{
  "stock_code": "2670",
  "count": 3,
  "decisions": [
    {
      "slug": "korea-production-spa-1990",
      "url": "/tse/2670/decisions/korea-production-spa-1990/",
      "year": 1990,
      "month": 2,
      "schema_version": "1.0",
      "stock_code": "2670",
      "decision_id": "2670-korea-production-spa-1990",
      "type": "transformation",
      "tags": [
        "pf-vertical",
        "st-lowcost",
        "gl-entry",
        "st-brand"
      ],
      "regions": [
        "korea"
      ],
      "title": "韓国での生産委託とライセンス取得によるカジュアルシューズのSPA化",
      "subtitle": "欧米ブランドの販売権を売り歩く輸入卸のままでいるか、企画と生産まで自社で握るか",
      "status": "implemented",
      "status_label": "実施",
      "scheme": null,
      "ratio": null,
      "issue": "商品調達と生産体制",
      "decider": "三木正浩（社長）",
      "highlights": [
        {
          "label": "概要",
          "text": "1990年2月、欧米カジュアルブランドの輸入卸だったインターナショナル・トレーディング・コーポレーション（ITC）が、韓国での靴の生産委託を始めた。翌1991年6月には英G.T.HAWKINS LIMITED社からライセンス生産の権利を取得し、企画・生産・販売を自社で握る製造小売（SPA）の体制へ移した経営判断。"
        },
        {
          "label": "背景",
          "text": "創業から数年で「ホーキンス」「コスビー」など複数の欧米ブランドの国内独占販売権を集めたものの、卸売の利益は仕入れ値と為替に規定される。1990年3月期の経常利益は1億円にとどまり、販売権を束ねるだけでは利益が積み上がらなかった。"
        },
        {
          "label": "内容",
          "text": "日本に近く工賃の安い韓国の工場へ生産を委託し、ブランド側からは商標使用権に加えてライセンス生産の権利を得た。1995年3月には「G.T.HAWKINS」の商標権そのものを買収し、代理店からブランド所有者へ移った。"
        },
        {
          "label": "含意",
          "text": "中間の商社機能を自社に取り込んだ結果、1993年にはホーキンスの店頭価格を3割下げながら利益率24％を保った。輸入卸で培った商品調達の技術は、のちの小売専業への転換後もプライベートブランドの土台として残った。"
        }
      ],
      "parties": [
        {
          "stock_code": "2670",
          "name": "インターナショナル・トレーディング・コーポレーション（現エービーシー・マート）",
          "role": "当事者",
          "at_deal": {
            "note": "靴・衣料の輸入販売を営む従業員60名弱の卸売会社。ホーキンス・コスビー等の国内独占販売権を保有"
          }
        }
      ],
      "dates": {
        "reported": null,
        "announced": "1990-02",
        "agreed": null,
        "closed": "1995-03",
        "terminated": null
      },
      "breakdown": {
        "reason_type": "strategy",
        "summary": "独占販売権に頼る輸入卸の薄い利益を、生産の内製化とライセンス取得によって組み替え、価格と粗利を自社で決められる体制へ移した判断"
      },
      "timeline": [
        {
          "year": 1985,
          "month": 6,
          "title": "靴・衣料の輸入販売を目的に株式会社国際貿易商事を設立"
        },
        {
          "year": 1986,
          "month": null,
          "title": "「ホーキンス」の国内独占販売権を取得"
        },
        {
          "year": 1987,
          "month": 7,
          "title": "商号をインターナショナル・トレーディング・コーポレーションへ変更、米社と「COSBY」の商標使用権・独占販売権契約を締結"
        },
        {
          "year": 1990,
          "month": 2,
          "title": "韓国での生産委託を始め、カジュアルシューズのSPAを志向",
          "highlight": true
        },
        {
          "year": 1991,
          "month": 6,
          "title": "英G.T.HAWKINS LIMITED社より「G.T.HAWKINS」のライセンス生産の権利を取得"
        },
        {
          "year": 1995,
          "month": 3,
          "title": "同社より「G.T.HAWKINS」の商標権を買収"
        },
        {
          "year": 1996,
          "month": null,
          "title": "ITC単体の売上高が268億円に達する"
        }
      ],
      "snapshot": {
        "fiscal_year": "1990年3月期",
        "source": "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月（ITC単体業績）",
        "companies": [
          {
            "stock_code": "2670",
            "name": "インターナショナル・トレーディング・コーポレーション",
            "fiscal_year": "1990年3月期（単体）",
            "president": "三木正浩",
            "hq": "東京都荒川区",
            "sales": {
              "num": 34,
              "unit": "億円"
            },
            "segments": [],
            "operating_profit": null,
            "ordinary_profit": {
              "num": 1,
              "unit": "億円"
            },
            "net_profit": null,
            "equity_ratio": null,
            "roe": null,
            "employees": {
              "num": 57,
              "unit": "人",
              "note": "単体"
            },
            "avg_salary": null
          }
        ]
      },
      "report": [
        {
          "section": "background",
          "label": "背景",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "独占販売権を束ねる輸入卸として出発した",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "1985年6月、三木正浩氏は靴と衣料の輸入販売を目的に株式会社国際貿易商事を設立した。資本金は20百万円、本社は東京都新宿区早稲田に置いた。翌1986年にはロンドンで流行していた革靴「ホーキンス」の国内独占販売権を取得し、1987年7月には商号をインターナショナル・トレーディング・コーポレーション（ITC）へ改め、米GERRY COSBY & CO.,INC.社と「COSBY」の国内商標使用権・独占販売権契約を結んだ。海外で売れているが日本では無名という段階のブランドを、権利ごと押さえる商法であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1985年6月に靴・衣料の輸入販売を目的として株式会社国際貿易商事を設立し、1987年7月に商号をITCへ変更してCOSBYの国内商標使用権・独占販売権契約を締結した",
                      "原文": "1985年６月 靴、衣料の輸入販売を目的として、東京都新宿区早稲田に当社の前身である「株式会社国際貿易商事」を設立(資本金20百万円)。1987年７月 東京都荒川区三河島に本社を移転し、「株式会社インターナショナル・トレーディング・コーポレーション」に商号変更。GERRY COSBY & CO.,INC.社(米国)と「COSBY」の国内での商標使用権・独占販売権契約を締結。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "1986年にロンドンで流行していた革靴ブランド「ホーキンス」の国内独占販売権を取得した",
                      "原文": "翌年にはロンドンで流行していた革靴ブランド「ホーキンス」の国内独占販売権を取得した。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "権利の集積は売上に直結した。全社売上高はFY1987の25億円からFY1990の47億円へ、4年で約1.9倍に伸びた。1991年1月には米VANS,INC.社と「VANS」の国内独占販売権契約も結び、扱うブランドの数はさらに増えた。競合が同じ商品を仕入れられないという排他性が、この時期のITCの商売を支えていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ITCの全社売上高はFY1987の25億円からFY1990の47億円へ4年で約1.9倍に拡大した",
                      "原文": "ITCの全社売上高はFY1987の25億円からFY1990の47億円へ、4年間で約1.9倍に拡大した。",
                      "source": "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "1991年1月に米VANS,INC.社と「VANS」の国内独占販売権契約を締結した",
                      "原文": "1991年１月 VANS,INC.社(米国)と「VANS」の国内での独占販売権契約を締結。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "販売権を持っていても価格は決められない",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "ところが、売上の伸びに比べて利益の積み上がりは鈍かった。1990年3月期の単体売上高は34億円、経常利益は1億円にとどまる。輸入卸の粗利は仕入れ値と為替相場に規定され、値付けの自由度は乏しい。ブランドの権利を握っていても、その靴をどこでいくらで作るかを決めているのは海外のメーカーであり、円高や現地の工賃の変動がそのまま原価に跳ね返る構造にあった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1990年3月期のITC単体は売上高34億円・経常利益1億円で、従業員は57名だった",
                      "原文": "1990年3月期のインターナショナル・トレーディング・コーポレーションは単体売上高34億円、経常利益1億円、従業員57名であった。",
                      "source": "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月（ITC単体業績）",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "商材の構成にも偏りがあった。FY1991の内訳では、コスビーが9億円、ホーキンスが10億円、その他の靴が14億円に対し、衣料品・雑貨が41億円を占める。靴の専業とは言いがたい構成で、しかもどのブランドも流行が去れば入れ替わる。複数の権利を束ねる仕組みは流行の変動には強かったものの、一つひとつの商品で稼ぐ厚みには欠けていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "FY1991の売上内訳はコスビー9億円・ホーキンス10億円・その他の靴14億円・衣料品雑貨41億円だった",
                      "原文": "FY1991時点の内訳ではホーキンスとコスビーが靴事業の柱として並び立ち、衣料品・雑貨も41億円と厚みを持つ商材構成で、複数ブランドを束ねる卸売モデルが機能していた。",
                      "source": "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "origin",
          "label": "決断",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "韓国の工場へ生産を委託する",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "1990年2月、三木氏は韓国での靴の生産委託に着手した。欧米ブランドの本来の生産地を離れ、日本に近く工賃の安い韓国へ発注先を移す選択であった。同じ月に上野アメ横と渋谷で小売4店舗を開いており、川上の生産と川下の売場に同時に手を伸ばした時期にあたる。輸入した完成品を問屋へ流すだけの商売から、どこで何足作るかを自社で決める商売への切り替えであった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1990年2月から韓国での生産委託体制を築き、カジュアルシューズのSPAを志向した",
                      "原文": "1990年から三木氏は韓国での生産委託体制を築き、カジュアルシューズのSPAを志向した。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "1990年2月に上野地区へABC-MART1号店、渋谷地区へGALLOP渋谷店など4店舗を開いた",
                      "原文": "1990年２月 靴、衣料の小売部門進出を目的として、上野地区に「ABC-MART」１号店(東京都台東区)、渋谷地区に「GALLOP」渋谷店(東京都渋谷区)など４店舗をオープン。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "生産の受け皿だけでは足りない。作る権利がなければ、委託工場に発注できるのは部材の調達や梱包までにとどまる。1991年6月、ITCは英G.T.HAWKINS LIMITED社から「G.T.HAWKINS」のライセンス生産の権利を取得した。国内での独占販売権に生産権が重なり、企画・生産・販売の三つを自社の管理下に置く条件が揃った。1994年6月には米VANS,INC.社とも国内商標使用権契約を結び、同じ形を二つ目の主力ブランドへ広げた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1991年6月に英G.T.HAWKINS LIMITED社よりライセンス生産の権利を取得し、1994年6月に米VANS,INC.社と国内商標使用権契約を締結した",
                      "原文": "1991年６月 G.T.HAWKINS LIMITED社(英国)より「G.T.HAWKINS」のライセンス生産の権利を取得。1994年６月 VANS,INC.社と「VANS」の国内での商標使用権契約を締結。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "3割下げても利益率は落とさない",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "生産を自社の管理下へ移した効果は、値付けに現れた。1993年、ITCはホーキンスの販売価格を30％下げながら、利益率24％を保った。輸入商社と国内問屋の取り分が消え、その分を価格の引き下げと自社の粗利へ振り向けられたためであった。安く売るために品質を落とすのでも、ブランドの格を下げるのでもなく、流通の途中にあった費用を自社に取り込んで両立させる算段であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1993年にホーキンスの販売価格を30％値下げしつつ利益率24％を維持した",
                      "原文": "1993年にはホーキンスの販売価格を30%値下げしつつ利益率24%を維持し、低価格と高利益率を両方達成した。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "1995年3月には、ライセンスを借りる立場からもう一歩進み、G.T.HAWKINS LIMITED社から「G.T.HAWKINS」の商標権そのものを買収した。国内総代理店、ライセンス生産権、商標権と、9年をかけて権利の段を上がり、他社から借りた看板を自社の資産へ変えた。カジュアルシューズで企画から生産、値付けまでを一社で完結させる会社は、当時の日本の靴業界では例が少なかった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1995年3月にG.T.HAWKINS LIMITED社より「G.T.HAWKINS」の商標権を買収した",
                      "原文": "1995年３月 G.T.HAWKINS LIMITED社より「G.T.HAWKINS」の商標権を買収。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "outcome",
          "label": "結果",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "売上は6年で5.7倍、そして頭を打つ",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "数字の伸び方は転換の前後で変わった。単体売上高はFY1990の47億円からFY1992に130億円、FY1996には268億円へと6年で5.7倍に膨らんだ。1992年3月期の経常利益は18億円で、2年前の1億円から一桁上がっている。従業員も57名から150名へ増えた。生産と価格を自社で握った効果は、卸売業のままでは届かなかった水準の利益として表に出た。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ITC単体売上はFY1990の47億円からFY1996の268億円へ6年で5.7倍に拡大した",
                      "原文": "ITC単体売上はFY1990の47億円からFY1996の268億円へ6年で5.7倍に拡大し、ブームのピークを打った後はFY1998の177億円まで縮小した。",
                      "source": "エービーシー・マート DATA BOOK 2001 / 矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "1992年3月期のITC単体は売上高75億円・経常利益18億円・従業員150名で、1990年3月期の経常利益1億円・従業員57名から伸びた",
                      "原文": "1992年3月期のインターナショナル・トレーディング・コーポレーションは単体売上高75億円、経常利益18億円、従業員150名であった。",
                      "source": "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月（ITC単体業績）",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "もっとも、SPA化はホーキンス一本への依存を深めもした。1995年11月に木村拓哉氏を起用したテレビ広告へ40億円を投じるとブームは頂点に達し、その後の需要は急速にしぼんだ。単体売上はFY1998に177億円まで縮んでいる。作る力と売る力を自社に集めたことが、一つのブランドの寿命に会社全体の業績が連動する構造も同時に作り出した。この経験が、売場を自社で持って需要を平準化する小売業への転換を促す材料となった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1995年に木村拓哉氏を起用したホーキンスのTVCMへ40億円を投下した",
                      "原文": "1995年には年間利益37億円のもとで、木村拓哉起用のTVCMへ40億円を投下した。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "ITC単体売上はブームのピーク後にFY1998の177億円まで縮小した",
                      "原文": "ITC単体売上はFY1990の47億円からFY1996の268億円へ6年で5.7倍に拡大し、ブームのピークを打った後はFY1998の177億円まで縮小した。",
                      "source": "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "輸入商社であった時代の技術が残った",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2017年、社長の野口実氏は仕入れについて「輸入商社だった頃のノウハウを生かし、自社調達による中間コスト削減や、生産効率化によるリーズナブルな商品開発を意識している」と語っている。1990年代に韓国の工場と向き合って覚えた発注と原価の技術は、小売専業になった後もプライベートブランドの商品開発として残った。転換の産物は、店舗網でも売上高でもなく、この調達の技術であったとみることができる。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2017年に野口実社長は輸入商社時代のノウハウを生かした自社調達による中間コスト削減と生産効率化を挙げた",
                      "原文": "他社から仕入れる商品の場合、海外の有名メーカーと早期に契約を交わし、限定商品を企画している。また、輸入商社だった頃のノウハウを生かし、自社調達による中間コスト削減や、生産効率化によるリーズナブルな商品開発を意識している。",
                      "source": "週刊東洋経済 2017年1月14日号「この人に聞く エービーシー・マート 社長 野口 実 新規客獲得が増益の秘訣 売れ筋は現場で見極める」",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "この技術は、2020年代に入って別の意味を帯びた。米ナイキや独アディダスが消費者への直接販売を強め、卸す小売店を選別し始めたためである。ナイキの直販比率は2013年の18.9％から2022年5月期に42.1％へ上がり、仕入れの品揃えだけで戦ってきた靴小売各社は打撃を受けた。エービーシー・マートは大手ブランドとの取引を保ちつつ、ヴァンズやホーキンスといった自社ブランドで大手が埋めない需要を補う構えを取った。1990年代に生産の権利まで取りにいった判断が、30年後の仕入れ環境の変化に対する備えとして働いたとみられる。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "ナイキの直販比率は2013年の18.9％から2022年5月期に42.1％へ上昇し、大手ブランドの直販シフトが靴小売各社を圧迫した",
                      "原文": "６月２７日にナイキが発表した２２年５月期決算では、売上高のうち直営店や自社ＥＣ（ネット通販）で販売された「直販比率」は４２．１％（下図）。１３年の１８．９％と比べ、この１０年で２倍以上に高まっている。",
                      "source": "週刊東洋経済 2022年7月23日号「ナイキの「選別」で激震 靴小売りを揺さぶる地殻変動」",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "エービーシー・マートはナイキ等と強いパイプを保ち、PBのヴァンズ・ホーキンスで大手が埋めないニッチな需要を補う方針を採った",
                      "原文": "ＰＢは「ヴァンズ」や「ホーキンス」が主力ブランドだ。米ナイキや独アディダスといった大手メーカーでは埋められない、ニッチな需要をＰＢで補っていく。",
                      "source": "週刊東洋経済 2017年1月14日号「この人に聞く エービーシー・マート 社長 野口 実 新規客獲得が増益の秘訣 売れ筋は現場で見極める」",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "権利を借りる側から、作る側へ",
              "editorial": true,
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "この決断の中心にあるのは、輸入卸という商売の利益がどこで決まっているのかという問いである。海外で無名のブランドを見つけて独占販売権を押さえる商法は、見つけた者の目利きが利益になる。しかし権利を握っても、作る場所と原価を決めているのは相手側であり、円高が来れば粗利は削られる。三木氏が韓国の工場へ発注を移し、ライセンス生産の権利を買い、最後には商標そのものを取得したのは、他社に預けたままの部分を一つずつ手元へ引き取っていく作業であったとみられる。"
                },
                {
                  "text": "もっとも、垂直統合は万能ではなかった。作る力と売る力が一つのブランドへ集中した結果、ホーキンスのブームが去ると業績は同じだけ落ちた。会社はその後、売場を自社で持つ小売業へ転じ、複数のブランドと自社企画を並べる構えへ移っていく。1990年の判断が残したものは特定ブランドの成功ではなく、どこで誰にいくらで作らせるかを自社で決められる会社になったという条件であった。40年近く経った今も、その条件が同社の粗利率を支えているとみることができる。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月",
        "戦略経営者 2000年7月号",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
        "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
        "週刊東洋経済 2017年1月14日号「この人に聞く エービーシー・マート 社長 野口 実 新規客獲得が増益の秘訣 売れ筋は現場で見極める」",
        "週刊東洋経済 2022年7月23日号「ナイキの「選別」で激震 靴小売りを揺さぶる地殻変動」"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-22"
    },
    {
      "slug": "korea-overseas-expansion-2002",
      "url": "/tse/2670/decisions/korea-overseas-expansion-2002/",
      "year": 2002,
      "month": 8,
      "schema_version": "1.0",
      "stock_code": "2670",
      "decision_id": "2670-korea-overseas-expansion-2002",
      "type": "overseas",
      "tags": [
        "gl-entry",
        "gl-expansion"
      ],
      "regions": [
        "korea",
        "taiwan",
        "southeast-asia"
      ],
      "title": "韓国を皮切りにSPA型小売モデルをアジアへ移した海外展開",
      "subtitle": "国内で組み上げた売場と商品の型は、国境を越えても通用するのか",
      "status": "implemented",
      "status_label": "実施",
      "scheme": "現地企業との合弁（出資比率51.0％）で韓国法人を設立し、のちに完全子会社化",
      "ratio": null,
      "issue": "海外市場への展開と現地法人の持分政策",
      "decider": "三木正浩（社長）",
      "highlights": [
        {
          "label": "概要",
          "text": "2002年8月、エービーシー・マートは韓国での靴小売を目的にABC-MART KOREA,INC.を出資比率51.0％の合弁で設立した。2004年から本格的な出店を始め、韓国はのちに海外で最大の市場となる。台湾・米国・ベトナム・フィリピンへ広がる海外網の最初の一手にあたる。"
        },
        {
          "label": "背景",
          "text": "同じ2002年に卸売を畳んで小売専業へ移り、国内店舗数は100に達していた。1990年以来、靴の生産は韓国の工場へ委託しており、供給網と販売先が同じ国で重なる利点があった。"
        },
        {
          "label": "内容",
          "text": "現地企業と組む合弁から入り、2010年10月の増資で出資比率を68.0％、2011年3月に100.0％へ引き上げた。2010年2月には台湾のJOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.へ資本参加して子会社化し、2022年3月にはベトナムで合弁会社を設立した。"
        },
        {
          "label": "含意",
          "text": "韓国の店舗数はFY2005の30店から2026年2月末の320店へ増え、2025年2月期の韓国売上高は705億円に達した。一方で現地では日系という認識が薄く、そのことが不買運動の影響を抑える反面、ブランドの由来を訴える手立てを持たない状態も生んだ。"
        }
      ],
      "parties": [
        {
          "stock_code": "2670",
          "name": "エービーシー・マート",
          "role": "当事者",
          "at_deal": {
            "note": "2002年に卸売を畳み小売専業へ移った直後。国内店舗数100、連結売上高389億円（2003年2月期）"
          }
        }
      ],
      "dates": {
        "reported": null,
        "announced": "2002-08",
        "agreed": null,
        "closed": null,
        "terminated": null
      },
      "breakdown": {
        "reason_type": "market",
        "summary": "国内で組み上げたSPAと店舗運営の型を、生産委託先でもある韓国へ移し、そこを足がかりにアジアへ売場を広げた市場開拓"
      },
      "timeline": [
        {
          "year": 2002,
          "month": 8,
          "title": "韓国での靴小売を目的に「ABC-MART KOREA,INC.」を出資比率51.0％で設立",
          "highlight": true
        },
        {
          "year": 2004,
          "month": null,
          "title": "韓国で本格的な出店を開始"
        },
        {
          "year": 2010,
          "month": 2,
          "title": "台湾の「JOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.」へ資本参加し連結子会社化"
        },
        {
          "year": 2011,
          "month": 3,
          "title": "「ABC-MART KOREA,INC.」を完全子会社化、同年9月に韓国で100店を達成"
        },
        {
          "year": 2017,
          "month": 4,
          "title": "韓国の店舗数が200に到達"
        },
        {
          "year": 2022,
          "month": 3,
          "title": "ベトナムに合弁会社「ABC-MART VIETNAM Co.,Ltd.」を出資比率70.0％で設立"
        },
        {
          "year": 2026,
          "month": 6,
          "title": "韓国の現地衣料大手から靴販売事業を買収"
        }
      ],
      "snapshot": {
        "fiscal_year": "2003年2月期",
        "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書（2003年2月期・連結）",
        "companies": [
          {
            "stock_code": "2670",
            "name": "エービーシー・マート",
            "fiscal_year": "2003年2月期（連結）",
            "president": "三木正浩",
            "hq": "東京都渋谷区",
            "sales": {
              "num": 389,
              "unit": "億円"
            },
            "segments": [],
            "operating_profit": null,
            "ordinary_profit": null,
            "net_profit": {
              "num": 41,
              "unit": "億円"
            },
            "equity_ratio": null,
            "roe": null,
            "employees": {
              "num": 618,
              "unit": "人",
              "note": "連結。韓国法人は設立直後で店舗はまだない"
            },
            "avg_salary": null
          }
        ]
      },
      "report": [
        {
          "section": "background",
          "label": "背景",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "国内で型が出来上がった時期にあたる",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2002年は、エービーシー・マートにとって国内事業の形が定まった年であった。3月に卸売を営む親会社が小売子会社を吸収し、8月に商号を小売側の名へ改めている。同じ8月には店舗数が100に達した。1999年7月に定めたSC向けの積極出店が軌道に乗り、都心の路面店と郊外のテナントを組み合わせる売場の構成も固まりつつあった。国内で再現できる型が出来上がったところで、海外がその次の対象となった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2002年に卸売から小売へ業種転換を始め、同年8月に商号変更と店舗数100の達成が重なった",
                      "原文": "株式会社エービーシー・マートを吸収合併、卸売から小売へ業種転換をはじめる・社名を株式会社エービーシー・マートに変更・8月、100店舗達成・韓国法人ABC-MART KOREA,INC.を設立（出資比率51%）、韓国に『ABC-MART』を出店・東京証券取引所市場第１部に上場",
                      "source": "エービーシー・マート公式サイト「ABC-MART の歴史」",
                      "url": "https://www.abc-mart.co.jp/aboutus/rekishi.html"
                    },
                    {
                      "fact": "1999年7月にSC向けの積極出店方針を定め、都心路面店とSCテナントを並行して増やした",
                      "原文": "1999年7月にABCマートはSC向けの積極出店方針を決めた。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "移す中身は、商品と売場の両方にあった。1990年から韓国の工場へ生産を委託し、ライセンス生産の権利と商標を押さえて価格を自社で決める体制を築いている。加えて、売れ筋を店頭で見極めて品揃えを組み替える運営の作法も国内で磨いてきた。工場も、商品も、店の作り方も自社の管理下にある会社が、その一式をまとめて別の国へ持ち込む構想であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1990年から韓国での生産委託体制を築き、独占販売権に加えて生産ライセンスも取得してSPAの体制を整えた",
                      "原文": "1990年から三木氏は韓国での生産委託体制を築き、カジュアルシューズのSPAを志向した。独占販売権に加えて生産ライセンスも取得し、ブランド力・生産力・価格競争力を自社で統合する体制を整えた。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "最初の市場として韓国を選んだ理由",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "進出先の条件は明快であった。経済発展が一巡し、衣料や靴に支出できる若年層が厚い市場であること。韓国はこの条件に合い、価格帯と商品構成をそのまま持ち込める見込みが立った。加えて1990年以来の生産委託で現地の工場や物流の事情に通じており、供給する側と売る側が同じ国に重なる利点もあった。地理の近さは、商品の入れ替えを頻繁に行う運営とも相性がよい。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "韓国は経済発展が一巡しファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった",
                      "原文": "韓国は経済発展が一巡し、ファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "創業期から続く韓国生産の供給網が同じ国の小売チャネルを支え、生産地と販売地が重なった",
                      "原文": "創業期から続く韓国生産の供給網が同じ国の小売チャネルを支える構造で、生産地と販売地の重なりが物流効率を押し上げた。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "もっとも、国内で通用した商品が海外でそのまま売れる保証はない。日本での知名度や広告の蓄積は国境で途切れ、現地では新規の一社として棚と客を取りにいくことになる。合弁という入り方は、この不確かさに対する備えでもあった。出資比率51.0％で経営の主導は握りつつ、店舗の立地選びや人の採用には現地企業の知見を借りる構えを採った。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2002年に出資比率51.0％で韓国の合弁会社ABC-MART KOREA,INC.を設立し現地企業とパートナーシップを組んだ",
                      "原文": "ABCマートは海外小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%で、現地企業とパートナーシップを組んだ。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "origin",
          "label": "決断",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "合弁で入り、2年かけて店を出す",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2002年8月、韓国における靴の小売を目的として「ABC-MART KOREA,INC.」を出資比率51.0％で設立した。国内で小売専業への転換を終えたのと同じ月にあたる。ただし設立から店舗網の構築までは間が空き、本格的な出店が始まるのは2004年であった。現地の立地条件と客層を確かめ、商品構成を組み直したうえで数を増やす順を採った。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2002年8月に韓国における靴の小売展開を目的として「ABC-MART KOREA,INC.」を出資比率51.0％で設立した",
                      "原文": "2002年８月 韓国における靴の小売展開を目的として、「ABC-MART KOREA,INC.」を設立(出資比率51.0％)。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "韓国では2004年から本格出店を開始し、以後海外事業で最大の売上を確保する地域となった",
                      "原文": "2004年から本格出店を開始し、以後韓国はABCマート海外事業で最大の売上を確保する地域となった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "出店の号令をかけたのは、2004年に社長へ就いた金城正宏氏であった。創業者の三木正浩氏は代表取締役として経営に残り、国内の出店を進めながら韓国市場に狙いを定めている。国内でSC出店の速度を上げていた時期に、同じ経営陣が海外の店舗網にも着手した。国内と海外を別々の段階に分けるのではなく、並行して増やす選択であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2004年に金城正宏氏が社長へ就任し、三木正浩氏は代表取締役として残り、同年から韓国での出店を始めた",
                      "原文": "2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役（会長）として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開（韓国）への布石をうった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "持分を上げ、次の市場を足す",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "韓国事業が軌道に乗ると、持分の政策も変わった。2010年10月に増資を引き受けて出資比率を68.0％へ上げ、2011年3月には100.0％の完全子会社とした。合弁で入って現地の知見を借り、事業の型が固まった段階で単独の意思決定へ移す順である。同じ2011年9月、韓国の店舗数は100に達した。設立から9年をかけて、最大の海外市場としての位置が固まった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2010年10月の増資で出資比率を68.0％へ引き上げ、2011年3月に「ABC-MART KOREA,INC.」を完全子会社化した",
                      "原文": "2010年10月 連結子会社「ABC-MART KOREA,INC.」が当社全額引受けによる株主割当増資を実施(出資比率68.0％)。2011年３月 連結子会社「ABC-MART KOREA,INC.」を完全子会社化(出資比率100.0％)。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "2011年9月に韓国で100店舗を達成した",
                      "原文": "ABC-MART KOREA,INC.を完全子会社化・9月、韓国で100店舗達成",
                      "source": "エービーシー・マート公式サイト「ABC-MART の歴史」",
                      "url": "https://www.abc-mart.co.jp/aboutus/rekishi.html"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "二つ目の市場は台湾であった。2010年2月に現地で靴小売を営むJOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.へ資本参加して出資比率55.0％で子会社とし、同年8月の増資で70.0％へ上げたうえで社名をABC-MART TAIWAN,INC.へ改めた。既存の会社を買って看板を掛け替える入り方で、韓国のように一から作る手間を省いている。2022年3月にはベトナムで出資比率70.0％の合弁会社を設立し、東南アジアへ初めて出た。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2010年2月に台湾のJOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.へ資本参加し55.0％で子会社化、同年8月の増資で70.0％とし社名をABC-MART TAIWAN,INC.へ変更した",
                      "原文": "2010年２月 台湾における靴の小売展開を目的として、台湾の「JOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.」に資本参加し、連結子会社化(出資比率55.0％)。2010年８月 連結子会社「JOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.」が当社全額引受けによる株主割当増資を実施(出資比率が70.0％)。また、「JOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.」は社名を「ABC-MART TAIWAN,INC.」に変更。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "2022年3月にベトナム社会主義共和国へ合弁会社「ABC-MART VIETNAM Co.,Ltd.」を出資比率70.0％で設立し連結子会社化した",
                      "原文": "2022年３月 ベトナム社会主義共和国に合弁会社「ABC-MART VIETNAM Co.,Ltd.」を設立し、連結子会社化(出資比率70.0％)。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "outcome",
          "label": "結果",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "韓国が海外で最大の市場になった",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "店舗数の伸び方は国内の再現に近かった。韓国はFY2005の30店から2017年4月に200店、FY2023には316店へ増えている。台湾も2011年2月期の4店からFY2023の63店まで広がった。売上高でも、2025年2月期の韓国は705億円、韓国以外の海外は436億円を計上している。本邦の売上が9割を超えるとして地域別の記載を省いていた2010年代半ばとは、事業の構成が変わった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "韓国店舗はFY2005の30店からFY2023の316店へ約10倍に拡大し、台湾も2010年の4店からFY2023に63店まで伸びた",
                      "原文": "韓国店舗はFY2005の30店からFY2023の316店へ18年で約10倍に拡大し、台湾も2010年の4店からFY2023に63店まで伸びた。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書・FACT BOOK",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "2025年2月期の地域別売上高は国内2,580億円・韓国705億円・その他海外436億円であった",
                      "原文": "2025年2月期（FY24）の地域別売上高は、国内258,010百万円、韓国70,557百万円、その他海外43,634百万円であった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書（連結・地域ごとの情報）",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "現地での立ち位置には独特の性格があった。2019年、日本製品の不買運動が広がるなかで、日本経済新聞は同社の韓国事業について、日系ブランドという認識が薄いために影響を抑えられている一方、その低い認知度が海外での展開を難しくする面もあると報じている。当時の韓国の店舗数は256店で、国内のおよそ4分の1にあたった。看板を現地に溶け込ませる進出の仕方が、守りと攻めの両面に働いた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2019年時点で韓国の店舗数は256店に達し、日系という認識の薄さが不買運動の影響を抑える一方で海外展開の足かせにもなっていた",
                      "原文": "記事掲載時点での店舗数は256店で、これは「日本の4分の1の規模」に相当します。（中略）ABCマートは「日系ブランドという認識が薄いことで影響を抑えられている」と指摘しています。しかし同時に、この低い認知度が「海外展開の足かせというもろ刃の剣になっている」と述べられています。",
                      "source": "日本経済新聞（2019年11月25日）「ABCマート、韓国不買より深い悩み」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52507660S9A121C1000000/"
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "移植から、現地での買い増しへ",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "展開の手口も変わってきた。2026年2月期には韓国で24店、台湾で5店、フィリピンで2店を新たに開き、期末の海外店舗数は韓国320店・台湾64店・米国7店・ベトナム5店・フィリピン2店の計398店となった。さらに2026年6月、韓国法人は現地の衣料大手が営む靴販売事業を買収し、直営35店のうち27店と従業員の雇用を引き受けている。買収対象の店舗売上高は1千億ウォン規模であった。自前の出店に、現地企業の売場を買う手を重ねた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2026年2月期に韓国24店・台湾5店・フィリピン2店を新規出店し、期末の海外店舗数は韓国320店を含む計398店となった",
                      "原文": "韓国に24店舗、台湾に5店舗、フィリピンに2店舗、計31店舗を新規出店（中略）韓国320店舗、台湾64店舗、米国7店舗、ベトナム5店舗、フィリピン2店舗、計398店舗",
                      "source": "流通ニュース（2026年4月8日）「ABCマート 決算／2月期増収増益、国内33店舗オープン・スポーツアパレルにも注力」",
                      "url": "https://www.ryutsuu.biz/accounts/s040883.html"
                    },
                    {
                      "fact": "2026年6月にエービーシー・マート韓国法人が現地衣料大手の靴販売事業FOLDERの店舗27店と従業員の雇用を引き受けた",
                      "原文": "FOLDERは韓国に直営店を35店舗展開し、店舗の売上高は1千億ウォン（約105億円）規模（中略）店舗27店や、従業員の雇用などを引き受ける（中略）2月末時点で韓国で320店舗展開しており、店舗数は海外で最も多い",
                      "source": "日本経済新聞（2026年6月1日）「ABCマート、韓国で靴販売事業を買収　現地衣料大手から」",
                      "url": "https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0183K0R00C26A6000000/"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "移植する中身も一つではなくなった。台湾では「ABC-MART」と「GRAND STAGE」の知名度を生かした商品戦略を採り、韓国ではランニングを強化した新しいGRANDSTAGE業態を軸に出店している。国内で作った業態をそのまま置くのではなく、国ごとに品揃えと業態を選び分ける運営へ移った。日本・韓国・台湾・ベトナムの4カ国で新作を同時に売り出す仕組みも整えつつある。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "台湾では「ABC-MART」「GRAND STAGE」の知名度を生かした商品戦略を採り、韓国ではランニングを強化したGRANDSTAGE業態を中心に出店した",
                      "原文": "台湾では「ABC-MART」や「GRAND STAGE」の知名度を生かした商品戦略が奏功（中略）韓国の売上高は（中略）ランニングを強化した新しいGRANDSTAGE業態を中心に業態別の出店を進めた",
                      "source": "流通ニュース（2026年4月8日）「ABCマート 決算／2月期増収増益、国内33店舗オープン・スポーツアパレルにも注力」",
                      "url": "https://www.ryutsuu.biz/accounts/s040883.html"
                    },
                    {
                      "fact": "翌期戦略として日本・韓国・台湾・ベトナムの4カ国で新作を同時にリリースし、海外で26店舗の出店を予定した",
                      "原文": "翌期戦略として4カ国（日本・韓国・台湾・ベトナム）の新作同時リリース、海外で26店舗の出店予定。フィリピンで合弁会社を設立し1号店を計画、米国は卸売販売戦略を見直しEC強化、海外ネットワーク拡大を成長エンジンに据える。",
                      "source": "エービーシー・マート 決算説明資料（2025年2月期・翌期の戦略）",
                      "url": "https://www.abc-mart.co.jp/ir/pdf/2025/kessan04_siryou2.pdf"
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "名前を持たずに出ていくということ",
              "editorial": true,
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "この海外展開でまず目を引くのは、進出先の選び方よりも、進出の順序である。生産を委託していた国へ売りに行く——供給の経路をすでに持っている場所を最初の市場に選んだ点に、この会社の慎重さがうかがえる。合弁で入って現地の知見を借り、店舗網の型が固まってから持分を100％へ引き上げる運びも同じ性格を帯びている。国内でSC出店を加速していた時期に並行して着手した点を含め、大きな賭けというより、確かめながら踏み幅を広げる進め方であったとみることができる。"
                },
                {
                  "text": "一方で、日系という認識を持たれないまま現地に溶け込む形は、二つの意味を持ち続けている。不買運動の影響を受けにくい反面、日本で積み上げた信用や物語を持ち出せない。靴の小売は品揃えと立地で決まる商売であり、そこでは無名であることが必ずしも不利にならない。ただし現地企業の店舗を買って規模を足す段階に入った今、何を掲げて客に選ばれる会社であるのかという問いは、国内よりも先に海外で問われることになるのかもしれない。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書（連結・地域ごとの情報）",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書・FACT BOOK",
        "戦略経営者 2000年7月号",
        "エービーシー・マート公式サイト「ABC-MART の歴史」",
        "日本経済新聞（2019年11月25日）「ABCマート、韓国不買より深い悩み」",
        "日本経済新聞（2026年6月1日）「ABCマート、韓国で靴販売事業を買収　現地衣料大手から」",
        "流通ニュース（2026年4月8日）「ABCマート 決算／2月期増収増益、国内33店舗オープン・スポーツアパレルにも注力」",
        "エービーシー・マート 決算説明資料（2025年2月期・翌期の戦略）"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-22"
    },
    {
      "slug": "wholesale-to-retail-2002",
      "url": "/tse/2670/decisions/wholesale-to-retail-2002/",
      "year": 2002,
      "month": 3,
      "schema_version": "1.0",
      "stock_code": "2670",
      "decision_id": "2670-wholesale-to-retail-2002",
      "type": "transformation",
      "tags": [
        "bm-core-shift",
        "bm-channel",
        "pf-exit",
        "ma-merger"
      ],
      "title": "祖業の卸売を畳み、小売業エービーシー・マートへ一本化した業態転換",
      "subtitle": "営業利益率25％の卸売を残すか、成長余地のある小売へ会社ごと寄せるか",
      "status": "implemented",
      "status_label": "実施",
      "scheme": "親会社ITCが連結子会社エービーシー・マートを吸収合併し、存続会社の商号をエービーシー・マートへ変更",
      "ratio": null,
      "issue": "主力事業の転換と法人再編",
      "decider": "三木正浩（社長）",
      "highlights": [
        {
          "label": "概要",
          "text": "2002年3月、インターナショナル・トレーディング・コーポレーション（ITC）が連結子会社の株式会社エービーシー・マートを吸収合併し、同年8月に存続会社の商号を株式会社エービーシー・マートへ変更した。1985年以来の輸入卸から小売専業へ、事業と法人格の両方を移した経営判断。"
        },
        {
          "label": "背景",
          "text": "卸売の売上はホーキンスのブーム一巡で FY1996 の268億円から FY1998 の177億円へ縮んだ。一方で1990年に開いた小売のエービーシー・マートは FY1996 の43億円から FY2000 の137億円へ伸び、グループ内で主力が入れ替わりつつあった。"
        },
        {
          "label": "内容",
          "text": "1999年7月にショッピングセンター（SC）向けの積極出店へ方針を定め、2000年10月に株式を店頭登録。2002年3月に小売子会社を吸収合併して商号を変更し、2002年11月に東京証券取引所市場第一部へ上場した。"
        },
        {
          "label": "含意",
          "text": "営業利益率25％前後の卸売を捨て、地代家賃という固定費を抱える小売へ寄せた選択であった。売上原価はFY2000の142億円からFY2003の224億円へ、地代家賃は6億円から29億円へ膨らんだ一方、営業利益も66億円から90億円へ積み上がった。"
        }
      ],
      "parties": [
        {
          "stock_code": "2670",
          "name": "インターナショナル・トレーディング・コーポレーション（現エービーシー・マート）",
          "role": "当事者",
          "at_deal": {
            "note": "ホーキンス・ヴァンズ等を扱う輸入卸。小売子会社エービーシー・マートを傘下に持つ"
          }
        }
      ],
      "dates": {
        "reported": null,
        "announced": "2002-03",
        "agreed": null,
        "closed": "2002-08",
        "terminated": null
      },
      "breakdown": {
        "reason_type": "strategy",
        "summary": "高収益だが成長の止まった卸売を畳み、店舗網で伸びる小売へ事業と法人格を寄せた主力事業の入れ替え"
      },
      "timeline": [
        {
          "year": 1990,
          "month": 2,
          "title": "上野アメ横に「ABC-MART」1号店を開き小売へ参入"
        },
        {
          "year": 1990,
          "month": 8,
          "title": "靴小売を目的に連結子会社「有限会社エービーシー・マート」を設立"
        },
        {
          "year": 1996,
          "month": null,
          "title": "ITC単体の売上高が268億円に達し、卸売のピークを打つ"
        },
        {
          "year": 1999,
          "month": 7,
          "title": "ショッピングセンター向けの積極出店へ方針を定める"
        },
        {
          "year": 2000,
          "month": 10,
          "title": "日本証券業協会に株式を店頭登録"
        },
        {
          "year": 2002,
          "month": 3,
          "title": "連結子会社「株式会社エービーシー・マート」を吸収合併",
          "highlight": true
        },
        {
          "year": 2002,
          "month": 8,
          "title": "商号を「株式会社エービーシー・マート」へ変更、店舗数100を達成"
        },
        {
          "year": 2002,
          "month": 11,
          "title": "東京証券取引所市場第一部に上場"
        }
      ],
      "snapshot": {
        "fiscal_year": "2003年2月期",
        "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書（2003年2月期・連結）",
        "companies": [
          {
            "stock_code": "2670",
            "name": "エービーシー・マート",
            "fiscal_year": "2003年2月期（連結）",
            "president": "三木正浩",
            "hq": "東京都渋谷区",
            "sales": {
              "num": 389,
              "unit": "億円"
            },
            "segments": [],
            "operating_profit": null,
            "ordinary_profit": null,
            "net_profit": {
              "num": 41,
              "unit": "億円"
            },
            "equity_ratio": null,
            "roe": null,
            "employees": {
              "num": 618,
              "unit": "人",
              "note": "連結"
            },
            "avg_salary": null
          }
        ]
      },
      "report": [
        {
          "section": "background",
          "label": "背景",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "卸売がピークを打った",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "1995年11月、ITCは木村拓哉氏を起用したホーキンスのテレビ広告に40億円を投じた。翌FY1996の単体売上高は268億円に達し、輸入卸としての規模はここで頂点を迎える。ところが大量の露出はブランドの需要を短い期間で使い切り、ブームが去るとFY1997は207億円、FY1998は177億円へ落ちた。特定のブランドの流行に業績の全体が連動する構造が、数字の上で露わになった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1995年に木村拓哉氏を起用したホーキンスのTVCMへ40億円を投下し、FY1996に売上高268億円へ達した",
                      "原文": "1995年には年間利益37億円のもとで、木村拓哉起用のTVCMへ40億円を投下した。",
                      "source": "戦略経営者 2000年7月号",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "ITC単体売上はFY1996の268億円からFY1998の177億円へ縮小した",
                      "原文": "ITC単体売上はFY1990の47億円からFY1996の268億円へ6年で5.7倍に拡大し、ブームのピークを打った後はFY1998の177億円まで縮小した。",
                      "source": "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "収益性そのものが悪かったわけではない。卸売の営業利益率は25％前後と高い水準にあり、それだけを見れば畳む理由に乏しい。問題は伸びしろであった。取引先の靴専門店や量販店の数は限られ、扱うブランドを増やしても売り先の総量は変わらない。FY1998からFY2000にかけて単体売上は177億円前後で横ばいとなり、卸売のまま規模を追う道は塞がっていた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "卸売の営業利益率は25％前後と高水準だったが成長性に難があった",
                      "原文": "卸売の営業利益率は25%前後と高水準だったが成長性に難があった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "ITC単体売上はFY1998・FY1999・FY2000のいずれも177億円前後で横ばいに推移した",
                      "原文": "1999年02月期177、2000年02月期177、2001年02月期167（ICT単体・億円）",
                      "source": "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "傘下の小売が主力へ入れ替わる",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "小売への進出は1990年2月にさかのぼる。上野地区に「ABC-MART」1号店、渋谷地区に「GALLOP」渋谷店など4店舗を同時に開き、同年8月には靴小売を担う連結子会社「有限会社エービーシー・マート」を出資金10百万円で設立した。1997年3月に株式会社へ改組し資本金を100百万円としている。卸売が扱うブランドを、そのまま自社の売場で売る仕組みであった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "1990年2月に上野・渋谷で小売4店舗を開き、同年8月に子会社「有限会社エービーシー・マート」を設立、1997年3月に株式会社へ改組した",
                      "原文": "1990年２月 靴、衣料の小売部門進出を目的として、上野地区に「ABC-MART」１号店(東京都台東区)、渋谷地区に「GALLOP」渋谷店(東京都渋谷区)など４店舗をオープン。1990年８月 靴小売を目的として、連結子会社「有限会社エービーシー・マート」を設立(出資金10百万円)。(1997年３月に「株式会社エービーシー・マート」に改組(資本金100百万円)。)",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "グループ内の力関係は数年で逆転へ向かった。小売エービーシー・マート単体の売上高はFY1996の43億円からFY2000の137億円へ伸び、同じ時期に卸売のITC単体は167億円まで下がっている。1999年7月には、大規模小売店舗法の改正で新設が相次いだSCへ狙いを定め、テナントとしての積極出店を決めた。2000年10月には日本証券業協会へ株式を店頭登録し、出店を続けるための信用と資金の裏付けも得た。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "小売ABCマート単体売上はFY1996の43億円からFY2000の137億円へ伸び、卸売ITC単体は167億円へ下がった",
                      "原文": "ブーム一巡で卸売の伸びが止まる一方、小売ABCマート単体はFY1996の43億円からFY2000の137億円へ伸び、事業の主役が卸売から小売へ入れ替わる動きが始まった。",
                      "source": "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "1999年7月にSC向けの積極出店方針を決め、2000年10月に日本証券業協会へ株式を店頭登録した",
                      "原文": "2000年10月 日本証券業協会に株式を店頭登録。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "origin",
          "label": "決断",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "親会社が小売子会社を吸収し、その名を名乗る",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "2002年3月、ITCは連結子会社の株式会社エービーシー・マートを吸収合併した。存続したのは祖業を営むITCの側であり、消えたのは伸びている小売会社の法人格という順であった。ただし同年8月、存続会社は商号を株式会社エービーシー・マートへ変更している。法人としてはITCが残り、名前と事業の中身は小売側が引き継ぐ形の再編であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2002年3月に連結子会社「株式会社エービーシー・マート」を吸収合併し、同年8月に商号を「株式会社エービーシー・マート」へ変更した",
                      "原文": "2002年３月 連結子会社「株式会社エービーシー・マート」を吸収合併。2002年８月 「株式会社エービーシー・マート」に商号変更。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "2002年に卸売から小売への業種転換を始め、同年8月に店舗数100を達成した",
                      "原文": "株式会社エービーシー・マートを吸収合併、卸売から小売へ業種転換をはじめる・社名を株式会社エービーシー・マートに変更・8月、100店舗達成",
                      "source": "エービーシー・マート公式サイト「ABC-MART の歴史」",
                      "url": "https://www.abc-mart.co.jp/aboutus/rekishi.html"
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "合併は単独の一手ではない。2000年4月には端株制度を単位株制度へ改めるため、形式上の存続会社である連結子会社の五榮建設と合併しており、2001年からは地方展開で組んだ合弁会社の株式を取得して本体へ束ねている。2002年11月には東京証券取引所市場第一部へ上場した。資本の制度、地方の店舗運営、事業の中身、上場市場の順に、卸売の会社を小売の会社へ組み替える作業が3年ほど続いた。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2000年4月に単位株制度への移行のため連結子会社「五榮建設株式会社」と合併し、2002年11月に東京証券取引所市場第一部へ上場した",
                      "原文": "2000年４月 端株制度を適用している当社の株式1,000株を１単位とする単位株制度に変更するために、形式上の存続会社である連結子会社「五榮建設株式会社」と４月１日を合併期日として合併。2002年11月 東京証券取引所市場第一部に上場。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "2001年から地方展開の合弁会社の株式を取得しABCマートへ吸収合併する集約を実施した",
                      "原文": "ABCマートでは全国展開（地方展開）において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "高い利益率を手放して固定費を抱える",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "経営の判断としては、利益率の高い事業を残して低い事業を切るのが定石にあたる。ここではその逆を選んだ。営業利益率25％前後の卸売を畳み、家賃と人件費を毎月払い続ける小売へ会社を寄せている。売り先の数に上限がある商売と、店舗を増やせば売上が増える商売のどちらに将来を賭けるかという比較で、伸びしろの側を採った選択であった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "利益率25％の卸売を捨てて成長余地のある小売へ一本化し、法人名と事業実態を一致させた",
                      "原文": "そこで2002年にITCがABCマートを吸収合併し、商号を「エービーシー・マート」へ変更して小売業に特化する方針を鮮明にした。つまり利益率25%の卸売よりも成長余地のある小売への集中を優先し、法人名と事業実態を一致させた。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "売場の性格も一つに絞らなかった。SCテナントとしての出店で初期投資を抑えつつ、2000年10月には銀座6丁目に土地を取得して営業面積631平方メートルの店を開いている。2000年3月期にはこの銀座店の土地取得に19億円を投じた。郊外SCで数を稼ぎ、都心の路面店で商品の見せ方と価格帯の上限を示すという、二つの売場を並べる構えであった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2000年10月に銀座店を出店し営業面積631平方メートルを確保、2000年3月期に銀座店の土地取得へ19億円を投資した",
                      "原文": "2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            }
          ]
        },
        {
          "section": "outcome",
          "label": "結果",
          "subsections": [
            {
              "sub_title": "固定費を売場の数で回収する会社になった",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "転換の代償と成果は、費用の構成に現れた。FY2000からFY2003にかけて売上原価は142億円から224億円へ、地代家賃は6億円から29億円へおよそ5倍に膨らんだ。同じ期間に広告宣伝費は19億円から16億円へ抑えられている。卸売時代のように広告で需要を作るのではなく、売場の数と立地で客に会う会社へ移った様子が費目の増減に表れた。営業利益も66億円から90億円へ積み上がった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "FY2000〜FY2003で売上原価は142億円から224億円へ、地代家賃は6億円から29億円へ約5倍に膨張し、営業利益は66億円から90億円へ積み上がった",
                      "原文": "FY2000〜FY2003のコスト構造を見ると、売上原価は142億円から224億円へ、地代家賃は6億円から29億円へ約5倍に膨張し、営業利益も66億円から90億円へ積み上がった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "FY2000の広告宣伝費19億円はFY2003に16億円へ抑えられた",
                      "原文": "FY2000 広告宣伝費19億円、FY2001 10億円、FY2002 9億円、FY2003 16億円（有価証券報告書によるコスト構造）",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "店舗数の伸び方は卸売時代の売上の伸び方を上回った。国内グループの店舗数はFY1999の21店からFY2011の650店、FY2019にはSCとその他を合わせて1,016店へ増えている。20年で約48倍にあたる。連結売上高は2003年2月期の389億円から2026年2月期の3,786億円となり、卸売のピークであった268億円は、転換から四半世紀を経た現在の規模の1割に満たない。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "国内グループ店舗数はFY1999の21店からFY2011の650店・FY2019の1016店へ約48倍に拡大した",
                      "原文": "国内グループ店舗数はFY1999の21店からFY2011の650店、FY2019にはSC+その他で1016店と20年で約48倍に拡大した。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書・FACT BOOK",
                      "url": null
                    },
                    {
                      "fact": "連結売上高は2003年2月期の389億円から2026年2月期の3,786億円へ拡大した",
                      "原文": "2003年2月期の連結売上高は389億円、2026年2月期の連結売上高は3,786億円であった。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書（連結）",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "商社であった来歴が小売の武器になった",
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "小売へ寄せた後も、卸売時代に築いたブランドとの関係は切れなかった。2022年、大手ブランドが小売店を選別して直接販売を強める変化のなかで、週刊東洋経済は「靴や衣料品の輸入販売商社が祖業のエービーシー・マートは、現在もナイキなどと強いパイプを持つ」と記し、市場関係者の見方として「エービーシー・マートの独り勝ち」を伝えた。仕入れの交渉力は法人格の組み替えでは失われなかった。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "2022年時点でエービーシー・マートは祖業の輸入販売商社としての関係を保ちナイキ等と強いパイプを持つと評された",
                      "原文": "今の日本の靴業界について、多くの株式市場関係者は口をそろえて「エービーシー・マートの独り勝ち」と評する。靴や衣料品の輸入販売商社が祖業のエービーシー・マートは、現在もナイキなどと強いパイプを持つ。",
                      "source": "週刊東洋経済 2022年7月23日号「ナイキの「選別」で激震 靴小売りを揺さぶる地殻変動」",
                      "url": null
                    }
                  ]
                },
                {
                  "text": "一方で、SCテナントを主軸に置いた店舗網は、SC市場の拡大という外部の条件に業績が結びつく構造でもある。SC店舗は2012年の317店から2022年の616店へ倍増し、1,000店体制の中核を占めた。新設ペースが鈍り、通販が広がる場面では、同じ構造が客足の細りに直結する。卸売の売り先が限られていたことを理由に転換したはずの会社が、別の外部条件に依存する形は残った。",
                  "evidences": [
                    {
                      "fact": "SC店舗は2012年の317店から2022年の616店へ倍増し1000店体制の中核を占めた",
                      "原文": "SC店舗は2012年の317店から2022年の616店へ倍増し、SC市場拡大に乗る形で1000店体制の中核を占めた。",
                      "source": "エービーシー・マート 有価証券報告書・FACT BOOK",
                      "url": null
                    }
                  ]
                }
              ]
            },
            {
              "sub_title": "名前を譲るという再編の作法",
              "editorial": true,
              "paragraphs": [
                {
                  "text": "この判断の面白さは、法人格の残し方にある。存続したのは祖業のITCでありながら、看板は小売子会社のものを名乗った。法務の手続きとしては珍しくない形ながら、会社が自分の来歴のどちらを外へ示すかという選択でもある。三木正浩氏は17年かけて育てた輸入卸の名を対外的に消し、社員数十名で始めた小売の屋号を全社の名前に据えた。畳んだ事業の利益率が25％前後であったことを思えば、収益の良し悪しではなく売り先の数え方で将来を測った判断であったとみることができる。"
                },
                {
                  "text": "転換の後に残ったのは、店舗網そのものよりも、輸入卸として蓄えた仕入れの技術であった。ブランドとの直接の交渉、生産委託先の管理、価格の作り方——いずれも小売の売場でそのまま効く。大手ブランドが直販へ傾き、小売店を選別する時代に、その来歴が競争条件として働いている。ただし店舗網の伸びをSCの新設に頼る構造は、卸売の売り先が限られていた問題と形を変えて続いているとみられる。何に依存するかを選び直す判断は、この会社にとって一度きりの作業ではないのかもしれない。"
                }
              ]
            }
          ]
        }
      ],
      "references": [
        "エービーシー・マート 有価証券報告書【沿革】",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書（連結）",
        "エービーシー・マート DATA BOOK 2001",
        "エービーシー・マート 有価証券報告書・FACT BOOK",
        "戦略経営者 2000年7月号",
        "週刊東洋経済 2022年7月23日号「ナイキの「選別」で激震 靴小売りを揺さぶる地殻変動」",
        "エービーシー・マート公式サイト「ABC-MART の歴史」"
      ],
      "authored": "2026-07",
      "last_updated": "2026-07-22"
    }
  ]
}
