The社史
長期視点を普及するサイト
繊維
6日本の繊維産業は、明治期の官営富岡製糸場に象徴される製糸・紡績業を起点に近代化が始まった。戦前は綿紡績が最大の輸出産業であり、鐘紡・東洋紡・大日本紡(現ユニチカ)など「紡績御三家」が財閥に匹敵する企業集団を形成した。戦後は合成繊維の台頭により東レ・帝人・旭化成が業界の主役となり、ナイロン・ポリエステルで世界水準の技術を確立。しかし1970年代以降、アジア諸国の低コスト生産に押されて汎用繊維の国内生産は急減し、各社は高機能繊維・炭素繊維・フィルムなど素材メーカーへの転換を図った。東レの炭素繊維は航空機ボーイング787の主要構造材に採用され、帝人はアラミド繊維で世界シェア上位を占める。繊維事業の売上比率は各社とも2割前後にまで低下しており、「繊維メーカー」から「先端素材企業」への変貌が業界共通のテーマである。
1923年
創業
旭化成
売上高
27,848億円
2024/03
当期純利益
438億円
2024/03
1931年設立。日本窒素の延岡工場を源流とし、繊維・火薬・食品から出発した。1961年に宮崎輝が社長に就任すると石油化学・住宅・医療機器への大胆な多角化を推進し、旭ダウ合弁やサランラップ製造で化学事業の基盤を築いた。後継経営陣は食品・酒類からの撤退やエチレンセンター停止など選択と集中を断行。米ZOLLやPolypore買収でメディカル・電池材料事業を強化し、マテリアル・住宅・ヘルスケアを柱とする総合化学企業に発展した。
1882年
創業
東洋紡
売上高
4,142億円
2024/03
当期純利益
24億円
2024/03
1882年設立。渋沢栄一らが主導した大阪紡績として日本の近代紡績業を切り開き、三重紡績との合併を経て東洋紡績として発展。レーヨン・アクリル・ポリエステルと合成繊維へ段階的に転換し、フィルム・バイオ・人工腎臓用中空糸膜など非繊維分野にも進出した。しかし繊維不況のたびに工場閉鎖と人員削減を繰り返し、国内十数工場を閉鎖。保護フィルムなど機能素材に経営資源を集中させ、機能素材メーカーへの変貌を図っている。
1887年
創業
鐘紡
売上高
4,377億円
2004/03
当期純利益
2004/03
1887年創業。中上川彦次郎が紡績大合同論を主導し、明治期に日本最大の紡績会社に成長。1933年には日本企業で売上高1位に立ち、化粧品にも進出して総合企業を志向した。しかしグレーターカネボウ構想やペンタゴン経営など野心的な多角化は軌道に乗らず、繊維不況と過剰設備で収益が悪化した。無配転落から工場閉鎖を繰り返し、繊維事業をセーレンに、化粧品事業を花王に売却。2007年に会社解散という悲劇的な結末を迎えた。
1889年
創業
ユニチカ
売上高
1,183億円
2024/03
当期純利益
-54億円
2024/03
1889年設立。尼崎紡績として創業し、大日本紡績を経て1969年に日本レイヨンとの合併でユニチカに。ビニロン・PETフィルム・活性炭繊維など化学繊維に展開し、住宅・不動産事業や医療機器にも多角化を試みた。しかし繊維不況と過剰設備に苦しみ、1977年には三和銀行が経営に介入。資産売却と事業縮小を繰り返しながらナイロンやレーヨンから順次撤退し、2024年についに祖業の繊維事業から完全撤退するに至った。
1926年
創業
東レ
売上収益
24,645億円
2024/03
当期利益
218億円
2024/03
1926年設立。レーヨンメーカーの東洋レーヨンとして創業し、米デュポントからのナイロン技術導入と英ICIからのポリエステル技術導入で合繊大手に成長した。1971年に炭素繊維の生産を開始し、脱繊維を否定しながらも基礎研究と設備投資を継続。B777・B787向けの納入で航空機用炭素繊維の圧倒的シェアを確保し、Zoltek買収で自動車向けにも展開。先端材料メーカーとして世界の航空・自動車産業を支えている。
1918年
創業
帝人
売上高
10,496億円
2025/03
当期純利益
78億円
2025/03
1918年設立。帝国人絹としてレーヨン製造から出発し、鈴木商店傘下で成長。戦後は大屋晋三社長のもとアセテート・ポリエステル・ナイロンと合繊に多角化し、祖業のレーヨンから完全脱却した。医薬品ではベニロンやフェブリクを生み出し、IT分野にも進出。2000年のアコーディス社アラミド繊維事業買収でグローバル特殊繊維に進出し、杏林製薬買収の撤回やポリエステルフィルム譲渡を経て素材・医薬複合企業へと変貌した。