2008年にラッセル・カマー氏により「エクスチェンジコーポレーション(以下、ExCo)」が設立され、ソーシャルレンディングの事業展開を開始した。ExCoの名称は、2018年にPaidyに社名を変更するまで使用された。会社設立時点の資本関係は不明である。
ラッセル・カマー氏は2008年まではゴールドマンサックス証券(東京支店)において、アソシエイトとして債権のトレーディング業務などに従事していた。だが、2008年のリーマンショックによって投資銀行の経営方針が大きく変わり、ラッセル・カマー氏は起業家に転身する道を選択したものと推察される。
会社設立にあたって、日本の金融業界に精通した北海道拓殖銀行出身の大前和徳氏が副社長に就任した。大前氏も小口融資に興味を抱いており、ラッセル・カマー氏と知り合って、ExCoへの参画を決めたという。2013年に大前和徳氏が起業家に転身するまで、創業者のラッセル・カマーは大和氏と苦楽を共にしたという。
また、ラッセル・カマー氏は、会社組織のグローバル化を志向した。もともとカマー氏は、カナダ人の家系に生まれ、シンガポールで育ち、仕事は東京や香港で従事していた経験から、公私ともにグローバルな経験を持っていた。
このため、ExCoでは、社員の採用もグローバルに行っており、2022年の現在におけるPaidyにおいても、英語によるコミュニケーションを基本とし、多国籍なバックグラウンドを持つ社員が多いことが同社の特色となっている。この体制づくりは、2021年にPayPalに買収される際の評価にも、プラスに影響したものと推察される。
ラッセル・カマー氏の着眼点は、金利のギャップにあった。法人向けではゼロ金利政策によって金利が低下する一方で、個人に貸し出す消費者金融業界ではグレーゾーン金利(年間15%以上)が横行していた。
日本国内ではグレーゾーン金利が問題視されて、2006年の貸金業法の改正によって15%が上限となったが、それまでの業界慣行としては出資法の上限金利29.2%で設定されていた。これはサラリーマン金融における「貸倒リスクが高い」ために正当化された側面もあるが、一方で、消費者金融業界が暴利を享受する原資にもなったため、高金利が社会的な問題となった。
このため、ラッセル・カマー氏は、個人向けの消費者金融(ローン)という領域で、金利を下げることにビジネスチャンスを見出した。
2012年の日経新聞のインタビューにおいて、ラッセル・カマー氏は下記のように語っている。