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  "title": "直近の動向と展望",
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      "title": "アニメIPへの重心移動を後戻りさせない垂直統合の射程（筆者所感）",
      "text": "東宝の90年を貫いたのは、阪急沿線で完成した劇場と不動産を一体運用する経営の型を、東京の一等地に移植して時代ごとに事業を載せ替える経営判断だった。1932年の小林一三による日比谷進出は、浅草・新宿に集中していた東京の興行街の隙間だった丸の内に、日劇・東宝・日比谷映画を組み合わせて娯楽街を作り出す松竹への奇襲だった。1937年の映画関連4社統合と1943年の合併で製作・配給・興行・演劇の垂直統合を組んだ判断は、阪急が大阪で築いた、鉄道沿線に劇場と百貨店を配置して集客と地代を同時に稼ぐ仕組みを、鉄道を持たない東京で日比谷・有楽町・新宿の一等地不動産に置き換えた選択でもあった。1954年の「ゴジラ」第1作961万人動員と1948年の第三次東宝争議は、垂直統合の生産性と労働問題が同じ時期に表面化した出来事である。\n\nこの垂直統合の構造が真価を試されたのが、1960年代以降のテレビ普及による映画観客急減の時代だった。邦画の年間観客動員が1958年の11億人超から落ち続けるなか、清水雅社長は日比谷・有楽町・新宿の一等地のビルで映画館の入居を1〜2階までに抑え、総面積の7〜8割を名店街・食堂などのテナントに貸す経営に切り替えた。1962年のダイヤモンド誌は半期5〜6億円の利益が家賃収入だけでまかなえる構造を「清水式高度利用法」と名付け、1971年には土地建物賃貸収入が全収入の11.6%を占めた。映画メジャーが不動産で生き残るモデルは、大船撮影所を売却した松竹との明暗を分け、後発各社の参照軸として東宝で先に固まった。FY04の映画事業営業利益143億円と不動産事業112億円という拮抗は、映画の振れ幅を不動産が吸収する仕組みが半世紀かけて結晶化した数字である。\n\nこの長く続いた均衡を崩したのが、2010年代半ば以降のアニメIP事業への重心移動だった。TOHO animationの始動で配給手数料を取るだけの会社から製作委員会の上位出資でリスクを取る会社へ姿勢を切り替え、2020年の「鬼滅の刃 無限列車編」404億円と2023年の「ゴジラ-1.0」北米5,641万ドルで、テレビアニメ・劇場版・海外配給の連鎖を実証した。2024年6月のサイエンスSARU子会社化と10月の北米GKIDS取得は、製作の上流から海外配給までを自社グループに内製化する垂直統合の射程を海外市場まで広げた。FY24に映画事業営業利益508億円が不動産事業168億円の3倍に達した数字は、日比谷不動産が最大の稼ぎ手だった時代からの重心移動を示している。創業100周年の2032年営業利益1,000億円・海外売上比率30%の目標で、製作・権利会社への転換を後戻りさせないかが問われている。",
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