactamのグローバル独占権を獲得した。セフィデロコル後継のパイプラインを補強する選択と集中型のM&Aを打ち出した。2024年3月期は売上収益4,101億円・営業利益1,533億円、2025年3月期は4,383億円・1,566億円と過去最高水準の利益を維持した。一方、2025年3月期はゾコーバの国内売上低迷で予想売上を約200億円・営業利益を約85億円下回り、手代木は「営業利益85億円の未達、本来2月3月のゾコーバ売りをモニターしながら費用調整するのが私どものパターン。ゾコーバが静かすぎてコストコントロールが後手に回った」(決算説明会 FY24)と異例の自省を示した。

2025年3月、平安塩野義(中国)を完全子会社化して合弁を解消し、Shionogi Chinaとして単独運営に移った。当初のジェネリック中心モデルから、エンシトレルビル・セフィデロコル・ナルデメジンを軸とする新薬モデルへの転換を加速する判断に踏み切った。同年9月に鳥居薬品を完全子会社化、12月にJTグループ医薬事業を取り込み、研究員約700名とAI・量子コンピュータプラットフォームを獲得した。HIVロイヤリティとゾコーバで得た利益余力を、国内新薬企業と創薬基盤技術の取り込みへ再投資する段階に入った。単一領域の利益を単一領域の拡張に閉じ込めず、隣接領域の取り込みで次の稼ぎ頭を準備する構図に置いている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY25-3Q

HIV基盤の長期化と次世代パイプラインへの賭け

2025年度第3四半期、ViiV社への追加出資11.7%を実行し、合計21.7%の持分法適用関連会社化に踏み切った。2009年にGSK・Pfizer出資で設立されたViiVに塩野義が2012年から株主として参加しロイヤリティを受領してきた構造を、議決権ベースでより深く取り込む動きとなっている。2040年代半ばまでのHIVロイヤリティ基盤を確保することが目的で、手代木は「私がこれだけの大きなM&Aを会社としてやろうと思ったのも、S-365598が非常にいい動きをしていてわれわれとしての自信を深めたことがこれだけのアグレッシブな活動に結び付いた」(決算説明会 FY25-3Q)と一連の積極策の根拠を語った。2008年以降続いてきたドルテグラビル由来のロイヤリティを、議決権と次世代HIV候補の手応えで補強しようとしている。

国内事業面では鳥居薬品の取り込みにより、急性呼吸器感染症依存度を55%から30%強へ引き下げる構造転換が進む。SLIT(舌下免疫療法)でジェネリック参入困難なフランチャイズを獲得し、流行影響を受けにくい収益基盤を組み上げる方針を打ち出している。STS2030の最終売上目標5,500億円・営業利益2,000億円には「わずかに届かない」見通しも示されており、次期中計は感染症フランチャイズの安定化とHIV後継パイプラインの世代交代を二軸に据える構えに入った。感染症一本で世界と戦うというテーマはそのまま維持しつつ、ロイヤリティ依存と流行依存の両方から距離を取る設計に入った段階にある。道修町の問屋から150年弱、業態転換を繰り返してきた塩野義は、次の10年で再び事業ポートフォリオの輪郭を書き換える段階に入った。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY25-3Q

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY22
決算説明会 FY24
ダイヤモンド臨時増刊 1967/2/25
読売新聞 1962/3/1
日経産業新聞 1998/7/3
日経産業新聞 2008/9/2
ダイヤモンド・オンライン 2019/6/14
日経産業新聞 2015/4/13
決算説明会 FY25-3Q