1996
3月

株式会社ビジネスコープを設立

設立経緯

人材派遣会社のパソナは、新規事業を推進するために、社内ベンチャー精度を通じて「福利代行」の事業化を決定。1996年3月にパソナおよび三菱商事など5社の共同出資により、株式会社ビジネスコープ(現ベネフィット・ワン)を設立した。本社所在地は東京都渋谷。資本金は1億円で、出資比率はパソナ60%・その他企業40%であった。

ビジネス概要

事業の企画構想の段階で、インターネットによる福利厚生サービスの提供・会員制ビジネスを決めていたという。このため、インターネットの普及が、事業成長の一つの鍵であり、本質的には「福利代行ビジネス」ではなく「会員制月額ビジネス」が付加価値の主眼にあった。サービスとしては1998年にカフェテリアプランの提供を開始し、事業が軌道に乗った。

創業者および資本政策

ベネフィットワンの経営を任されたのは、発案者である白石徳生氏(当時パソナ・社員)であり、同氏が実質的な創業者に相当する。ただし、パソナの子会社としてスタートした経緯により白石氏は株式を大量保有せず、ベネフィットワンの株式上場後もパソナが過半数の株式を保有した。この結果としてパソナの存在は資本政策におけるボトルネック(親子上場の許容・TOBによる上場廃止)となった。

証言
白石徳雄(ベネフィットワン・実質創業者)

eコマースだけでは、過当競争で生き残れないとわかっていたので、2つの差別化を図りました。まず、'生協'。会員制の流通を作りたいと考えたんです。つまり、コストコみたいな、会費を払った会員だけが商品を買える場所です。もう1つは'職域販売(企業の従業員向けの社内販売)'。企業の福利厚生 制度に注目し、福利厚生のアウトソーシングをインターネットでする仕組みを作ることで、会社単位で会員を集めようと考えました。元々日本企業は福利厚生に 莫大な予算をかけていましたから、ユーザーからお金を支払ってもらい、福利厚生のアウトソーシングができると感じていました。

1998年1月
カフェテリアプランの提供を開始
1998年4月
保養所オープンシステムの提供開始
1998年9月
大阪支店を新設。以後、全国に支店を新設
1999年
8月
名古屋支店を設立
1999年
9月
札幌支店を設立
1999年
9月
福岡支店を設立
2002年
7月
仙台支店を設立
2001年
11月
広島支店を設立
1998年4月
全国にカスタマーセンターを設置
1999年4月
カフェテリアプランの自動決済システムを受託開始

福利厚生ビジネスにおいて、提供メニューの拡大とともに、顧客企業における決済の複雑性が増大する問題に直面した。そこで、ベネフィットワンは「自動決済システム」のサービス提供を開始し、メニュー提供企業・顧客企業・サービス利用者の3社において、それぞれの決済を代行するサービスを開始した。これにより、顧客企業においては複雑な精算業務を行うことなく、ベネフィットワンのサービス利用が可能となった。

決算
ベネフィットワンの業績
2000年3月期(単体)
売上高
9
億円
2000年4月
福利厚生Webサービスの提供開始
2001年4月
商号を株式会社ベネフィット・ワンに変更
2003年8月
株式会社福利厚生課を買収
2003年4月
マイトリップネットと業務提携(現・楽天トラベル)
2004年12月
ジャスダック証券取引所に株式上場
2006年3月
東京証券取引所第2部に株式上場
2006年5月
インセンティブ・ポイント事業を開始
2006年7月
グローバルヘルスケアを買収
2007年2月
株式会社海外開発センターから事業譲受
2008年2月
ヘルスケア事業に新規参入
4月
大型プロモーションを実施

本業である福利代行事業において、中小企業向けの会員獲得を加速するため、マス向けの広告宣伝の本格化を決定。「ベネワン」の認知度拡大および会員獲得(58万人計画)を目標に、FY2022において広告宣伝費14.6億円(前年比+11.3億円)を投資した。

2009年1月
松山オペレーションセンターを竣工

自社保有のオペレーションセンターを新設。2010年からはカスタマーセンターなどの運営拠点を松山に集約し、東京カスタマーセンターを閉鎖。人件費の安い地方におけるオペレーションを集約した。2010年3月時点の松山オペレーションセンターへの配属人員は正規雇用214名+臨時雇用216名であり、合計430名を擁する大規模拠点であった。

なお、地方都市のうち松山への進出を決定した理由は補助金と推定される。FY2008にベネフィットワンは、松山進出関連の補助金として営業外収益8100万円を計上した。

決算
ベネフィットワンの業績
2009年3月期(連結)
売上高
147
億円
当期純利益
13
億円
営業CF
23
億円
投資CF
-18
億円
財務CF
-4
億円
2010年4月
旅行事業部を新設
2012年5月
株式会社保健教育センターを買収

ヘルスケア事業を強化するために保健教育センターを買収。買収後、同社の称号を「ベネフィットワン・ヘルスケア」に変更した。

2010年代を通じてヘルスケア事業では、健康診断が売上拡大の牽引役となった

決算
ベネフィットワンの業績
2013年3月期(連結)
売上高
176
億円
当期純利益
16
億円
営業CF
26
億円
投資CF
-18
億円
財務CF
-20
億円
2012年10月
グローバル化元年を宣言。米国に現地法人BENEFIT INE USA, INC.を設立

福利厚生事業の海外展開を実施するために、2012年を「グローバル元年」と定義。米国及びアジア(中国・東南アジア各国)への進出計画を公表した。

ただし、福利厚生という概念は日本市場固有であり、参入から10年が経過した2022年度時点でも「売上10億円〜20億円」で推移。海外事業の展開は伸び悩みが続く。

2012年
10月
米国に現地法人BENEFIT INE USA, INC.を設立
2013年
10月
シンガポールにBENEFIT ONE ASIA PTE. LTD.を設立
決算
ベネフィットワンの業績
2013年3月期(連結)
売上高
176
億円
当期純利益
16
億円
営業CF
26
億円
投資CF
-18
億円
財務CF
-20
億円
2012年3月
ユニマットソリューションズを買収

電話などの通信回線管理サービスや、旅費・交通費の清算代行・利用管理を手がけるユニマットソリューションズの買収を決定。同社の親会社であるユニマットライフ社より、同社の株式100%を2.7億円で買収した。ユニマットライフ社は2010年に非上場化(MBO)による企業再建を実施しており、事業整理の過程で売却を決定した。

決算
ベネフィットワンの業績
2012年3月期(連結)
売上高
149
億円
当期純利益
14
億円
営業CF
24
億円
投資CF
1
億円
財務CF
-5
億円
2013年10月
ベネフィットステーションの値上げを実施

福利厚生事業のベネフィットステーションの値上げを10年ぶりに決定。一人当たりの月額会費(従業員数1001名以上)について、Aコースで旧料金350円から380円(+30円の値上げ)、Bコースで旧料金800円から850円(+50円の値上げ)への料金体系を変更。競合対抗としてのサービス拡充のため、メニュー数の増加を主眼とした値上げに踏み切った。

決算
ベネフィットワンの業績
2014年3月期(連結)
売上高
203
億円
当期純利益
19
億円
営業CF
22
億円
投資CF
-17
億円
財務CF
-5
億円
2018年11月
東京証券取引所第1部に株式上場

多角化の2事業(インセンティブおよびヘルスケア)の売上成長で業績を改善。東証1部に上場へ

決算
ベネフィットワンの業績
2019年3月期(連結)
売上高
344
億円
当期純利益
52
億円
営業CF
56
億円
投資CF
-8
億円
財務CF
-23
億円
2020年6月
ベネワン・プラットフォームの提供を開始

人事総務領域の代行業に本格進出

決算
ベネフィットワンの業績
2021年3月期(連結)
売上高
378
億円
当期純利益
68
億円
営業CF
98
億円
投資CF
-11
億円
財務CF
-41
億円
2021年6月
給トク払いの提供開始

ペイメント事業の収益化に向けて、給トク払いのサービス提供を開始。ベネフィットワンとしては、顧客の給与口座を握ることによって、決済代行として手数料を徴収する代わりに、福利厚生の利用料金(月額会費)を0円に値下げする構想の一環としてスタートした。

これは、福利厚生で利用するユーザーと提供企業において、貸し倒れリスクが低く、結果として、クレカ会社が提示する決済手数料(白石社長による下限予想1.7%)よりも低い水準で決済代行ができると判断して決済代行を本格化した。その意味で、ペイメントにおける決済システムの運営によって、福利厚生における価格破壊を狙っており、トク払いはその第一歩に相当する。

決算
ベネフィットワンの業績
2022年3月期(連結)
売上高
383
億円
当期純利益
89
億円
営業CF
100
億円
投資CF
-142
億円
財務CF
45
億円
2022年4月
JTBベネフィットを完全子会社化

人事労務関連の代行業に注力するためにJTBベネフィットを完全子会社化した。買収価格は121億円であり、58億円を「のれん」として計上した。ベネフィットワンとしては過去最大額の買収となった。

2021年3月期におけるJTBベネフィットの業績は、売上高99億円・当期純利益8.0億円であり、買収評価額(121億円)に対するPERは15.1倍と推定。

決算
ベネフィットワンの業績
2023年3月期(連結)
売上高
423
億円
当期純利益
77
億円
営業CF
31
億円
投資CF
-28
億円
財務CF
100
億円
2023年3月
新型コロナワクチン接種を受託

FY2021及びFY2022にかけて、ヘルスケア事業において新型コロナワクチンの接種支援を受託。ワクチン摂取において「FY2021に30.4億円、FY2022に18.9億円」の営業利益をそれぞれ計上。ベネフィットワンの連結決算における収益向上に寄与。

決算
ベネフィットワンの業績
2023年3月期(連結)
売上高
423
億円
当期純利益
77
億円
営業CF
31
億円
投資CF
-28
億円
財務CF
100
億円
2024年1月
エムスリーがTOBを提示(非成立)

ベネフィットワンの親会社のパソナは、上場子会社であるベネフィットワンの売却による資産効率の改善を決定。パソナによるベネフィットワンの株式売却を受けてエムスりーがTOBを表明した。

2024年2月
第一生命からのTOBで合意

エムスりーのTOBを受けて、第一生命もTOBを表明。買収価格をエムスリーと比較して上乗せすることで、ベネフィットワン及びパソナの両社とTOBの合意を取り付けた。第一生命のTOBは1株当たり2173円であり、総額2920億円で買収を実施する方針を発表した。

第一生命としては、ベネフィットワンの子会社のヘルスケア事業における健診データの取り込みが狙いの1つと推定される。

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