2024/3 売上高5,401億円
2024/3 営業利益616億円
2024/3 従業員17,365人
創業1915年
創業地東京都渋谷区
創業者横河民輔

1915年に建築家・横河民輔が東京渋谷に電気計器研究所を個人創業し、1920年に株式会社化した。欧米製に依存していた精密電気計器の国産化を実現し、フォックスボロ社との技術提携やヒューレットパッカードとの合弁で計測器事業の幅を広げた。1975年の制御システムCENTUM発表と1983年の北辰電機との合併を経て、プラント向け制御システムメーカーとしての地位を確立。HP合弁の解消やGE合弁の縮小を経験しつつも、産業オートメーションを軸に事業を再構築した。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高

歴史概略

第1期: 計測器メーカーとしての基盤構築(1915〜1963)

建築家による電気計器の個人創業

横河電機の創業者は、帝国劇場や三越本店の設計に携わった建築家・横河民輔である。横河民輔は建築に加えて技術を軸とした事業展開を志向し、1907年に横河橋梁製作所を創業していた。1915年に電気計器の国産化を目的として東京渋谷に電気計器研究所を個人創業し、甥の横河一郎や青木晋ら20代の技術者に計器開発を託した。

1917年に精密電気計器の国産化に至り、通信省や海軍省から輸入品に劣らない評価を得た。1920年12月に株式会社横河電機製作所として法人化し、横河一郎が筆頭株主として約30%の株式を保有した。横河民輔自身は株式を持たず、経営を次世代に委ねる設計とした。以後、横河家による同族経営のもとで計測器の専業メーカーとして発展を遂げた。

計測器ひとすじに 横河電機の50年

軍需から民需への転換とフォックスボロとの技術提携

戦時中の横河電機は陸軍指定工場として高射砲算定器や航空計器の生産に従事し、従業員は1.2万名に拡大した。しかし終戦で軍需を喪失し、5工場のうち4工場を閉鎖して武蔵野本社に集約、1万名以上を解雇して1200名体制で再出発した。戦後の計測器市場では石油化学・鉄鋼などの装置産業向けに需要が移行し、横河電機は工業用計測器への転換を進めた。

1955年、米フォックスボロ社と技術援助契約を締結し、空気圧制御技術を導入した。フォックスボロは石油精製プラント向け制御機器の世界的メーカーであり、この提携によって横河電機はプラント向け計測・制御技術の基盤を獲得した。1957年には米国にYokokawa Electric Works, Inc.を設立するなど、海外展開の足がかりも築いた。

計測器ひとすじに 横河電機の50年有価証券報告書 沿革

第2期: 合弁戦略と制御システムへの転換(1963〜1999)

ヒューレットパッカードとの合弁による電子計測器事業の確立

1963年、横河電機はヒューレットパッカード(HP)と51対49の出資比率で横河ヒューレットパッカード(YHP)を設立した。8年に及ぶ交渉の突破口となったのは、横河電機の大株主ジャパン・ファンドのガーナー氏がHP社外役員を兼務していたという偶然の人脈であった。YHPは定価販売の徹底や親会社依存の排除といったHP流の経営手法を導入し、1980年には売上高465億円・経常利益率13%超の高収益合弁に成長した。

一方、1982年にはGEと49対51でCT装置の合弁会社・横河メディカルシステムを設立したが、出資比率は1986年に25%へ後退し、最終的にGEヘルスケアジャパンとして横河の名が消えた。HPとの合弁では主導権を確保しGEとの合弁では後退した構図は、製品開発の主導権がどちらにあるかの違いを反映していた。

計測器ひとすじに 横河電機の50年証券アナリストジャーナル 5(4) 1967/4日経ビジネス 1983/2/23

CENTUMの発表と北辰電機との合併

1973年のオイルショックは、石油産業向けが売上の83%を占めていた横河電機に深刻な打撃を与えた。設備投資の相次ぐ中止で販売が低迷する中、横河電機は1975年に総合制御システムCENTUMを発表し、プラント向け制御システム事業への本格参入を宣言した。計測器メーカーから制御システムメーカーへの転換を図る布石であった。

1983年4月、横河電機は工業計器業界3位の北辰電機と合併した。合併比率は横河1.0対北辰0.35であり実質的には横河電機が主導したが、対外的には対等合併を掲げ、横河正三社長は社内からの突き上げを受けるほど北辰側に配慮した。旧北辰電機の本社工場をキヤノンに売却して1000名を配置転換するなど、3年で拠点統合を完了した。

有価証券報告書 沿革実業往来 (398) 1995/8

第3期: 制御システム専業への集約(1999〜現在)

HP合弁の解消と事業の選択と集中

1999年、横河電機はHPとの合弁を解消し、YHPの株式を売却した。HPがコンピュータ事業を分離する過程で合弁の前提が変化したことが背景にある。合弁解消により電子計測器事業を失った横河電機は、プラント向け制御システムに経営資源を集中する方向に舵を切った。2002年にはNEC系列の安藤電気の株式を132億円で取得して通信向け計測器事業の強化を図ったが、2003年には15工場の閉鎖と希望退職の募集を決定し、1983年以来堅持してきた「人員削減をしない方針」を撤回した。

2010年には計測器事業を子会社の横河計測に移管し、本体は制御システム事業に特化した。2016年に英KBC社を279億円で買収して石油・ガス向けソフトウェアを取り込み、制御ハードウェアからデジタルソリューションへの事業転換を加速させた。

有価証券報告書 沿革

固定費削減とグローバル展開の再構築

2015年には約400億円規模の固定費削減を目的に1105名の希望退職を募集し、事業構造改善費用166億円を特別損失として計上した。石油・ガス産業の市況低迷がプラント向け制御システムの需要に直結する事業構造のもと、コスト構造の抜本的な見直しが不可避となった判断であった。

2021年に策定した中期経営計画AG2023では、制御事業を軸にデジタルトランスフォーメーションの推進を掲げた。シンガポールにアジア統括会社を設置し、中東・東南アジアのプラント向け案件の獲得を強化している。1915年に建築家が個人創業した計測器メーカーは、100年以上の歴史を経て、プラント向けデジタル制御ソリューションを提供するグローバル企業へと姿を変えた。

有価証券報告書 沿革

沿革

5業界の歴史に残る4事業構造の転機3業績に大きな影響2重要な節目1通常の記録
沿革一覧
重要
株式会社横河電機製作所を設立
建築家が計測器メーカーを個人創業した技術多角化の設計
重要alliance
横河ヒューレットパッカードを設立
株主の社外役員が突破口になったHP合弁の成立経緯
重要alliance
GEと合弁で横河メディカルシステムを設立
HP合弁では51%、GE合弁では49%から25%へ後退した構図
重要acquisition
北辰電機と合併
旧本社をキヤノンに売却して組織統合を加速したPMI設計
4

重要な意思決定

192012
株式会社横河電機製作所を設立

横河民輔は帝国劇場や三越本店を設計した建築家でありながら、橋梁と電気計器という異なる技術領域にも事業を展開した。自らは株式を保有せず、甥の横河一郎を筆頭株主に据えた点は、事業の運営と所有を分離する設計であった。建築家による個人創業が、計測器の同族メーカーへと転換する起点を作った構造は、日本の製造業の創業形態として特異である。

19639
横河ヒューレットパッカードを設立

横河電機がHPとの合弁に至った決定的な要因は、大株主ジャパン・ファンドのガーナー氏がHP社外役員を兼務していたという偶然の人脈であった。8年に及ぶ交渉の突破口は技術力でも交渉力でもなく、資本関係を通じた人的接点であった。合弁後は定価販売の徹底と親会社依存の排除により高収益を実現し、日本における製造業合弁の稀有な成功例として注目された。

1982
GEと合弁で横河メディカルシステムを設立

横河電機はHPとの合弁では51%の主導権を確保したが、GEとの合弁では49%で出発し25%へ後退した。この差は製品開発の主導権の所在を反映している。HPとは自社技術者を移籍させて共同開発を行ったのに対し、GEとは販路と保守網の提供が主な役割であった。合弁における出資比率の推移が、パートナーとの力関係を可視化した事例である。

19834
北辰電機と合併

横河電機は北辰電機との合併後、旧本社工場を閉鎖してキヤノンに売却し、1000名を自社拠点に配置転換した。旧拠点を物理的に消滅させることで帰属意識の転換を促す手法は、拠点分散がPMIの障害となることを見越した設計である。売却益を設備投資に充当した点も含め、合併後の統合を3年で完了させた実行力は、工業計器業界における合併事例として注目された。

全社の業績指標

売上高(長期)売上高(2025/3)5,401億円
純利益(長期)当期純利益(2025/3)616億円
売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結
売上高億円---3,8713,8894,3344,3743,7653,1663,2563,3473,4793,8854,0584,1373,9144,0664,0374,0443,7423,8994,5655,4025,624
売上原価億円---2,5002,4592,7592,7742,5302,1452,1511,9542,0662,2932,3662,3692,2232,3132,3062,2792,1002,1712,5202,8532,950
売上総利益億円---1,3701,4301,5751,6001,2351,0211,1051,3921,4131,5921,6921,7681,6911,7531,7311,7651,6421,7282,0452,5492,674
販売費及び一般管理費億円---1,1231,1761,2821,3261,1889959941,2261,2281,3331,3941,3711,3751,4261,3851,4091,3261,4211,6011,7611,839
営業利益億円---2482532932744726111166184259298396316327346356316307444788835
営業外収益億円-------3231383441426538404145494475808570
営業外費用億円-------7755625945443027263524421925383252
経常利益億円---2242642961653286140180257334407330333368363341358486841854
特別利益億円-------331015184111061634582628212417036
特別損失億円-------12911911141164116549989134285712134104
当期純利益億円---94216126117-384-148-6760147123172302257214284147192213389617521
粗利率%---35.436.836.336.632.832.333.941.640.641.041.742.743.243.142.943.643.944.344.847.247.6
営業利益率%---6.46.56.86.31.30.83.45.05.36.77.39.68.18.08.68.88.47.99.714.614.9
経常利益率%---5.86.86.83.80.10.12.64.25.26.68.29.88.48.29.19.09.19.210.615.615.2
純利益率%---2.45.52.92.7-10.2-4.7-2.11.84.23.24.27.36.65.37.03.65.15.58.511.49.3
総資産額億円---4,0034,1784,3874,4464,0103,9883,6123,5953,7993,9894,4004,1284,4074,4884,7014,8975,1915,5586,1866,7297,183
自己資本億円---1,6882,2462,3432,2071,6721,5341,4171,4571,6841,8732,1552,4042,5642,7192,8992,8593,0833,3363,7964,3664,679
自己資本比率%---42.253.753.449.641.738.539.240.544.346.949.058.358.260.661.758.459.460.061.464.965.1
営業CF億円2051883183256405208245214162129174301383319392320214311328516404638990
投資CF億円-44-31-102-112-117-390-510-241-132-80-78-75-139-18-109-365-66-41-182-186-283-32927-286
財務CF億円-22936-114-13-141-61239284111-257-80-80-216-202-26965-224-7046-171-162-109-575-262

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
セグメント別ROIC%
業績データ一覧
セグメント業績
FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
制御事業億円4255313,1233,2223,0122,5682,6072,7722,9573,3633,5803,667--3,480-3,6483,4213,624---
計測機器事業億円303347785688341315371346290278------------
その他事業億円174199425465412283279229232243------------
航機その他事業億円----------240236--211-1616363---
計測事業億円----------238234--222-229-----
全社(セグメントなし)億円------------4,1373,914-4,037---5,0385,2835,624
測定器事業億円-----------------257212---
セグメント別利益
制御事業億円------165199180242271367--306-340315298---
計測機器事業億円-------64-36-210------------
その他事業億円------10367------------
航機その他事業億円----------116--1--13-11-25---
計測事業億円----------1624--9-19-----
全社(セグメントなし)億円------------396316-346-----835
測定器事業億円-----------------1134---
セグメント別利益率
制御事業%------6.37.26.17.27.610.0--8.8-9.39.28.2---
計測機器事業%-------17.2-10.3-0.83.7------------
その他事業%------3.61.22.72.7------------
航機その他事業%----------4.62.4--0.3--8.2-16.9-39.9---
計測事業%----------6.810.2--4.0-8.5-----
全社(セグメントなし)%------------9.68.1-8.6-----14.9
測定器事業%-----------------4.516.1---
セグメント別ROIC
制御事業%------8.510.28.610.711.315.7--12.1-11.910.39.0---
計測機器事業%-------18.6-10.9-0.95.1------------
その他事業%------4.41.22.22.1------------
航機その他事業%----------3.61.8--0.2--8.2-6.8-23.3---
計測事業%----------9.915.5--5.9-13.0-----
全社(セグメントなし)%----------------------
測定器事業%-----------------9.027.4---

出所