クラレの直近の業績・経営課題と展望

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クラレの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/12売上高8,084億円YoY▲2.2%
2025/12売上総利益2,465億円YoY▲7.9%
2025/12販売費及び一般管理費1,876億円YoY+2.8%
2025/12営業利益589億円YoY▲30.8%
2025/12経常利益515億円YoY▲36.8%
2025/12親会社株主に帰属する当期純利益75億円YoY▲76.5%
2025/12自己資本比率57%YoY▲2.2pt
2025/12有利子負債合計1,913億円前年比+25,171億円
2025/12現金同等物期末残高1,083億円YoY▲11%
経営トップ川原仁代表取締役社長
2025/12従業員数12,117前年比+176人
2025/12平均給与809万円前年比+7万円
歴史的背景1926年に創業者の大原孫三郎氏が倉敷絹織として設立し、1950年に国産資源原料の合成繊維ビニロンを工業化、1962年ポバール・1972年エバールと独自素材を連続で立ち上げた。2018年の米Calgon Carbon買収1,234億円で活性炭事業へ参入し、連結売上高を8,000億円規模へ倍増させた。
経営課題FY24は売上8,269億円・営業利益851億円・ROIC7.3%で過去2番目の利益水準を記録した。一方でROEは4.3%にとどまる。ビニルアセテートが営業利益770億円と全社中核を担い、イソプレンは▲45億円の赤字へ転じ、会社は同事業を最適化・体質改善事業へ区分した。ビニルアセテート利益偏重の是正が課題である。
経営方針2021年就任の川原仁社長は中計「PASSION 2026」を進め、2025年2月に最終年度目標を売上9,000億円・営業利益1,100億円・ROIC9%へ上方修正した。設備投資は当初3,800億円から5,000億円へ増額し、エバール・活性炭・歯科材料の3製品を成長投資の重点製品に置いた。
主な投資シンガポール・エバール新プラントを2026年末稼働予定とし、米国の活性炭新炭設備増設と米国上下水道事業者との長期包括契約を2025年1月に締結した。総還元性向は従来35%以上から50%以上へ引き上げ、FY24は配当54円・自己株式取得200億円で総還元性向118.7%とした。

ニッチ首位の連続買収から活性炭・エバール2製品への資本集中

1926年に創業者の大原孫三郎氏が倉敷絹織を岡山県倉敷市に興し、1950年に石灰石・石炭・水を原料とする合成繊維ビニロンを工業化、1962年ポバール・1972年エバールと独自素材を相次ぎ立ち上げた。2018年の米Calgon Carbon買収1,234億円で活性炭事業へ参入し、連結売上高は8,000億円規模へ倍増した。同年5月の米国エバール工場爆発火災では作業員266名が被災し、訴訟損失累計736億円を計上した。FY24もビニルアセテートが営業利益770億円を稼ぎ、全社営業利益851億円の中核となっている。これに対しイソプレンはFY24に▲45億円の赤字へ転じ、ビニルアセテート利益偏重の是正は引き続き課題として残っている。

2021年6月就任の川原仁社長は、創業100周年の2026年を最終年度とする中期経営計画「PASSION 2026」で売上高7,500億円・営業利益1,000億円・ROIC8%を当初の到達点とした。計画前半3年で売上・各利益とも目標を上回ったため、2025年2月に売上高9,000億円・営業利益1,100億円・当期純利益660億円・ROIC9%・EBITDA1,860億円へ上方修正した。設備投資枠も3,800億円から5,000億円へ拡張し、エバール・活性炭・歯科材料の3製品を後半戦の成長投資の重点製品に置いた。

成長投資の地理配分は南北アメリカと東南アジアへ寄った。エバールは欧米既存工場の能力増強を2024年と2026年の二段で実施し、シンガポール新プラントを2026年末に稼働させる。活性炭については、米国EPAが2024年4月に飲料水PFASの安全基準を厳格化し、2029年4月までの全米適合を義務づけた。これにより2030年に米国だけで年10〜20億ドル規模の処理市場が見込まれる。クラレは新炭設備増設と再生炭事業の買収で対応し、2025年1月には米国最大手の上下水道事業者と長期包括契約を結んだ。総還元性向は35%以上から50%以上へ引き上げ、FY24は配当54円・自己株式取得200億円で総還元性向118.7%まで水準を引き上げた。

クラレの当面の論点は、「他人のやれない領域でニッチ首位を獲る」戦略をどこまで延伸できるかにある。1950年ビニロン以来75年で築いた独自素材の参入障壁は、ポバール・エバール・水溶性フィルムでは超過利潤を生んだものの、市場規模が小さいため、成長は1,000億円超のM&A連鎖に依存している。FY24のROE4.3%は資本コストを下回り、Calgon Carbon統合と相次ぐ事業整理損が収益性改善を相殺している。クラレはいま、ニッチ首位の戦略を活性炭PFAS市場とエバール環境包装の2領域で1兆円規模の事業へ伸ばす局面に入り、川原社長はそれを資本コストを上回るリターンで実現する経営判断を負っている。

クラレの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY162016/12連結 / JGAAPFY172017/12連結 / JGAAPFY182018/12連結 / JGAAPFY192019/12連結 / JGAAPFY202020/12連結 / JGAAPFY212021/12連結 / JGAAPFY222022/12連結 / JGAAPFY232023/12連結 / JGAAPFY242024/12連結 / JGAAPFY252025/12連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円4,852−7.0%5,184+6.9%6,030+16.3%5,758−4.5%5,418−5.9%6,294+16.2%7,564+20.2%7,809+3.2%8,269+5.9%8,084−2.2%
ビニルアセテート億円2,2342,3472,3322,2512,1572,5483,7123,9133,9803,872
イソプレン億円276300301291269320524530582611
機能材料億円4893981,1201,0701,0671,1941,7031,8572,0292,022
繊維億円373495473508409460631579581563
トレーディング億円1,1661,2741,3611,2811,2201,413572603664673
売上原価億円3,1773,3864,1053,9513,7644,2525,1475,4105,5945,619
売上総利益億円1,6741,7981,9251,8071,6542,0412,4172,4002,6752,465
販管費億円9961,0351,2671,2651,2111,3191,5451,6451,8241,876
営業利益YoY億円678+2.6%764+12.6%658−13.8%542−17.7%443−18.1%723+63.0%871+20.6%755−13.4%851+12.7%589−30.8%
ビニルアセテート億円585616547474408583775863876625
イソプレン億円69907342386143-109-95-49
機能材料億円45674438308786103129108
繊維億円60766357225667181226
トレーディング億円38394242364851525960
経常利益YoY億円662+2.6%742+12.2%612−17.6%483−21.1%397−17.7%688+73.0%841+22.2%690−17.9%815+18.0%515−36.8%
当期純利益YoY億円404+13.0%545+34.8%336−38.4%-20−105.8%26+231.4%373+1,350%543+45.7%424−21.8%317−25.3%75−76.5%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%70.871.858.753.147.551.453.057.059.257.0
有利子負債比率%6.96.417.616.423.017.617.515.712.914.7
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円9398467529567997825171,2931,383986
投資CF億円-493-799-1,870-894-640-656-686-632-760-981
財務CF億円-147-1721,141-15915-474-121-650-825-163
従業員
連結従業員数8,5909,08910,76811,11511,21911,33011,70311,90611,94112,117
単体従業員数3,3863,8324,0194,1814,2114,2124,2514,4274,5694,715
平均年収(単体)万円682674700699692705727784802809

IR資料直近5ヵ年

ファクトシート

年度報告資料
FY25

FY25_factsheet.pdf (FACT BOOK 2024)

FACT BOOK 2024。配当方針(総還元性向50%以上)、海外売上79%、過去のM&A履歴(モノソル・カルゴン・カーボン・プランティック等)を時系列で整理。中計「PASSION 2026」期間中の自己株式取得実績も収録するデータ集。

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧
会社銀行八十年史
日本経済新聞 2013/11/21
日本経済新聞 2017/9/21
クラレ 中期経営計画「PASSION 2026」進捗と見通し 2025/2/12
ダイヤモンド・オンライン 2015/9
クラレ 中期経営計画「PASSION 2026」進捗と見通し
ダイヤモンド・オンライン