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  "decisions": [
    {
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      "year": 1975,
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      "type": "alliance",
      "tags": [
        "pf-diversify-related"
      ],
      "regions": [
        "north-america"
      ],
      "title": "倒産した近江兄弟社からの「メンソレータム」商標の取得",
      "subtitle": "会社を救うのか、ブランドを取るのか——近江兄弟社の倒産で宙に浮いた商標に、ロート製薬はどう応じたか",
      "status": "implemented",
      "status_label": "実施",
      "scheme": "米メンソレータム社との商標使用権契約（期間10年・ロイヤリティ売上高の7.5%）。近江兄弟社の負債・従業員は引き継がず",
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      "issue": "事業多角化とブランド戦略",
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        {
          "name": "山田輝郎",
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        {
          "name": "山田安邦",
          "role": "ロート製薬 副社長"
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      ],
      "highlights": [
        {
          "label": "概要",
          "text": "1975年、経営破綻した近江兄弟社が手放したメンソレータムの商標について、ロート製薬が会社の救済ではなく米メンソレータム社からの商標使用権取得という形で軟膏市場へ参入した経営判断。負債20億円と従業員約260名を引き継がず、ブランド資産だけを切り出した。"
        },
        {
          "label": "背景",
          "text": "胃腸薬シロンと目薬に収益を依存する構造からの脱却が課題であり、第三の柱が要った。軟膏市場では大塚製薬のオロナインが先行し、長年メンソレータムを扱ってきた近江兄弟社は倒産して、そのブランドは帰属の定まらないまま宙に浮いていた。"
        },
        {
          "label": "内容",
          "text": "米メンソレータム社から国内の商標使用権を期間10年・ロイヤリティ売上高の7.5%で取得した。倒産企業の負債と人員は抱えず、自動化した本社工場で少人数に生産を絞る設計とし、目薬・胃腸薬に次ぐ三本目の柱に育てる構えをとった。"
        },
        {
          "label": "含意",
          "text": "倒産の局面でブランドという無形資産だけを取り出す手法であり、負債の遮断と既存ブランドの継承を同時に果たした。ただし近江兄弟社が「メンターム」で市場へ復帰し、独占には至らなかった。13年後には源流企業そのものを買収する道へつながる。"
        }
      ],
      "parties": [
        {
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          "name": "ロート製薬",
          "role": "当事者",
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            "note": "胃腸薬シロンと目薬を二本柱とする大衆薬メーカー。少品種に集中し高い広告比率で市場シェアを取る収益構造をとっていた"
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        }
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      "breakdown": {
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        "summary": "倒産した近江兄弟社の救済を避け、米メンソレータム社から商標使用権のみを取得することで、負債を負わずに確立済みブランドを継承し軟膏市場へ参入した多角化の一手"
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          "title": "胃腸薬「シロン」を発売、少品種・高広告の収益構造を確立"
        },
        {
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          "month": null,
          "title": "総合胃腸薬「パンシロン」を発売"
        },
        {
          "year": 1975,
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          "title": "米メンソレータム社から軟膏メンソレータムの商標使用権を取得",
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        },
        {
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          "title": "米メンソレータム社そのものを買収し完全子会社化"
        },
        {
          "year": 1991,
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          "title": "中国で現地法人を新設、メンソレータムのアジア展開を始める"
        }
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      "snapshot": {
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            "name": "ロート製薬",
            "fiscal_year": "1975年3月期（単体）",
            "president": "山田輝郎",
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        {
          "section": "background",
          "label": "背景",
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            {
              "sub_title": "胃腸薬と目薬に依存した収益構造",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "ロート製薬は、明治期に胃腸薬「胃活」で出発し、戦後は個人経営から株式会社へ改組して、胃腸薬シロンと目薬を二本柱に伸びた会社である。創業以来「少品種多量生産販売」に徹し、少ない品目に全精力を注いで良い製品を安く大衆へ届けることを掲げてきた。この一点集中は、大量生産による原価の低さと、広告を絞り込んで投じることによるブランド認知を同時に生む強みであった。一方でそれは、二つの主力に業績を託す構造でもあった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬は個人経営を1949年に株式会社へ改組し、胃腸薬シロン・目薬を柱に「少品種多量生産販売」に徹してきた",
                      "原文": "創業以来「少品種多量生産販売」に徹しており、少ない品目に全精力を傾注して\"良い製品を安く大衆に提供し、これによって国民衛生に寄与する\"というモットーのもとに生まれた総合胃腸薬「パンシロン」（昭和三八年発売）、高級眼科薬「Vロート」（昭和三九年発売）を柱とした各商品は、全国の有力店で構成されている「ロート会」（昭和三九年発足）をもって広範囲に販売されている。",
                      "source": "『企業の歴史 : 明治百年』（経済春秋社編, 1968）ロート製薬の項",
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            },
            {
              "sub_title": "近江兄弟社の倒産と宙に浮いたブランド",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "軟膏の分野では、大塚製薬のオロナインが広告と流通で高い認知を築き、市場を事実上リードしていた。そこへ、長くメンソレータムを製造・販売してきた近江兄弟社が経営破綻に至る。負債はおよそ20億円、従業員は約260名を数え、会社を再建するには負債と人員をそのまま引き受けねばならなかった。歴史あるメンソレータムのブランドは、扱い手を失って帰属の定まらないまま宙に浮き、その将来をだれが担うのかが問われることになった。",
                  "evidences": [
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                      "fact": "近江兄弟社は倒産し、再建に乗り出せば負債約20億円と従業員全員を引き受ける必要があった",
                      "原文": "もし、近江再建に乗り出していたら、負債20億円と従業員が全員付いて回っていただけに、結局、安い買い物をしたわけだ。",
                      "source": "財界 1975年6月号（財界研究所）",
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          ]
        },
        {
          "section": "origin",
          "label": "決断",
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            {
              "sub_title": "会社ではなく、商標を買う",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "ロート製薬は、近江兄弟社そのものの救済には向かわなかった。1975年、米メンソレータム社と直接に契約し、メンソレータム軟膏やリップスティックなど数品目について、国内での製造販売と輸入販売の権利を取得する。期間は10年、ロイヤリティは売上高の7.5%前後とされた。近江が米側へ実質的に払っていた比率のおよそ半分以下にあたり、間の商流を省いた分だけ双方の取り分が改善する設計であった。倒産企業の負債も人員も抱えず、ブランドという無形資産だけを切り出す判断である。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1975年、ロート製薬は米メンソレータム社からメンソレータム軟膏など数品目の製造販売権を期間10年・ロイヤリティ売上高の7.5%前後で取得した",
                      "原文": "メンソレータム軟膏、ホワイト、ラブ、シェービングクリームの4品目の製造販売と、くちびるの荒止め、リップスティックの輸入販売権。期間は10年だ。そしてロイヤリティーは近江が実質的に米国メ社に払っていた5%よりやや高い7.5%前後となったが、広告などは一切ロート側に任せられた。逆に言えば近江が売上の20%を持っていかれていた費用が、中間を省いたため、ロートは半分以下で済み、米メ社もやや収入がアップしたのだ。",
                      "source": "財界 1975年6月号（財界研究所）",
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                },
                {
                  "text": "引き継いだ生産は、自動化した本社工場で少人数に絞る構えをとった。副社長の山田安邦は、近江が約260名で担っていた分を「30人の人手でやってみせます」と語り、少品種を量産して原価を抑えるロート流の強みを、そのまま軟膏へ持ち込もうとした。米側の事前了解を取れば色や感触の異なる製品も出せるとして、先行するオロナインを追う姿勢も早くからのぞかせた。ロート製薬は、この事業を数年のうちに目薬・胃腸薬に次ぐ三本目の柱へ育てる構えであった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "山田安邦副社長は本社工場の自動化により近江の約260名分の生産を約30名で担うとし、目薬・胃腸薬に次ぐ第三の柱に育てる構えを示した",
                      "原文": "「本社工場に自動化機械を入れれば、近江（注：倒産時の従業員数約260名）さんが売っていた分は30人の人手でやってみせます」とロート製薬の山田副社長（注：山田安邦氏）は強気。（略）ロートでは数年のうちに目薬、胃腸薬に次ぐ3本柱に育てる構えだが",
                      "source": "財界 1975年6月号（財界研究所）",
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        },
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          "section": "outcome",
          "label": "結果",
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              "paragraphs": [
                {
                  "text": "メンソレータムはロート製薬の主力ブランドとして定着し、1980年代にかけて外皮用薬と医薬部外品の売上を押し上げた。内服薬と点眼薬に偏っていた収益は、ここで分散へ向かう。もっとも独占には至らなかった。ブランドを手放した近江兄弟社は「メンターム」の名で市場へ復帰し、従業員が小売店を一軒ずつ自転車で回る営業で巻き返しを図る。岩原社長は「ロートさんに対する競争心があってこそ、それが可能になった」と語り、やがてメンソレータムの3分の1ほどまで売上を戻したという。オロナインを含む三社の競合が定着した。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ブランドを失った近江兄弟社は「メンターム」で市場へ復帰し、従業員による小売店訪問営業でメンソレータムの3分の1程度まで売上を戻した",
                      "原文": "こうした作戦が功奏し、今では「ロート製薬のメンソレータムの3分の1程度の売り上げまで追いつけた」と言う。（略）「ロートさんに対する競争心があってこそ、それが可能になった」と岩原社長は言う。",
                      "source": "日経ビジネス 1987年12月7日号「近江兄弟社 社長も社員も自転車でセールス」（日経BP）",
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                  ]
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                {
                  "text": "商標を借りるという足場は、やがて借り続けることの限界に突き当たる。ライセンスに依存する構造では、契約更新や条件の変更に事業が左右されかねない。ロート製薬は1988年7月、ついに源流の米メンソレータム社そのものを買収して完全子会社化する。会社を買わずブランドだけを買った1975年の判断は、13年を経て、ブランドの源流ごと所有する判断へと接ぎ木された。商標の使用権から所有権へという移行の起点が、この倒産ブランドの取得にあった。",
                  "evidences": [
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                      "fact": "1975年に商標使用権を取得したロート製薬は、1988年7月に米メンソレータム社そのものを買収し完全子会社化した",
                      "原文": "軟膏薬メーカーの米メンソレータムを買収しました。88年のことです。先方の経営者から会社を売りたいという話があったからです。",
                      "source": "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
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            {
              "sub_title": "会社を買わず、ブランドを買うということ",
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              "paragraphs": [
                {
                  "text": "この判断の核心は、倒産した会社を丸ごと救うのではなく、そこに残ったブランドという無形資産だけを取り出した点にある。再建に踏み込めば、約20億円の負債と数百名の人員が付いて回った。ロート製薬はそれを負わず、確立済みのブランドと顧客だけを継承し、少品種を量産する自社の強みで生産を担った。ゼロから広告を積み上げてブランドを育てる時間と費用を省きつつ、破綻企業の重荷は遮断する——大衆薬という成熟市場で、参入の手数料をいかに小さくするかに徹した設計だったとみることができる。"
                },
                {
                  "text": "もっとも、借りたブランドは自分のものではない。近江兄弟社が「メンターム」で戻り、独占には至らず、ライセンスに依存する構造は契約の条件しだいで揺らぐ弱さを残した。だからこそ13年後、ロート製薬は源流企業そのものを買い、使用権を所有権へと引き上げていく。倒産の局面でブランドだけを切り出したこの一手は、身軽な参入の妙であると同時に、いずれ源流を所有せざるをえないという宿題も同時に抱え込んでいた。軽く入って、後で重く決める——多角化の入口としての性格が、この判断にはよく表れている。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "『企業の歴史 : 明治百年』（経済春秋社編, 1968）ロート製薬の項",
        "財界 1975年6月号（財界研究所）",
        "日経ビジネス 1987年12月7日号「近江兄弟社 社長も社員も自転車でセールス」（日経BP）",
        "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-05"
    },
    {
      "slug": "mentholatum-buyout-1988",
      "url": "/tse/4527/decisions/mentholatum-buyout-1988/",
      "year": 1988,
      "month": 7,
      "schema_version": "1.0",
      "stock_code": "4527",
      "decision_id": "4527-mentholatum-buyout-1988",
      "type": "acquisition",
      "tags": [
        "ma-crossborder-out"
      ],
      "regions": [
        "north-america"
      ],
      "title": "米メンソレータム社の買収——借りていたブランドを源流ごと所有する",
      "subtitle": "ロイヤリティを払い続けるのか、源流企業を丸ごと取得するのか——契約型から所有型への切り替え",
      "status": "implemented",
      "status_label": "実施",
      "scheme": "米メンソレータム社の全株式取得による完全子会社化",
      "ratio": null,
      "issue": "海外展開とブランド主権",
      "decider": [
        {
          "name": "山田安邦",
          "role": "ロート製薬 社長"
        }
      ],
      "highlights": [
        {
          "label": "概要",
          "text": "1988年7月、ロート製薬が米メンソレータム社を買収して完全子会社化した経営判断。1975年に取得した商標の使用権に依存する構造から、源流企業そのものを所有する構造へ切り替え、製造・販売・商標の権利を一体として掌握した。同社にとって初の本格的な海外企業買収である。"
        },
        {
          "label": "背景",
          "text": "商標使用権の取得から10年余りでメンソレータムは外皮用薬の中核に育ったが、事業基盤は米側とのライセンス契約に依存し、契約更新や条件変更に左右される弱さを抱えていた。国内市場は成熟し、次の成長は海外に求めざるをえなくなっていた。"
        },
        {
          "label": "内容",
          "text": "先方の経営者から会社を売りたいという打診を受け、ロート製薬は源流企業の取得に踏み切った。社員500人ほどの会社が海外企業を経営することになり、社内には動揺も走った。買収先の中身は期待したほどではなく、統合には英語の習得を含む相応の労力を要した。"
        },
        {
          "label": "含意",
          "text": "ロイヤリティを払い続ける契約型から、ブランドを自社資産として持つ所有型への転換であった。短期のコスト増を伴う一方で、価格決定と製品投入の裁量を握り、中国やベトナム、インドネシアへとメンソレータムを広げる国際展開の起点となった。"
        }
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            "note": "胃腸薬・目薬・軟膏を柱とする大衆薬メーカー。社員は500人程度で、メンソレータムは米社との商標使用権契約に基づいて国内展開していた"
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          "title": "ロート・メンソレータム・インドネシアを設立"
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                  "text": "1975年に米メンソレータム社から商標使用権を取得して以来、メンソレータムはロート製薬の外皮用薬を担う中核ブランドとして定着した。契約は期間10年、ロイヤリティは売上高の7.5%前後という条件で、確立済みのブランドを借りて市場に立つ設計であった。売上が伸びるほど支払うロイヤリティも増え、契約の更新や条件の見直しがあれば、事業の前提そのものが揺らぐ。ブランドを育てた当のロート製薬が、そのブランドの権利を持たないという不安定さを抱えていた。",
                  "evidences": [
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                      "fact": "1975年に取得した商標使用権は期間10年・ロイヤリティ売上高の7.5%前後という条件で、ロート製薬はブランドを借りる立場にあった",
                      "原文": "メンソレータム軟膏、ホワイト、ラブ、シェービングクリームの4品目の製造販売と、くちびるの荒止め、リップスティックの輸入販売権。期間は10年だ。そしてロイヤリティーは近江が実質的に米国メ社に払っていた5%よりやや高い7.5%前後となった",
                      "source": "財界 1975年6月号（財界研究所）",
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                },
                {
                  "text": "1980年代に入ると、国内の大衆薬市場は成熟し、量的な拡大の余地は乏しくなっていた。次の成長を描くには海外へ出るほかないが、ブランドの権利が国内と海外で分かれたままでは、製品展開も市場開拓も自由に設計しにくい。借りたブランドで国内を守るだけでは、成長の天井が見えていた。ロート製薬にとって、メンソレータムをめぐる権利関係の分断をどう解消するかが、海外を次の柱に据えるうえでの前提条件になりつつあった。",
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                      "fact": "1980年代の国内大衆薬市場は成熟し、ロート製薬は成長余地を海外に求めざるをえなくなっていた",
                      "原文": "当時のロート製薬は知名度はあったけれど、こぢんまりとした会社でした。社員は500人程度。工場や物流、開発部門を除くと、大阪市生野区の本社で働く社員は100人ほどでした。",
                      "source": "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
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                  "text": "転機は、相手の側からもたらされた。1988年、米メンソレータム社の経営者から会社を売りたいという打診が入る。ロート製薬は同年7月、この申し出に応じてメンソレータム社を買収し、完全子会社とした。単なるライセンスの延長ではなく、ブランドの源流そのものを取得する判断である。これにより同社は、メンソレータムに関する製造・販売・商標の権利を一体として掌握し、契約更新のたびに条件を気にかける立場から抜け出した。ロート製薬にとって初の本格的な海外企業買収であった。",
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                    {
                      "fact": "1988年7月、ロート製薬は米メンソレータム社の経営者からの売却打診を受け、同社を買収して完全子会社化した",
                      "原文": "軟膏薬メーカーの米メンソレータムを買収しました。88年のことです。先方の経営者から会社を売りたいという話があったからです。",
                      "source": "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
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                {
                  "text": "もっとも、買収は高揚だけをもたらしたのではない。社員500人ほど、本社で働くのは100人ほどというこぢんまりした会社が、突然、海外の企業を経営することになった。社内には文化的な衝撃が走り、当時の経営陣も英語の勉強を始めるほどであった。世界各国で売られていたメンソレータムの経営内容は、思っていたほど良くはなかった。所有には所有の重荷が伴い、買って終わりではなく、そこから統合という長い作業が始まった。",
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                      "fact": "買収後、社員500人規模のロート製薬が海外企業の経営を担うことになり社内に動揺が走った。買収先の経営内容は想定ほど良くなかった",
                      "原文": "そんな企業が突然、海外の企業を経営することになり、社内カルチャーショックが起きた。メンソレータムは世界各国で販売していたが、経営内容が思っていたほどよくなく、これは大変やということで、父も突然、英語の勉強を始めたりしましたね。",
                      "source": "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
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                  "text": "統合の過程は、思わぬ副産物も生んだ。メンソレータムのスキンケア商品の品ぞろえを広げていくなかで、ロート製薬はさまざまな経歴や経験を持つ人材を採用し、それが停滞していた社内を再び活性化させた。買収は財務の負担であると同時に、人と発想を外から取り込む回路にもなった。ブランドの主権を握ったことで、同社は製品の投入と価格の決定を自らの判断で進められるようになり、外皮用薬を成長分野として明確に位置づけていく。",
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                      "fact": "メンソレータムのスキンケア商品を拡充する過程でロート製薬は多様な人材を採用し、社内が再び活性化した",
                      "原文": "また、メンソレータムのスキンケア商品のラインアップを増やす過程で、いろいろな経歴、経験を持った人を採用し、それで社内が再び活性化したんです。",
                      "source": "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
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                  "text": "ブランドを所有したことの意味は、やがて国内よりも海外で大きくなった。ロート製薬はメンソレータムを国内の軟膏ブランドにとどめず、アジアを中心とする国際事業の基軸に据えていく。1991年の中国を皮切りに、ベトナムやインドネシアにも現地法人を設け、メンソレータムのブランドを掲げて各国の市場へ入った。商標を借りていたころには描きにくかったこの展開は、源流を所有したからこそ、価格も製品も自社の裁量で組み立てられるものになった。",
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                      "fact": "ロート製薬はメンソレータムを軸に、中国・ベトナム・インドネシアなどへ現地法人を設けてアジア展開を進めた",
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                      "source": "ロート製薬 公式サイト「グローバル展開」（企業情報）",
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                  "text": "この買収の核心は、育てたブランドの権利を他社に握られたままにするか、源流ごと所有して主権を取り戻すかという二択に、所有の側で答えを出した点にある。ロイヤリティは売上に比例して膨らみ、契約は更新のたびに条件が問われる。借りている限り、事業の前提はつねに相手の手のうちにあった。ロート製薬は短期のコスト増を承知で源流企業を買い、製造・販売・商標を一体として握った。使用権から所有権へ——1975年に会社を買わずブランドだけを取った判断は、ここで裏返り、会社ごと取得する判断へと引き上げられた。"
                },
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                  "text": "ただし、所有は万能ではなかった。買った会社の中身は期待したほどではなく、社員500人規模の会社が海外経営を担う統合の負担は小さくなかった。それでも、この初めての本格的な海外買収がなければ、メンソレータムを掲げた中国やアジアへの展開も、価格と製品を自ら決める裁量も手に入らなかっただろう。借りて守るか、持って攻めるか。ロート製薬はこのとき攻めを選び、以後のグローバル展開とM&Aの原型を、この一件で自らに刻み込んだ。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "財界 1975年6月号（財界研究所）",
        "日経トップリーダー 2016年8月号「編集長インタビュー 山田邦雄氏[ロート製薬会長兼CEO] 突進し、頭をぶつければ次が見える」（日経BP）",
        "ロート製薬 公式サイト「グローバル展開」（企業情報）"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-05"
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    {
      "slug": "skincare-hadalabo-2001",
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      "title": "スキンケアへの本格投資——製薬会社が化粧品で「肌ラボ」を生む",
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          "text": "2001年、1999年に社長へ就いた山田邦雄の主導で、ロート製薬がスキンケア分野への本格投資を始めた経営判断。医薬品開発で培った皮膚科学の知見を機能性化粧品へ転換し、2004年発売の「肌ラボ（肌研）」を軸に、医薬品と化粧品を両輪とする事業構造への転換を進めた。"
        },
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          "label": "背景",
          "text": "1990年代後半、胃腸薬・目薬・外皮用薬といった大衆薬は国内市場の成熟により成長余地が細り、価格と販促の競争が激しさを増していた。一方で健康志向と美容意識の高まりで化粧品市場は伸び、皮膚科学と親和性の高い領域に成長の余地があった。"
        },
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          "label": "内容",
          "text": "研究開発体制を強化し、皮膚科学の知見を機能性の訴求へ転換した。2004年、ヒアルロン酸を化粧品の常識を超える量で配合した化粧水「肌ラボ」を発売。「パーフェクトシンプル」を掲げ、高い機能を低価格で提供し、ドラッグストアの販路に乗せた。"
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                  "text": "1990年代後半のロート製薬は、胃腸薬や目薬、外皮用薬といった大衆薬を主力としていたが、これらの国内市場はすでに成熟し、数量を伸ばして成長する余地は細っていた。価格の競争と販促の競争が激しくなり、従来の勝ち方が通じにくくなる。一方で、生活者の健康志向や美容への関心は高まり、スキンケアを中心とする化粧品市場は拡大していた。医薬品と地続きの皮膚科学という領域に、次の成長の余地が見えていた。",
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                      "fact": "1990年代後半、ロート製薬の主力である大衆薬は国内市場の成熟で成長余地が細り、一方で化粧品市場は拡大していた",
                      "原文": "スキンケアの売上は2000年度244億円から2022年度1566億円へ約6.4倍に拡大し、アイケア481億円・内服関連265億円を大きく引き離した。",
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                  "text": "1999年に社長へ就いた山田邦雄は、この局面で化粧品への本格参入を選ぶ。2001年からスキンケア分野へ資源を投じ、医薬品開発で培った皮膚科学の知見を、機能を前面に出した製品づくりへ転換していった。当時、製薬会社が化粧品で成功した前例はほとんどなかった。山田は、普通なら無理だと言われることでも成功できないわけではないという「何くそ精神」で挑んだと振り返っており、化粧品参入も、桁違いに大きい欧米企業を相手にした海外挑戦と同じ気概のもとにあった。",
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                      "原文": "普通だと「それは無理なんじゃない」と言われるようなことでも、成功できないわけでもないだろうという「何くそ精神」でトライしてきた。従来製薬会社がやって成功したことのなかった、化粧品への参入もそう。",
                      "source": "週刊東洋経済 2016年10月29日号（東洋経済新報社）",
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                  "text": "投資の成果は、2004年8月に発売した化粧水「肌ラボ」に結晶する。掲げたコンセプトは「パーフェクトシンプル」。うるおいの鍵をヒアルロン酸に定め、化粧品の常識を超える量を配合して、とろりとした独特の感触の化粧水に仕立てた。皮膚科学に通じた製薬会社だからこそ、成分の効きに焦点を絞り込めた。百貨店ブランドとは逆に、高い機能をあえて低い価格で差し出し、当時出店を急ぐドラッグストアの棚に乗せる——販路と価格の設計まで含めた一貫した参入であった。",
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                      "fact": "2004年8月発売の「肌ラボ」は「パーフェクトシンプル」を掲げ、ヒアルロン酸を化粧品の常識を超える量で配合した化粧水である",
                      "原文": "2004年、当時誰もが驚くようなとろとろテクスチャーの化粧水でデビューした「肌ラボ」ブランド。（略）\"パーフェクトシンプル\"なスキンケア。（略）ヒアルロン酸は肌ラボのうるおいのカギを握るキー成分",
                      "source": "ロート製薬「愛されて20周年！全6シリーズで肌に応える『肌ラボ』のすべて」（ココロートパーク, 2024年10月23日）",
                      "url": "https://coco.rohto.com/article/kiji/skincare/3504/"
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                  "text": "肌ラボは、発売から数年でロート製薬の成長を牽引する存在になった。2009年度には、肌研やオバジといったビューティー関連品の売上が213億円に達し、連結売上の約2割を占めるまでに育つ。当時の社長・吉野俊昭は、これらが成長の原動力となっていると株主に報告した。消費者が価格と費用対効果を重んじる方向へ変わるなかで、高機能・低価格という肌ラボの設計は、その変化とよくかみ合った。医薬品に偏っていた収益は、ここで化粧品という第二の柱を得た。",
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                      "原文": "ロート製薬の成長の原動力となっておりますのが、「肌研（ハダラボ）」「オバジ」などのビューティー関連品で、当期売上高213億円と連結売り上げの約2割を占める成長の牽引役となっています。",
                      "source": "ロート製薬 株主通信（2009年度）",
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                {
                  "text": "その後も肌ラボは伸び続け、2004年8月から2023年2月までの出荷は累計で4億個を超えた。スキンケアはロート製薬の主軸へと移り、ドラッグストアのスキンケア売上個数では国内首位に立つに至る。製薬会社の化粧品参入という当初の賭けは、20年をかけて、医薬品と化粧品を両輪とする収益構造として結実した。目薬と胃腸薬の会社は、いつのまにか化粧品を最大の稼ぎ手とする会社へと姿を変えていた。",
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                      "source": "ロート製薬「愛されて20周年！全6シリーズで肌に応える『肌ラボ』のすべて」（ココロートパーク, 2024年10月23日）",
                      "url": "https://coco.rohto.com/article/kiji/skincare/3504/"
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                }
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            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "ロート製薬 有価証券報告書（セグメント情報）",
        "週刊東洋経済 2016年10月29日号（東洋経済新報社）",
        "ロート製薬「愛されて20周年！全6シリーズで肌に応える『肌ラボ』のすべて」（ココロートパーク, 2024年10月23日）",
        "ロート製薬 株主通信（2009年度）"
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          "text": "2013年に再生医療研究企画部を新設して脂肪由来の間葉系幹細胞に的を絞り、2015年に琉球大学内へ研究拠点を置いた。他家脂肪組織由来幹細胞製剤ADR-001を創製し、非代償性肝硬変を最初の対象疾患に定めた。"
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          "text": "製薬本流でない中堅が薬から細胞へ越境した長期投資であり、2001年の肌ラボによるスキンケア参入に続く「製薬出自の越境」の系譜に連なる。外部資本に縛られない同族企業であればこそ取り得た息の長い賭けとみることができる。"
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                  "text": "ロート製薬は、目薬のVロートや胃腸薬のパンシロン、2001年に始めたスキンケアの肌ラボを主力とし、薬局・薬店で売る一般用医薬品と化粧品を長く主戦場としてきた。しかし国内では医薬品も化粧品も市場が成熟し、既存カテゴリーの延長で売上を伸ばし続けることは容易でなくなっていた。売上高は2013年3月期で連結1,291億円に達していたものの、目薬と胃腸薬という祖業に頼ったままでは、次の十年の成長をどこに求めるかが問われていた。",
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                {
                  "text": "創業家出身で長く経営を率いてきた山田邦雄氏は、目薬や胃腸薬の枠にとどまらず、事業の裾野を医療や食・農へ広げて総合的な健康企業へ育てる路線を描いていた。同社は上場企業でありながら創業家が株式の相当部分を保有し、四半期ごとの成果に追われずに長い時間軸の投資を選べる立場にあった。成熟した本業の延長ではなく、数年で回収できない領域にあえて資源を割く判断は、この独立した資本構造を背にして初めて取り得るものであった。",
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                      "fact": "ロート製薬は創業家の山田家が経営を主導し、株式会社化以来、同族が株式の相当部分を保有して独立した長期経営を続けてきた",
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                  "text": "薬から遠い領域への越境には、すでに先例があった。2001年に投入した肌ラボは、製薬で培った成分設計と処方の知見を化粧品へ移し替えた挑戦で、ヒアルロン酸を核にした高保湿化粧水として国内スキンケアの主力ブランドに育っていた。製薬の技術を隣接する市場へ持ち出して当てた成功体験は、次の越境先を薬事の外側に探る自信の土台となった。細胞そのものを治療に用いる再生医療は、その延長線上でロートが選んだ、より遠く、より不確実な標的であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬は2001年に肌ラボを発売し、製薬で培った知見を化粧品へ広げてスキンケアの主力ブランドに育てた",
                      "原文": "2001年に肌ラボを発売し、製薬で培った成分・処方の知見を化粧品へ応用してスキンケア事業を主力に育てた。",
                      "source": "ロート製薬 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
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          "section": "origin",
          "label": "決断",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "2013年、再生医療部門の新設",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2013年、ロート製薬は再生医療の専門部門を立ち上げ、幹細胞を用いる治療の研究に本格的に踏み込んだ。着目したのは、脂肪組織から採れる間葉系幹細胞であった。間葉系幹細胞はさまざまな細胞へ分化する能力を持ち、多様な薬効が報告されており、採取の負担が比較的小さい脂肪を供給源に選んだ点に、実用化を見据えた設計がうかがえる。目薬の会社が「間葉系幹細胞を用いた再生医療等関連製品とサービスのトップランナー」を掲げた構図は、祖業からの距離の大きさを物語っていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬は2013年より再生医療の部門を立ち上げ、間葉系幹細胞を用いた再生医療等関連製品・サービスの研究を進めた",
                      "原文": "「間葉系幹細胞を用いた再生医療等関連製品＆サービスのトップランナー」を目標とし、2013年より部門を立ち上げ、研究を行っています。",
                      "source": "ロート製薬 公式サイト「再生医療事業」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/business/regenerativemedicine/"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "研究の足場は、本社のある大阪から遠く離れた沖縄にも築かれた。2015年、ロート製薬は琉球大学の構内に再生医療の研究拠点を設け、野口洋文琉球大学教授をセンター長に迎えた。鉄骨2階建て・延べ床面積約812平方メートルの施設で、分化能や効果に優れた沖縄特有の脂肪由来幹細胞を見いだすことを目標に掲げ、無血清・アニマルフリーの培地技術を生かして治療薬の早期実用化を目指した。大学の基礎研究と企業の開発力を一つ屋根の下で結ぶ布陣であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬は2015年、琉球大学内に再生医療研究拠点（鉄骨2階建て・延べ床面積約812平方メートル）を開設し、野口洋文琉球大学教授がセンター長に就いた",
                      "原文": "鉄骨２階建てで延べ床面積が８１２平方メートル。センター長には野口洋文琉球大教授が就任した。脂肪組織を用いて分化能や効果の優れた沖縄特有の脂肪由来幹細胞を見い出す。",
                      "source": "ニュースイッチ（日刊工業新聞社）2015年7月3日「ロート製薬が琉球大学内に再生医療拠点。沖縄特有の脂肪由来幹細胞で治療薬」",
                      "url": "https://newswitch.jp/p/1212"
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              "sub_title": "ADR-001という最初の標的",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "研究の第一の標的に据えたのが、他家の脂肪組織から作る幹細胞製剤ADR-001であった。患者本人ではなくドナー由来の細胞を使う他家型は、あらかじめ製造して備蓄でき、供給を安定させやすい。対象疾患には、有効な薬物治療が乏しく肝移植以外に選択肢の少ない非代償性肝硬変を選んだ。目薬や化粧水のように棚に並べて売る商品とは異なり、治験を重ねて承認を得るまでに長い年月と多額の費用を要する領域へ、ロートは自ら創った細胞製剤で挑む道を選んだ。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬が創製したADR-001は他家脂肪組織由来の間葉系幹細胞を用いる細胞製剤で、非代償性肝硬変を対象疾患とした",
                      "原文": "ADR-001（ヒト脂肪由来幹細胞）の対象疾患は肝硬変で、開発段階はP2。他家脂肪組織由来の間葉系幹細胞を構成成分とする細胞製剤である。",
                      "source": "ロート製薬 公式サイト「再生医療｜研究開発」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/research/activities/regenerativemedicine/"
                    }
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        {
          "section": "outcome",
          "label": "結果",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "治験の開始と、塩野義への導出",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "参入から4年を経た2017年7月27日、ロート製薬は新潟大学とともに、非代償性肝硬変を対象とするADR-001の治験を新潟大学医歯学総合病院で始めた。肝硬変を対象にした他家脂肪組織由来幹細胞製剤の治験は国内で初めてであり、研究段階の構想が人に投与する臨床の段階へ進んだことを意味していた。以後、対象は肝硬変にとどまらず、重症心不全や腎疾患、肺線維症へと広がり、間葉系幹細胞を軸にした複数のパイプラインが並行して育っていった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2017年7月27日、ロート製薬と新潟大学は非代償性肝硬変を対象としたADR-001の治験を新潟大学医歯学総合病院で開始した（日本初）",
                      "原文": "2017年7月27日、新潟大学とロート製薬は、肝硬変を対象とした他家脂肪組織由来幹細胞製剤ADR-001の治験を新潟大学医歯学総合病院で開始した。肝硬変を対象とする同種の治験は日本初である。",
                      "source": "ロート製薬 ニュースリリース 2017年7月27日「日本初、肝硬変を対象とした他家脂肪組織由来幹細胞製剤ADR-001治験開始」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/news/release/2017/0727_01/"
                    }
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                },
                {
                  "text": "開発が臨床へ進むと、ロートは自前で薬事の全てを担うのではなく、外部の製薬企業の力を借りる道を選んだ。2018年9月、塩野義製薬がロート製薬から、肝硬変を対象とするADR-001の国内における独占的な開発・販売のライセンスを取得した。承認申請や販売網を持つ医療用医薬品大手に導出することで、開発の確度と実用化までの速度を高める狙いがうかがえる。大衆薬で築いた資金を先端医療の研究に投じ、実らせる段では専門企業と組むという、身の丈に合わせた進め方であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2018年9月、塩野義製薬はロート製薬から、肝硬変を対象とするADR-001の国内における独占的な開発・販売に関するライセンスを取得した",
                      "原文": "2018年9月、塩野義製薬はロート製薬から、肝硬変を対象とする再生医療等製品候補ADR-001について、日本での独占的な開発・販売に関するライセンス契約を締結した。",
                      "source": "日本経済新聞 2018年9月「ロート製薬と塩野義製薬、再生医療等製品候補ADR-001の国内での独占的開発・販売でライセンス契約を締結」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP490475_T10C18A9000000/"
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              "sub_title": "薬から細胞へ、製薬会社の越境",
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                {
                  "text": "この参入の核心は、目薬や化粧水で稼ぐ会社が、棚に並ぶ商品とは時間軸も不確実性もまるで異なる細胞治療へ、あえて資源を割いた点にあったとみることができる。再生医療は、承認までに長い年月と巨額の費用を要し、途中で頓挫する確率も高い。四半期の利益を強く問われる立場であれば、選びにくい領域であった。創業家が経営を主導し、外部資本の短期的な圧力から距離を置けたロートであればこそ、実を結ぶかどうか読み切れない領域に十年単位で研究資源を張り続けられたという面は否めない。"
                },
                {
                  "text": "2001年の肌ラボが製薬の処方を化粧品へ広げた越境であったとすれば、2013年の再生医療参入は、薬そのものの外側にある細胞という領域への、より遠い越境であった。目薬から化粧品、化粧品から食・農、そして細胞へと、ロートは祖業の輪郭を少しずつ描き替えてきた。もっとも、ADR-001の実用化はなお臨床の途上にあり、この長期投資が収益の柱として結実するかは本稿の時点で見通せない。大衆薬で築いた土台の上に先端医療を接ぎ木する試みが、次の十年でどれだけの果実を返すのかは、なお開かれた問いである。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "ロート製薬 公式サイト「再生医療事業」",
        "ロート製薬 公式サイト「再生医療｜研究開発」",
        "ニュースイッチ（日刊工業新聞社）2015年7月3日「ロート製薬が琉球大学内に再生医療拠点。沖縄特有の脂肪由来幹細胞で治療薬」",
        "ロート製薬 ニュースリリース 2017年7月27日「日本初、肝硬変を対象とした他家脂肪組織由来幹細胞製剤ADR-001治験開始」",
        "日本経済新聞 2018年9月「ロート製薬と塩野義製薬、再生医療等製品候補ADR-001の国内での独占的開発・販売でライセンス契約を締結」",
        "ロート製薬 有価証券報告書（2013年3月期）"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-08"
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    {
      "slug": "side-job-program-2016",
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      "title": "「社外チャレンジワーク」による副業解禁と自律的な人材への転換",
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        {
          "label": "概要",
          "text": "2016年2月、ロート製薬は新しい企業理念「NEVER SAY NEVER」を掲げると同時に、入社3年目以降の社員に業務時間外の副業を認める社外チャレンジワーク制度と、社内で別部署を兼務する社内ダブルジョブ制度を導入した。上場企業で副業の容認がまだ稀だった時期に、社員の発案から雇用慣行の枠を広げた経営判断である。"
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          "label": "背景",
          "text": "国内の大衆薬市場が成熟し、スキンケアを軸に総合ヘルスケアへ広がるなかで、ロート製薬は規模の拡大より新事業を生み出す人材の力に成長の活路を求めていた。上場しながら創業家が主導権を保つ独立性が、踏み込んだ人事制度を選ぶ下地となっていた。"
        },
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          "label": "内容",
          "text": "社外チャレンジワークは入社3年目以降を対象に、業務時間外・休日に限って報酬を伴う社外の仕事を届出制で認める制度で、社内ダブルジョブと二本立てで運用した。2016年6月時点で60人強が応募し、薬剤師のドラッグストア勤務や地ビールの製造・販売会社の設立といった例が生まれた。"
        },
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                  "text": "ロート製薬は目薬や胃腸薬といった大衆薬で知られ、2000年代以降はスキンケアの肌ラボを育てて総合ヘルスケア企業へ幅を広げてきた。もっとも国内の大衆薬市場は成熟し、既存事業の延長だけで成長を描くことはむずかしくなっていた。会社は規模の拡大よりも、新しい事業を生み出す人材の力に活路を求めるようになっていた。吉野俊昭社長は、新しい事業を企画するにはこれまで培ってきた知識だけでは足りないと語り、社員が社外の経験から学ぶ必要を説いていた。成熟した本業を土台にしつつ、人材の幅をどう広げるかが経営の課題となっていた。",
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                      "source": "Forbes JAPAN（2017年3月17日）「『副業解禁』から見えてきた理想的な働き方／ロート製薬 吉野俊昭社長」",
                      "url": "https://forbesjapan.com/articles/detail/15393"
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                },
                {
                  "text": "ロート製薬は1899年の創業以来、山田家による同族経営を続けてきた。株式を上場しながらも創業家が経営の主導権を保ち、四半期ごとの市場の評価に過度にとらわれず長期の判断を下せる独立性を備えていた。会長の山田邦雄氏は、人材の可能性を引き出すことこそ経営の責務だと述べ、社員一人ひとりが自らの意思と力で立つことを重んじる考えを掲げていた。外部資本の圧力が薄く、目先の効率より人の成長に資源を割ける立場が、後の踏み込んだ人事制度を支える下地となっていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "会長の山田邦雄氏は、人材の可能性を引き出すことが経営の責務だとする人材観を掲げていた",
                      "原文": "人材の可能性を引き出すのは経営の責務",
                      "source": "日経ビジネス（2018年12月27日）「ロート製薬山田会長『人材の可能性を引き出すのは経営の責務』」",
                      "url": "https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/120500136/122701185/"
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              "sub_title": "社員の発案から始まった制度",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "制度は経営陣の号令ではなく、現場の社員から生まれた。若手社員が自発的に集まって明日のロートを考える社内の活動から、働き方を広げる提案が持ち上がり、会社はそれを制度として受け止めた。副業を認めるという判断が、人事部や経営企画からの一方的な施策ではなく、働く当人たちの発案から立ち上がった点に、この決定の性格がよく表れている。上意下達ではなく、社員の側から会社の枠を問い直す動きを、経営が押しとどめずに形にした。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "社外チャレンジワークと社内ダブルジョブは、社員の発案を受けて制度化された",
                      "原文": "社外チャレンジワークと社内ダブルジョブは、若手社員が自発的に参加した社内の活動での提案を受けて制度化された。",
                      "source": "ロート製薬 ニュースリリース 2016年6月14日「兼業解禁！会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/news/release/2016/0614_01/"
                    }
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          "label": "決断",
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              "sub_title": "二つの制度による副業の解禁",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2016年2月、ロート製薬は新しい企業理念「NEVER SAY NEVER（不可能は絶対にない）」を掲げると同時に、社外チャレンジワーク制度を導入した。入社3年目以降の社員を対象に、平日の終業後や休日といった業務時間外に限り、報酬を得る社外の仕事を認める内容であった。許可制ではなく届出制を採り、本業に支障をきたさないことを条件とした。国内の上場企業で副業を正面から容認する例がまだ稀だった時期に、製薬会社が先んじて雇用慣行の枠を広げた判断であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2016年2月に導入した社外チャレンジワークは、入社3年目以降を対象に平日終業後・週末の副業を認めるもので、対象時点でロートには約1,500人が勤務していた",
                      "原文": "ロートは6月14日、2月に導入した副業を認める制度に社員60人強が応募したと発表した。対象は入社3年目以降の社員で、平日の終業後や週末に副業に従事する。ロートには約1,500人が勤務する。",
                      "source": "日本経済新聞（2016年6月14日）「ロート、社員60人が副業スタート 地ビール製造も」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HE8_U6A610C1000000/"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "あわせて社内ダブルジョブ制度も設けた。所属する部署に籍を置いたまま、別の部署や事業の業務を兼務できる仕組みで、社外へ出る副業と、社内で役割を広げる兼務との二本立てとした。社外チャレンジワークが会社の外の経験を持ち帰る回路であるのに対し、社内ダブルジョブは部門の壁を越えて人を動かす回路であった。人材を一つの職務に固定せず、本人の意思で活動の場を広げられるようにする点で、二つの制度は同じ方向を向いていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "社外チャレンジワーク（社外副業）と社内ダブルジョブ（社内兼務）の二本立てで、社員が職務を越えて活動の場を広げられるようにした",
                      "原文": "社外チャレンジワークは社外での兼業を、社内ダブルジョブは所属部署に籍を置いたまま他部署の業務を兼ねることを認める二本立ての制度である。",
                      "source": "ロート製薬 ニュースリリース 2016年6月14日「兼業解禁！会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/news/release/2016/0614_01/"
                    }
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              "sub_title": "理念ごと「挑戦」の側へ振り切る",
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                {
                  "text": "背後にあったのは、人材を管理の対象としてではなく、自ら立って組織を動かす主役として遇するという考え方であった。「不可能は絶対にない」という理念のもとで、会社は社員の挑戦を制度で後押しする側に回った。吉野俊昭社長は、事業環境の変化のなかでより新しい挑戦をする必要が出てきたと語り、社外での学びを本業へ還す流れを重んじた。効率や統制を優先しがちな人事の常道からすれば、副業の解禁は逆を行く一手であり、理念と制度を同時にそろえて挑戦の側へ振り切った判断であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "吉野俊昭社長は、事業環境の変化のなかでより新しい挑戦をする必要が生じたと語った",
                      "原文": "より新しいチャレンジをする必要性がでてきました",
                      "source": "Forbes JAPAN（2017年3月17日）「『副業解禁』から見えてきた理想的な働き方／ロート製薬 吉野俊昭社長」",
                      "url": "https://forbesjapan.com/articles/detail/15393"
                    }
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          "section": "outcome",
          "label": "結果",
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              "sub_title": "応募の広がりと、先行例としての波及",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2016年6月14日、ロート製薬は2月に導入した副業制度へ社員60人強が応募したと明らかにした。薬剤師の資格を持つ社員がドラッグストアで店員として働く例のほか、生産管理を担っていた奈良県出身の社員が同県で初となる地ビールの製造・販売会社を立ち上げる例も生まれた。当時ロートには約1,500人が勤めており、副業を始めたのはその一部であったが、社員が本業の外で事業を起こす動きが具体的な形をとって表れた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2016年6月、副業制度に社員60人強が応募し、薬剤師のドラッグストア勤務や地ビールの製造・販売会社の設立といった例が生まれた",
                      "原文": "薬剤師の有資格者がドラッグストアで店員として働くほか、地ビールの製造・販売をするケースなどがあった。奈良県出身の社員が同県で初となる地ビールの製造・販売会社を立ち上げた。",
                      "source": "日本経済新聞（2016年6月14日）「ロート、社員60人が副業スタート 地ビール製造も」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HE8_U6A610C1000000/"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "制度の利用はその後も広がった。翌2017年の時点で、社外チャレンジワークには約63名が応募して20名あまりが実際に兼業し、社内ダブルジョブには約100名が応募して約30名が兼務を始めていた。政府が働き方改革のなかで副業や兼業の容認を促すより前に制度を敷いたロート製薬は、上場企業における副業解禁の先行例としてたびたび取り上げられた。人材の外部経験を本業へ還流させるという当初の狙いは、他社が追随する形でも輪郭を得ていった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2017年時点で社外チャレンジワークは約63名が応募し20名強が兼業、社内ダブルジョブは約100名が応募し約30名が開始していた",
                      "原文": "副業希望者は約63名が応募し、実際に兼業したのは20名強。社内ダブルジョブは約100名が応募し、約30名が開始した。",
                      "source": "Forbes JAPAN（2017年3月17日）「『副業解禁』から見えてきた理想的な働き方／ロート製薬 吉野俊昭社長」",
                      "url": "https://forbesjapan.com/articles/detail/15393"
                    }
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              "sub_title": "外部資本を持たない会社の、人事の逆張り",
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                {
                  "text": "社外チャレンジワークの核心は、副業を認めたこと自体よりも、社員の発案をそのまま制度へ移し、企業理念ごと挑戦の側へ振り切った点にあるとみることができる。成熟した国内市場で規模の拡大が描きにくくなるなか、ロート製薬は成長の源を設備や買収ではなく人の質に求めた。会社の外で得た経験を本業へ持ち帰らせる回路を開くことは、人材を一つの職務に囲い込む従来の雇用観を静かに崩す試みでもあった。上場していながら創業家が主導権を保ち、市場の短期の評価に縛られにくい独立性が、この逆張りを可能にした面がうかがえる。"
                },
                {
                  "text": "もっとも、制度が人材と業績にどこまで実を結んだかは、なお見きわめが続いている。導入から二年後の2018年には吉野俊昭社長が急逝し、創業家の山田邦雄氏が会長兼社長へ復帰して、以後は販売促進費を抑え利益率を優先する運営へと軸を移した。挑戦を掲げた人事の制度が、成熟期の収益効率を求める経営とどう両立していくかは、その後に残された課題であった。副業で外へ開いた社員の経験が、本業の新しい事業や文化にどれだけ還ってくるのか——その答えは、制度の年数が積み上がるなかで測られていくとみられる。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "ロート製薬 ニュースリリース 2016年6月14日「兼業解禁！会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」",
        "日本経済新聞（2016年6月14日）「ロート、社員60人が副業スタート 地ビール製造も」",
        "Forbes JAPAN（2017年3月17日）「『副業解禁』から見えてきた理想的な働き方／ロート製薬 吉野俊昭社長」",
        "日経ビジネス（2018年12月27日）「ロート製薬山田会長『人材の可能性を引き出すのは経営の責務』」",
        "ロート製薬 有価証券報告書（2016年3月期）"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-08"
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    {
      "slug": "succession-sugimoto-2019",
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      "title": "吉野社長の急逝と、初の社外出身社長・杉本雅史の招聘",
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          "text": "2019年1月に杉本雅史氏を戦略アドバイザーとして招き入れ、6月の定時株主総会後に社長へ据えた。杉本氏は武田コンシューマーヘルスケアの社長を務めた人物で、生え抜きの吉野氏と異なり社外からの登用にあたる。会社は再生医療などの新規事業を事業として育て、グローバル戦略を強めるための起用と説明した。"
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          "text": "選択と集中が主流の製薬業界にあって、ロート製薬は事業の柱を増やす路線を外部のプロ経営者に託した。所有は山田家、執行は外部という分離は、同族企業が規模と多角化に見合う経営の規律をどこで備えるかという問いへの一つの答えであり、その定着は杉本体制のその後に委ねられた。"
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          "title": "吉野俊昭社長が心筋梗塞で急逝（67歳）、山田邦雄氏が会長兼社長に復帰"
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          "title": "販売してきたスキンケア「オバジ」の国内商標権を取得し、総合ヘルスケアの多角化を継続"
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                  "text": "ロート製薬は1899年に山田安民が信天堂山田安民薬房として創業し、山田家による同族経営を120年にわたって続けてきた。1949年の株式会社化にあたっては、創業者の系譜にあたる5兄弟へ株式を均等に配分して外部資本の比率を抑え、上場後も経営権が創業家の手を離れない資本の設計を敷いた。この独立性が、目薬やスキンケアから海外事業まで、他社の目を気にせず打ち手を選ぶ経営を支えてきた。同族の枠のなかでも、社長の座は必ずしも創業家に限られず、非創業家で生え抜きの吉野俊昭氏が経営を担っていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ロート製薬は1899年創業で山田家の同族経営を続け、1949年の株式会社化では創業家の5兄弟へ株式を均等配分して外部資本を抑える資本設計を敷いた",
                      "原文": "1949年の株式会社化にあたり、創業家の5兄弟へ株式を均等に配分して外部資本の比率を抑え、同族による経営権を維持したまま上場の器を整えた。",
                      "source": "ロート製薬 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "その独立性は、雇用の慣行にも表れていた。2016年2月、ロート製薬は入社3年目以降の社員に業務時間外の副業を認める社外チャレンジワーク制度を始め、当時なお稀だった上場企業の副業解禁で先行例となった。経営側の方針ではなく社員の発案から始まった点に、外部資本の圧力から離れた判断の自由がうかがえる。もっとも、国内の大衆薬市場は成長が鈍り、主力の一角だったスキンケアの肌ラボにも頭打ちの兆しが見えていた。売上の拡大より利益率の確保が、次第に経営の優先課題になりつつあった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2016年2月に入社3年目以降の社員へ副業を認める社外チャレンジワーク制度を始め、上場企業の副業解禁の先行例となった",
                      "原文": "2016年2月、入社3年目以降の社員に業務時間外の副業を認める社外チャレンジワーク制度を始めた。",
                      "source": "ロート製薬 ニュースリリース（2016年6月14日）「兼業解禁！会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」",
                      "url": "https://www.rohto.co.jp/news/release/2016/0614_01/"
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "予期せぬ急逝と、承継の空白",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "トップの交代は予期せぬ形で訪れた。2018年、吉野俊昭社長が心筋梗塞により67歳で急逝し、創業家の山田邦雄氏が会長兼社長に復帰して混乱を抑えた。ただ、この復帰は緊急避難の色が濃く、恒久的な体制とは言い難かった。ロート製薬はこの時期までに、目薬や大衆薬にとどまらず、スキンケア、中国を中心とするアジア、さらに脂肪由来幹細胞を使う再生医療や食・農まで事業を広げていた。選択と集中が製薬業界の主流となるなかで、あえて事業の柱を増やす多角経営を担い、山田邦雄氏の後を引き受けられる後継を、どこに求めるかが問われていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2018年に吉野俊昭社長が心筋梗塞により67歳で急逝し、創業家の山田邦雄氏が会長兼社長に復帰した",
                      "原文": "2018年、吉野俊昭社長が心筋梗塞により67歳で急逝し、創業家の山田邦雄氏が会長兼社長に復帰した。",
                      "source": "ロート製薬 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
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            }
          ]
        },
        {
          "section": "origin",
          "label": "決断",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "武田出身の外部人材を、半年の助走を経て社長へ",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2019年1月15日、ロート製薬は杉本雅史氏を戦略アドバイザーとして迎え入れた。杉本氏は武田薬品工業の出身で、同社の一般用医薬品子会社である武田コンシューマーヘルスケアの社長を2017年4月から2018年6月まで務めた人物であった。1984年に武田薬品へ入り、大衆薬の事業を長く歩んできた経歴を持つ。約半年の助走を置いたうえで、杉本氏は6月の定時株主総会後に代表取締役社長へ就いた。急逝で空いた座を創業家が一度は埋めたのち、外部の人材へ引き継ぐという二段構えの承継であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "杉本雅史氏は武田薬品出身で武田コンシューマーヘルスケア社長（2017年4月〜2018年6月）を務め、2019年1月15日にロート製薬へ戦略アドバイザーとして入社、6月の株主総会後に社長へ就任した",
                      "原文": "2017年4月から2018年6月まで武田コンシューマーヘルスケアの社長を務めた。杉本氏は1月15日にロート製薬に戦略アドバイザーとして入社し、6月の株主総会と取締役会で社長に正式任命される。山田邦雄会長は6月以降、代表権のある会長に留まる。",
                      "source": "WWDJAPAN（2019年1月）「ロート製薬新社長に武田薬品子会社の前社長が内定」",
                      "url": "https://www.wwdjapan.com/articles/766417"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "杉本氏は、非創業家という点では吉野俊昭氏に続く社長にあたるが、生え抜きだった吉野氏と異なり、社外からの登用による初の社長となった。同族経営を120年続けた会社が、執行の最上位を初めて外部の人材へ開いた判断といえる。山田邦雄氏は代表権のある会長にとどまり、創業家として所有と象徴を担い続けた。ロート製薬は起用の理由を、ヘルスケアの事業をさらに進化させ、再生医療などの新規事業を研究段階から事業へと育て、グローバル戦略を強めるためと説明した。多角化した事業を回す実務を、大衆薬とグローバルに通じた外部人材へ託す狙いがうかがえる。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "杉本雅史氏は吉野俊昭氏に続く非創業家の社長だが社外出身の社長は初めてで、会社はヘルスケアの進化と再生医療など新規事業の事業化・グローバル戦略の強化を起用理由に挙げた",
                      "原文": "杉本氏は吉野俊昭前社長に続き、創業家以外からの社長となる。ヘルスケアビジネスをより進化させつつ、再生医療などの新規事業領域をビジネスベースに発展させていくため、グローバル戦略でもヘルスケア分野で長年実績のある杉本氏を登用する。",
                      "source": "WWDJAPAN（2019年1月）「ロート製薬新社長に武田薬品子会社の前社長が内定」",
                      "url": "https://www.wwdjapan.com/articles/766417"
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "「健康の総合企業」への進化という受け皿",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "就任にあたって杉本氏が掲げたのは、大衆薬の会社から「健康の総合企業」への進化であった。目薬やスキンケアで築いた基盤の上に、再生医療や食・農、機能性表示食品といった領域を重ね、人々の健康と幸福に寄与する事業の柱を増やす方針を示した。多くの製薬会社が採算の見込みにくい事業を切り離す選択と集中へ向かうなかで、ロート製薬はむしろ間口を広げる路線を継いだ。創業家が独立性を武器に広げてきた多角経営を、外部のプロ経営者が引き受けて前へ進める構図が、この承継の受け皿となっていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "杉本雅史氏は就任にあたり「健康の総合企業」への進化を掲げ、再生医療などへ事業の柱を広げる方針を示した",
                      "原文": "「健康の総合企業に」ロート製薬新社長 杉本雅史氏",
                      "source": "日本経済新聞（2019年7月30日）「『健康の総合企業に』ロート製薬新社長 杉本雅史氏」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47902320Z20C19A7LKA000/"
                    }
                  ]
                }
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            }
          ]
        },
        {
          "section": "outcome",
          "label": "結果",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "所有と執行の分離、利益率を重んじる運営へ",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "杉本体制の初年度となった2020年3月期は、連結売上高が1,883億円、営業利益が231億円、経常利益が227億円と、前期から増収増益で着地した。国内とアジアで販売促進費を抑え、営業利益率は3期連続で改善した。創業者一族の山田輝郎氏の時代から続いた、広告を一製品に集中してかける高投資のモデルを、成熟した国内市場に合わせて見直し、規模の拡大より利益率を重んじる運営へと切り替えていった。急逝がもたらした承継の空白は、創業家が所有と象徴を、外部のプロ経営者が日々の執行を担う分業のかたちで埋められた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "杉本体制初年度の2020年3月期は連結売上高1,883億円・営業利益231億円・経常利益227億円で、国内・アジアの販促費抑制により営業利益率が3期連続で改善した",
                      "原文": "2022年3月期までに国内とアジアで販売促進費を抑え、3期連続で営業利益率を改善した。",
                      "source": "ロート製薬 有価証券報告書（2020年3月期）",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "分業の体制は、その後の多角化にも引き継がれた。杉本氏のもとでロート製薬はSDGsやD2Cへの取り組みを広げ、脂肪由来幹細胞を用いる再生医療の治験を進め、2025年には24年間販売してきたスキンケアの「オバジ」の国内商標権を取得して、育てた導入ブランドを自らの資産に組み入れた。創業家が独立性のもとで蒔いた多角化の種を、外部から迎えた経営者が事業として刈り取っていく流れが続いた。所有の一貫性と執行の専門性を組み合わせる体制は、同族企業の弱みとされがちな経営の属人性を薄める試みでもあった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "杉本体制下でロート製薬はSDGs・D2Cを広げ再生医療の治験を進め、2025年には販売してきた「オバジ」の国内商標権を取得した",
                      "原文": "ロート製薬は2025年11月、24年間国内で販売してきたスキンケアブランド「オバジ」の国内関連商標・恒久ライセンス・販売権を取得した。",
                      "source": "WWDJAPAN（2025年11月）「絶好調のロート製薬、今期2度目の上方修正 『オバジ』日本商標を取得し事業拡大へ」",
                      "url": "https://www.wwdjapan.com/articles/2260767"
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "同族の設計と、その現代化",
              "editorial": true,
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "この承継の核心は、社長の急逝という偶発に対処したことよりも、創業120年の同族企業が、自らの独立性を保ったまま執行を外部へ開いた点にあるとみることができる。1949年の株式会社化で敷かれた、外部資本を抑える資本の設計は、他社の顔色をうかがわずに副業解禁や再生医療といった逆張りの多角化を可能にしてきた。その独立性は創業家がトップに座ることで担保されてきた面が大きい。吉野俊昭氏の急逝は、その前提を揺らすと同時に、所有は手放さずに執行だけを専門家へ委ねるという、次の形を試す契機になったとみられる。"
                },
                {
                  "text": "山田邦雄氏が代表権のある会長として残り、武田出身の杉本雅史氏が社長として実務を預かる体制は、同族の求心力と外部の規律をひとつに束ねる試みといえる。選択と集中に逆らって事業の裾野を広げるほど、多角化した各事業を採算に乗せる規律が要る。創業家の独立性が生む挑戦の気風を薄めずに、総合ヘルスケアへ広げた事業の一つひとつを利益の出る形へ育てられるかどうかに、外部から迎えた経営者の力量が問われていく。同族企業が規模と多角化に見合う経営の規律をどこで身につけるのかという問いは、2019年の承継を経てなお開かれたままである。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "WWDJAPAN（2019年1月）「ロート製薬新社長に武田薬品子会社の前社長が内定」",
        "日本経済新聞（2019年7月30日）「『健康の総合企業に』ロート製薬新社長 杉本雅史氏」",
        "ロート製薬 ニュースリリース（2016年6月14日）「兼業解禁！会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の『社外チャレンジワーク』スタートします」",
        "WWDJAPAN（2025年11月）「絶好調のロート製薬、今期2度目の上方修正 『オバジ』日本商標を取得し事業拡大へ」",
        "ロート製薬 有価証券報告書（2020年3月期）",
        "ロート製薬 有価証券報告書【沿革】"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-08"
    }
  ]
}
