株主要求と会社対応20件
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株主要求と会社対応
カナメ・キャピタルは、創業家の福田孝太郎氏に権限の集まるフクダ電子の統治を、配当や自社株買いではなく仕組みの議案で改めようとした。2023年から3年続けて、買収防衛策の廃止と取締役報酬の決め方、社外取締役2名の選任、指名・報酬諮問委員会の定款規定を株主提案し、2024年には収益を利益剰余金に積み上げ成長投資に振り向けていないと批判した。経営陣・社外取締役は面会の要請に一度も応じていないとし、総会に付された提案はすべて否決された。約545億円の賠償を求めた株主代表訴訟も、2026年10月に請求を棄却された。
フクダ電子は、カナメ・キャピタルの株主提案は退けながら、買収防衛策は自ら改め、自己株式の取得も自ら行った。2024年に買収防衛策の有効期間を3年とし、継続を総会の承認にかけた。福田孝太郎氏が応ずる旨を伝えた自己株式の取得を2度行い、2025年には筆頭株主が資産管理会社に移った。取締役会の過半数を社外取締役とする方針を決めたのは、監査役会の調査で福田氏の経費の不適切利用が判明した後で、福田氏は代表取締役会長を辞任した。
要求と経緯要求5件・出来事20件
株主との対話:株主から会社に対する要求と経緯
| 種別 | 要求区分 | 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ガバナンス | 役員報酬 | 2023/04/05 | 株主提案 | 要求代表取締役への報酬委任禁止 | — | ||
| 2023/06/29 | 株主総会 | 議案決議 | 否決報酬額の決定方法 | — | |||
| 2024/04/18 | 株主提案 | 要求取締役報酬上限年6億円 | |||||
| 2024/04/18 | 株主提案 | 要求社外取締役の報酬上限撤廃 | |||||
| 2024/08/27 | 訴訟 | 要求報酬など3点の賠償請求 | — | ||||
| 2026/05/14 | 意思決定 | 確定福田氏の弁済と報酬返納 | — | ||||
| 2026/06/26 | 意思決定 | 確定社外取締役の報酬上限引上げ | — | ||||
| 2026/10/30 | 訴訟 | 代表訴訟の請求棄却 | — | ||||
| 買収防衛策 | 2023/04/05 | 株主提案 | 要求買収防衛策の廃止と定款規定 | — | |||
| 2023/06/13 | 公開書簡 | 取締役会意見への反論 | — | ||||
| 2023/06/29 | 株主総会 | 議案決議 | 否決買収防衛策の廃止 | — | |||
| 2023/06/29 | 意思決定 | 確定買収防衛策の1年継続 | — | ||||
| 2024/04/18 | 株主提案 | 要求買収防衛策の廃止 | |||||
| 2024/05/15 | 意思決定 | 確定買収防衛策の変更と継続 | — | ||||
| 2024/06/05 | 書簡提案 | 要求買収防衛策の継続に反対 | — | ||||
| 取締役選任 | 2024/04/18 | 株主提案 | 要求佐藤氏・中村氏の取締役選任 | ||||
| 2024/06/27 | 株主総会 | 議案決議 | 否決佐藤氏の取締役選任12.06% | — | |||
| 2025/06/27 | 意思決定 | 確定定款変更と阿部氏の取締役選任 | — | ||||
| 2026/06/03 | 意思決定 | 確定社外取締役の過半数化 | — | ||||
| 取締役解任 | 2024/06/05 | 書簡提案 | 要求福田会長ら3名の選任反対 | — | |||
| 2026/06/16 | 意思決定 | 確定福田会長の辞任 | — | ||||
| 定款変更 | 2025/04/24 | 株主提案 | 要求指名・報酬諮問委員会の定款規定 | — | |||
| 2025/06/27 | 株主総会 | 議案決議 | 否決委員会の設置賛成7.88% | — | |||
| 資本政策 | 自社株買い | 2024/01/31 | 意思決定 | 確定自社株買い・消却112.6億円 | — | ||
| 2025/05/15 | 意思決定 | 確定自社株買い97.4億円 | — | ||||
| 政策保有株 | 2026/01/26 | 意思決定 | 確定自己株TOB19.4億円 | — |
| 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/04/05 | 株主提案 | 要求代表取締役への報酬委任禁止 | — | ||
| 要求買収防衛策の廃止と定款規定 | |||||
| 2023/06/13 | 公開書簡 | 取締役会意見への反論 | — | ||
| 2023/06/29 | 株主総会 | 議案決議 | 否決報酬額の決定方法 | — | |
| 否決買収防衛策の廃止 | |||||
| 意思決定 | 確定買収防衛策の1年継続 | — | |||
| 2024/01/31 | 意思決定 | 確定自社株買い・消却112.6億円 | — | ||
| 2024/04/18 | 株主提案 | 要求取締役報酬上限年6億円 | |||
| 要求社外取締役の報酬上限撤廃 | |||||
| 要求買収防衛策の廃止 | |||||
| 要求佐藤氏・中村氏の取締役選任 | |||||
| 2024/05/15 | 意思決定 | 確定買収防衛策の変更と継続 | — | ||
| 2024/06/05 | 書簡提案 | 要求買収防衛策の継続に反対 | — | ||
| 要求福田会長ら3名の選任反対 | |||||
| 2024/06/27 | 株主総会 | 議案決議 | 否決佐藤氏の取締役選任12.06% | — | |
| 2024/08/27 | 訴訟 | 要求報酬など3点の賠償請求 | — | ||
| 2025/04/24 | 株主提案 | 要求指名・報酬諮問委員会の定款規定 | — | ||
| 2025/05/15 | 意思決定 | 確定自社株買い97.4億円 | — | ||
| 2025/06/27 | 意思決定 | 確定定款変更と阿部氏の取締役選任 | — | ||
| 株主総会 | 議案決議 | 否決委員会の設置賛成7.88% | — | ||
| 2026/01/26 | 意思決定 | 確定自己株TOB19.4億円 | — | ||
| 2026/05/14 | 意思決定 | 確定福田氏の弁済と報酬返納 | — | ||
| 2026/06/03 | 意思決定 | 確定社外取締役の過半数化 | — | ||
| 2026/06/16 | 意思決定 | 確定福田会長の辞任 | — | ||
| 2026/06/26 | 意思決定 | 確定社外取締役の報酬上限引上げ | — | ||
| 2026/10/30 | 訴訟 | 代表訴訟の請求棄却 | — |
株主側の主張:カナメ・キャピタル
当社取締役会は代表取締役 2 名と使用人兼務取締役 4 名の計 6 名で取締役会の過半数を占める極めてガバナンス的に脆弱な構成ですが、こうしたガバナンスの弱みが市場の割安評価と大規模買付行為の脅威を招いておきながら、現経営陣及び取締役会は企業価値向上による本質的な問題の解決ではなく、買収防衛策による保身を図っています。
更に言えば、当社代表取締役会長福田孝太郎氏(以下「福田会長」)は報酬の全権を握ることで取締役会をないがしろにし、取締役会は株主総会を経ずに買収防衛策を更新することで経営陣の説明責任をないがしろにする構造にあります。本株主提案は、株主の皆さまにこうした福田会長による専横の手段を取り除くことを提案しております。
フクダ電子の取締役会は、経営陣による株主軽視の姿勢を長年容認しているため、弊社の提案する真に独立した社外取締役の選任が必要です。また、フクダ電子の買収防衛策は、福田会長らの保身を可能にして企業価値を棄損するものであり、撤廃されるべきです。本年の株主総会は、フクダ電子の将来を左右する重要なものです。株主の皆様の投票が、フクダ電子の将来を決めることになります。
(中略)
創業家による利益相反行為からフクダ電子の少数株主を保護するには、創業家及びその影響下にある経営陣から独立した社外取締役の役割が極めて重要です。弊社は、裁判所の手続きを通じてフクダ電子の取締役会議事録の内容を確認しました。しかるに、同社には現在 4 名の社外取締役が選任されているものの、取締役の報酬決定権限を福田会長に再一任する決議や買収防衛策の更新など利益相反の観点から問題ある決議において、異議はおろか何らかの意見を述べた取締役は一人もいませんでした。しかも、同社の社外取締役は、弊社の度重なる面談の要請に誰一人として応じておらず、株主への説明責任を全く果たしていません。
会社側の主張:フクダ電子
しかし、大規模買付者(※)が当社株主の皆様が必要とされる十分な情報を提供するとは限りません。また、大規模買付者が、当社の事業ではなく資産に主たる関心を置き、医療機器事業の負う社会的使命を顧みない効率や短期的利益優先の経営を行うことが疑われる場合などには、大規模買付行為によって当社の企業価値が著しく損なわれる結果となる危険があります。特に、医療機器事業を行うためには、製品開発に医療機器を使用する顧客(医師及び医療従事者)との信頼関係に基づく長期間にわたる連携・協業が必要不可欠であり、その開発の着想から市場に製品として送り出すまでには、臨床試験・医療機器の承認・製造業の許可・販売業の許可等取得に至るまで長期間にわたり相当の開発投資が必要になります。そのため、当社は、中長期的視野のもとに経営し、短期的利益を追い求めるような経営を防止する必要があると考えます。
(中略)
したがって、本プランは、本株主提案が述べるような、「株主の意思をないがしろ」にするものでも、「経営者の保身のための道具」でもないと考えます。
他方、本議案で提案されている2名の候補者は、以下の理由により、当社の取締役として選任することは適当ではないと考えております。
(中略)
このように、佐藤円香氏及び中村裕介氏が有するとされている知見は、すでに当社の提案する取締役及び監査役が有するものであることから、当社の提案する10名の取締役候補者とは別に、本議案に係る両名を取締役に選任する必要性はなく、かえって、取締役会全体としてのバランスを失することにもなりかねず、適当ではないと考えます。なお、指名・報酬諮問委員会においても、慎重に審議した結果、同じ結論に至っております。
フクダ電子の取締役(2022年6月可決・当時)
筆者見解(歴史的文脈から見た視点)
要求区分の一覧21種類
カナメ・キャピタルの要求区分:公開資料からの推定
フクダ電子に対し、カナメ・キャピタルがどの要求区分(投資ファンドが要求する項目を独自に一般化したもの)を、どの手段で伝えたかを、公開資料で確かめられる範囲で○を付けて示す。
| 種別 | 要求区分 | 定義 | 株主提案 | 招集請求 | 書簡提案 | 面談提案 | 訴訟 | 買取請求 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 特別配当 | 通常の配当に上乗せした、一度きりの配当 | ||||||
| 配当方針 | 1株配当の引き上げ、配当性向・DOEの目標の変更 | |||||||
| 自社株買い | 自己株式の取得と、取得した株式の消却 | |||||||
| 資本効率 | ROE・資本コストの目標、余剰資本の水準と使い道の方針。個別の還元策は特別配当・配当方針・自社株買い | |||||||
| 政策保有株 | 取引先などと持ち合う政策保有株式の売却・縮減 | |||||||
| 株主構成 | 主要株主の異動、流通株式比率など株主の構成の変化。株主の売買による変化を含む | |||||||
| 保有資産 | 現預金・不動産など事業に使っていない資産の売却・活用。政策保有株式は除く | |||||||
| 事業戦略 | 上場子会社 | 上場子会社の完全子会社化・売却・持分の扱い | ||||||
| 非中核事業 | 本業から外れた事業・子会社・資産の売却。上場子会社は除く | |||||||
| 経営戦略 | 経営戦略・中期経営計画・事業ポートフォリオの見直し | |||||||
| M&A・提携 | 会社が進める買収・統合・資本提携への反対、条件の見直し | |||||||
| 非公開化 | 株式の非公開化・MBOの実施、その条件の見直し | |||||||
| 買収提案 | 株主自らが買い手となる株式の買付けの提案と、取締役会への賛同の要請。会社が進める買収はM&A・提携、非公開化の実施は非公開化 | |||||||
| ガバナンス | 取締役解任 | 特定の取締役の解任、再任への反対 | ○ | |||||
| 取締役選任 | 株主が推す候補を含む取締役の選任 | ○ | ||||||
| 取締役会構成 | 独立社外取締役の比率、議長と社長の分離など取締役会の構成 | |||||||
| 定款変更 | 株主総会で決められる事項を増やすなどの定款の変更 | ○ | ||||||
| 役員報酬 | 役員報酬の水準・仕組み・業績との連動の見直し | ○ | ○ | |||||
| 独立調査 | 株主総会の運営・不祥事などの独立した調査と、調査者の選任 | |||||||
| 買収防衛策 | 買収防衛策の廃止、導入への反対 | ○ | ○ | |||||
| 非公開 | 非公開面談 | 面談など公表されない場で伝えた要求。中身は非公開 |