1990
10月

株式会社サブ・アンド・リミナルを設立

1990年10月に株式会サブ・アンド・リミナル(現・セプテーニHD)を設立。資本金は1500万円。創業時点の本社は東京都渋谷区代々木3-31-12代々木ハイツ507号室であり、マンションの1室であった。創業者はリクルート出身の七村守氏(リクルート・元北関東支社長)であり、7名で会社を独立開業した。

創業と同時に人材採用のコンサルティング事業を開始。就職情報雑誌「イソップ(ESOP)」の発刊や、翌1991年には「求人票楽々システム」の開発および商品化を行うなど、人材採用における補助サービスを展開した。

1990年
10月
株式会社サブ・アンド・リミナルを設立
資本金 1500 万円
1996年
6月
増資により資金調達
資本金増加額 1800 万円
1996年
9月
増資により資金調達
資本金増加額 500 万円
1997年
9月
増資により資金調達
資本金増加額 2450 万円
1999年
3月
増資により資金調達
資本金増加額 3350 万円
1993年10月
DM・発送代行(CDP事業)に参入
1998年7月
人材斡旋事業に参入
1998年
7月
人材斡旋事業に参入
1999年
10月
再就職支援事業に参入
2002年
3月
再就職支援事業から撤退
2003年
4月
人材斡旋事業から撤退(営業譲渡)
1999年3月
新宿住友ビル10階に本社移転
1990年
10月
本社:代々木ハイツ507号室
1992年
7月
本社:代々木2-10-4新宿辻ビル7階に移転
1995年
10月
本社:代々木2-13-4新中央ビル9階に移転
1997年
4月
本社:新宿区新宿4-2-18新宿光風ビル7階に移転
1999年
3月
本社:西新宿2-6-1新宿住友ビル10階に本社移転
2003年
9月
本社:西新宿6-8-1新宿オークタワー26階に本社移転
2007年
4月
本社:新宿区大京町24に本社移転
2011年
12月
本社:西新宿8-17-1新宿グランドタワーに本社移転
2000年4月
インターネット広告代理事業に参入

新規事業の展開を志向

佐藤光紀氏がインターネット広告事業を開始

決算
セプテーニHDの業績
2000年9月期(連結)
売上高
49
億円
当期純利益
0.9
億円
証言
七村守(セプテーニ・創業者)

ちょうど1999年、会社設立10年目の頃。当時、当社は今のようなインターネット広告事業ではなく、アウトソーシング事業をしていました。この事業は順調に推移していたので、何かもう一つ事業の柱になるものがほしいと考えるようになりました。会社にも余裕が出てきたので、6ヶ月くらい利益を生み出さない事業でも将来性があればチャレンジしてみたいと思ったんです。

そんな時、現在セプテーニ社長の佐藤(当時、新卒入社3年目)が「もう今の仕事に飽きました。何か新しいことがしたい」と生意気なことを言ってきた(笑)。しかし、彼の気持ちも分かりました。私も前職のリクルートで同じようなことを考えていたので。ちょうど会社も新規事業にチャレンジする時期で、やりたいと手を挙げた人もいた。タイミングが良かったんです。そこでできたのが、ひねらん課というわけです。だから、ひねらん課は当初は佐藤一人のためにつくった部署みたいなものでした。

2000年3月
株式会社セプテーニに商号変更
2001年8月
ジャスダックに株式を店頭登録
2001年9月
インターネット関連企業を買収
2001年
9月
ハイジを買収(現アクセルマーク)
2002年
3月
オプトメールを買収
2002年
8月
オープンスマイルに出資
2002年
12月
アイディーズに出資
2003年
11月
ガリレオゼストに出資
2004年
3月
トライコーンに出資
2002年
不採算事業の整理
2002年
3月
国際ビジネス開発を売却(1998年買収)
2002年
3月
リスクバスターを売却
2002年
3月
再就職支援事業から撤退
2003年
4月
人材斡旋事業から撤退(営業譲渡)
2006年10月
セプテーニホールディングスに商号変更・持ち株会社に移行
2009年12月
佐藤光紀氏が代表取締役社長に就任
2013年2月
コミックスマート株式会社を設立
2013年
2月
コミックスマート株式会社を設立
2013年
12月
アプリ「GANMA!」をリリース
2018年
12月
GANMA!プレミアムをリリース
2021年
10月
GANMA!コミュニティーをリリース
2014年10月
セプテーニ・ダイレクトマーケティングを譲渡

1990年代までの主力事業であったダイレクトマーケティング事業から撤退

決算
セプテーニHDの業績
2015年9月期(連結IFRS)
収益
142
億円
当期利益
-23.5
億円
営業CF
19
億円
投資CF
13
億円
財務CF
-1.2
億円
従業員数
846
2015年9月
ガナバンス改革を開始
2015年
社外取締役を指名
2016年
実効性評価を導入・買収防衛策の廃止
2017年
役員向け業績連動型株式報酬を導入
2022年
社外取締役を増員
2016年10月
Lion Digital Global LTDを取得
2022
1月

第三者割当増資・電通がセプテーニHDを子会社化

電通と資本業務提携を締結

2017年12月から電通はセプテーニHDと接触を開始。デジタル広告領域における提携関係の構築を模索していた。そして、2018年10月にセプテーニHDは、電通と資本業務提携を締結。電通はセプテーニHDの株式20.99%を88.5億円で取得し、セプテーニHDは第三者割当増資を実施した。

セプテーニHDは調達資金の用途について、事業投資に活用する方針を計画。ネットマーケティング事業に20億円、ネットメディア開発に20億円、マンガコンテンツ事業における販促投資に15億円、システム投資に5億円、M&Aに28億円の予算を設定した。

電通がセプテーニHDを子会社化

提携から約3年を経た2022年1月に、電通はセプテーニHDの子会社化を発表。セプテーニHDは第三者割当増資を実施し、電通はセプテーニの株式を取得し子会社化した。取得後の保有比率は約52%であり、セプテーニHDの株式上場は維持する形となり、電通とセプテーニHDは親子上場の関係となった。

セプテーニHDとしては第三者割当増資により、株式を発行した上で電通からの資金調達を実施。調達額は326億円であり、2022年1月4日払込を完了した。なお、326億円の調達資金は、電通のグループ会社である「電通デジタル」をセプテーニが取得するための資金として活用した。

そして、セプテーニHDは電通デジタルを312億円を買収。この取引によって、電通はキャッシュをほぼ消費せず、グループ会社を差し出すことでセプテーニHDを子会社化した。セプテーニHDによる電通デジタルの買収後は、これら2社の統合がPMIの論点となった。

2017年
12月
電通とセプテーニHDが提携を検討
2018年
10月
電通と資本業務提携を締結
2022年
1月
第三者割当増資・電通が株式取得
調達額 326 億円
2022年
1月
電通デジタルの買収
取得価格 312 億円
決算
セプテーニHDの業績
2022年9月期(連結IFRS)
収益
275
億円
当期利益
57
億円
営業CF
36
億円
投資CF
-305.5
億円
財務CF
312
億円
従業員数
1602
2024
3月

コミックスマートを売却・IPプラットフォーム事業を縮小

コミックスマート単独で資金調達

2022年にコミックスマートはベンチャーキャピタルに対する第三者割当増資を決定。7.1億円を調達する一方、調達後のコミックスマートの株式保有比率は「セプテーニ89.4%・外部投資家10.6%」となった。この結果、コミックスマートはセプテーニの完全子会社ではなくなった。

資金調達を実施した理由は、マンガ領域における競争激化により、コンテンツ開発や販促に積極投資を行う必要が生じたためであった。

ただし、コミックマーケットは赤字と推定され、セプテーニが貸し付けを行うのではなく、外部からの調達を選択した。したがって、セプテーニとしては、コミックスマート社に対する投資を縮小(段階的撤退)することを選択した。

コミックスマートを売却

2023年12月にセプテーニHDはコミックスマートの保有株式(56.88%)を一部売却することを発表。これにより、コミックスマートは連結子会社から外れ、持分法適用会社となった。売却先は、ベンチャーキャピタルとされたが非開示となった。

株式譲渡実行日は2024年3月31日までとされ、財務に対する影響はFY2024となった。

売却額の算定

セプテーニはコミックスマートの株式売却額を公表していない。FY2023期末時点で、新たに「売却目的で保有する資産」として8.0億円を計上しており、これがセプテーニが保有するコミックスマートの価値と推定される。

売却後のセプテーニによる保有は32.57%であることから、売却時点におけるコミックスマートの評価額は24.56億円と推定される。したがって、セプテーニが売却した保有比率が56.88%であることから、13.96億円が売却額と想定される。

2021年
10月
コミックスマートの保有比率が希薄化(外部投資家が出資)
2024
3月

社外取締役の減員・電通支配が強まる

電通による支配強化

2024年3月に、大株主である電通は、社外取締役の朝倉氏について、翌日に控えた株主総会で再任を否決する意向を通達した。これを受けて、朝倉社外取締役は「一身上の都合」により取締役を退任した。

一方、2024年3月の株主総会において、電通・執行役員(メディア・コンテンツ担当)である北原氏が取締役として新たに選任された。北原氏はセプテーニHDにおいて、電通在籍者を兼務する初の人物となった。すなわち、電通の意向による取締役の派遣と推定される。

したがって、セプテーニHDの親会社である電通は、北原氏の取締役選任によって、セプテーニHDに対する経営支配を強める道を選択したと推定される。その手段の一つが取締役の減員であり、電通の利害と一致しない「朝倉氏」をターゲットに選定したと推定される。

朝倉氏の退任に至るトリガー

一説には、電通は朝倉氏が運営するファンドとセプテーニの取引関係を問題視し、再任否決の根拠にしたととされる。ただし、朝倉氏の再任否決について、電通は株主総会の前日に通知したと言われており、それまでの間は、朝倉氏の否認を示唆するコミュニケーションは無かったとされる。すなわち、取引上の問題は、時系列上において唐突な指摘であるため、表面上の理由かもしれない。

したがって、朝倉氏「のみ」が解任対象となった真の理由は、何らかの事情で、電通に対する心象を損ねた可能性も考えられる。

事業をめぐる「少数株主と筆頭株主」の立場

2023年を通じて投資ファンドのオアシスは、セプテーニの経営陣と接触を図っていたと推定される。この中で、オアシスはセプテーニの企業価値が低い問題を指摘し、赤字を垂れ流していた「コミックスマート」の撤退について提言したとされる(2024/3/1ダイヤモンド)。

一方、セプテーニは、2018年の電通からの資金調達時に、15億円をコミック関連の投資費用として使途を計画しており、実質的に電通が資金投下した事業であった。このことを勘案すると、オアシスの立場は「コミックスマートからの撤退」の一方、電通は「コミックスマートへの存続」であった可能性がある。

すなわち、セプテーニの取締役会としては、投資ファンドのオアシス or 筆頭株主の電通という、潜在的な株主を含めた2者間において、どちらの言い分を呑むべきかを判断する必要に迫られたと推定される。これは、親子上場という形態において、少数株主の利益をどこまで取締役会が考慮できるかという「試金石」であったと思われる。

佐藤社長・朝倉氏による撤退決定

2023年12月にセプテーニは、コミックスマートからの撤退を決定した。仮にこの撤退事案が朝倉氏の発案によって議案にあがり、佐藤社長による意思決定によって撤退が遂行されたとすれば、実質的に電通が投資した事業からの撤退を意味するため、筆頭株主である電通の心象を損ねる理由になるかもしれない。

ちなみに不思議なことだが、コミックスマートの撤退決定後に、佐藤社長の経費の不適切利用が浮上している。偶然にも、コミックスマートからの撤退を提言・遂行したと思われる張本人が、相次いで退任する形となった。

当初予定から社外取締役の減員

この結果、セプテーニHDとしては当初の予定から社外取締役が1名減員され、当初予定の9名の取締役選任から8名の選任へと変更した。その後、株主総会を経て、8名の取締役の新任が決定された。可決の賛成比率はいずれの候補者も98%以上であり、大きな混乱は見られなかった。

一連のプロセスを通じて、セプテーニHDは、指名・報酬委員会を設置しながらも、親子上場という資本関係のもとで、子会社であるセプテーニHDには、50%超を握る筆頭株主の一存によって、社外取締役であっても異動(クビ)があり得る会社であること、すなわち最高意思決定機関が「株主総会」にあることを内外に知らしめた。

オアシスによる株式取得

2024年1月にセプテーニは主要株主の異動を発表し、Oasis Management Company Ltd.がセプテーニHDの株式10%を保有したことを明らかにした。この結果、セプテーニHDは、2023年12月時点で電通が52.56%を保有し、Oasisが第2位の株主となった。

2023年
12月
佐藤光紀社長が退任(不適切な経費利用)
2024年
1月
Oasisが株式10%を取得
2024年
3月
朝倉社外取締役が辞任(電通が再任否定)
2024年
3月
北原整取締役が新任(電通・執行役員を兼務)
所感
開発者コメント

親子上場(過半数を握る株主が存在する)という特殊な状況において、ガバナンスがどこまで有効なのかを如実に示した事例。

最後は「資本の論理」が通ったが、取締役会としては少数株主に寄り添った運営をしていたことが「行間」から漂う。短期的には筆頭株主の勝利に終わってしまったが、その結果として筆頭株主の本質(閉鎖性)を浮き彫りにした事案とも言える。

2024年3月
新経営体制の発足(神埜氏が社長就任)
2023年
7月
指名・報酬委員会を設置
2023年
12月
佐藤光紀社長が退任(不適切な経費利用)
2024年
3月
神埜祐一氏が新社長・清水祐介氏が副社長に就任