| 期 | 区分 | 売上高 | 利益※ | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 1971/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1972/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1973/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1974/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1975/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1976/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 92億円 | 10億円 | 11.0% |
| 1977/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 146億円 | 27億円 | 18.7% |
| 1978/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 242億円 | 48億円 | 20.0% |
| 1979/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 346億円 | 88億円 | 25.4% |
| 1980/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 500億円 | 158億円 | 31.6% |
| 1981/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 821億円 | 270億円 | 32.8% |
| 1982/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 923億円 | 321億円 | 34.7% |
| 1983/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 827億円 | 297億円 | 35.9% |
| 1984/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 1,154億円 | 438億円 | 37.9% |
| 1985/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 1,417億円 | 519億円 | 36.6% |
| 1986/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1987/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1988/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1989/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1980/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1991/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1992/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1993/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1994/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1995/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1996/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1997/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1998/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 1999/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 2000/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 2001/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 2002/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 2003/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | - | - | - |
| 2004/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 2,648億円 | 899億円 | 33.9% |
| 2005/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 3,303億円 | 1,247億円 | 37.7% |
| 2006/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 3,810億円 | 1,508億円 | 39.5% |
| 2007/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 4,195億円 | 1,794億円 | 42.7% |
| 2008/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 4,683億円 | 2,099億円 | 44.8% |
| 2009/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 3,882億円 | 1,419億円 | 36.5% |
| 2010/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 2,533億円 | 600億円 | 23.6% |
| 2011/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 4,462億円 | 1,954億円 | 43.7% |
| 2012/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 5,384億円 | 2,285億円 | 42.4% |
| 2013/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 4,983億円 | 1,912億円 | 38.3% |
| 2014/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 4,509億円 | 1,743億円 | 38.6% |
| 2015/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 7,297億円 | 3,119億円 | 42.7% |
| 2016/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 6,234億円 | 2,293億円 | 36.7% |
| 2017/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 5,369億円 | 1,688億円 | 31.4% |
| 2018/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 7,265億円 | 2,495億円 | 34.3% |
| 2019/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 6,355億円 | 1,834億円 | 28.8% |
| 2020/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 5,982億円 | 1,028億円 | 17.1% |
| 2021/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 5,512億円 | 1,287億円 | 23.3% |
| 2022/3 | 連結 売上高 / 経常利益 | 7,330億円 | 2,133億円 | 29.0% |
ファナックのNC事業が富士通の社内プロジェクトとして始まったことは、事業構造の観点から重要な意味を持つ。市場が未成熟な1950年代に参入し、約10年間の赤字を甘受できたのは、富士通の通信機事業による安定した収益基盤があったためである。独立系ベンチャーであれば存続自体が困難な期間に、稲葉清右衛門は基盤技術の開発と特許取得に集中することができた。この「大企業の懐」で蓄積された技術基盤が、1972年の独立後にNC市場を支配する際の競争優位の源泉となった。
1950年代、日本の通信機メーカーであった富士通は、従来の通信機(Communication)に加えてコンピュータ(Computer)と制御(Control)の3分野へ進出する「3C構想」を掲げていた。1956年、技術担当常務の尾見半左右は、制御分野の担当者として部下の稲葉清右衛門を指名した。工作機械の動きをコンピュータで数値制御する「NC(Numeric Control)」の研究開発が、このとき富士通の社内プロジェクトとして始まった。のちにファナックとして分離独立する事業の原点である。
当時、NC技術は米国で先行していたが、日本国内では未開拓の技術領域であった。富士通はコンピュータ事業と並ぶ新規事業の柱としてNCを位置づけたものの、NC制御を必要とする市場自体が未成熟であり、事業化の見通しは立っていなかった。稲葉清右衛門はNC制御の基盤技術の確立に取り組みつつ、牧野フライスをはじめとする国内の工作機械メーカーへの技術供給という事業モデルを模索した。以後現在に至るまで、ファナックの主要顧客は工作機械メーカーである。
1959年、稲葉清右衛門は工作機械の駆動機構に用いる「電気圧パルスモーター」を発明し、特許を取得した。この技術によってNCの精密な位置制御が可能となり、富士通のNC事業は日本における技術的な先駆者としての地位を確立した。独自技術の特許取得は、のちにファナックが汎用NC市場を支配する際の技術的基盤を形成することになる。
ただし、コンピュータが高額であったこともあり、富士通のNC事業は参入から約10年間にわたって赤字が続いた。この時期の経営はファナック社内で「神代の時代」と呼ばれ、事業としての採算が見えない中での技術蓄積の期間であった。1965年にようやく初の黒字転換を果たし、1972年には富士通からNC事業を分離する形で「富士通ファナック」が設立されることになる。
ファナックのNC事業が富士通の社内プロジェクトとして始まったことは、事業構造の観点から重要な意味を持つ。市場が未成熟な1950年代に参入し、約10年間の赤字を甘受できたのは、富士通の通信機事業による安定した収益基盤があったためである。独立系ベンチャーであれば存続自体が困難な期間に、稲葉清右衛門は基盤技術の開発と特許取得に集中することができた。この「大企業の懐」で蓄積された技術基盤が、1972年の独立後にNC市場を支配する際の競争優位の源泉となった。
1956(昭和31)年でしたか、技術担当常務だった尾見さんが「稲葉君、これからは'3C'の時代が必ず来る。君にはコントロール(制御)の開発をしてもらう」とおっしゃったのです。富士通信機が従来から手がけている通信機(Communication)分野だけでなく、新しくComputerとControl 分野に進出することを初めて知らされたわけです。当時の富士通の経営陣は、その頃からすでに“3C”時代の到来を見通していたんですね。
尾見さんの号令一下、すぐにプロジェクトチームがつくられて、コンピュータ開発チームのリーダーには同期入社で数学が得意な池田敏雄君が、コントロール開発チームリーダーには私が指名されたのですが、2人ともまだ30歳を少し過ぎたばかりでした。
池田君は電気、私は機械でしたが、どちらも生来の頑固者で、仕事上の妥協は一切ない。だから、上司とはしょっちゅう衝突して、社内ではだいぶ変わり者の技術者と見られていたようでした。ただ、私も池田君も何かに直面したとき、何が何でもやり遂げるという不屈の精神と実行力では人後に落ちないという自負を持っていたので、あるいは尾見さんはそのあたりの二人の性格を見抜いていたのかもしれません。
ファナックの高収益構造は、NC市場全体の支配ではなく「汎用品市場の独占」という限定された領域での価格支配力に基づいている。特注品を捨て汎用品に集中したことで量産による原価低減と価格決定権の双方を獲得したが、特注品市場は競合他社に残された。この構造は、ファナックが全方位的な支配者ではなく特定セグメントの圧倒的支配者であることを意味しており、その境界線が収益力の源泉と限界の両方を規定している。
1980年代、日本国内の製造現場では工作機械の自動化が急速に進展し、その頭脳にあたるNC(数値制御装置)への需要が増大した。NC装置は工作機械の動作を数値で制御するコンピュータであり、加工精度の向上と生産効率の改善に不可欠な部品であった。工作機械メーカー各社がNC搭載型の工作機械の生産を拡大する中で、NC装置の供給元であるファナックと三菱電機の間で競争が激化していった。
ファナックは創業以来、数値制御のソフトウェア技術と、高精度な制御を可能にするサーボモータの技術を磨いてきた。これに加え、個別顧客の仕様に合わせた特注品ではなく、汎用品に経営資源を集中する戦略を採った。汎用品への特化は量産効果による原価低減を可能にし、「高性能かつ安価なNC」という競合他社には模倣しにくいポジションをファナックにもたらした。
この戦略の結果、ファナックはNC装置における国内シェア70%を確保し、三菱電機など競合他社を大きく引き離した。市場をほぼ独占したことにより、ファナックは汎用NC装置の価格決定権を掌握し、高い利益率を維持する構造を確立した。FY1985には売上高経常利益率36.6%を達成し、全上場企業の中で日本トップの収益力を記録した。
ただし、ファナックの支配力は汎用品市場に限定されていた。特注仕様のNC装置については三菱電機をはじめとする競合他社が一定の需要を確保しており、ヤマザキマザックやDMG森精機など一部の大手工作機械メーカーは、1990年代にかけてファナックと三菱電機の2社購買体制に移行した。ファナックの高収益構造は「汎用品市場の独占」という限定された領域での価格支配力に依拠している。
ファナックの高収益構造は、NC市場全体の支配ではなく「汎用品市場の独占」という限定された領域での価格支配力に基づいている。特注品を捨て汎用品に集中したことで量産による原価低減と価格決定権の双方を獲得したが、特注品市場は競合他社に残された。この構造は、ファナックが全方位的な支配者ではなく特定セグメントの圧倒的支配者であることを意味しており、その境界線が収益力の源泉と限界の両方を規定している。
ロボドリルへの大規模投資は、ファナックの収益構造にiPhoneという単一製品への依存を組み込んだ。NC装置のように幅広い工作機械メーカーに供給する事業とは異なり、ロボドリルは鴻海やサムスンといった特定顧客の特定製品に需要が集中する。この構造は好況時には急速な売上拡大をもたらす一方、2019年のiPhone需要減退時には6割減益という急落を招いた。汎用品の独占で安定収益を築いたファナックが、特定製品連動型の事業を内包した点は構造的な転換である。
2010年頃、AppleのiPhoneの生産台数が急増し、アルミニウム製筐体を切削加工するための小型工作機械「ロボドリル」への需要が拡大した。iPhoneの筐体はアルミの塊から精密に削り出す工法で製造されており、生産を担う中国・鴻海精密工業のEMS拠点では、iPhoneの増産に比例してロボドリルの調達が急務となっていた。ファナックにとって、NC装置やロボットに次ぐ成長ドライバーが出現した局面であった。
スマートフォン市場の拡大はiPhoneに限らず、韓国サムスン電子のスマートフォン生産でも同様のロボドリル需要が発生していた。ファナックはサムスンとの取引を拡大し、FY2014にはサムスン向け販売高が939億円に達した。スマートフォンの世界的な普及という構造的な需要変化が、ファナックの事業ポートフォリオに大きな影響を及ぼし始めていた。
2011年頃、ファナックはロボドリルの量産投資を決定した。茨城県の筑波工場においてロボドリルの生産ラインを増強し、中国のEMSメーカー向けの出荷体制を構築した。FY2011におけるファナックの設備投資額は457億円に及び、その主な内訳は本社工場におけるロボット工場の新設と、筑波工場におけるロボドリルの増産体制の整備であった。NC装置という部品供給に加え、ロボドリルという最終製品の量産に大規模投資を振り向けた判断であった。
この投資の結果、2010年代を通じてファナックはアジア(主に中国・韓国)向けの売上高を大きく拡大した。ただし、ロボドリルは特定顧客の特定製品に需要が集中する性格を持ち、iPhoneの生産サイクルやモデルチェンジに業績が左右される構造が形成された。実際、2019年にはiPhone向けロボドリルの需要が減退し、ファナックは6割の減益を記録することになる。
ロボドリルへの大規模投資は、ファナックの収益構造にiPhoneという単一製品への依存を組み込んだ。NC装置のように幅広い工作機械メーカーに供給する事業とは異なり、ロボドリルは鴻海やサムスンといった特定顧客の特定製品に需要が集中する。この構造は好況時には急速な売上拡大をもたらす一方、2019年のiPhone需要減退時には6割減益という急落を招いた。汎用品の独占で安定収益を築いたファナックが、特定製品連動型の事業を内包した点は構造的な転換である。