ウェブマネーの歴史

ネット向け前払い決済の先駆者。ソシャゲ向け決済で急成長
Last Updated: | Author: @yusugiura
歴史所見

ネット向けの少額決済に着眼

ソーシャルゲームの普及と共に成長

ウェブマネーは、2010年前後のソーシャルゲームの普及と共に成長した。コンビニにおける現金決済でプリペイドカードを入手し、カードに記載された英数字のコードを入力することで決済ができ、クレジットカードを持たない中学生・高校生でも利用できることから、ソーシャルゲームのアイテム課金の手段として支持された経緯がある。ただし、2010年代を通じて若年層が利用できるネットの決済手段が多様化したことを受けて、決済を取り巻く競争環境は激化しており、厳しい状況にある。2011年のKDDIによるTOBを経て、現在はKDDIの100%子会社「auペイメント」として存続しており、今度の動向を注視したい。

社史重要度:★☆☆☆☆
author: @yusugiura
1999年〜2003年
創業経緯
少額決済に着目してウェブマネーを事業化
1999年
★★★
株式会社アイフォーの子会社でウェブマネーの営業を開始
2003年
親会社旧アイフォーの自己破産により経営陣が交代
フェイス株式会社の傘下へ
2003年〜2011年
爆速成長
ソーシャルゲームの爆発的普及と共に成長
2006年
★★★
ネットゲームの決済代行として売上拡大
2007年
ジャスダックNEOに株式上場
上場
2010年
ソーシャルゲーム向けが好調
DeNAとグリーと取引拡大
好調
2011年〜2022年
KDDI傘下
KDDIの子会社へ。決済をめぐる競争激化にどう対応するか?
2011年
★★★
KDDIがウェブマネーの株式100%を196億円で取得
上場廃止へ
2020年
商号をウェブマネーからauペイメントに変更
創業経緯 1999年〜2003年

少額決済に着目してウェブマネーを事業化

1999
株式会社アイフォーの子会社でウェブマネーの営業を開始

#創業経緯

株式会社アイフォー(2003年自己破産)の子会社として運営

1999年に株式会社アイフォー(ソフトウェア開発企業・未上場)は、電子マネー決済に参入するために「ウェブマネー」の事業を分社化。株式会社ウェブマネーとしての営業を開始した。ただし、法人としての設立は1980年代であり、実質的な休眠会社に事業を継承したものと推察される。このため、法人の設立年と、ウェブマネーの創業年には誤差が存在する。

株式会社アイフォーの子会社として「ウェブマネー」が経営された事情から、ウェブマネーにはアイフォーの出身者が経営に携わった。このうち、高津祐一氏がウェブマネーの実質的な設立者とされる。また、2003年に親会社のアイフォーが自己破産をしたため、ウェブマネーの経営権は別会社に売り出された。同時に、アイフォー出身の旧経営陣も交代したと推察される。

これらの経緯から、ウェブマネーの創業時の資本関係は複雑な経緯を辿っている。

クレジットカードで不可能だった少額決済に活路

ウェブマネーの事業の着想は、ネット通販におけるクレジットカードの決済限度額の課題にあった。1990年代後半はインターネットが普及途上であり、通販サイトにおけるクレジットカードによる決済は可能ではあったものの、最低決済の金額が存在していた。このため、ネット通販やサービスにおいて、少額決済ができない問題があった。

そこで、高津氏は「電子マネーによって少額決済を可能にする」ことを目標として、ウェブマネーを事業化した。大手コンビニ各社と提携し、WebMoneyのプリペイドカードをコンビニで販売することによって、前払いによる「電子マネー」のビジネスを開始した。

ウェブマネーは、英数字で構成されるユニークなコードを発行し、プリペイドカードに記載してコンビニで販売した。ユーザーはコンビニでプリペイドカードを購入し、ネットでの決済時に、ウェブマネーが利用可能な加盟店において、カードに記載されたコードを入力することによって、決済が完了する仕組みであった。

このため、ウェブマネーは電子マネーのうち、コンビニを軸とした「前払い」の決済手段となった。

加盟店の形成・代引きとの競合問題

ウェブマネーの主な業務は、プリペイドカードのコードを軸とした決済システムの構築と、加盟店の強化であった。このうち、加盟店の募集に関しては、電子マネーという概念が普及途上にあったことから、様々なECサイトの運営会社にアポを取って開拓していったという。

加盟店の募集に労力が必要だった理由は、2000年前後のインターネット業界における決済のユースケースが「通販」が中心であり、決済手段としての「代引き」や「クレジットカード」の利用が一般的であった点である。このため、ECを運営する通販会社からしても、電子マネーをわざわざ導入する必然性に乏しかった。

このため、ウェブマネーの創業期の業績は不明だが、売上の拡大に苦労したものと推察される。

収益認識とキャッシュフロー

2011年までのウェブマネーは、流通総額を売上高として計上していた。プリペイドカードが販売された段階で「売上高」を計上し、決済が行われた段階で「加盟店未払金」を計上した上で、特定の期日に加盟店に対して決済金額を支払った。

このため、ウェブマネーは「前払い」というビジネスの特性から、BSで貸倒引当金などのリスクを背負う必要がなく、キャッシュフローで有利な決済ビジネスといえる。

なお、2011年以降、KDDIの子会社となってからは、決済手数料を売上高として認識しており、収益の認識方法が異なっている。

高津祐一(ウェブマネー初代社長)

ペーパーメディア出身ということもあり、メディアとしての可能性を感じたことが一つ。もう一つは、インターネットを通じて世界中とつながっているということ。中でも世界中の商品をネットで購入できるという体験は、ものすごい衝撃でした。ただ、使ってみてひとつ不便なことがありました。それが決済の問題です。

当時もネットでの買い物はクレジットカードが必須でしたが、クレジットカードには最低決済額の設定があり、高額な商品しか買えず、マイクロペイメントに対応できていなかった。当時のネット決済では、最低10ドルとか20ドル以上という制約があり、たとえば、気に入った洋楽コンテンツを買いたくても、最低決済額の壁があるために、1曲単位で買えない。非常に不便を感じたわけです。

そこで考えました。「言葉の壁はあるけれど、国境とか世界の壁はインターネットにはない。ということは、インターネットという一つの国家ができてもおかしくない。そうなると、そこで使える通貨が必要になるはずだ。…よし、インターネットにおける世界共通通貨を作ろう。」と。これが、『WebMoney』起業のきっかけです。

2003年
親会社旧アイフォーの自己破産により経営陣が交代。フェイス株式会社の傘下へ
爆速成長 2003年〜2011年

ソーシャルゲームの爆発的普及と共に成長

2006
ネットゲームの決済代行として売上拡大

#業容拡大

ネットゲーム課金の定着

2006年ごろから、ネットゲームにおける「ゲーム内課金」の流れが一般化した。2006年にはネクソンジャパンは、一部のゲームタイトルにおいて「アイテム課金」の制度を導入し、これが「ウェブマネー」との相性がよかった。

第一に、ゲーム内のアイテム課金では「少額決済」が一般的であった。このため、最低限度額のあるクレジットカードではなく、プリペイドカードを利用するメリットが存在した。第二に、ゲームのユーザーは未成年が大半であり、クレジットカードを保有できない点であった。ウェブマネーであれば、コンビニで現金払いによって入手可能であったため、ゲームのユーザー層との相性が良かった。

大口加盟店としてネクソン・DeNA・グリーと取引

この結果、2006年以降、ウェブマネーは「ネットゲームへの課金」というニーズを捉えて、急成長を遂げる原動力となった。2007年時点の主な加盟店(加盟店未払金より推測)は「NHN Japan」「ネクソンジャパン」「ゲームオン」「ゲームポット」などであり、ウェブマネーは「ゲーム会社の決済代行」として業容を拡大した。

業績拡大の決定打は、ソーシャルゲームの普及であった。未成年によるアイテム課金(コンプガチャ問題にも発展)が急速に伸びたため、決済手段としてウェブマネーの利用が拡大した。

2011年3月期にウェブマネーは、加盟店未払金の相手先として「DeNA(24億円)」と「グリー(14億円)」であることを公表し、ゲーム会社向けの「決済代行」として成長を遂げた。

ただし、負の側面として、未成年におけるソーシャルゲームへの過剰な課金を誘発するトリガーになったという視点もある。2012年に消費者庁がガチャの規制を行うと、DeNAやグリーといったソーシャルゲーム各社の業績が悪化。ウェブマネーの高度成長にも終止符が打たれたと推察される。

2007年
ジャスダックNEOに株式上場
2010年
ソーシャルゲーム向けが好調。DeNAとグリーと取引拡大
KDDI傘下 2011年〜2022年

KDDIの子会社へ。決済をめぐる競争激化にどう対応するか?

2011
KDDIがウェブマネーの株式100%を196億円で取得。上場廃止へ

#親会社の変更

KDDIによるウェブマネーのTOB。株式100%を196億円で取得

2011年にKDDIはウェブマネーの株式100%をTOBによって取得する方針を発表した。株式取得予定額は196億円であった。大株主であるフェイス株式会社(ウェブマネーの株式43.16%保有)は、KDDIが着メロ販売の大口顧客である関係から、TOBに応じる姿勢を示したと推察される。

KDDIの狙いは、ソーシャルゲームにおける決済需要を取り込むことであった。スマホの普及によって、従来のガラパゴスケータイを軸とした囲い込みのビジネスモデルが行き詰まっており、KDDIとしては次の収益源を確保するために企業買収を積極化する経営方針を打ち出していた。この一環として、ウェブマネーの買収を決定した。

ただし、買収直後の2012年5月に消費者庁がコンプガチャを問題視したことで、ソーシャルゲームの急成長が途絶えたため、ウェブマネーの業績にも影響があったと推察される。コンプガチャ規制の前にKDDIはウェブマネーを買収しており、結果として「高音掴みの買収」になった可能性が高い。

フェイスによるウェブマネーの株式売却

フェイス株式会社は、KDDIへのウェブマネーの株式売却に伴う「関係会社株式売却益」を68.9億円計上した。フェイスの主力事業は、ガラパゴスケータイ向けの着メロが主体であり、スマホの普及によって苦境に陥ることが予想された。

そこで、フェイスは新規事業としてスマートフォンアプリを開発(音楽ストリーミングアプリ「FaRao」を2013年にリリース)や、企業買収の原資(2014年に日本コロムビアの株式追加取得・48億円)として、ウェブマネーの売却益を充当した。

フェイスとしては、コンプガチャ問題の直前にウェブマネーの売却を行ったことで、もっとも良いタイミングでウェブマネーを手放したと言える。

2020年
商号をウェブマネーからauペイメントに変更
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